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第三章『ロボット博覧会への誘い』

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電脳世界へ・・・。
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       ロボット博覧会への誘いいざない




「シグナルー、パルス―――、海見に行こおよおお」

 フュリー乗船の待合ロビー。

 窓の外に広がる港の風景に、いささか興奮した表情で、信彦が二人に呼びかける。

 けれど、ちょうど二人はオセロ勝負の真っ最中だった。

 苦渋の表情で盤面を見据えていたシグナルは「よしっ」という掛け声とともに手にしていた駒を盤上に据える。

「へっへっへ――――。どうだねパルス君♪」

「甘い」

「は?」

 得意満面の笑みを浮かべていたシグナルは、盤面を見つめていたパルスが、あっさりと切り返しの言葉を告げてくるのと同時に、据えたばかりの駒を裏返したのを見て、呆然とした表情で固まる。

「あ――――――っ」

 気がつくと全ての駒が裏返されてしまっており、愕然としているところに、お前の番だと、涼しい顔をしたパルスに告げられるも、その時点ですでに勝敗は決まってしまっていたのだった。




「これで私の39戦39勝・・・と」

「シグナル、オセロ弱いんだな――――」

 淡々とパルスがメモ帳に記録を記すと、観戦を行なっていた信彦が呆れた表情で呟いた。

「違う!! パルスが強すぎるんだっ」

「それは違うぞ、シグナル」

 否定の言葉を叫んだシグナルに、パルスは言う。

 理屈的には新型のお前の方が私より優れているはずだが、と。

 そしてパルスは信彦に結論を告げた。

「つまりシグナルは自分の性能を生かしきれない、おマヌケ君なのだ」

「なんだとおお」

「――――・・・前から言おうと思っていたがシグナル――――・・・」

 噛み付いていったシグナルは、不意に改まった表情を向けてきたパルスに「あん?」と眉を顰める。

「お前には戦略がない! それが私に勝てない最大の理由だ」

 ビシッ! と指を突きつけられ、告げられた言葉に、ガ―――ンとシグナルはショックを受けたところに

「なっるほどね――――っ」と、ドリンクのカップを手に、にんまりと笑みを浮かべクリスが姿を見せた。

「シグナルって力押ししか出来ないもんねーっ」

 ずっ、と音を立てドリンクを呑みながら、クリスが言った言葉に、うんうんとパルスが頷く。

 体を震わせながら「こいつ殴ったろか」とシグナルが唸ると、クリスと一緒にやって来た亜麻色のロングヘアの少女が、口元に手を当てながら告げてきた。

「ケンカはいけませんよ」

「はっはい! エララさん!!」

 手をわきわきと動かしつつも、その顔に浮かんだ悲しげな表情を見ると、シグナルは慌てて少女に頷く。

 シグナルがエララと知り合ったのは最近のことなのだが―――彼女もまた、シグナルやパルスと同じ人間形態ヒューマンフォームロボットであり、瑠璃に対する気持ちと若干異なるものの、シグナルにとって気になっている存在なのだった。

「大体お前のオセロはワンパターンで面白くない」

「ちぇ―――っわかったよ!!」

 パルスの言葉に、シグナルは舌打ちをし、憮然とした面持ちで頷く。

 そして、そのまま

「わかったからもう一戦・・・!」

「駄目です」

 闘争心を燃やし叫んだシグナルは、きっぱりとした口調で止める声を掛けられ、ハッと振り返る。

そこには眼鏡をかけた、自分とパルスによく似た顔立ちの、男性の姿が在った。

「若先生!」

「乗船手続きが終わりましたから続きは船でしてくださいな」

 男性が告げると、今度はそこに信彦に似た顔立ちの女性と連れ立って、瑠璃がやって来た。

「おまたせ―――っ、売店混んでて」

「みのるさん、瑠璃さん、ご苦労様です」

「いえ、大丈夫ですよ、正信さん」

 女性とともに、瑠璃が買いに行っていたのは、船の中で食べるお弁当だった。

 男性の名前は音井正信。

 女性の名前は音井みのる。

 ―――二人は外国に留学をしていた信彦の両親で、今回ロボット博覧会に参加するために一時帰国して来たのだ。

 そして、華やかな場所は苦手だから参加しないという教授の代わりに、シグナル達が同行することになり、

現在一同は博覧会の会場に向かっている途中なのだった。






「会場都市〝リュケイオン〟までは8時間くらいかな」

「8時間!?」

 船に乗り込みながら、どのくらい乗船するのかと正信に尋ねた信彦は、

返ってきた言葉に呆然と目を見開く。

 それだけ長い時間乗る場合、当然の事ながらお腹が減ってしまう。

「そう思って、はいお弁当」

 すると、にこりと笑みを浮かべ、みのるが先程瑠璃と一緒に購入してきた、お弁当を取り出してきた。 

けれど袋の中にはお箸が入っていなかった。

 売店の混み具合はかなりのものだった為に、店員がお箸を入れ忘れてしまったのだろう。

「みのるさん、食堂があるみたいですからお箸もらってきます」

 船内の案内図に視線を向けながら瑠璃が言うと、片方の手を握り締めながら反対の手で自身を指差し、シグナルが声を掛けてきた。

瑠璃さん、ぼくつきあいます!!」

「ありがとう、シグナル君」

 ? と首を傾げつつ「では船室で待ってますね」と言う正信に頷いて、瑠璃はシグナルともに食堂に向かって歩き出した。




 食堂には人間の姿は無く、代わりに一体のロボットの姿が在った。

 どうやら船はコンピューターで自動制御されているために、お客以外の人間は乗船していないようだった。

 珍しそうに周囲を見回したシグナルは、ふとテーブルの上に置かれたポットに目を留める。

 お茶を飲むのならそこのポットを持っていくといいと、ロボットに促され、必要だろうか? と思いつつ、

シグナルはポットに手を伸ばす。すると、突然ポットはガタッと音を立てシグナルの目の前で揺れた。

瑠璃さんっ。いいいいい、いまポットが勝手にうごっ、うごうご・・・」

「どうかしたの? シグナル君」

 びくんっ、と体を竦ませ、激しく動揺した表情で、思わず瑠璃を振り返ったシグナルは、目を瞬きながら見つめてきた瑠璃を見て、ハッと我に返った。

 このような弱気な姿を見せたのでは男がすたってしまう。

「いえ! なんでもないです」

 ロボットだけど、と内心で付け足しつつ、なんとか笑みを浮かべて、シグナルは瑠璃に言う。

 だが、その直後、手の中にあったポットが逃げるようにテーブルの上を移動して、さらに跳ねたために、シグナルは悲鳴を上げてしまった。

「うわあああああ、うごくううう!!」

「え!? ポット―――が?」

 目に涙を溜め、怯えるシグナルを宥めながら、テーブルの上のポットに瑠璃は視線を向ける。

 何かトラウマでもあるのか、シグナルがお化けの類が一切苦手だと知ったのは、つい最近のことだった。

 ゆっくりとポットに近づき、つんっと瑠璃はポットを指で弾く。

 と、ポットの中から助けを求める声が聞こえてきた。

(―――もしかして!!)

 ふと、予感めいたものが意識に閃き、瑠璃は急ぎポットの蓋を開く。

 するとポットの中から、一見すると妖精のような姿の、〝ロボット〟が這い出してきたのだった。



「ポットの中に入ってたって・・・ハーモニー・・・お間抜け君だなぁ・・・」

 ポットから現れたロボットと、船室で話をしていた正信が呆れた表情で呻いた。

 ロボットは〝HARNONYハーモニー〟という名前の―――世界初の人間形態ヒューマンフォームロボットだった。

 簡単な自己紹介をした後、正信に用事があって捜しているのだ、と聞いたために瑠璃が船室に連れて戻って来たのだ。

 ふわふわと漂いながら、正信と会話をするハーモニーを、信彦とクリスが呆然とした表情で見ていると、ふとハーモニーはパルスの頭に降り立った。

 それに対し、気安くヒトの頭に座るなと、ムッとした表情でパルスが指で弾き飛ばすと、ハーモニーは二人にパルスの昔の写真をばら撒き始めた。

 どうやらその行動は、周りに正信との話を聞かれないために、やったことのようだった。

 過去の事は知られたくないらしいパルスが、写真を取り戻そうと躍起になっている間に話は終わり、

「みのるさんと信彦たちは船室で待ってて下さいな」

 正信はハーモニーと共にシグナルとパルスを連れて何処かに出掛けて行ってしまった。
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