第六章『祭りの序曲』
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「一つ目。キミが持つ〝怠惰〟が吸血鬼の中でもっとも強いこと。ただの猫に見えてもサーヴァンプ達の長男だからね。そして〝ミストレス〟である彼女と『誓約』を結んでいる。あとそれ以外にも〝怠惰〟の必要性として、もっと重要な理由があるんだけど・・・その説明は後にして」
視線を真昼からクロ。そして瑠璃に向けた御国は、ふと目を細めると、
「二つ目。敵の目的について情報が欲しい」
御国の言葉に真昼が「えっ?」と目を瞬かせた。
「でも椿は『戦争がしたい』って・・・それが目的じゃ・・・」
「〝戦争〟っていうのは目的があってするものだよ、普通はね。取り合うものは場所だったり。権力だったり。価値観だったり。じゃあこの争いの末に椿が得るものは何だと思う?」
―――――僕は〝先生〟の為に戦争をするって決めたから―――――
「・・・・・・っ」
御国の話を聞く中で、椿の言葉を思い出した瑠璃は、キュッと胸元の鍵を左手で握りしめ、視線を俯ける。
―――――ここで、椿が言っていたその言葉を御国に伝えるべきなのだろうか。
「・・・・・・」
隣に座るクロは瑠璃の様子に気づき、微かに眉根を寄せると、そっと瑠璃の右手に自身の左手を触れさせる。
「あっ!! そういえば・・・あいつこの前、〝釣り〟がどうとか言って、何かを・・・待ってる・・・ような・・・?」
その時、先日お寿司屋さんで椿と遭遇した時に言われた言葉を、真昼が思い出したのだ。
「〝待ってる〟・・・なるほど。近いかもな・・・」
御国は手にしていたコーヒーのカップをコトと机に置くと、真昼の言葉に相槌を打ち。
「目的がわからないと先の動きも読みづらくてね。とにかく今は情報を集めたいんだけど・・・」
「吸血鬼達の情報交換サイトが使えないんですよね」
また、こちらの反応を窺いみるかのように視線を向けてきた御国に、瑠璃は黙り込んでいる訳にもいかず、クロの左手から伝わってくる温もりに、そっと息を吐き出すと、会話に沿った言葉を紡ぎ出す。
「そうそう。あのサイトの管理人にはオレが連絡しといたよ。管理してるのは〝ある機関〟なんだけど・・・」
と―――――御国がサイトの管理人の話を口にした刹那、今度はクロの方がそれに動揺した様子で手を震わせ、バシャッとクロが飲んでいたコーラのカップがテーブルの上でひっくり返ってしまったのだ。
「わっ!? クロ!? 何してんだよっ」
「お・・・おお・・・」
わたわたとしながら返事をしたクロの顔には激しい動揺の色が浮んでいた。
そんなクロの様子を真昼が怪訝そうな顔で見遣りつつ、近くにあった紙ナプキンでテーブルの上を片付けていく。
そして片付けられたテーブルに両肘をつきながら左右の手を組んで顎を乗せた御国は、その隣に連れていた人形を置くと、笑みを浮かべながら告げてくる。
「・・・その機関は人間によって組織された・・・。〝人〟と〝人でないもの〟との『共存』を図る中立機関だよ。何百年も吸血鬼と人とのバランスを取ってきた、情報も武力も持ってる組織でいわば人外達の抑止力かな」
「そんな機関があったんだ・・・」
真昼が感心した面持ちで呟いた。
その―――――直後のことだった。
瑠璃に触れていたクロの左手がスッと離れるのと同時に、
「タバコ吸ってくる」
ガタと席を立ったクロはそう言うと、此方に背を向けて1階に繋がる階段を下って行ってしまう。
「クロ!?」
「はぁ!? ちょ・・・お前タバコなんか吸わないだろっ」
瑠璃が呼び止めようとすると、真昼もまた驚いた様子でそう言ったのだが、クロが此方に戻ってくる事はなかった。
「・・・彼は吸血鬼側の長男 。その機関とはいろんなやりとりがあったはず・・・『嫌な思い出』があっても不思議じゃないよ」
クロが去っていた先に視線を向けながら、御国が呟くように言う。
いつの間にか御国のストールの襟から、顔を覗かせていた黒蛇と瑠璃の視線が合った。
様子を見に行くつもりは無いのか、とでも言いたげな黒蛇に対して、瑠璃は目を伏せると―――――
「御国さん、すみません・・・・・・私もちょっと席を外しますね」
「うん、構わないよ」
御国からは、すんなりと承諾が返ってきた。
そこで瑠璃が席を立ちあがると、真昼が心配そうな眼差しを向けてくる。
「・・・・・・瑠璃姉?」
「真昼君、クロの様子は私が見てくるから・・・・・・」
そうして眉を下げつつ瑠璃は真昼にそう言うと、クロを追いかけて、1階に繋がる階段を降りて行ったのだ。
クロが店の外に出ると、まるでタイミングを図ったかのように、一台のタクシーがやって来た。
「どおも―――――呼びました―――――?」
そうして停車したタクシーから降りてきたのは、頭部に眼鏡を二つ重ねて乗せつつ、さらに顔にも眼鏡をかけて、白衣を着用した―――――何処となく異様な雰囲気を纏った―――――細身の男だった。
「組織 の・・・話をしてましたでしょ―――――・・・? 今回・・・も 、一緒に問題解決しましょうよ―――――と」
クロの姿を捉えてはいるものの、その瞳はどんよりとしていて、口調もまた、もの恐ろしさを漂わせている。
クロは眉を顰めると、嫌悪するかのような眼差しを男に向けながら、
「嫌だ。つーか誰も呼んでねぇ。他人 の私生活盗聴すんな」
拒絶の言葉を口にするも、しかし男は聞くつもりは無いようで。
「はい。それじゃ、この紙にある日時と場所で待ち合わせということで―――――」
クロに手紙を持った右手を、ぐいぐいぐいと突き出すと、そう言って手紙を無理やり口に咥えさせたのだ。
そうして、男がまたタクシーに乗って、窓から左手を出して振りながら立ち去った処で―――――
「昔を思い出しますねぇ」
ふわりとタバコの香りがクロの鼻孔を掠めると、その隣にはいつの間にか、リリイが立っていたのだ。
驚いた様子で目を瞬かせたクロに、ふうと紫煙を吐き出しながらリリイは言う。
「彼ら のあの強引さ・・・変わりませんねぇ。懐かしささえ覚えますよ」
幻術で姿を隠していたとしても、いつからいたのかと、クロは眉を顰めつつ、
「タバコやめてなかったのか」
そう言ってリリイを見遣ると、
「御園 の前ではやめてます」
ふふ、とリリイは笑みを零しながら応じ。
「その手紙の件、真昼君と瑠璃さんに相談してみては・・・」とリリイは言葉を紡ぎ出しかけたのだが―――――。
「・・・・・・クロ」
その時、1階に来ていた瑠璃が、おずおずと店の扉を開いて、外に出てきたのだ。
「こんばんは、瑠璃さん」
「あ・・・・・・リリイも一緒だったのね」
目を瞬かせた瑠璃は、リリイの手にあるタバコに視線を向けると、
「リリイ。タバコ、吸う人だったのね」
「えぇ。ですが御園の前では吸わないので、内緒にして下さいね」
左手の人差し指を口元に当てながらそう言ったリリイに、「わかったわ」と眉を下げながら、微苦笑を浮かべて頷いた。
それから瑠璃はクロの左腕をそっと両手で掴むと、口元に咥えられていた手紙には触れる事はせず、事も無げな口調で言った。
「クロ。真昼君も心配してるし、とりあえず戻りましょう?」
本当はクロに白衣の人物が接触した時―――――1階に下りて来ていた瑠璃はその光景を目にしていた。
けれど、『嫌な思い出』に関わるのであろう、その事をいま聞くのはクロを傷つけそうで・・・・・・。
そんな瑠璃の想いを感じ取ったクロは、気まずそうな表情で「おう」と頷くと、手紙を上着の内側に仕舞い込む。
それからリリイに視線を向けると、
「リリイ。なんでお前一人でこんなところにいる」
「・・・嫌々ですよ。こわーい方に呼ばれてひと肌脱ぎにね」
タバコを吸い終えたリリイは、クロからの問いかけに、肩を竦めながらそう言ったのだ。
「最後に・・・もう一度、聞こうか。これから怖いことが続くとしてもあの吸血鬼を手放さなくていいんだね?」
瑠璃がクロを追いかけて席を外した後、一通りの話を終えた処で―――――御国は真昼を見定めようとするかのように見据えると、その〝覚悟〟を確認する言葉を投げかけた。
「・・・いいです!! 力がなかったら・・・桜哉の本心にはきっと届かなかった。オレはこれから強くなって・・・瑠璃姉と一緒に、クロと本当の相棒になるから!!」
それに対して、真昼は視線を逸らすことなく、強い意志を宿した目で見返すと言い放った。
クロを連れた瑠璃が、戻ってきたのは、ちょうどその直後のことだった。
「あっ、クロ! 瑠璃姉!」
けれど、真昼の声はしっかりと耳に届いており―――――その時もまた、やはりクロは何処となくバツが悪そうな表情のままだった。
「御国さん、お話の途中で席を外してしまってすみませんでした」
そこで、まず瑠璃は御国に声を掛けた後、ひとまず真昼の気をクロから逸らすべく。
「あのね、真昼君。実はリリイと外で会ったのだけど・・・・・・」
「こんばんはー」
「えっ、リリイ!?」
瑠璃の言葉に合わせて、ひょっと、クロの後から顔を覗かせたリリイに対して、真昼はどうして此処にいるのかと、驚いた様子で声を上げた。
すると、御国は挑発的な笑みを浮かべ、
「・・・OK少年。それじゃあ君が強くならないとみんな が困る。この変態はそのためにオレが呼んだんだ」
リリイが言っていた、〝こわーい方〟というのは、どうやら御国の事だったらしい。
御国に呼び出されたリリイが右側に立つと、その反対の左側には、いつの間にか人型に戻っていたジェジェが姿を現しており。
「オレ達がキミを強くしてあげよう。〝修行〟って言葉に男の子はワクワクするもんでしょ?」
三人の姿が揃ったところでそう宣言した御国に対して、真昼は目を瞠ると、
「お願いします!!」
男の子らしく瞳を輝かせながら、大きな声でそう言って頭を下げたのだ。
「さあ、動いたのは―――――機関の東京支部・・・と〝有栖院家〟か」
〝拠点〟がある建物の屋上から、事の次第を窺い見ていた椿は、口端をつりあげると愉しげな口調で言った。
と―――――
―――――椿―――――
その刹那、浮かんできたのは、〝怠惰〟の兄の処に帰した、〝ミストレス〟という立場に在る、〝愛おしい存在〟である瑠璃のこと。
瑠璃はこれから始まる〝本祭 〟を止める事を望んでいる。
けれど―――――
椿は自身の袂に手を入れると、そこからスマホを取り出した。
―――――シャラーン
するとスマホに付いている水琴鈴が、それに応えるように、切なさを含んだ音色を奏でた。
そしてそっと画面に表示されたフォルダを開くと、微笑みを浮かべた愛おしい彼女の姿がそこに映し出される。
―――――ごめんね、瑠璃。君をまた泣かせることになってしまうとしても、僕はもう止まることは出来ないんだ。
心の中で淡々と瑠璃に語り掛けた椿は、その場で跳躍するとその姿を狐へと変えた。
それから拠点の向こう側に広がる、ビル街の夜景の灯りの中で、瑠璃への想いをまた、そっと胸の奥にしまった狐は―――――
「―――――大漁、大漁♪」
コンと鳴き声を上げながら、釣りの成果を湛えるように宙返りを行ったのだ。
<後書き>
第六章、嫉妬組との再びの邂逅編。コミック二巻の内容はこれで、終了となります。
番外編は、内容の一部を第五章に投入したので、省略して、次からは三巻に突入です!
第五章の19話を書き上げてから、残り一話は何としても、年内に完結させたいという想いから全力で執筆させて頂き・・・、同じ月に二回更新という、奇跡を成し遂げることが出来ました。
12月は、仕事が一番忙しい月・・・(サンタさんとの闘い)があるので、更新が出来るかとても微妙な処なのですが・・・。
書きたいという意欲が溢れ続ける限りは、頑張りたいと思っておりますので、引き続きお付き合い頂けましたら幸いに思います。
朱臣繭子 拝
18・11/23 掲載
視線を真昼からクロ。そして瑠璃に向けた御国は、ふと目を細めると、
「二つ目。敵の目的について情報が欲しい」
御国の言葉に真昼が「えっ?」と目を瞬かせた。
「でも椿は『戦争がしたい』って・・・それが目的じゃ・・・」
「〝戦争〟っていうのは目的があってするものだよ、普通はね。取り合うものは場所だったり。権力だったり。価値観だったり。じゃあこの争いの末に椿が得るものは何だと思う?」
―――――僕は〝先生〟の為に戦争をするって決めたから―――――
「・・・・・・っ」
御国の話を聞く中で、椿の言葉を思い出した瑠璃は、キュッと胸元の鍵を左手で握りしめ、視線を俯ける。
―――――ここで、椿が言っていたその言葉を御国に伝えるべきなのだろうか。
「・・・・・・」
隣に座るクロは瑠璃の様子に気づき、微かに眉根を寄せると、そっと瑠璃の右手に自身の左手を触れさせる。
「あっ!! そういえば・・・あいつこの前、〝釣り〟がどうとか言って、何かを・・・待ってる・・・ような・・・?」
その時、先日お寿司屋さんで椿と遭遇した時に言われた言葉を、真昼が思い出したのだ。
「〝待ってる〟・・・なるほど。近いかもな・・・」
御国は手にしていたコーヒーのカップをコトと机に置くと、真昼の言葉に相槌を打ち。
「目的がわからないと先の動きも読みづらくてね。とにかく今は情報を集めたいんだけど・・・」
「吸血鬼達の情報交換サイトが使えないんですよね」
また、こちらの反応を窺いみるかのように視線を向けてきた御国に、瑠璃は黙り込んでいる訳にもいかず、クロの左手から伝わってくる温もりに、そっと息を吐き出すと、会話に沿った言葉を紡ぎ出す。
「そうそう。あのサイトの管理人にはオレが連絡しといたよ。管理してるのは〝ある機関〟なんだけど・・・」
と―――――御国がサイトの管理人の話を口にした刹那、今度はクロの方がそれに動揺した様子で手を震わせ、バシャッとクロが飲んでいたコーラのカップがテーブルの上でひっくり返ってしまったのだ。
「わっ!? クロ!? 何してんだよっ」
「お・・・おお・・・」
わたわたとしながら返事をしたクロの顔には激しい動揺の色が浮んでいた。
そんなクロの様子を真昼が怪訝そうな顔で見遣りつつ、近くにあった紙ナプキンでテーブルの上を片付けていく。
そして片付けられたテーブルに両肘をつきながら左右の手を組んで顎を乗せた御国は、その隣に連れていた人形を置くと、笑みを浮かべながら告げてくる。
「・・・その機関は人間によって組織された・・・。〝人〟と〝人でないもの〟との『共存』を図る中立機関だよ。何百年も吸血鬼と人とのバランスを取ってきた、情報も武力も持ってる組織でいわば人外達の抑止力かな」
「そんな機関があったんだ・・・」
真昼が感心した面持ちで呟いた。
その―――――直後のことだった。
瑠璃に触れていたクロの左手がスッと離れるのと同時に、
「タバコ吸ってくる」
ガタと席を立ったクロはそう言うと、此方に背を向けて1階に繋がる階段を下って行ってしまう。
「クロ!?」
「はぁ!? ちょ・・・お前タバコなんか吸わないだろっ」
瑠璃が呼び止めようとすると、真昼もまた驚いた様子でそう言ったのだが、クロが此方に戻ってくる事はなかった。
「・・・彼は吸血鬼側の
クロが去っていた先に視線を向けながら、御国が呟くように言う。
いつの間にか御国のストールの襟から、顔を覗かせていた黒蛇と瑠璃の視線が合った。
様子を見に行くつもりは無いのか、とでも言いたげな黒蛇に対して、瑠璃は目を伏せると―――――
「御国さん、すみません・・・・・・私もちょっと席を外しますね」
「うん、構わないよ」
御国からは、すんなりと承諾が返ってきた。
そこで瑠璃が席を立ちあがると、真昼が心配そうな眼差しを向けてくる。
「・・・・・・瑠璃姉?」
「真昼君、クロの様子は私が見てくるから・・・・・・」
そうして眉を下げつつ瑠璃は真昼にそう言うと、クロを追いかけて、1階に繋がる階段を降りて行ったのだ。
クロが店の外に出ると、まるでタイミングを図ったかのように、一台のタクシーがやって来た。
「どおも―――――呼びました―――――?」
そうして停車したタクシーから降りてきたのは、頭部に眼鏡を二つ重ねて乗せつつ、さらに顔にも眼鏡をかけて、白衣を着用した―――――何処となく異様な雰囲気を纏った―――――細身の男だった。
「
クロの姿を捉えてはいるものの、その瞳はどんよりとしていて、口調もまた、もの恐ろしさを漂わせている。
クロは眉を顰めると、嫌悪するかのような眼差しを男に向けながら、
「嫌だ。つーか誰も呼んでねぇ。
拒絶の言葉を口にするも、しかし男は聞くつもりは無いようで。
「はい。それじゃ、この紙にある日時と場所で待ち合わせということで―――――」
クロに手紙を持った右手を、ぐいぐいぐいと突き出すと、そう言って手紙を無理やり口に咥えさせたのだ。
そうして、男がまたタクシーに乗って、窓から左手を出して振りながら立ち去った処で―――――
「昔を思い出しますねぇ」
ふわりとタバコの香りがクロの鼻孔を掠めると、その隣にはいつの間にか、リリイが立っていたのだ。
驚いた様子で目を瞬かせたクロに、ふうと紫煙を吐き出しながらリリイは言う。
「
幻術で姿を隠していたとしても、いつからいたのかと、クロは眉を顰めつつ、
「タバコやめてなかったのか」
そう言ってリリイを見遣ると、
「
ふふ、とリリイは笑みを零しながら応じ。
「その手紙の件、真昼君と瑠璃さんに相談してみては・・・」とリリイは言葉を紡ぎ出しかけたのだが―――――。
「・・・・・・クロ」
その時、1階に来ていた瑠璃が、おずおずと店の扉を開いて、外に出てきたのだ。
「こんばんは、瑠璃さん」
「あ・・・・・・リリイも一緒だったのね」
目を瞬かせた瑠璃は、リリイの手にあるタバコに視線を向けると、
「リリイ。タバコ、吸う人だったのね」
「えぇ。ですが御園の前では吸わないので、内緒にして下さいね」
左手の人差し指を口元に当てながらそう言ったリリイに、「わかったわ」と眉を下げながら、微苦笑を浮かべて頷いた。
それから瑠璃はクロの左腕をそっと両手で掴むと、口元に咥えられていた手紙には触れる事はせず、事も無げな口調で言った。
「クロ。真昼君も心配してるし、とりあえず戻りましょう?」
本当はクロに白衣の人物が接触した時―――――1階に下りて来ていた瑠璃はその光景を目にしていた。
けれど、『嫌な思い出』に関わるのであろう、その事をいま聞くのはクロを傷つけそうで・・・・・・。
そんな瑠璃の想いを感じ取ったクロは、気まずそうな表情で「おう」と頷くと、手紙を上着の内側に仕舞い込む。
それからリリイに視線を向けると、
「リリイ。なんでお前一人でこんなところにいる」
「・・・嫌々ですよ。こわーい方に呼ばれてひと肌脱ぎにね」
タバコを吸い終えたリリイは、クロからの問いかけに、肩を竦めながらそう言ったのだ。
「最後に・・・もう一度、聞こうか。これから怖いことが続くとしてもあの吸血鬼を手放さなくていいんだね?」
瑠璃がクロを追いかけて席を外した後、一通りの話を終えた処で―――――御国は真昼を見定めようとするかのように見据えると、その〝覚悟〟を確認する言葉を投げかけた。
「・・・いいです!! 力がなかったら・・・桜哉の本心にはきっと届かなかった。オレはこれから強くなって・・・瑠璃姉と一緒に、クロと本当の相棒になるから!!」
それに対して、真昼は視線を逸らすことなく、強い意志を宿した目で見返すと言い放った。
クロを連れた瑠璃が、戻ってきたのは、ちょうどその直後のことだった。
「あっ、クロ! 瑠璃姉!」
けれど、真昼の声はしっかりと耳に届いており―――――その時もまた、やはりクロは何処となくバツが悪そうな表情のままだった。
「御国さん、お話の途中で席を外してしまってすみませんでした」
そこで、まず瑠璃は御国に声を掛けた後、ひとまず真昼の気をクロから逸らすべく。
「あのね、真昼君。実はリリイと外で会ったのだけど・・・・・・」
「こんばんはー」
「えっ、リリイ!?」
瑠璃の言葉に合わせて、ひょっと、クロの後から顔を覗かせたリリイに対して、真昼はどうして此処にいるのかと、驚いた様子で声を上げた。
すると、御国は挑発的な笑みを浮かべ、
「・・・OK少年。それじゃあ君が強くならないと
リリイが言っていた、〝こわーい方〟というのは、どうやら御国の事だったらしい。
御国に呼び出されたリリイが右側に立つと、その反対の左側には、いつの間にか人型に戻っていたジェジェが姿を現しており。
「オレ達がキミを強くしてあげよう。〝修行〟って言葉に男の子はワクワクするもんでしょ?」
三人の姿が揃ったところでそう宣言した御国に対して、真昼は目を瞠ると、
「お願いします!!」
男の子らしく瞳を輝かせながら、大きな声でそう言って頭を下げたのだ。
「さあ、動いたのは―――――機関の東京支部・・・と〝有栖院家〟か」
〝拠点〟がある建物の屋上から、事の次第を窺い見ていた椿は、口端をつりあげると愉しげな口調で言った。
と―――――
―――――椿―――――
その刹那、浮かんできたのは、〝怠惰〟の兄の処に帰した、〝ミストレス〟という立場に在る、〝愛おしい存在〟である瑠璃のこと。
瑠璃はこれから始まる〝
けれど―――――
椿は自身の袂に手を入れると、そこからスマホを取り出した。
―――――シャラーン
するとスマホに付いている水琴鈴が、それに応えるように、切なさを含んだ音色を奏でた。
そしてそっと画面に表示されたフォルダを開くと、微笑みを浮かべた愛おしい彼女の姿がそこに映し出される。
―――――ごめんね、瑠璃。君をまた泣かせることになってしまうとしても、僕はもう止まることは出来ないんだ。
心の中で淡々と瑠璃に語り掛けた椿は、その場で跳躍するとその姿を狐へと変えた。
それから拠点の向こう側に広がる、ビル街の夜景の灯りの中で、瑠璃への想いをまた、そっと胸の奥にしまった狐は―――――
「―――――大漁、大漁♪」
コンと鳴き声を上げながら、釣りの成果を湛えるように宙返りを行ったのだ。
<後書き>
第六章、嫉妬組との再びの邂逅編。コミック二巻の内容はこれで、終了となります。
番外編は、内容の一部を第五章に投入したので、省略して、次からは三巻に突入です!
第五章の19話を書き上げてから、残り一話は何としても、年内に完結させたいという想いから全力で執筆させて頂き・・・、同じ月に二回更新という、奇跡を成し遂げることが出来ました。
12月は、仕事が一番忙しい月・・・(サンタさんとの闘い)があるので、更新が出来るかとても微妙な処なのですが・・・。
書きたいという意欲が溢れ続ける限りは、頑張りたいと思っておりますので、引き続きお付き合い頂けましたら幸いに思います。
朱臣繭子 拝
18・11/23 掲載
