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第三章『戦いの果てに』

『TWINSIGNAL夢』名前変換設定。

電脳世界へ・・・。
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 リュケイオンが手動に切り替わってから、カルマの件に決着がついた頃―――――コントロールルームには外部からの通信が入ってきていた。




『お―――――っっ!! たぶん綺麗なお嬢さんっ!! すまないけど港、開けてくれませーん?』




 思わず「はぁ?」と応答したクリスに困惑の声を上げさせる通信を寄越してきたのは、リュケイオンに到着したオラトリオだった。

「開門♪」

 その後、港に入ったオラトリオはそこで信彦達と会い、一緒にメインコントロールルームへとやって来たのだが――――――。

「信彦!! あんたら無事だったのっ」

「クリス姉ちゃん! 瑠璃姉ちゃん!」

 信彦の元にクリスが駆け寄っていくと、片腕にマリエルを抱きかかえながら入室して来たオラトリオは満面の笑みを浮かべ、空いていたほうの手をクリスの肩に伸ばし「お嬢さんよかったらお茶でも」とナンパを行なったのだ。

 だが、クリスはオラトリオの手をパンッと撥ね退けると「あんた誰よ?」と半眼で見上げる。

 彼の風貌は一言で言うなら伊達男。

 かなりの長身でアイボリーのコートを身に纏っており、撫で付けたダーティ・ブロンドの上には深紅のトルコ帽子をかぶっている。

「・・・オラトリオ、君?」

 確認するように、オラトリオに呼びかけたのは瑠璃だった。

みのるから話に聞いていたのだ―――――女好きのロボットがいると。

もちろん、聞いたのはそれだけではないのだが・・・・・。

 一方で、オラトリオのほうもみのるから瑠璃のことを聞いていたらしい。

 クリスに振られてしまい、一瞬、落ち込んだような様子をみせていたものの、すぐに嬉しそうな笑みを浮べ瑠璃に振り返った。

「お! もしかして、瑠璃お嬢さんですか?」

「・・・えぇ。あの、確かオラトリオ君は情報処理が得意なのよね? さすがに、リュケイオンのコントロールをする事までは私にもクリスちゃんにもできないから、オラトリオ君に皆のこと捜してもらえると助かるんだけど・・・」

彼自身の一般的に公開されている能力のことも、話に聞いてはいたが、この場にいない他の皆がどうしているのか―――――という不安も相俟って、何ともいえない複雑な表情で瑠璃はオラトリオを見上げ、頼みを告げる。

 すると、そんな瑠璃の心中を察したのか、抱きかかえていたマリエルを下ろすと、わざとらしくおどけたようなにしながら、恭しく片手を胸の前に手をあててオラトリオは言った。

瑠璃お嬢さん、俺の事は呼び捨てにして下さって構いやせんよ。それと、どうぞご安心を。―――――お嬢さんの願いを叶える為に俺は来たんですから」





 カタカタとキーボードをいじり、リュケイオンのコントロールが手動に切り替わったままなのを確認すると、オラトリオは口元に手を当てニヤリと笑みを浮かべる。

 その様子をクリスが後ろから胡乱げな表情で覗き見ていたのだが、次の瞬間起こった出来事に目を丸くすると、呆然とした表情で固まった。

「カルマ並みにはコントロールできねーけどね」

 そう言いながら、猛スピードでオラトリオがキーボードの操作を始めたのだ。

 手元を目で捉える事は出来ないが、モニター画面を見ている限りでは、間違いなく正確に、捜索は行なわれているようだ。

 暫らくの間、その光景を瑠璃も目を見開きながら見つめていたのだが、ふと、少し離れた場所に一人で立っていたユーロパの元にエララが近寄っていったのに気づき、そちらに視線を向ける。

 現在、シグナルはアトランダムと一人で闘っている。

 詳しい話は聞いていないが、シグナルがアトランダムを食い止めている中、港に逃げる際に信彦達は、結果的には自分達を助ける行動を取ったというユーロパも一緒に連れてきていた。

 とても仲の良い姉妹だったという二人。

 今回の事は少しずつのすれ違いが原因だったのではないだろうか。

「おっ、ほら正信めっけたぞ」

「えっ、どこ? 親父!!」

 オラトリオの言葉に、信彦がモニター画面を覗き込む。

 ハッと瑠璃も視線を戻し、反応が現れている場所を確認すると、どうやら正信は『第2救護室』にいるらしい。

「雷電、ハーモニー、聞こえるか?」

 別行動を取って、正信達を捜していたハーモニーと雷電に、無線機でオラトリオは呼びかけ、居場所を伝えた上でこちらに連れてくるようにと指示を出す。

 そして、「さて、次はパルスか」と次の捜索を行なおうとしたのだが―――――。

「オラトリオ」

 エララと一緒に歩み寄ってきたユーロパが、そっとオラトリオの肩を叩くと囁くような声で言ったのだ。

「アトランダム――――先に捜してくれませんか?」

「アトランダム!?」

 聞こえてきた言葉に、オラトリオは驚愕の声を上げる。

 だが、次の瞬間には「ま、いっか」と呟き、アトランダムの捜索を開始した。

 いずれにせよ、シグナルの応援に行くために居場所を調べる必要があったからだった。

 そうして、また先程と同様にかなりのスピードでオラトリオが捜索を行なって、アトランダムを発見した時―――――雷電とハーモニーに先導されてやって来た正信と、カルマを抱えながら自力で戻って来たパルスが、メインコントロールルームに姿を現したのだった。





「父さんだ―――っ!!」

 感極まった表情で、がしっと正信に向かって信彦が抱きついていく。

 だが、羽織っている白衣の下に見える正信の上半身には包帯が巻かれており、右腕も骨折しているらしく吊っている状態。

 そこに勢いよく抱きつかれて受けた衝撃は、半端なものではなかったようで、いつもの余裕のある表情は崩れ、半涙目状態となってしまいながら正信が口を開いた。

「の・・・のぶひこ、すまん・・・父さん、怪我してるんだ」

「ごめーん」

 我に返り正信から離れた信彦が、呆然としながら謝罪の言葉を返す。

 その一方で、コントロールルームの椅子にカルマを寝かせたパルスから、「カルマは冬眠モードに入っている」と聞かされた瑠璃もひとまずの安堵の笑みを浮かべていた。

「ありがとう、パルス君」

「―――――あぁ」

 瑠璃の笑みを見て、微かにパルスも口元を綻ばせる。

 が、すぐにまた表情を引き締めると、踵を返しながら言った。

「では、シグナルを手助けに行って来る」

「ちょっとパルス!! 怪我してるじゃない! エネルギーももうないんじゃない!!?」

 パルスの言葉にクリスが眉を顰め詰め寄る。

「時間がない」

 それに対し、肩越しに振り返りながらパルスは答えると「行くぞ!!」と雷電に呼びかけ、ビュッと弾丸の勢いでコントロールルームを飛出して行く。

「ちょっ、ちょっと待ってください、パルスさん」

 だが、シグナル達の居場所までの路をまだ雷電は記憶途中だった。

 そして、「すまん!! 場所は何処だ?」とパルスが引き返してくると、記憶し終えた雷電も今度は一緒にコントロールルームを出て行ったのだが―――――。

(え!? 信彦君!?)

 雷電が出た直後、その背後に小走りで駆け寄った信彦が、背に飛び乗ったのだ。

 感覚があまりないのか、そのまま気づくことなく雷電はパルスと共に走り出していく。

「・・・・・・!」

 それを見て反射的に、正信に知らせなければと振り返った瑠璃は、ふと目を見開く。

 モニター画面の傍に立っていたエララとユーロパがいつの間に姿を消している。

 おそらくは正信達が来てから皆の視線がそちらに向いている隙に二人はコントロールルームから出たのだろう。

 だとすれば向かうのは―――――F棟 北象限 第5通路

 アトランダムとシグナルが居る場所。

 正信はオラトリオと話をしている最中である為に、信彦と姉妹の姿が見当たらなくなっている事に気づいていない。

 クリスも話を聞いているので同様だ。

「―――――・・・・・っ」

 結局、めぐらせた視線をパルス達が出て行った扉の穴の方に戻すと同時に、そこから瑠璃も飛び出していた。

 ――――姉妹と彼らが向かった場所に自分も行く為に。

 だが、瑠璃が走り出そうとした瞬間、呼び止めてきた微かな声があった。

 ギク、と思わず肩を震わせ振り返ると、エプシロンを抱いたマリエルが穴から出てきている。

「マ・・・マリエルちゃん?」

「皆、仲良くなれるといいね。気をつけてね、瑠璃おねえちゃん」

 呆然と瑠璃が名前を呟くと、小さな笑みを浮べてマリエルは口を開いた。

 子供は大人よりも純粋で、そこに隠された「真実」と「想い」を、見極める力を持っている。

 ほんの数時間離れていた間にマリエルなりに事情を理解し―――――気づいたのだろう。

 今回の出来事は、少しずつのすれ違いによって起こってしまったものだと。

「―――――ありがとう、マリエルちゃん」

 僅かに目を瞠ると、静かな微笑を瑠璃はマリエルに返した。

 そして、そのまま背を向けると駆け出して行く。





 例え全力で走っても普通ならロボットであるパルス達に瑠璃が追いつく事は不可能だ。

 だが、おそらくは雷電の背中に信彦が乗っていたというのを気づいた後、一緒に連れて行く上で振り落とさないようにと疾走するペースが多少は落ちていたのだろう。

 前方に見える角を右に曲がると―――――F棟 北象限 第5通路に出る。

 瑠璃がパルス達の姿を見つけたのは、丁度、角を曲がっていく瞬間だった。

 そして、それを追いかける形で瑠璃も角を曲がると、そこでアトランダムと対峙するシグナルの姿を見て、思わず声を上げた。

 あれは―――――

「・・・シグナル君!?」

 全身が白銀に包まれており、両腕には盾のようなものを装備している。

 別れた時とは異なる姿に変貌を遂げているシグナルに、パルス達も茫然となっていたものの、そこに聞こえてきた瑠璃の声にハッと振り返ると、言葉を紡ごうとする。

 だが、先に言葉を紡いだのは、彼らよりも前にこの場に来ていたエララだった。

「駄目・・・シグナルさんに近寄らないで・・・」

「エララさん!!」

 一体、何があったというのか。

 ふらっ・・・と身体をよろめかせながら、こちらに来たエララに信彦が駆け寄る。

 容態を見るべく瑠璃もエララの傍に向かうと、パルスが叫んだ。

「これはどういうことだ!?」

「アトランダムさんの洗脳プログラムがコード兄様との融合によって、プログラムが暴走を引き起こしているんです」

『コード』―――――というのは、ラヴェンダーが教授からシグナルに渡してほしいと預かった〝あるもの〟だった。

 それをさらにオラトリオがリュケイオンまで運んできたのだ。

                    
〝鳥型ロボットAエー-ナンバーズAーCエーシー<CODE>コード


 最初、コードはAエー-ナンバーズAーBエービー<BUNDLE>バンドルを補佐する為に造られた存在だったが、バンドルが使い物にならなかったためにお蔵入りになってしまっていた。

 だがその後、コードは音井教授の手により改良され、シグナルの補助サポートロボットとなったのだ。

 そして、そんな彼のことをエララが『兄』と呼んだのは、製作者が同じカシオペア博士であるからだった。



「エララちゃん、その怪我はシグナル君に・・・?」

 事情を口にしたエララに、眉を寄せながら瑠璃が尋ねた。

「・・・はい。誰も見分けられないらしくて・・・」

「そんな・・・エララさんまでわかんないなんて」

 信彦が茫然とした声を洩らし、シグナルを見据える。

 俺の事もわからないのかよ!! と声を上げ、シグナルの名を呼ぼうとする。

 だが刹那、響いたのは信彦のくしゃみだった。

 シグナルはちびに変わり、同時に融合していたコードも分離する。

「な・・・なんじゃい!! お前は―――――っ」

 突然の出来事にコードが唖然とした声を上げ、目を回しているちびシグナルを睨みつけると「起きんかいっ」と口ばしで突きにかかっていく。

 その光景を見ている限り、幸いシグナルの暴走は止まったようだった。

 アトランダムも信彦のくしゃみによって無力化されている。

「よし!! 今のうちに・・・」 

 視線をめぐらせたパルスが、真剣な表情で口を開く。

 が、それと同時にまた信彦がくしゃみをしてしまい、大きくなったシグナルは意識がない為にそのままバタッと地面に倒れ込む。

「シグナル君!!」

「くそ!! もう一度!!」

 瑠璃が声を上げると、バサッと羽根を広げたコードがシグナルの上に舞い降りる。

 すると、融合しようとしたコードに「無駄だ」とアトランダムが制するように呼びかけてきた。

「融合すればまた同じ事の繰り返しだぞ。私が送ったプログラムを解除せんことにはな」

「チィ・・・!!」

 唸り声を洩らしたコードに、アトランダムは蔑むような笑みを向ける。

「補助ロボットの限界だな。君はシグナルという触媒がなければ何もできまい」

 動きを封じられてしまったコードから、アトランダムの視線が信彦に移動する。

 クルッと振り返ってきたアトランダムに信彦がギクッと身体を震わせる。

「残るは―――――信彦を封じる・・・」

「させるか!!」

 パルスがブレードを振りかざしながら雷電と共に走り出す。

 が、両手を広げてきたアトランダムから衝撃波を受けて、壁に叩きつけられてしまう。

「やめて―――――!! アトランダム!!」

瑠璃さん! 信彦さんを連れて逃げて下さい!!」

 ユーロパが叫び声を上げると、エララがアトランダムに向かって、ドン!! と体当たりをする。

「ごちゃごちゃと・・・うるさい!!」

「エララちゃん!?」

 アトランダムが腕を振り、エララを弾き飛ばす。

 一瞬、瑠璃は動きを止めてしまうも、逃げなければ、と握った信彦の手を引く。

 だが、恐怖で足が竦んでしまっている為に、信彦は動く事が出来ず、こちらにアトランダムが迫ってくる。

「・・・っく!!」

 とっさに瑠璃は―――――火事場の底力というのだろうか―――――信彦を抱き上げて走り出した。

「面倒だ。―――――二人まとめて片付けてやろう」

 顔を顰めながら呟くと同時に突き出されたアトランダムの手に光弾が現れる。

「あ・・・」

 擦れた悲鳴が信彦の喉から漏れた。

 ―――――このままでは自分も瑠璃も死んでしまう。

「助けてシグナル!!」

 ギュッと硬く目を閉じると、声の限りに信彦は叫んでいた。


刹那、聞こえてきた―――――ドカッという音。

「シグナル君・・・」

 ハッと足を止めた瑠璃が振り返ると、シグナルの蹴りを受けてアトランダムが身体を仰け反らせていくところだった。

 肩で呼吸をしながらも、しっかりとシグナルはアトランダムを見据えて立っている。

 その姿を見て「シグナル!!」と目を開けた信彦が歓声を上げる。

 そして、抱えていた信彦を瑠璃が下ろし、倒れ込んでしまっていたパルス達がなんとか起き上がって二人の傍に向かうと、体勢を直したアトランダムの口からは愕然とした声が上がった。

「シグナル貴様・・・なぜ動ける!! 私の洗脳プログラムとエネルギー不足で機能停止していたはず!!」

「っくしょう。頭がガンガンすんのはそのせいかよ」

 頭を手で押さえ、シグナルが呻く。

 が、ふと手の下に触れた髪に違和感を覚えたらしく、「あれ」と声を洩らし、背を振り返る。

「髪が・・・元に戻ってる?」

 コードとの融合によって姿が変わった際に髪の毛も修復されたのだが、その時シグナル自身の意識はなかった為にその事を覚えていないのだ。

「まったく世話がやけるガキだぜ。ようやく目を覚ましたか」

―――――いったいなんで? と眉を寄せるシグナルの肩に、バサッという羽音とともにコードが降り立つ。

「覚えてないだろうからもう一度言う! 俺様はA-ナンバーズA-C<CODE> お前の補助ロボットだ!!」

「補助―――――? そんなものぼくは・・・」

 ふいに現れた横柄な口調のメタル・バードを、シグナルは目を瞠り呆然と見つめていたが、『補助』という言葉を聞くと憮然とした表情で口を開いた。

「バカもん!! 今のお前がアトランダムにかなうもんか!!」

 叱責によって言葉を遮られるも、どうやって補助をおこなうのか、とシグナルは抗議を続けようとする。

 それに対し、「うるさい!!」とコードは一喝すると、バッと羽根を広げていく。

「聞け!! お前の中のMIRAの鼓動を!! 合わせろ!! MIRAのリズムに!! そしてお前は最強となる!!」

 紅い光をコードが纏い、その影がシグナルを覆うように広がると、アトランダムが苛立ちの声を上げた。

「いかん!! また融合するつもりか!!」

 舌打ちと同時に、バッと手を突き出す。

「あっ、危ないシグナル!!」

 信彦が叫ぶ。それは先ほど、信彦と瑠璃にも向けられたものだ。

 ―――――光弾が放たれ、爆風が吹き荒れる。

「やったか?」

正面を睨むようにしながら、アトランダムが呟く。

 と、直後その顔に愕然とした表情が浮んだ。

 コードと融合を果たし、さらに瞬時に両腕の盾のようなものを交差させて防御をおこなったおかげで、シグナルは全くの無傷だったのだ。

「す・・・すげぇ・・・直撃だったのに―――――なんともない!?」

 握り締めた両手に視線を落とし、呆然と声を洩らしたシグナルに、中にいるコードが呆れたような口調で言う。

『だから最強だと言ったろーが。さぁ!! シグナル、さっさとアトランダムを倒してしまえ!!』

「倒す―――――・・・」

 ゆっくりと顔を上げたシグナルが、その先に立つアトランダムの姿を捉える。

 ―――――まずはアトランダムを倒さなければいけない。

 ハッとしたように目を見開くと、シグナルは口を引き結び、アトランダムに向かって宣告する。

「行くぞ!! アトランダム!!」

「形勢逆転というとこか・・・」

 ザッと体勢を低くして、身構えながらアトランダムが唸る。

「―――――だが・・・ただではやられん!!」

 次の瞬間、勢いよく向かってきたアトランダムの拳が繰り出されてくる。

 が、スッと後退してシグナルはそれを片手で受け止めると、同時に反対の手を腕に伸ばし、アトランダムを壁に向かって叩きつけていた。

「見える・・・アトランダムの動きが見える!!」

 暴走していたときよりパワーは落ちているが、シグナルの動き自体はスマートになっているのだ。

「ならば!!」

 体を起こしたアトランダムが両手を突き出し、連続で光弾を撃ち放ってくる。

「ひぇ―――――!!」

 それにはなすすべもなく、シグナルは通路を走り出す。

 近づく事が出来ない以上、このような狭い所では戦闘は不利となってしまう。

『外に誘い出せ!! 近くに展望台がある!!』

「展望台だな―――――!?」

 コードの言葉に従い、ダッとそちらの路にシグナルは駆け出していく。

「逃げるか、シグナル!!」

 誘導とは気づいていないアトランダムが、激昂しながら後を追う。

 その姿が見えなくなってから、最初に口を開いたのはパルスだった。

「あいつら何処に行ったのだ?」

「あっちは展望台ですね」

 パルスの問いに雷電が答える。

 中からのコードの声はシグナル以外には聞こえておらず、またシグナル自身の叫び声も、立て続けに起きる爆音にかき消され、パルス達の耳には届いていなかったのだ。

「アトランダム・・・」

 呟くと同時にユーロパが、展望台に向かって走り出す。

「待って、ユーロパ!!」

 ハッと気づき振り返ったエララが制止の声を掛けるも、それは聞き届けられず、彼女もまた妹を追って駆け出していってしまう。

 それを見て「私たちも行くぞ!!」と言い放ったのはパルスだった。

「あ、あの・・・信彦さんと瑠璃さんは・・・」

「どうせ、置いていっても着いてくるだろう」

 困惑した様子で、確認するように口を開いた雷電に、もはや分かりきった事というふうに、にべもない言葉をパルスが返す。

 そして、瑠璃と視線を交わした信彦が「パルス、わかってるじゃん」と頷くと、残っていた四人で展望台を目指すこととなったのだった。
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