第三章『戦いの果てに』
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まずは倒さなければいけない―――――その対象となっていたアトランダムは、いまやエネルギー切れとなり倒れている。
それを見た瞬間、シグナルの中に過ぎったのは・・・・・・。
何年も何年も頭だけにされ封印されて閉じ込められていたら―――――
「ぼくだって同じことするかも・・・」
ぽつりと、呟かれる言葉。
それを、中にいるコードから『甘え』だと否定されるも、シグナルの迷いは消えなかった。
電脳空間でコードは自由に動き回ることができていた。
だが、アトランダムは完全に自由を奪われてしまっていたのだ。
「・・・同情はやめろ―――――同情なんかする暇があったらとどめをさしたらどうなんだ」
ふと、聞こえてきた声にハッとシグナルが視線を向けると、倒れていたアトランダムが身体を起こしてきている。
そして、ふらつきながら地面に手を着き、立ち上がろうとするも、ガクッと座り込んでしまう。
「私をほっておく気か。私を倒すためにコードと融合までして闘ったのだろう?」
茫然と立ち尽くしているシグナルに、口元を歪めながらアトランダムが言い放つ。
「私のエネルギーも底をついた!! 決着をつけたらよかろう!!」
「・・・・・・」
『ヤツは倒されることを望んでいる!! やれ!! とどめをさせシグナル!!』
アトランダムの言葉に対し、動く様子のないシグナルに、中からコードが叫ぶ。
―――――駄目!!
刹那、座り込んでしまっていたアトランダムに縋りついてきたのはユーロパだった。
「ユーロパ!!」
「やめて!! アトランダム!! お願いだから!!」
茫然と見下ろしてくるアトランダムに、ユーロパが必死で訴える。
「逃げちゃ駄目よ!! もう復讐のために争うなんてやめましょう!! こんなんじゃ何も解決できない!!」
沈黙が訪れる。パルス達と一緒に展望台に到着した瑠璃は、信彦と一緒にじっとその光景を見つめていた。
「お願い、シグナル・・・コード兄様。もう・・・やめて・・・」
ユーロパの切なげな視線が二人に向けられる。
静かにシグナルが目を伏せると、パァンという音とともに白銀の光が瞬き、コードとの融合が解除される。
「ぼくは・・・信彦やぼくらにもう危害を加えないって約束してくれれば」
「ま・・・かわいい妹の頼みなら―――――」
淡々とシグナルが答えると、嘆息交じりにコードが頷く。
「ありがとう・・・」
礼を言うと張り詰めていた気持ちが一気に崩れたのか、倒れ込みそうになったユーロパの肩を、そっと支えたアトランダムが僅かに視線を逸らしながら「ふぅ」と息を吐き出した。
―――――復讐という名の争いは終わったのだ。そう、皆が思った瞬間だった。
『くっくっくっ・・・ロボット同士でお友達ごっこかい。君も人間くさい音井のロボット連中に毒されたようだね――――――――――・・・』
どこからか聞こえてきた大音声に、アトランダムが弾かれたように顔を上げる。
「この声、Dr.クエーサー!」
傍らに居るユーロパも声に聞き覚えがあったらしく「Dr.クエーサー!?」と顔を蒼白にしながら呟く。
Dr.クエーサーというのは確か、みのるの養母の弟であり、頭脳集団のロボット工学者でもある人物ではなかっただろうか。
二人の口から出た名前に瑠璃が眉を顰めると、声の主の姿を捜すようにアトランダムが立ち上がり叫んだ。
「どこだ!!? どこから声を出している!!」
『君のような旧式のロボットを私が信用するとでも思ったのかい。
ちゃんとこちらからモニターさせてもらってたのさ。君の新しい体の中のモニターを通して』
嘲りの言葉とともに返された答えにアトランダムは、ハッと自身の体に手を当てる。
新たな体を製作したのはDr.クエーサーだ。
だからこそ、こんな仕掛けを施す事が出来たのだ。
『おかげさまでMIRAのデータをパーフェクトに取ることができた。ごくろうさん、君の役目は終わった。
そこにいるロボット諸君と休息をとるがいい。永遠に』
声が途切れた瞬間、体内でカチッと何かのスイッチが入る音が響いた。
まさか―――――音の正体を悟ると同時に込み上げてきた激情のままにアトランダムは絶叫した。
「クェェサァァァ! よくもよくもよくもよくもよくもよくも――――――――――!!」
「アトランダム!?」
急にどうしたというのか、ユーロパが問うように名を呼ぶと、アトランダムの口から信じがたい言葉が宣告される。
「あの男!! 私の体に爆弾を仕掛けている!!」
「爆弾? 自分の造ったロボットにか?」
唖然とした表情でパルスが言う。
「そんな・・・嘘だろ!?」
茫然とアトランダムを見つめ、シグナルが声を上げる。
「嘘なものか!? 確かに今スイッチが入るのを聞いた!!」
両の拳を握り締めながら硬く目を閉じ、アトランダムは肩を震わせる。
「Dr.クエーサー!! ここまで、ここまで・・・!! 私を道具扱いするのか・・・!」
「いつ爆発するのか解るか!?」
シグナルの問いに対し、5分後、10分後・・・もしかしたらあと5秒かもしれん、とアトランダムの口から淡々とカウントが紡がれる。
「私から離れた方がいい―――――巻き添えをくう・・・」
「そんなの嫌よぉぉ!!」
周囲を見回し、言ったアトランダムにユーロパが泣き縋る。
「諦めんなよ!! 諦めたら駄目だ!!」
シグナルが声を上げ、なんとかする手段はないものかと、考えを纏めようとするかのように歩き回る。
それを見て、瑠璃はゆっくりと目を伏せると、静かに口を開き言った。
「シグナル君、爆弾の場所を見つけることが出来たらなんとかなるかもしれないわ」
「たぶん左胸のサブ電脳の所!! 体の仕上げの時それらしいのを見たわ!!」
僅かに見出せた希望の言葉に、ユーロパが反応を示す。
が、すぐにその表情はまた翳りのあるものになってしまう。
「あ・・・でもどうやって取り出したら・・・」
「大丈夫よ、ユーロパさん。MIRAなら自己修復できるわ」
瑠璃が告げると、それにシグナルが頷く。
そして、パルスが「だからこじあけても大丈夫だろう」と言葉を続けると、俄かに困惑した表情でアトランダムが口を開いた。
「お前達、なぜそこまで・・・」
「お前に爆発された日にゃ夢見が悪そうだし」
腕を組みながら、シグナルがアトランダムを見据える。
「それに―――――ぼく達は道具なんかじゃないんだ。こんなこと許しちゃおけない」
真っ直ぐな瞳できっぱりと言い切ったシグナルを、アトランダムは目を瞠り見つめる。
「ふん・・・そうかもしれん・・・」
暫しの沈黙ののち、ポツリと言葉を洩らしたとき、アトランダムの顔には何かを決心したような表情が浮かんでいた。
それならば、と握り締められていた左手を掲げると、バッと左胸に翳していく。
「人の手はわずらわせん!!」
咆哮と同時に、自身の体を焼き出したアトランダムの姿に、一同は絶句する。
やがて、アトランダムは皮膚の下の機械が剥きだしになると、そこに手を突っ込み探り当てた爆弾を引き千切りにかかっていく。
体内に仕掛けられていたのは、指先で摘めるほどの小型爆弾だった。
「これか・・・」
爆弾を確認した時、既に限界にきていたアトランダムの体は、そのまま前のめりに傾いでいた。
「アトランダム!!」
バタッと倒れ伏したアトランダムのもとにユーロパが駆け寄る。
その時、床に投げ出されたアトランダムの左手から、フッと爆弾が滑り落ちた。
コロンコロンと展望台の床を転がる爆弾に気づいた瑠璃は目を見開く。
瞬間、回収しなければと走り出るも、爆弾をキャッチしたのは、こちらに振り返ると同時に跳躍してきたユーロパだった。
身を滑らせながら手の中の爆弾のカウントを確認したユーロパは愕然とする。
「これは!!」
あと5秒で爆発!?
この体勢からじゃ投げている暇が・・・
そう思った瞬間、ユーロパの中にある考えが閃いた。
それなら・・・
体を起こすと同時に爆弾を持ったまま、展望台の向こうに広がる海を目指しユーロパは走り出す。
「ユーロパさん!!」
自らを彼女は犠牲にするつもりなのか!?
瑠璃の叫びに、エララの悲鳴とシグナル達の声が重なる。
ふわ、と微笑を浮かべると、胸にしっかりと爆弾を抱えたまま、ユーロパは海に飛び込んでいく。
刹那、シグナル達の間を黒衣の影が駆け抜けた。
それは、力尽き動けなくなっていたはずのアトランダムだった。
落下していく中でユーロパは、ふいに自分の腕を握り締めてきた力強い手の感触に、ハッと顔を向け、その存在を確かめた瞬間、驚愕の声を上げていた。
「アトランダム!! なんでくるの!! 貴方・・・せっかく助かったのに」
「いつも一緒だといったのは君だ、ユーロパ」
しっかりと彼女の体を抱きしめアトランダムは囁いた。
「アトランダム・・・」
ユーロパの口から彼の名前が紡ぎ出される。
―――――そして二人が一緒に海に沈んだ瞬間、海中で爆弾は起爆し、全ては終わった。
それを見た瞬間、シグナルの中に過ぎったのは・・・・・・。
何年も何年も頭だけにされ封印されて閉じ込められていたら―――――
「ぼくだって同じことするかも・・・」
ぽつりと、呟かれる言葉。
それを、中にいるコードから『甘え』だと否定されるも、シグナルの迷いは消えなかった。
電脳空間でコードは自由に動き回ることができていた。
だが、アトランダムは完全に自由を奪われてしまっていたのだ。
「・・・同情はやめろ―――――同情なんかする暇があったらとどめをさしたらどうなんだ」
ふと、聞こえてきた声にハッとシグナルが視線を向けると、倒れていたアトランダムが身体を起こしてきている。
そして、ふらつきながら地面に手を着き、立ち上がろうとするも、ガクッと座り込んでしまう。
「私をほっておく気か。私を倒すためにコードと融合までして闘ったのだろう?」
茫然と立ち尽くしているシグナルに、口元を歪めながらアトランダムが言い放つ。
「私のエネルギーも底をついた!! 決着をつけたらよかろう!!」
「・・・・・・」
『ヤツは倒されることを望んでいる!! やれ!! とどめをさせシグナル!!』
アトランダムの言葉に対し、動く様子のないシグナルに、中からコードが叫ぶ。
―――――駄目!!
刹那、座り込んでしまっていたアトランダムに縋りついてきたのはユーロパだった。
「ユーロパ!!」
「やめて!! アトランダム!! お願いだから!!」
茫然と見下ろしてくるアトランダムに、ユーロパが必死で訴える。
「逃げちゃ駄目よ!! もう復讐のために争うなんてやめましょう!! こんなんじゃ何も解決できない!!」
沈黙が訪れる。パルス達と一緒に展望台に到着した瑠璃は、信彦と一緒にじっとその光景を見つめていた。
「お願い、シグナル・・・コード兄様。もう・・・やめて・・・」
ユーロパの切なげな視線が二人に向けられる。
静かにシグナルが目を伏せると、パァンという音とともに白銀の光が瞬き、コードとの融合が解除される。
「ぼくは・・・信彦やぼくらにもう危害を加えないって約束してくれれば」
「ま・・・かわいい妹の頼みなら―――――」
淡々とシグナルが答えると、嘆息交じりにコードが頷く。
「ありがとう・・・」
礼を言うと張り詰めていた気持ちが一気に崩れたのか、倒れ込みそうになったユーロパの肩を、そっと支えたアトランダムが僅かに視線を逸らしながら「ふぅ」と息を吐き出した。
―――――復讐という名の争いは終わったのだ。そう、皆が思った瞬間だった。
『くっくっくっ・・・ロボット同士でお友達ごっこかい。君も人間くさい音井のロボット連中に毒されたようだね――――――――――・・・』
どこからか聞こえてきた大音声に、アトランダムが弾かれたように顔を上げる。
「この声、Dr.クエーサー!」
傍らに居るユーロパも声に聞き覚えがあったらしく「Dr.クエーサー!?」と顔を蒼白にしながら呟く。
Dr.クエーサーというのは確か、みのるの養母の弟であり、頭脳集団のロボット工学者でもある人物ではなかっただろうか。
二人の口から出た名前に瑠璃が眉を顰めると、声の主の姿を捜すようにアトランダムが立ち上がり叫んだ。
「どこだ!!? どこから声を出している!!」
『君のような旧式のロボットを私が信用するとでも思ったのかい。
ちゃんとこちらからモニターさせてもらってたのさ。君の新しい体の中のモニターを通して』
嘲りの言葉とともに返された答えにアトランダムは、ハッと自身の体に手を当てる。
新たな体を製作したのはDr.クエーサーだ。
だからこそ、こんな仕掛けを施す事が出来たのだ。
『おかげさまでMIRAのデータをパーフェクトに取ることができた。ごくろうさん、君の役目は終わった。
そこにいるロボット諸君と休息をとるがいい。永遠に』
声が途切れた瞬間、体内でカチッと何かのスイッチが入る音が響いた。
まさか―――――音の正体を悟ると同時に込み上げてきた激情のままにアトランダムは絶叫した。
「クェェサァァァ! よくもよくもよくもよくもよくもよくも――――――――――!!」
「アトランダム!?」
急にどうしたというのか、ユーロパが問うように名を呼ぶと、アトランダムの口から信じがたい言葉が宣告される。
「あの男!! 私の体に爆弾を仕掛けている!!」
「爆弾? 自分の造ったロボットにか?」
唖然とした表情でパルスが言う。
「そんな・・・嘘だろ!?」
茫然とアトランダムを見つめ、シグナルが声を上げる。
「嘘なものか!? 確かに今スイッチが入るのを聞いた!!」
両の拳を握り締めながら硬く目を閉じ、アトランダムは肩を震わせる。
「Dr.クエーサー!! ここまで、ここまで・・・!! 私を道具扱いするのか・・・!」
「いつ爆発するのか解るか!?」
シグナルの問いに対し、5分後、10分後・・・もしかしたらあと5秒かもしれん、とアトランダムの口から淡々とカウントが紡がれる。
「私から離れた方がいい―――――巻き添えをくう・・・」
「そんなの嫌よぉぉ!!」
周囲を見回し、言ったアトランダムにユーロパが泣き縋る。
「諦めんなよ!! 諦めたら駄目だ!!」
シグナルが声を上げ、なんとかする手段はないものかと、考えを纏めようとするかのように歩き回る。
それを見て、瑠璃はゆっくりと目を伏せると、静かに口を開き言った。
「シグナル君、爆弾の場所を見つけることが出来たらなんとかなるかもしれないわ」
「たぶん左胸のサブ電脳の所!! 体の仕上げの時それらしいのを見たわ!!」
僅かに見出せた希望の言葉に、ユーロパが反応を示す。
が、すぐにその表情はまた翳りのあるものになってしまう。
「あ・・・でもどうやって取り出したら・・・」
「大丈夫よ、ユーロパさん。MIRAなら自己修復できるわ」
瑠璃が告げると、それにシグナルが頷く。
そして、パルスが「だからこじあけても大丈夫だろう」と言葉を続けると、俄かに困惑した表情でアトランダムが口を開いた。
「お前達、なぜそこまで・・・」
「お前に爆発された日にゃ夢見が悪そうだし」
腕を組みながら、シグナルがアトランダムを見据える。
「それに―――――ぼく達は道具なんかじゃないんだ。こんなこと許しちゃおけない」
真っ直ぐな瞳できっぱりと言い切ったシグナルを、アトランダムは目を瞠り見つめる。
「ふん・・・そうかもしれん・・・」
暫しの沈黙ののち、ポツリと言葉を洩らしたとき、アトランダムの顔には何かを決心したような表情が浮かんでいた。
それならば、と握り締められていた左手を掲げると、バッと左胸に翳していく。
「人の手はわずらわせん!!」
咆哮と同時に、自身の体を焼き出したアトランダムの姿に、一同は絶句する。
やがて、アトランダムは皮膚の下の機械が剥きだしになると、そこに手を突っ込み探り当てた爆弾を引き千切りにかかっていく。
体内に仕掛けられていたのは、指先で摘めるほどの小型爆弾だった。
「これか・・・」
爆弾を確認した時、既に限界にきていたアトランダムの体は、そのまま前のめりに傾いでいた。
「アトランダム!!」
バタッと倒れ伏したアトランダムのもとにユーロパが駆け寄る。
その時、床に投げ出されたアトランダムの左手から、フッと爆弾が滑り落ちた。
コロンコロンと展望台の床を転がる爆弾に気づいた瑠璃は目を見開く。
瞬間、回収しなければと走り出るも、爆弾をキャッチしたのは、こちらに振り返ると同時に跳躍してきたユーロパだった。
身を滑らせながら手の中の爆弾のカウントを確認したユーロパは愕然とする。
「これは!!」
あと5秒で爆発!?
この体勢からじゃ投げている暇が・・・
そう思った瞬間、ユーロパの中にある考えが閃いた。
それなら・・・
体を起こすと同時に爆弾を持ったまま、展望台の向こうに広がる海を目指しユーロパは走り出す。
「ユーロパさん!!」
自らを彼女は犠牲にするつもりなのか!?
瑠璃の叫びに、エララの悲鳴とシグナル達の声が重なる。
ふわ、と微笑を浮かべると、胸にしっかりと爆弾を抱えたまま、ユーロパは海に飛び込んでいく。
刹那、シグナル達の間を黒衣の影が駆け抜けた。
それは、力尽き動けなくなっていたはずのアトランダムだった。
落下していく中でユーロパは、ふいに自分の腕を握り締めてきた力強い手の感触に、ハッと顔を向け、その存在を確かめた瞬間、驚愕の声を上げていた。
「アトランダム!! なんでくるの!! 貴方・・・せっかく助かったのに」
「いつも一緒だといったのは君だ、ユーロパ」
しっかりと彼女の体を抱きしめアトランダムは囁いた。
「アトランダム・・・」
ユーロパの口から彼の名前が紡ぎ出される。
―――――そして二人が一緒に海に沈んだ瞬間、海中で爆弾は起爆し、全ては終わった。