第六章『祭りの序曲』
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「サイトのことは心配だけれど・・・リリイにもわからないとなると・・・」
「俺達に出来ることはないだろーな・・・」
リリイとの電話を終えた後。
それから程なくして、今日の特訓を真昼が切り上げることにした事から、帰路に着くことになり。
瑠璃と真昼がそんなやり取りをしつつ、並んで歩いていると―――――。
「真昼、瑠璃・・・何か来る」
ふいに瑠璃の腕の中に居た黒猫が、何かを感じ取った様子でピクリと身体を震わせ、警告を発したのだ。
真昼と瑠璃はすぐさまその場から走り出すと同時に、その存在を確認するべく後ろを振り返る。
敵か、味方か―――――その判別は出来ないが、道路の曲がり角から、此方に向かって人影が駆け出してくるのが視認出来た。
「今SNS落ちてっし・・・
瑠璃が走りやすいよう、腕の中から抜け出して、真昼の頭にしがみ付き直した黒猫が言う。
「・・・・・・そうね。こちらは、情報共有ができないから」
「この先にまた公園があるっ。そこで戦うぞっ、クロっ!!」
瑠璃が眉を寄せながら頷くと、真昼が迎え撃つことを宣言した。
公園に辿り着いた処で、すぐさまバッと真昼が身を翻すと、その隣に人型に戻ったクロが現れる。
前衛は真昼とクロが担い、瑠璃は後衛の立場となり『鍵』を握りしめながら二人の後ろに立つ。
「来い!!」
そして真昼の手の中に、ズズと武器である箒が具現化したその刹那―――――。
こちらにやって来た人影は真昼たちに襲い掛かることなく、飛び越えて行ってしまったのだ。
「もしかして私たちを追いかけてきたわけじゃなく、誰かから逃げてるの?」
瑠璃が目を見開き呟いた―――――その直後のことだった。
ドン―――――と一発の銃弾が、人影を打ち抜いたのだ。
「やあ少年。また会ったね。それから〝ミストレス〟のお嬢さんは初めましてだね。そいつはオレの獲物ですよー」
背後から響き渡った狙撃音に、真昼たちが振り返ると、そこにはカウボーイスタイルの男と三段重ねの紙袋を被った長身の人物―――――〝嫉妬〟の吸血鬼である、ダウトダウトの姿が在った。
―――――あの人が、ダウトダウトの主人・・・・・・。
呆然とした面持ちで瑠璃が男を見ていると、地に落ちようとしていた下位の身体に、ズズズと黒い縄が這うように迫り―――――。
「・・・いい機会だ。オレの武器を披露しようか?」
男がそう言った刹那、シュルルと縄の先が輪になって下位の首に巻き付いていく。
「奴がいままで
そうして反対側の縄の先もまた輪になって、男が手にしていた人形の首に巻き付き。
「さあアベル、ご慈悲ある判決を!!」
―――――〝
左手で帽子のつばを持ちながら、ショーでも披露するかの如く、右手の親指と人差し指を打ち鳴らしながらそう男が叫んだ刹那―――――
下位と人形を繋いでいた縄の中心に、両者を吊り下げるかのように、半裸の女性の姿と砂時計の様なものが浮かび上がり。
ズンと一気に人形の身体が下に向かって落ちていくと、反対側に吊られていた下位の身体が、上昇して縄に首を締めあげられていく。
「く・・・っあ。頼むっ、助け・・・っ」
口元から泡を吐き出しながら、助けを乞う、下位の背後にズ・・・と黒い影が忍び寄る。
それはダウトダウトで―――――紙袋を少しだけ持ち上げた彼は、カッと己の牙を下位の首筋に突き立てたのだ。
「「・・・・・・!」」
ダウトダウトに吸血された下位の身体が、ザァと灰になって消失していく。
真昼と瑠璃が愕然とした表情を浮かべると、男は「あれ? 初めて見る?」と意外そうな様子でこちらを見遣り。
「下位は基本不老不死だけど、真祖が血を吸う事で壊せるんだよ。〝共食い〟みたいで見苦しいね」
抑揚のない口調で告げてくる。
「そいつは椿の下位。この前の連中に比べて能力はかなり低いけど・・・」
「・・・・・・椿の・・・・・・」
サラサラと降り積もった下位の灰を何とも言えない面持ちで瑠璃は見つめる。
椿とは敵対関係となってしまった―――――だけど・・・・・・
「殺すことはなかった・・・っ」
―――――瑠璃の気持ちに同調するかのようにして、そう叫んだのは真昼だった。
「これは戦争だ。敵を
男の冷然とした瞳が真昼を捉える。
「椿達がこっちの下位を壊してるんだ。目には目を・・・だよ。何のために
真昼を詰問した男は、次いで瑠璃も見据えると、皮肉交じりの口調で言葉を言い添えてきた。
「私は・・・・・・」
それに対し、瑠璃もまた言葉を紡ぎ出そうとしたのだが―――――。
「―――――っ!?」
ふと、首筋にヒヤリと何かが這った感触を感じ、瑠璃は身体をビクッと震わせる。
「瑠璃姉っ・・・・・・!?」
男に対して、「俺は・・・っ」と、武器が宿っている右手首のリストバンドに左手で触れながら、口を開こうとした真昼もまた、瑠璃の首筋に巻き付いたその存在に気づくと、顔色を蒼白なものに変えた。
一匹の黒蛇が、いまにも瑠璃の首筋に食らいつかんとするかのように、鋭い牙を覗かせながら巻き付いていたのだ。
「クロッ・・・・・・」
真昼は咄嗟にクロのほうに視線を向けた。
―――――が、クロは顔を顰めながらも、その場から動こうとはせず。
「オレに疑われるようなことすると・・・罰しちゃうよ?」
男の口からは断罪の言葉が紡ぎ出された。
けれど、その実―――――此方に向けられた男の冷酷な瞳は―――――瑠璃とそして真昼の様子を品定めしているようにも見えた。
―――――〝お姫様〟というのは、守られるべき立場にある存在の事だ。
―――――だけど、私は〝守られる側〟でなく、一緒に〝立ち向かう側〟になりたいと思っている。
そして―――――
―――――真昼君とクロと一緒に、『大切な家族』である椿の事を止めたいと思っている。
瑠璃は小さく息を吸うと、男の瞳を見据えて言った。
「・・・・・・私は椿が始めようとしている、戦争に賛成することは出来ません。だから、椿の傍から離れる事を選びました」
刹那―――――
「あっはっはっ♥ 成程ね、やっぱりお嬢さんは、守られることを望んでるような〝か弱いお姫様〟じゃないみたいだね」
男は纏っていた空気を一変させると、人をおちょくるかのような笑みを浮かべ、武器であった人形を、ぱっと一瞬、手放す仕草をして見せてから、さっきの言葉はジョーダンだよと笑いながら告げてきたのだ。
「オレのジェジェ、昼間の姿は蛇なんだー」
頭部に白い十字の模様が在る黒蛇―――――〝ジェジェ〟というのが、ダウトダウトの『名前』なのだろう。
男が正体を明かした処で、蛇は瑠璃の首筋に巻き付くのを止めて、ゆっくりと離れていった。
「あ・・・っ」
そこで、クロが動こうとしなかった理由を理解した真昼が、視線を俯けながら強張らせていた身体の力を抜くと―――――。
男は眉を顰めながら真昼を見遣り、
「オレはキミより先にこの戦争に乗っかってるんだ。キミより〝覚悟〟はあるつもりだよ。『何をしてでも生き残る』覚悟がね。覚悟がないなら吸血鬼なんて手放すべきだと・・・」
男が口にした〝覚悟〟という言葉が、真昼の心に重圧として迫ってくる。
けれど、真昼もまた、瑠璃が椿の処から帰還した日に決めたのだ。
両手を握りしめた真昼は眉間に力を込めると、
「あのっ、俺に武器の使い方を教えて下さいっ」
がばっと勢いよく地面に向かって膝を折るのと同時に、そう言って男に頭を下げたのだ。
―――――イマドキ土下座・・・。
まさかの予想だにしていなかった真昼の行動に男はポカンとした様子で固まってしまったのだが―――――
「でも俺は・・・殺さない!! 俺が持つのは〝守る覚悟〟と〝立ち向かう覚悟〟だ!! あなたの・・・〝殺す〟っていうやり方がすべてじゃないと思う・・・っ。守るためには、そして立ち向かうためには、力が必要ってことはわかってるつもりです。でもっ・・・殺す以外にも方法があると思うから・・・っ」
真昼が口にした言葉には、瑠璃の想いも含まれている。
なのに、真昼だけに頭を下げさせるわけにはいかないだろう。
「―――――私からもお願いします。真昼君に力の使い方を教えてあげて下さい」
地面に瑠璃もまた、膝を折るとゆっくりと頭を下げていく。
と―――――
「・・・・・・瑠璃!?」とクロが当惑の声を洩らしたのだが、瑠璃は立ち上がろうとはせず。
暫し、男は真昼と瑠璃を凝視したのちに、
「・・・オレに!? オレに頼んでる!? このどー見ても性格良くなさそーなオレに!?オレの躊躇いのない壊しっぷり見たでしょ!? オレ結構、嫌な奴よ!? 子供ってこーゆーとこバカ素直っていうか。お嬢さんも、なんでそんなこと出来るのさ!? さては二人とも・・・バカ!?」
信じられないといわんばかりの面持ちで、男は身体を慄かせつつ、手にしていた人形を抱き寄せながら、そう言ったのだが―――――。
「でも、あなたはっ・・・俺を助けてくれた! シンプルに考えてっ、きっと悪い人じゃない・・・っ」
「私は真昼君の人を見る目を信じてますから」
顔を上げると、そう言い切った真昼に続き、瑠璃もまた笑顔で男に言う。
すると男は目を丸くしながら、「あっはっはっ」と笑い出し。
「やーだーなー子供って単純でー」
その言葉の通り、子供に接するかのような態度で真昼の頭を撫でたのだ。
「?!」
撫でられた真昼が男の態度の豹変ぶりに、混乱した様子で思わず後ろに身を引くと、真昼の頭から手を離した男は、その笑顔のまま瑠璃に振り返り―――――
「〝ミストレス〟のお嬢さん、お手をどうぞ? オレ、女の子を地面に座らせとくような趣味はないからさ」
そう言って瑠璃にもまた右手を差し出してきたのだが、
「クロ・・・・・・?」
「やれやれ、怠惰からお嬢さんのこと取るつもりは無いから安心しなよー?」
―――――地面から瑠璃の事を立ちあがらせたのは男ではなく、顔を顰めつつも、瑠璃の意思を尊重して、口をはさむことはせず、事の次第を見ていたクロだった。
そうして、男から距離を取らせるように、自分の傍にクロが瑠璃を引き寄せると、男は揶揄するかのような笑みを浮かべながら言った。
「だけど、信念のある子は好きだよオレは! うん・・・とりあえず自己紹介含めて話をしようか」
「あっ。すみません、俺、名前も聞かないで・・・」
眉を顰めていた真昼は、その言葉により、まだ男の名前を知らなかったことを思い出す。
「ああ、それは気にしないで。名前は意図的に
〝隠してた〟という男の言葉に、瑠璃は目を瞬かせ、その顔を見つめる。
―――――・・・・・・何処となく、御園君に似てる?
ふと瑠璃の意識に、色欲の吸血鬼〝リリイ〟の主人である御園の事が思い出された。
すると―――――
「有栖院 御国だ。よろしく♥ いつも
「・・・みッ、御園のお兄さん!? 似てね―――――っ」
漸く明らかになった男の正体に驚嘆の声を上げたのは真昼だった。
「やっぱり、目元とか、御園君と似てますね」
場所は変わり、ファーストフードショップMOC。
そこで、飲み物とクロが希望したフライドポテトを購入した処で。
夜であることから2階席は閑散としていて、込み入った話をするのには都合がよく。
改めて、御園の兄だと名乗った御国と話をするべく、向かい合う形で瑠璃、クロ、真昼の並び順で着席したのだ。
そうして、明るい場所でまた御国の顔を見た瑠璃が、ふと笑みを零しながら言うと。
「兄弟・・・かぁ。俺は・・・全然、気づかなかったです・・・」
「あっはっはっ、誰もが納得のモノマネ披露しようか?」
まだ信じられないといわんばかりの面持ちの真昼にそう告げると―――――
「貴ッ様ァ!!!! こんな小汚い場所が飲食店だと!? 僕をバカにするのも大概にしろ!! これだから庶民は・・・」
椅子から立ち上がった御国は、ダンッと左足をテーブルに乗せると、眉と目を吊り上げながら、激怒した面持ちでそう叫んだのだ。
その様を目撃した、女子高生たちは顔を蒼白にしてこちらを見ていた。
そして態度を豹変させた御国を、その直後に黙らせたのは真昼だった。
「・・・・・・似てたでしょ?」
真昼から拳骨を食らった御国は、テーブルに突っ伏すと、呻くようにしながら言った。
「似てた」
時たま、真昼から拳骨を貰っていたクロは、その痛みを知っているからか、微かに同情するような眼差しで、御国を見遣りながら頷いた。
その時、真昼はこちらを遠巻きに見遣ったままだった女子高生たちに、不快な思いをさせてしまってすみませんと、謝罪を行っていたのだった。
そして御国が、テーブルを揺らしたことで、駄目になってしまった分の代わりの飲み物を、新しく瑠璃が購入して戻って来た処で―――――
「御園に君達みたいな友達ができてオレは嬉しいよ。御園は昔から体が弱くて・・・小さい頃はほとんど家から出られなくてね」
右手で頬杖をつきながら、左手にコーヒーのコップを持った御国は、しみじみとした様子でそう言葉を洩らすと、
「そんなわけでオレの御園コレクションを披露しようか?」
性的な目で見ないでね♥ 殺すぞ♥ と、含み笑いを浮かべながら、リュックの中から、大量の写真を取り出して見せたのだ。
そんな御国の言葉に「誰が見るか!!」と真昼が突っ込みを入れたのは言うまでもない。
「うわっ、これ御園!? すげー笑ってる・・・」
「昔の御園君って、今とはまた雰囲気が随分と違ったのね」
いまの御園は、俗にいうツンデレというタイプだが、幼い頃はその年相応の性格だったようだ。
そして写真には御国が一緒に映っているモノもあったのだが、そこでふと瑠璃は違和感を覚え、御国のほうを見遣る。
―――――どうして小学校低学年くらいまでの写真だけなのかしら・・・・・・。
それに真昼も気づいたようで、怪訝そうに眉を寄せたのだが、二人が何か云うよりも前に、御国は写真を片付けてしまい。
「オレは
吸血鬼という単語を口にした刹那、冷ややかな眼差しになった御国は、「・・・オレが君達の言う『壊さない』に賛同するかは別としてね」とぼそと小声で言い添えたのだ。
「御国さん・・・」
『倒す』―――――『壊す』―――――それをするのではなく、あくまでも、椿が戦争をするのを止めたいのだ。
御国の言葉に、思わず瑠璃が眉を顰めると―――――
「まず! オレがキミ達に接触を試みた2つの理由を披露しようか?」
そう言いながら御国は此方に向かって、2本の指を立てた状態で腕を突き出してきたのだ。
18・11/23 掲載
