第二章『兄弟』
『TWINSIGNAL夢』名前変換設定。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「シグナル覚悟!!」
後ろには大木。そして正面にはブレードを構えたパルス。
「シグナル――――!!」
今まさにパルスに切り付けられようしていたシグナルの姿を見つけて信彦が叫んだ。
(このままだとシグナル君がっ!!)
助ける方法はないものかと周囲に視線を向けた瑠璃は、来る途中、会って着いて来ていた猫の存在を思い出した。
―――猫に協力をしてもらって、信彦にくしゃみをさせればシグナルは助かる。
すると猫の方も心得ていたらしく、信彦の顔面に向かってガバッと引っ付いた。
パルスのブレードがシグナル目掛けて振り下ろされた瞬間、信彦のくしゃみによって
シグナルはちびシグナルに変形をしていて難を逃れていた。
「何!?」
驚愕の声を上げたパルスの前には「ほえ」と声を洩らしたちびシグナルが転がっている。
「やめろよ、パルス!!」
「そうよ、パルス君!! 兄弟で戦うなんて駄目よ・・・!!」
隠れていた茂みから飛び出して、ちびシグナルの前に駆け寄った信彦の前に、
さらに守るようにして立ちながら瑠璃はパルスを真っ直ぐに見据えた。
すると、ズイと迫るようにしてパルスは近づいてきて、ガッと瑠璃の両肩を掴んできた。
「なっ・・・」
突然の出来事に瑠璃は大きく目を見開く。
(・・・なに!?)
見慣れた顔とはいえ、やはり別人(別ロボット)なのだ。
それにパルスの方がシグナルよりも、少し鋭さを帯びた顔立ちをしている。
(・・・赤い瞳・・・)
至近距離でじっと見つめてくるパルスから、動揺しながらも視線を逸らさずにいた瑠璃はふと気づく。
シグナルの瞳が紫色なのに対してパルスの瞳は赤色をしている。
「違う! シグナルじゃない!」
「はい?」
凝視するようにしていたパルスが、ふと上げた声に瑠璃は呆然とした表情を浮かべた。
「我が好敵手、シグナル奴 はどこに消えた!? 」
瑠璃の肩からバッと手を放すと、パルスは近くの茂みに向かって歩き出す。
「大丈夫!? 瑠璃姉ちゃん!」
「・・・うん。大丈夫だけど・・・」
背後から走り出てきた信彦に瑠璃は曖昧な表情で頷く。
「出て来いシグナル! 逃げるとは卑怯なり!!」
「・・・目の前で変身したのに・・・」
誰もいない茂みにブレードを振り回すパルスの姿は滑稽としか言いようがない。
「あのね瑠璃ちゃん、パルス君、ど近眼なの」
信彦の腕の中から、ちびシグナルが告げてくる。
やがてパルスは、しらみつぶしに捜してくれるわ、と森の奥に向かって駆け出して行ってしまった。
「設備がないからたいしたチェックは出来ないが、多分シグナルの体にはダメージはない」
教授たちと合流した瑠璃と信彦は、青年シグナルがパルスによってブレードで斬りつけられかけた事を報せた。
けれどパルスのブレードによって切られた筈のシグナルのジャケットは元どおりに修復していた。
それはシグナルに使用されている特殊金属 が自己修復を行なったからということだった。
―――だが、パルスにはその《特殊金属》が使用されていない。
「シグナル並みの高性能な構造では《特殊金属》でなければ体に負担がかかりすぎる。
したがってパルスは頻繁に休息をとらねばならないのじゃ」
森の中で先程、熟睡していたパルスと遭遇して目からレーザーを撃たれたクリスが、自分の目を指さしながら教授に問いかけた。
「でも人に向かって目からビッてレーザー撃つような非常識なヤツにシグナル勝てるの?」
「今は休眠状態なんじゃろ? 昔のデータによれば、まだしばらくは眠っておる。今のうちに・・・」
教授の言葉はシグナルの声によって遮られた。
「待ちな!! 眠っているところをたたくなんて卑怯者のやることだ!! ぼくのプライドが許さない!」
「しかし、あの高分子カッターとレーザーに勝てるのか!?」
シグナルの雰囲気に圧倒されながらも真城巡査が叫ぶ。
「ぼく自身、ヤツと戦いたくない、といえばウソになる・・・が」
言葉を区切りながら言ったシグナルは、ちらりと瑠璃に視線を向ける。
何ともいえない表情が瑠璃の顔には浮かんでいた。
「それとは別に弟として! 止める、止めてみせる!!」
『兄弟』で戦うことになるのを瑠璃が望んでいないから。
「分かった。お前さんはそういうふうにプログラムされとるからな」
拳を握り締め宣言したシグナルを見つめ、教授が嘆息ながら言った。
「パルスのことは任せよう」
それから暫らくして、梅小路博士が真城巡査によって逮捕され、パルスを止めるためのシグナルの奮闘が始まった。
ブレードで斬りつけようとしてくるパルスに、シグナルはあえて接近していく。
そうすることでブレードの攻撃を封じることが出来る。
だが、代わりにパルスの両手が振り下ろされてきて、シグナルは地面に叩きつけられてしまった。
「しまった―――! 本物の両の手を忘れてた!!」
体を起こしかけたシグナルに、今度は高分子レーザーを撃とうとパルスは迫っていく。
だがレーザーを放ったとき、シグナルは跳躍して避けていて、パルスの視界から姿を消してしまっていた。
「どこに行った、シグナル!?」
声を上げてから、パルスが背後に気配を感じるのと同時に、降り立ったシグナルによって目と体を押さえ込まれてしまった。
「どうだ! レーザーとブレード、使えるものなら使ってみな」
ギリと締め上げるようにシグナルは腕に力を入れるとパルスの髪の毛が放電を発した。
「―――っく!?」
思わずバッとシグナルは腕を放すと、パルスの高分子レーザーが、隠れて様子を見ていた信彦と瑠璃の方に向かって放たれた。
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
慌てて信彦と一緒にレーザーを避けた瑠璃は、二本の大木が折り重なるようにして自分たちに倒れこんでくるのに気づいた。
「うわああああ!!」
「信彦君っ!!」
とっさに瑠璃は信彦を抱え込み、地面に突っ伏す。
「信彦!! 瑠璃さん!!」
ズズン! という衝撃音とともに起こるだろう痛みを覚悟していた瑠璃は、聞こえてきた声にゆっくりと目を開けた。
―――視界に映るプリズムパープルの髪。
「―――・・・シグナル君・・・!?」
顔を上げた瑠璃は息を呑んだ。
折り重なった大木はシグナルが両肩で踏ん張ることによって支えていた。
「―――なぜ・・・だ?」
茫然としていたパルスが、困惑した様子で声を荒げた。
「何故、庇う!? 今ならお前は私の格好の的だ。 なのに、何故そんな隙を私に見せる?」
「解らないか? ぼくは信彦の兄としてプログラムされている」
一瞬、憐れむようなものを瞳に浮かべると、シグナルはパルスを見据えて叫んだ。
「―――でもそんなことより信彦はぼくの兄弟だ。弟だ!! そして瑠璃さんはぼくにとって大切な人なんだ!!
『ぼくを倒す』っていうだけのプログラムに取りつかれたお前さんには解らないだろうがね!!」
ビクッとパルスの体が震えた。
「倒す・・・シグナルを・・・」
茫然と呟きパルスは頭を手で抱える。
―――破壊セヨ!! 破壊!!
「何を破壊するのだ!! シグナルをか!?」
意識の中に響いてくる声に、混乱した様子でパルスは喚く。
「うおおおおお!!」
抗うように振り下ろされたパルスのブレードによって、シグナルの支えていた大木が切り裂かれた。
「パルス・・・」
呆然とシグナルは名前を呼ぶ。
硬く瞳を閉じていたパルスの口元には小さく笑みが浮かんでいた。
「ふん。身動き出来ぬ者を斬る趣味は持ち合わせておらん。それに―――」
顔を上げたパルスは不適に笑み、シグナルを見据えた。
「シグナル、お前はこの『兄』の実力に到底敵わないではないか。ハンデをくれてやるのが本当であろう」
「・・・何!? その言葉、取り消してもらおう!!」
ムッとした表情を浮かべたシグナルはパルスに向かって駆け出して行く。
けれどその直後、信彦のくしゃみによってシグナルはちびシグナルに変身しまい、
壮絶な『兄弟ゲンカ』にようやく幕が下ろされたのだった。
そして音井家は元の〝平和な日常〟を取り戻したかのように思われたのだが――――
『僕がそっちに行くまでパルスを預かっておいてください』
とパルスが見つかったと連絡を入れた教授に正信が返答してきたのだ。
そしてパルスも異論を唱えることはせず、
「私は構わん。シグナルのバグが取れたとき、決着をつけさせてもらおうと思う。バグロボットに勝っても嬉しくないからな」
フッと笑みを浮かべたパルスの視線が、ふと瑠璃の方に向けられた。
「―――それとシグナルにとって大切だという瑠璃にも興味がわいた」
「え?」
「なっ!? お前だってバグ野郎じゃないか!!
それに瑠璃さんに興味があるってどういう意味だよ!?」
きょとんと瑠璃は目を瞬くと、ギョッと目を見開きながらシグナルが叫ぶ。
(・・・ったく・・・)
シグナルと同じようにパルスの発言に目を瞠っていた信彦は、
またケンカを始めそうな二人の雰囲気を見て溜め息をつくと、教授に振り返り問いかけた。
「パルスのプログラム直ってないの?」
「シグナルみたく取り込んじまいやがって、直すのが厄介になってしまったんじゃ」
げんなりとした表情で教授は答える。
こうして音井家の〝平和な日常〟は『兄弟ゲンカ』が加わった事によって、自動的に〝賑やかな日常〟に切り替えられたのだった。
<後書き>
ここまで読んで下さってありがとうございました。
第二章のパルス君登場編。
この話は、過去にあるサイトに貰っていただいたものを大幅に加筆修正したものです。
第三章はリュケイオン編に突入します。
カルマ君を筆頭にメインキャラが、ぞろぞろ出て来るお話です。
よろしければ、次回も読んで見て下さいね。
感想も随時お待ちしております♪
05・3/11 朱臣繭子 拝
後ろには大木。そして正面にはブレードを構えたパルス。
「シグナル――――!!」
今まさにパルスに切り付けられようしていたシグナルの姿を見つけて信彦が叫んだ。
(このままだとシグナル君がっ!!)
助ける方法はないものかと周囲に視線を向けた瑠璃は、来る途中、会って着いて来ていた猫の存在を思い出した。
―――猫に協力をしてもらって、信彦にくしゃみをさせればシグナルは助かる。
すると猫の方も心得ていたらしく、信彦の顔面に向かってガバッと引っ付いた。
パルスのブレードがシグナル目掛けて振り下ろされた瞬間、信彦のくしゃみによって
シグナルはちびシグナルに変形をしていて難を逃れていた。
「何!?」
驚愕の声を上げたパルスの前には「ほえ」と声を洩らしたちびシグナルが転がっている。
「やめろよ、パルス!!」
「そうよ、パルス君!! 兄弟で戦うなんて駄目よ・・・!!」
隠れていた茂みから飛び出して、ちびシグナルの前に駆け寄った信彦の前に、
さらに守るようにして立ちながら瑠璃はパルスを真っ直ぐに見据えた。
すると、ズイと迫るようにしてパルスは近づいてきて、ガッと瑠璃の両肩を掴んできた。
「なっ・・・」
突然の出来事に瑠璃は大きく目を見開く。
(・・・なに!?)
見慣れた顔とはいえ、やはり別人(別ロボット)なのだ。
それにパルスの方がシグナルよりも、少し鋭さを帯びた顔立ちをしている。
(・・・赤い瞳・・・)
至近距離でじっと見つめてくるパルスから、動揺しながらも視線を逸らさずにいた瑠璃はふと気づく。
シグナルの瞳が紫色なのに対してパルスの瞳は赤色をしている。
「違う! シグナルじゃない!」
「はい?」
凝視するようにしていたパルスが、ふと上げた声に瑠璃は呆然とした表情を浮かべた。
「我が好敵手、シグナル
瑠璃の肩からバッと手を放すと、パルスは近くの茂みに向かって歩き出す。
「大丈夫!? 瑠璃姉ちゃん!」
「・・・うん。大丈夫だけど・・・」
背後から走り出てきた信彦に瑠璃は曖昧な表情で頷く。
「出て来いシグナル! 逃げるとは卑怯なり!!」
「・・・目の前で変身したのに・・・」
誰もいない茂みにブレードを振り回すパルスの姿は滑稽としか言いようがない。
「あのね瑠璃ちゃん、パルス君、ど近眼なの」
信彦の腕の中から、ちびシグナルが告げてくる。
やがてパルスは、しらみつぶしに捜してくれるわ、と森の奥に向かって駆け出して行ってしまった。
「設備がないからたいしたチェックは出来ないが、多分シグナルの体にはダメージはない」
教授たちと合流した瑠璃と信彦は、青年シグナルがパルスによってブレードで斬りつけられかけた事を報せた。
けれどパルスのブレードによって切られた筈のシグナルのジャケットは元どおりに修復していた。
それはシグナルに使用されている
―――だが、パルスにはその《特殊金属》が使用されていない。
「シグナル並みの高性能な構造では《特殊金属》でなければ体に負担がかかりすぎる。
したがってパルスは頻繁に休息をとらねばならないのじゃ」
森の中で先程、熟睡していたパルスと遭遇して目からレーザーを撃たれたクリスが、自分の目を指さしながら教授に問いかけた。
「でも人に向かって目からビッてレーザー撃つような非常識なヤツにシグナル勝てるの?」
「今は休眠状態なんじゃろ? 昔のデータによれば、まだしばらくは眠っておる。今のうちに・・・」
教授の言葉はシグナルの声によって遮られた。
「待ちな!! 眠っているところをたたくなんて卑怯者のやることだ!! ぼくのプライドが許さない!」
「しかし、あの高分子カッターとレーザーに勝てるのか!?」
シグナルの雰囲気に圧倒されながらも真城巡査が叫ぶ。
「ぼく自身、ヤツと戦いたくない、といえばウソになる・・・が」
言葉を区切りながら言ったシグナルは、ちらりと瑠璃に視線を向ける。
何ともいえない表情が瑠璃の顔には浮かんでいた。
「それとは別に弟として! 止める、止めてみせる!!」
『兄弟』で戦うことになるのを瑠璃が望んでいないから。
「分かった。お前さんはそういうふうにプログラムされとるからな」
拳を握り締め宣言したシグナルを見つめ、教授が嘆息ながら言った。
「パルスのことは任せよう」
それから暫らくして、梅小路博士が真城巡査によって逮捕され、パルスを止めるためのシグナルの奮闘が始まった。
ブレードで斬りつけようとしてくるパルスに、シグナルはあえて接近していく。
そうすることでブレードの攻撃を封じることが出来る。
だが、代わりにパルスの両手が振り下ろされてきて、シグナルは地面に叩きつけられてしまった。
「しまった―――! 本物の両の手を忘れてた!!」
体を起こしかけたシグナルに、今度は高分子レーザーを撃とうとパルスは迫っていく。
だがレーザーを放ったとき、シグナルは跳躍して避けていて、パルスの視界から姿を消してしまっていた。
「どこに行った、シグナル!?」
声を上げてから、パルスが背後に気配を感じるのと同時に、降り立ったシグナルによって目と体を押さえ込まれてしまった。
「どうだ! レーザーとブレード、使えるものなら使ってみな」
ギリと締め上げるようにシグナルは腕に力を入れるとパルスの髪の毛が放電を発した。
「―――っく!?」
思わずバッとシグナルは腕を放すと、パルスの高分子レーザーが、隠れて様子を見ていた信彦と瑠璃の方に向かって放たれた。
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
慌てて信彦と一緒にレーザーを避けた瑠璃は、二本の大木が折り重なるようにして自分たちに倒れこんでくるのに気づいた。
「うわああああ!!」
「信彦君っ!!」
とっさに瑠璃は信彦を抱え込み、地面に突っ伏す。
「信彦!! 瑠璃さん!!」
ズズン! という衝撃音とともに起こるだろう痛みを覚悟していた瑠璃は、聞こえてきた声にゆっくりと目を開けた。
―――視界に映るプリズムパープルの髪。
「―――・・・シグナル君・・・!?」
顔を上げた瑠璃は息を呑んだ。
折り重なった大木はシグナルが両肩で踏ん張ることによって支えていた。
「―――なぜ・・・だ?」
茫然としていたパルスが、困惑した様子で声を荒げた。
「何故、庇う!? 今ならお前は私の格好の的だ。 なのに、何故そんな隙を私に見せる?」
「解らないか? ぼくは信彦の兄としてプログラムされている」
一瞬、憐れむようなものを瞳に浮かべると、シグナルはパルスを見据えて叫んだ。
「―――でもそんなことより信彦はぼくの兄弟だ。弟だ!! そして瑠璃さんはぼくにとって大切な人なんだ!!
『ぼくを倒す』っていうだけのプログラムに取りつかれたお前さんには解らないだろうがね!!」
ビクッとパルスの体が震えた。
「倒す・・・シグナルを・・・」
茫然と呟きパルスは頭を手で抱える。
―――破壊セヨ!! 破壊!!
「何を破壊するのだ!! シグナルをか!?」
意識の中に響いてくる声に、混乱した様子でパルスは喚く。
「うおおおおお!!」
抗うように振り下ろされたパルスのブレードによって、シグナルの支えていた大木が切り裂かれた。
「パルス・・・」
呆然とシグナルは名前を呼ぶ。
硬く瞳を閉じていたパルスの口元には小さく笑みが浮かんでいた。
「ふん。身動き出来ぬ者を斬る趣味は持ち合わせておらん。それに―――」
顔を上げたパルスは不適に笑み、シグナルを見据えた。
「シグナル、お前はこの『兄』の実力に到底敵わないではないか。ハンデをくれてやるのが本当であろう」
「・・・何!? その言葉、取り消してもらおう!!」
ムッとした表情を浮かべたシグナルはパルスに向かって駆け出して行く。
けれどその直後、信彦のくしゃみによってシグナルはちびシグナルに変身しまい、
壮絶な『兄弟ゲンカ』にようやく幕が下ろされたのだった。
そして音井家は元の〝平和な日常〟を取り戻したかのように思われたのだが――――
『僕がそっちに行くまでパルスを預かっておいてください』
とパルスが見つかったと連絡を入れた教授に正信が返答してきたのだ。
そしてパルスも異論を唱えることはせず、
「私は構わん。シグナルのバグが取れたとき、決着をつけさせてもらおうと思う。バグロボットに勝っても嬉しくないからな」
フッと笑みを浮かべたパルスの視線が、ふと瑠璃の方に向けられた。
「―――それとシグナルにとって大切だという瑠璃にも興味がわいた」
「え?」
「なっ!? お前だってバグ野郎じゃないか!!
それに瑠璃さんに興味があるってどういう意味だよ!?」
きょとんと瑠璃は目を瞬くと、ギョッと目を見開きながらシグナルが叫ぶ。
(・・・ったく・・・)
シグナルと同じようにパルスの発言に目を瞠っていた信彦は、
またケンカを始めそうな二人の雰囲気を見て溜め息をつくと、教授に振り返り問いかけた。
「パルスのプログラム直ってないの?」
「シグナルみたく取り込んじまいやがって、直すのが厄介になってしまったんじゃ」
げんなりとした表情で教授は答える。
こうして音井家の〝平和な日常〟は『兄弟ゲンカ』が加わった事によって、自動的に〝賑やかな日常〟に切り替えられたのだった。
<後書き>
ここまで読んで下さってありがとうございました。
第二章のパルス君登場編。
この話は、過去にあるサイトに貰っていただいたものを大幅に加筆修正したものです。
第三章はリュケイオン編に突入します。
カルマ君を筆頭にメインキャラが、ぞろぞろ出て来るお話です。
よろしければ、次回も読んで見て下さいね。
感想も随時お待ちしております♪
05・3/11 朱臣繭子 拝