第四章『願いと選択』
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「えっと・・・」
それに対して、瑠璃は眉根を寄せながら、チラリとマザーとリリイの解答を伺うように視線を向けると、
「私の主人 も今日、偶然、東京に来ているだけなの。椿の近く にいるあなた達が動くのがいいと思うわ・・・」
「真昼くんのようなやる気のある子がいると助かりますー。瑠璃さんも、さすが〝ミストレス〟ですねー」
マザーに続き賛同の意志を示したリリイは、さらに「机の下のダウトダウトも賛成だそうですよー」と言うと、次いでクロに視線を向けながら、意味有りげに「ね?クロ」と名を呼び、話を続ける。
「真昼くんが吸血鬼と戦うのなら武器 は早く渡さないとですよ? クロ?」
あなた、真昼くんに渡してませんよね―――? 瑠璃さんの為にも、必要になるというのに。というリリイの言葉に、え? え? と真昼が困惑した様子で口を開く。
「武器・・・ってクロが俺に武器をくれるの? 俺も・・・戦えるようになんの?」
「リリイてめぇ・・・こうやってゴリ押すために会議開いただろ・・・」
テーブルに伏したまま、クロが恨めしげな眼差しでリリイを見る。
「武器なんか持ってどうすんだ。知らないフリしとけば楽なのに・・・」
それから、続けられた言葉は真昼に対するものだった。
それに気づいた真昼は、自身の中にある、唯一つの信念にも似た思いを、ゆっくりと、口にする。
「俺は・・・まだ吸血鬼について全然わかってないのかもしれないけど・・・ただ俺にだって守りたいものがあって何も行動しないで後悔するのはイヤだから」
「・・・武器が必要か?」
テーブルから顔を上げたクロが、真昼を見据える。
「守るための力なら必要だよ」
仄暗い影を宿した真紅の瞳から、視線を逸らすことなく、真昼はきっぱりと断言する。
「クロ・・・私からもお願い」
真昼の傍らに立った、瑠璃もまた、クロを見つめると静かな声で言った。
それにより、クロは観念した様子で、はぁ・・・と溜息を吐くと、
「目ぇつぶれ・・・。・・・瑠璃も、〝あいつ〟が呼んでる・・」
「ちょっと待てっ。先に説明しろよ。ここで!? 何する気―――――・・・」
いきなりの言葉に、真昼が眉を顰め、クロに抗議するが、その言葉はふいに途中で途切れた。
―――――視界が暗転し―――――意識が闇に飲み込まれる。
―――――この感覚は、初めてクロの中に入った時と同じ。
ゆっくりと目を瞬かせると、蝋燭に囲まれた路の先に、クラッカーを手にした、あの、猫のような姿をした奇妙なぬいぐるみ『力』の姿が在った。
『HAPPY BIRTHDAY』
「!!?」
そうして、お祝いの言葉を発すると同時にクラッカーを打ち鳴らしてきた『力』に対して、真昼が目を白黒させながら、声を上げる。
「・・・えっ!? ここどこ・・・!?」
「―――――真昼君、ここはクロの中 よ」
『そう。ここはクロの中だよ。久しぶりだね、瑠璃♪』
「え!?クロの中 って、瑠璃姉とこいつ、知り合いなのか!?」
「えぇ。私がクロを目覚めさせる前、クロの中で『力』くんとは一度会ってるから。
―――――『力』くんは、クロの一部―――――『力』の担当なんですって」
落ち着いた様子の瑠璃の言葉に、真昼は目を瞬かせると、「・・・クロの一部?」と困惑の表情で、ぬいぐるみを見つめる。
すると『力』は『二人とも、こっちこっち』と手招きをしながら呼びかけてくる。
『GIFTが欲しいでしょ? 自分だけのBIRTHDAY GIFT』
「誕生日・・・はまだ先だけど・・・武器のこと? だったら欲しいけど・・・」
『力』の言葉の意味が分からず、真昼は眉を顰めながら、その後に着いていく。
『さぁ楽しい運命の選択。すきなのをひとつだけ』
と―――――『力』が指し示した先には、山積みにされたギフトボックスがあった。
『力』は、何処から取り出したのか、クロと瑠璃が『誓約』を結んだ時と同様に、丸いケーキを手にしていた。
―――――しかし、唯一点だけ、瑠璃の時とは違う部分があった。
―――――ケーキはバースデー仕様で『MAHIRU』と書かれたネームプレートが飾られていた。
『力』は口元に歪な笑みを浮かべながら、楽しげに真昼に語りかける。
―――――HAPPY BIRTHDAY MAHIRU
―――――GIFTを選べばもう戻れない
―――――でも、誰かを守れる大人になるよ
―――――さぁ君の力を手に入れよう
―――――どれを選んでも同じEND
―――――でもルートは全部違う
―――――慎重に
―――――でも大胆に
―――――大事なのは自分 ならではの答え
「じゃあ・・・一番シンプルなのを」
大量のギフトボックスに、逡巡する様子を見せながら、真昼が選んだのは、派手な装飾が一切ない、白い箱に唯リボンが掛けられたギフトボックスだった。
そうして、真昼がそれを手にした刹那、真昼の姿はその場から消え去った。
―――――武器を選び終えたからなのだろう。
―――――そして、クロの中には瑠璃だけが残された。
「―――――『力』くん。私を呼んだのは何故?」
真昼の付添いという訳ではなく、別の目的からだろう。
じっと、瑠璃が見据えながら尋ねかけると、『力』はまた口元に歪な笑みを浮かべ。
『―――――瑠璃、君は真昼と違って主人ではないから武器を渡すことは出来ない。だけど、君は〝ミストレスだ〟。クロとの関係も、少しは進展したみたいだから、君にはこれをあげるよ』
『力』が差し出してきたのは、紅い色をした、手の平に乗る程度の小さな小箱だった。
それを受け取り、箱を開いてみると、その中身は―――――
「・・・鍵?」
本体の持ち手部分は、三つ葉―――――それに、ハートの金具で繋がれた丸い縁取りの中に作られた四葉の装飾が施された、銀色の鍵だった。
―――――それは一見するとただのアクセサリーのように見えるが・・・。
『その鍵を〝どんなふうに使うか〟は、〝君次第〟だよ、瑠璃。それじゃあ、クロの事宜しくね』
意味深な『力』の言葉に、これがおそらくはただのアクセサリーではないのだと察することは出来た。
「・・・ありがとう、『力』くん」
鍵を握り締めた瑠璃が、薄く笑みを浮かべ『力』にそう言うと、また視界が暗くなっていく。
――――― 一方、瑠璃より一足先に意識が戻った真昼が、手にした武器はホウキだった。
真昼がクロと初めて会った時、殴り掛かって行った時に手にしていたモノはモップだった。
真昼にとっては、武器=掃除用具なのだろうか。
クロが呆れたように嘆息する中、そのホウキは具現化した直後、真昼の手から逃げるように飛び出すと、お店の中をぎゅんぎゅんと、勢いよく回転しながら飛び回り。
それにより、店内は騒然となってしまい―――――最終的には、真昼の手元に戻ってきて、右手首に巻き着くようにしながら、消失したのだが・・・・・。
「・・・ま、これでとりあえず武器も持てたし、真昼と瑠璃 と吸血鬼 で椿をどうにか止める・・・・・・てのが今日の会議の結論か」
「・・・って追い出されたファミレスの軒下で言われてもな!!」
一度ならず、二度までも、騒ぎを起こしてしまった為に、店員から店の外へ退出するよう、言い渡されてしまったのだ。
気だるげに猫背で立ちながら、最終的に纏まった会議の結論をクロが口にすると、雨が降り続く店外で真昼は呆然と立ち尽くしながら叫んだ。
けれど、他の真祖達は、それに構う事はせず、
「吸血鬼 を頼みますね。真昼くん♥」
「さっさと椿をどうにかしろよ!!」
「これで農業に専念できるわ・・・」
幹事であったリリイに続き、ワールドエンド、マザーからもそう言われてしまい、真昼は「ちょ・・・みんなでやるんだよ!!」と、異を唱えるも、果たしてこの自由奔放な面々の耳に届いているのだろうか。
疲れた様子で項垂れながら、真昼は溜息を吐く。
「・・・―――――え? ・・・・お店の・・・外?」
瑠璃が意識を戻したのは、その直後だった。
「―――――おや、瑠璃さん。目を覚まされたんですね」
にこりと、リリイが笑いかけてくる。
「・・・リリイ?」
身長差があるのにも拘らず、何故、こんな近くでリリイと目線が合うのだろうか。
瑠璃がきょとんと目を瞬かせると、
「・・・真昼の武器が、店の中で暴れ回ったせいで・・・店の外に追い出されたんだよ」
「え? ・・・クロ?」
「不可抗力だったんだ!! っていうか、クロいつまで瑠璃姉のこと抱きかかえてるんだよ!?」
リリイに次いで、クロとも近い距離で視線が合ったことに、戸惑いの表情を浮かべた瑠璃は、真昼の怒声により、ようやく自分の置かれた状況を理解した。
「―――――っごめんね、クロ。私がこっちに戻るの遅くなっちゃったから・・・」
申し訳なさ半分、どことなく落ち着かない気持ちも入り混じり、僅かに顔を赤くしながら、眉尻を下げた状態で、瑠璃はクロを見上げながら言うと、クロもまたつられた様に、微かに耳元を赤くしながら、「・・・気にすんな」と言うと、瑠璃の事をそっと地面に降ろしたのだ。
「・・・瑠璃さん、これからも兄さんのこと宜しくね・・・」
と―――――そのやり取りをじっと見据えていた、マザーが話しかけてきた。
「・・・瑠璃さんなら、兄さんのことは安心して任せられそうだわ・・・」
「へ? あ・・・はい・・・」
微笑ましいものを見るように、微かに目元を和らげたマザーの眼差しに、瑠璃はまた、何となく気恥ずかしさを覚えつつも頷く。
「・・・それより、〝あいつ〟から何を渡されたんだ?」
と―――――ニコニコとリリイが自分を見ているのに気付いたクロは「めんどくせー」と呟くと、これ以上何か言われる前にと、話を逸らそうとするかのように瑠璃に問いかけた。
「あ、これ・・・『鍵』を貰ったんだけど・・・」
銀色の鍵を手の平に乗せて見せると―――――
「瑠璃姉の〝それ〟は、消えないんだな」
「・・・消える? って、真昼君の武器はどうなったの?」
項垂れていた顔を上げて、クロと共に鍵を確認した真昼の言葉に、瑠璃は眉を顰めながら尋ねかける。
それに対して真昼は「・・・俺の武器は、今は此処にあるみたいなんだけど」と、右手首を瑠璃に掲げて見せてくれた。
そこには、ぐるりと巻き着くように、クロの尾と同じような形をした黒い痣が浮かんでいた。
「・・・真昼君、その痣みたいなのって、消えないようならリストバンドとかで隠した方が良いかもしれないわね」
「あ・・・そうだ。桜哉に貰ったリストバンド・・・」
瑠璃の言葉に、真昼は目を瞬かせると、思い出した様子で、リュックから、ここに来る前に桜哉から貰ったリストバンドを取り出し、それを右手首にはめた。
―――――その直後の事だった。
「・・・・・れた」
ぽつりと、漏れ聞こえてきた微かな声。
それは、店内で行っていた会議の場において、まともに姿を見せる事をしなかった、ダウトダウトが発した言葉だった。
けれど、ダウトダウトは店外に置いても、しゃがみ込んでいた為に、その言葉はまともに聞き取ることは出来ず。
「え?」と真昼が、怪訝そうに声を漏らすと、軒下にしゃがみ込んでいたダウトダウトは、静かに立ち上がった。
ダウトダウトの身長は優に2メートル以上あり、その頭部には目の部分に穴をあけた紙袋以外に、可愛らしい表情が描かれた紙袋が二つ乗っていた。
間近で目にすると、さらに違う意味で迫力のある彼に対して、真昼が唖然とした表情を浮かべる中、再び今度は全員に聴こえるように、淡々と衝撃の言葉をダウトダウトは口にしたのだ。
「1人・・・今、椿の下位にやられた。返り討ち 」
―――――『椿の下位は日光にも平気で人にまぎれる』
―――――すぐ隣にいたとしても、私達にはそれが誰なのか分からない
―――――だけど、もしかしたら・・・・・
降り続く雨の中、ダウトダウトの言葉を聞いた時、瑠璃が思い出していたのは、今日の会議で知った、椿の下位の特徴。
―――――そして、それにより、ある一つの可能性に思い至ってしまった。
―――――時折、目が合うと、一瞬だけだけど、申し訳なさそうな、辛そうな感情を見せる紅い瞳をした『彼』はもしかしたら・・・・・
―――――思い違いであってほしい。
そう願いながら、目を伏せて鍵を瑠璃が握りしめた一方で。
真昼もまた、今日知り得た椿の下位に対する認識を心に刻もうとするかのように、リストバンドをはめた右手首を握りしめていたのだ。
『―――――さぁ、始まった。始まった』
―――――MAHIRU LV1
そうして真昼と瑠璃が立ち去った後―――――『力』により火を灯されたケーキの蝋燭の炎から伸びた煙が浮かび上がらせた文字。
―――――それは、何を意味するのだろうか。
一方、商店街にある、とある寿司屋では―――――
「一度取った皿は戻したらいけないんだよ。ベルキア」
そこには憂鬱の真祖である椿と下位であるベルキアの姿が在った。
回転するレールの上に、寿司を手に取ると同時に空となった皿を戻したベルキアに、椿が窘める様に、言葉を掛けると、
「え~~~細かいなァ日本の文化はァ~」
いいじゃ~~~んっ、と、ベルキアは眉を顰め、椿に問いかける。
「つばきゅ~~~ん。あの嘘つき、いつ来るのさァ~?」
つい最近になってようやくぬいぐるみの姿から人型に戻ったベルキアが「ボクへの復活祝い持ってくるだろォなァ~?」とひとり言のように漏らした言葉に「うん?」とそれに首を傾げる様子を見せた椿は、ふと感じた気配に、店の入り口の方を振り返る。
「来たみたいだよ」
開かれた自動ドアの向こう側―――――そこに立っていたのは血塗れの『人』らしきものを片手に掴んだ、自身もまた大量の返り血を浴びた学生服姿の少年。
「やあ・・・機嫌悪そうだねぇ」
それを気に留めることなく、少年に向かって、平然とした様子で椿が呼び掛ける。
すると、少年は、その『人』らしきものを引きずりながら、ゆっくりと店内に入店し、椿の元までやって来る。
「いらっしゃいま―――――」
入店して来た新しい客に、声を掛けようとした店員は、その異様な光景に言葉を失い、その場に居た客たちからは悲鳴が上がり、店内は騒然となってしまう。
「椿さん・・・要件は」
しかし、それに構う事はせず、少年は椿に抑揚のない口調で問いかける。
「その前に何? それ」
「これは別に・・・最近あとをつけられてたんで。うざくて」
椿が示した『それ』とは、少年が手にしている血濡れの存在。
―――――しかし、それの正体は『人』ではなく・・・・・
「他のサーヴァンプ の下位 ?」
あは、と可笑しそうに、椿は笑いを零し、「目つけられちゃってるじゃない」と少年に対して呟くと、好物である稲荷寿司を手にしながら問いかける。
「学校では まだバレてないの? 君が僕の下位吸血鬼 だってこと」
サングラス越しに、嘲笑するように、椿は真紅の瞳を眇めると、少年の名を呼んだ。
「・・・ねぇ桜哉」
―――――椿の下位吸血鬼 である、返り血を浴びた少年は―――――真昼の親友であった、綿貫桜哉だった。
そして、椿に名前を呼ばれた桜哉は、無表情に、光を失った昏い瞳で、指に付着した返り血を舐めとると、椿の問いかけに対して、吐き捨てるように言ったのだ。
「・・・別にどうでもいいんです。オレ嘘つきは嫌いなんで」
<後書き>
ようやく、原作の一巻がこれで終了となります。
久しぶりに書き始めた夢小説ですが、熱が冷めやらない&新しく掲載範囲を広げた『占いツクール』、通称占ツクさんでの閲覧数が、有難いことに、伸びているおかげで、さらにやる気のアドバンテージが、しっかと伸びております(笑)
第三章では、真昼と夢主の家族愛(?)のやり取りを含め、さらにそこに色欲組が絡むことで、クロが向き合えていなかった想いを、少しづつ育てる?というような伏線があったのに対して、この第四章では、それを少しですが、クロが表に出すことで、夢主との関係を進展させる事が出来ました。
原作の二巻が、シリアスが入る為、またしばらくは関係がここからメキメキ進むと云う事は無いと思いますが・・・。
逆ハー要素は、また少しづつ入れていきたいと思っておりますので、気長にお付き合いいただけましたら嬉しく思います。
感想や、小説に対する質問でも構いませんので、よろしければお気軽にコメントいただけましたら有難いです!
*******
★一応の補足となりますが、本文中で夢主が真昼に伝えていた限界距離に関しては、第二章・・・御園&リリイとの対面のやり取りがあった所に、加筆修正をさせて頂きました。
★占ツクさんでは、『サーヴァンプ』で検索して頂ければ、作品タイトルが、見つかると思います。
内容は全く変わりませんが、ご興味が惹かれましたらそちらでご確認してみて頂ければ幸いです。
朱臣 繭子 拝
【本館/17・6/26掲載/別館/17・6/28転記】
それに対して、瑠璃は眉根を寄せながら、チラリとマザーとリリイの解答を伺うように視線を向けると、
「私の
「真昼くんのようなやる気のある子がいると助かりますー。瑠璃さんも、さすが〝ミストレス〟ですねー」
マザーに続き賛同の意志を示したリリイは、さらに「机の下のダウトダウトも賛成だそうですよー」と言うと、次いでクロに視線を向けながら、意味有りげに「ね?クロ」と名を呼び、話を続ける。
「真昼くんが吸血鬼と戦うのなら
あなた、真昼くんに渡してませんよね―――? 瑠璃さんの為にも、必要になるというのに。というリリイの言葉に、え? え? と真昼が困惑した様子で口を開く。
「武器・・・ってクロが俺に武器をくれるの? 俺も・・・戦えるようになんの?」
「リリイてめぇ・・・こうやってゴリ押すために会議開いただろ・・・」
テーブルに伏したまま、クロが恨めしげな眼差しでリリイを見る。
「武器なんか持ってどうすんだ。知らないフリしとけば楽なのに・・・」
それから、続けられた言葉は真昼に対するものだった。
それに気づいた真昼は、自身の中にある、唯一つの信念にも似た思いを、ゆっくりと、口にする。
「俺は・・・まだ吸血鬼について全然わかってないのかもしれないけど・・・ただ俺にだって守りたいものがあって何も行動しないで後悔するのはイヤだから」
「・・・武器が必要か?」
テーブルから顔を上げたクロが、真昼を見据える。
「守るための力なら必要だよ」
仄暗い影を宿した真紅の瞳から、視線を逸らすことなく、真昼はきっぱりと断言する。
「クロ・・・私からもお願い」
真昼の傍らに立った、瑠璃もまた、クロを見つめると静かな声で言った。
それにより、クロは観念した様子で、はぁ・・・と溜息を吐くと、
「目ぇつぶれ・・・。・・・瑠璃も、〝あいつ〟が呼んでる・・」
「ちょっと待てっ。先に説明しろよ。ここで!? 何する気―――――・・・」
いきなりの言葉に、真昼が眉を顰め、クロに抗議するが、その言葉はふいに途中で途切れた。
―――――視界が暗転し―――――意識が闇に飲み込まれる。
―――――この感覚は、初めてクロの中に入った時と同じ。
ゆっくりと目を瞬かせると、蝋燭に囲まれた路の先に、クラッカーを手にした、あの、猫のような姿をした奇妙なぬいぐるみ『力』の姿が在った。
『HAPPY BIRTHDAY』
「!!?」
そうして、お祝いの言葉を発すると同時にクラッカーを打ち鳴らしてきた『力』に対して、真昼が目を白黒させながら、声を上げる。
「・・・えっ!? ここどこ・・・!?」
「―――――真昼君、ここは
『そう。ここはクロの中だよ。久しぶりだね、瑠璃♪』
「え!?
「えぇ。私がクロを目覚めさせる前、クロの中で『力』くんとは一度会ってるから。
―――――『力』くんは、クロの一部―――――『力』の担当なんですって」
落ち着いた様子の瑠璃の言葉に、真昼は目を瞬かせると、「・・・クロの一部?」と困惑の表情で、ぬいぐるみを見つめる。
すると『力』は『二人とも、こっちこっち』と手招きをしながら呼びかけてくる。
『GIFTが欲しいでしょ? 自分だけのBIRTHDAY GIFT』
「誕生日・・・はまだ先だけど・・・武器のこと? だったら欲しいけど・・・」
『力』の言葉の意味が分からず、真昼は眉を顰めながら、その後に着いていく。
『さぁ楽しい運命の選択。すきなのをひとつだけ』
と―――――『力』が指し示した先には、山積みにされたギフトボックスがあった。
『力』は、何処から取り出したのか、クロと瑠璃が『誓約』を結んだ時と同様に、丸いケーキを手にしていた。
―――――しかし、唯一点だけ、瑠璃の時とは違う部分があった。
―――――ケーキはバースデー仕様で『MAHIRU』と書かれたネームプレートが飾られていた。
『力』は口元に歪な笑みを浮かべながら、楽しげに真昼に語りかける。
―――――HAPPY BIRTHDAY MAHIRU
―――――GIFTを選べばもう戻れない
―――――でも、誰かを守れる大人になるよ
―――――さぁ君の力を手に入れよう
―――――どれを選んでも同じEND
―――――でもルートは全部違う
―――――慎重に
―――――でも大胆に
―――――大事なのは
「じゃあ・・・一番シンプルなのを」
大量のギフトボックスに、逡巡する様子を見せながら、真昼が選んだのは、派手な装飾が一切ない、白い箱に唯リボンが掛けられたギフトボックスだった。
そうして、真昼がそれを手にした刹那、真昼の姿はその場から消え去った。
―――――武器を選び終えたからなのだろう。
―――――そして、クロの中には瑠璃だけが残された。
「―――――『力』くん。私を呼んだのは何故?」
真昼の付添いという訳ではなく、別の目的からだろう。
じっと、瑠璃が見据えながら尋ねかけると、『力』はまた口元に歪な笑みを浮かべ。
『―――――瑠璃、君は真昼と違って主人ではないから武器を渡すことは出来ない。だけど、君は〝ミストレスだ〟。クロとの関係も、少しは進展したみたいだから、君にはこれをあげるよ』
『力』が差し出してきたのは、紅い色をした、手の平に乗る程度の小さな小箱だった。
それを受け取り、箱を開いてみると、その中身は―――――
「・・・鍵?」
本体の持ち手部分は、三つ葉―――――それに、ハートの金具で繋がれた丸い縁取りの中に作られた四葉の装飾が施された、銀色の鍵だった。
―――――それは一見するとただのアクセサリーのように見えるが・・・。
『その鍵を〝どんなふうに使うか〟は、〝君次第〟だよ、瑠璃。それじゃあ、クロの事宜しくね』
意味深な『力』の言葉に、これがおそらくはただのアクセサリーではないのだと察することは出来た。
「・・・ありがとう、『力』くん」
鍵を握り締めた瑠璃が、薄く笑みを浮かべ『力』にそう言うと、また視界が暗くなっていく。
――――― 一方、瑠璃より一足先に意識が戻った真昼が、手にした武器はホウキだった。
真昼がクロと初めて会った時、殴り掛かって行った時に手にしていたモノはモップだった。
真昼にとっては、武器=掃除用具なのだろうか。
クロが呆れたように嘆息する中、そのホウキは具現化した直後、真昼の手から逃げるように飛び出すと、お店の中をぎゅんぎゅんと、勢いよく回転しながら飛び回り。
それにより、店内は騒然となってしまい―――――最終的には、真昼の手元に戻ってきて、右手首に巻き着くようにしながら、消失したのだが・・・・・。
「・・・ま、これでとりあえず武器も持てたし、
「・・・って追い出されたファミレスの軒下で言われてもな!!」
一度ならず、二度までも、騒ぎを起こしてしまった為に、店員から店の外へ退出するよう、言い渡されてしまったのだ。
気だるげに猫背で立ちながら、最終的に纏まった会議の結論をクロが口にすると、雨が降り続く店外で真昼は呆然と立ち尽くしながら叫んだ。
けれど、他の真祖達は、それに構う事はせず、
「
「さっさと椿をどうにかしろよ!!」
「これで農業に専念できるわ・・・」
幹事であったリリイに続き、ワールドエンド、マザーからもそう言われてしまい、真昼は「ちょ・・・みんなでやるんだよ!!」と、異を唱えるも、果たしてこの自由奔放な面々の耳に届いているのだろうか。
疲れた様子で項垂れながら、真昼は溜息を吐く。
「・・・―――――え? ・・・・お店の・・・外?」
瑠璃が意識を戻したのは、その直後だった。
「―――――おや、瑠璃さん。目を覚まされたんですね」
にこりと、リリイが笑いかけてくる。
「・・・リリイ?」
身長差があるのにも拘らず、何故、こんな近くでリリイと目線が合うのだろうか。
瑠璃がきょとんと目を瞬かせると、
「・・・真昼の武器が、店の中で暴れ回ったせいで・・・店の外に追い出されたんだよ」
「え? ・・・クロ?」
「不可抗力だったんだ!! っていうか、クロいつまで瑠璃姉のこと抱きかかえてるんだよ!?」
リリイに次いで、クロとも近い距離で視線が合ったことに、戸惑いの表情を浮かべた瑠璃は、真昼の怒声により、ようやく自分の置かれた状況を理解した。
「―――――っごめんね、クロ。私がこっちに戻るの遅くなっちゃったから・・・」
申し訳なさ半分、どことなく落ち着かない気持ちも入り混じり、僅かに顔を赤くしながら、眉尻を下げた状態で、瑠璃はクロを見上げながら言うと、クロもまたつられた様に、微かに耳元を赤くしながら、「・・・気にすんな」と言うと、瑠璃の事をそっと地面に降ろしたのだ。
「・・・瑠璃さん、これからも兄さんのこと宜しくね・・・」
と―――――そのやり取りをじっと見据えていた、マザーが話しかけてきた。
「・・・瑠璃さんなら、兄さんのことは安心して任せられそうだわ・・・」
「へ? あ・・・はい・・・」
微笑ましいものを見るように、微かに目元を和らげたマザーの眼差しに、瑠璃はまた、何となく気恥ずかしさを覚えつつも頷く。
「・・・それより、〝あいつ〟から何を渡されたんだ?」
と―――――ニコニコとリリイが自分を見ているのに気付いたクロは「めんどくせー」と呟くと、これ以上何か言われる前にと、話を逸らそうとするかのように瑠璃に問いかけた。
「あ、これ・・・『鍵』を貰ったんだけど・・・」
銀色の鍵を手の平に乗せて見せると―――――
「瑠璃姉の〝それ〟は、消えないんだな」
「・・・消える? って、真昼君の武器はどうなったの?」
項垂れていた顔を上げて、クロと共に鍵を確認した真昼の言葉に、瑠璃は眉を顰めながら尋ねかける。
それに対して真昼は「・・・俺の武器は、今は此処にあるみたいなんだけど」と、右手首を瑠璃に掲げて見せてくれた。
そこには、ぐるりと巻き着くように、クロの尾と同じような形をした黒い痣が浮かんでいた。
「・・・真昼君、その痣みたいなのって、消えないようならリストバンドとかで隠した方が良いかもしれないわね」
「あ・・・そうだ。桜哉に貰ったリストバンド・・・」
瑠璃の言葉に、真昼は目を瞬かせると、思い出した様子で、リュックから、ここに来る前に桜哉から貰ったリストバンドを取り出し、それを右手首にはめた。
―――――その直後の事だった。
「・・・・・れた」
ぽつりと、漏れ聞こえてきた微かな声。
それは、店内で行っていた会議の場において、まともに姿を見せる事をしなかった、ダウトダウトが発した言葉だった。
けれど、ダウトダウトは店外に置いても、しゃがみ込んでいた為に、その言葉はまともに聞き取ることは出来ず。
「え?」と真昼が、怪訝そうに声を漏らすと、軒下にしゃがみ込んでいたダウトダウトは、静かに立ち上がった。
ダウトダウトの身長は優に2メートル以上あり、その頭部には目の部分に穴をあけた紙袋以外に、可愛らしい表情が描かれた紙袋が二つ乗っていた。
間近で目にすると、さらに違う意味で迫力のある彼に対して、真昼が唖然とした表情を浮かべる中、再び今度は全員に聴こえるように、淡々と衝撃の言葉をダウトダウトは口にしたのだ。
「1人・・・今、椿の下位にやられた。
―――――『椿の下位は日光にも平気で人にまぎれる』
―――――すぐ隣にいたとしても、私達にはそれが誰なのか分からない
―――――だけど、もしかしたら・・・・・
降り続く雨の中、ダウトダウトの言葉を聞いた時、瑠璃が思い出していたのは、今日の会議で知った、椿の下位の特徴。
―――――そして、それにより、ある一つの可能性に思い至ってしまった。
―――――時折、目が合うと、一瞬だけだけど、申し訳なさそうな、辛そうな感情を見せる紅い瞳をした『彼』はもしかしたら・・・・・
―――――思い違いであってほしい。
そう願いながら、目を伏せて鍵を瑠璃が握りしめた一方で。
真昼もまた、今日知り得た椿の下位に対する認識を心に刻もうとするかのように、リストバンドをはめた右手首を握りしめていたのだ。
『―――――さぁ、始まった。始まった』
―――――MAHIRU LV1
そうして真昼と瑠璃が立ち去った後―――――『力』により火を灯されたケーキの蝋燭の炎から伸びた煙が浮かび上がらせた文字。
―――――それは、何を意味するのだろうか。
一方、商店街にある、とある寿司屋では―――――
「一度取った皿は戻したらいけないんだよ。ベルキア」
そこには憂鬱の真祖である椿と下位であるベルキアの姿が在った。
回転するレールの上に、寿司を手に取ると同時に空となった皿を戻したベルキアに、椿が窘める様に、言葉を掛けると、
「え~~~細かいなァ日本の文化はァ~」
いいじゃ~~~んっ、と、ベルキアは眉を顰め、椿に問いかける。
「つばきゅ~~~ん。あの嘘つき、いつ来るのさァ~?」
つい最近になってようやくぬいぐるみの姿から人型に戻ったベルキアが「ボクへの復活祝い持ってくるだろォなァ~?」とひとり言のように漏らした言葉に「うん?」とそれに首を傾げる様子を見せた椿は、ふと感じた気配に、店の入り口の方を振り返る。
「来たみたいだよ」
開かれた自動ドアの向こう側―――――そこに立っていたのは血塗れの『人』らしきものを片手に掴んだ、自身もまた大量の返り血を浴びた学生服姿の少年。
「やあ・・・機嫌悪そうだねぇ」
それを気に留めることなく、少年に向かって、平然とした様子で椿が呼び掛ける。
すると、少年は、その『人』らしきものを引きずりながら、ゆっくりと店内に入店し、椿の元までやって来る。
「いらっしゃいま―――――」
入店して来た新しい客に、声を掛けようとした店員は、その異様な光景に言葉を失い、その場に居た客たちからは悲鳴が上がり、店内は騒然となってしまう。
「椿さん・・・要件は」
しかし、それに構う事はせず、少年は椿に抑揚のない口調で問いかける。
「その前に何? それ」
「これは別に・・・最近あとをつけられてたんで。うざくて」
椿が示した『それ』とは、少年が手にしている血濡れの存在。
―――――しかし、それの正体は『人』ではなく・・・・・
「
あは、と可笑しそうに、椿は笑いを零し、「目つけられちゃってるじゃない」と少年に対して呟くと、好物である稲荷寿司を手にしながら問いかける。
「
サングラス越しに、嘲笑するように、椿は真紅の瞳を眇めると、少年の名を呼んだ。
「・・・ねぇ桜哉」
―――――椿の
そして、椿に名前を呼ばれた桜哉は、無表情に、光を失った昏い瞳で、指に付着した返り血を舐めとると、椿の問いかけに対して、吐き捨てるように言ったのだ。
「・・・別にどうでもいいんです。オレ嘘つきは嫌いなんで」
<後書き>
ようやく、原作の一巻がこれで終了となります。
久しぶりに書き始めた夢小説ですが、熱が冷めやらない&新しく掲載範囲を広げた『占いツクール』、通称占ツクさんでの閲覧数が、有難いことに、伸びているおかげで、さらにやる気のアドバンテージが、しっかと伸びております(笑)
第三章では、真昼と夢主の家族愛(?)のやり取りを含め、さらにそこに色欲組が絡むことで、クロが向き合えていなかった想いを、少しづつ育てる?というような伏線があったのに対して、この第四章では、それを少しですが、クロが表に出すことで、夢主との関係を進展させる事が出来ました。
原作の二巻が、シリアスが入る為、またしばらくは関係がここからメキメキ進むと云う事は無いと思いますが・・・。
逆ハー要素は、また少しづつ入れていきたいと思っておりますので、気長にお付き合いいただけましたら嬉しく思います。
感想や、小説に対する質問でも構いませんので、よろしければお気軽にコメントいただけましたら有難いです!
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★一応の補足となりますが、本文中で夢主が真昼に伝えていた限界距離に関しては、第二章・・・御園&リリイとの対面のやり取りがあった所に、加筆修正をさせて頂きました。
★占ツクさんでは、『サーヴァンプ』で検索して頂ければ、作品タイトルが、見つかると思います。
内容は全く変わりませんが、ご興味が惹かれましたらそちらでご確認してみて頂ければ幸いです。
朱臣 繭子 拝
【本館/17・6/26掲載/別館/17・6/28転記】
