第三章『アリス・イン・ザ・ガーデン』
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一階の長い廊下をひたすら走り、突き当たった処で階段を駆け上ると、現れた扉の先に勢いよく飛び込んでいく。
と―――――そこで、真昼は人型に戻ったスリーピーアッシュに押しつぶされて、倒れ込んでしまう。
「わっ、いてっ・・・?」
「大丈夫っ、真昼君!」
寸でのところで、真昼が手を離した為、倒れずに済んだ瑠璃は、真昼の傍らに膝を折り尋ねかける。
「うん、なんとか・・・おいクロっ、重い!!」
瑠璃に返事を返し、すぐさま背に乗っていたスリーピーアッシュに真昼は抗議する。
そうして、スリーピーアッシュが降りると、身体を起こして、改めて辿り着いた部屋を見回し、そこに広がる意外な光景に目を瞬かせた。
「子供部屋・・・?」
あちこちに落書きが見られる室内には、床で寝転がって絵を描く子供たち、天井から吊るされたブランコで遊ぶ子供たち、壁に空いたのぞき穴から梯子を伸ばして、下を見下ろす子供たち、おもちゃ箱から遊具を取り出す子供たち、丸テーブルに着いて、カードゲームで遊ぶ子供たち、壁面に設置された巨大な本棚から絵本を取り出す子供たち――――――と、数えきれないほどの人数の子供の姿が在ったのだ。
「あいつの弟妹・・・? にしては人数が・・・」
子供たちの様子を見ながら首を傾げた真昼は、ふと、はっとした表情で目を瞬かせると、血の気の引いた顔で叫んだ。
「まさかリリイの子・・・!? 〝色欲〟とはいえ多すぎっ・・・」
それにより、こちらに気付いた子供たちが、だれ? と不思議そうな顔で視線を向けてくる。
「・・・真昼君、多分、この子たちはそうじゃないと思うわ・・・」
―――――あの、ホストのような外見ならば、確かに女性たちが、放ってはおかないかもしれないが・・・・・。
室内の子供たちにぐるりと視線を巡らせ、瑠璃は思案顔で言う。
「ふふ。瑠璃さんの言うとおりですよー」
ふいに、背後から聞こえてきた声に、ビクッと真昼は身体を震わせる。
いつの間にこちらに来たのか、笑みを浮かべたリリイが真昼の後ろに立っていた。
「あっリリイ―――――おかえりなさいー」
すると、リリイの姿に気付いた子供たちが一斉に、リリイの元に集まっていく。
「リリイ、ご本読んでー」
「お土産ないのー?」
その姿に、真昼が目を見開き唖然とする中、ぜ――――は――――と、息を切らしながら、何とかこの場に辿り着いた御園が、開かれた扉に片腕を着きながら、呼吸を整えていると―――――。
「みその―――――今日、御園の似顔絵描いたー」
御園の元にも、お絵かきをしていた子供たちが集まってくる。
「やめろ、チビどもっ。僕は今忙しいんだっ」
それに対して御園は、か~~~~~っと頬を赤らめると、子供たちにそう言って背を向けてしまう。―――――どうやら、照れているらしい。
「・・・・・・な・・・? なに??」
どことなく、ほのぼのとした雰囲気の漂う光景に、真昼が目を瞬かせ、首を傾げる。
すると、リリイは両手を広げて、子供たちを示しながら、真昼に答えを告げてくる。
「・・・この子達は私の下位 。。先程から一緒の双子、ユリーとマリーも含めて・・・みんな吸血鬼ですよ」
「やっぱり、そうだったのね」
―――――子供たちは全員、紅い瞳をしている。
瑠璃が微笑を浮かべると、リリイの近くに居た双子がこちらにやって来る。
「「・・・瑠璃、さっきはごめんなさい」」
「大丈夫よ、ユリーちゃん、マリーちゃん」
シュンとなった双子を瑠璃は、両腕を広げて抱きしめる。
その様子を見ながら、リリイは淡々と言葉を続ける。
「椿の勢力はまずこの子達のような下位を殺してまわっています・・・今週もわかってるだけで2人やられ ました」
リリイの言葉に、真昼の表情が強張る。
そして、リリイに続いて御園が口を開く。
「・・・お前はチェスを知っているか。ゲームが進むにつれて盤上からコマが減っていくだろう。そして最後にキングが残っていれば勝ちだ。・・・僕は現実でもそうであっていいとは思ってなんだよ!」
あの、アンティーク風の椅子に腰掛けた御園が、ギュッと眉尻を顰めながら真昼を見据えて言う。
「僕が王座に座るのは守られるためじゃない。だから僕には力が必要だ。より大きな力が・・・」
気付けば御園の傍らには真祖が立っており、その背後には下位の子供たちが勢ぞろいしている。
そして、瑠璃の腕の中から抜け出た双子たちもまた、そちらに加わるかと思われたのだが、そうではなく―――――。
その次の瞬間、手を繋いで跳躍した双子は、黒い花のような形をしたシールドのようなものを出現させると、それを真昼とスリーピーアッシュに目掛けて放ったのだ。
「わああ!?」
「真昼君!? スリーピーアッシュ!?」
目を見開き、瑠璃が声を上げる。
「・・・ユリー、マリー・・・」
一方、御園もまた、僕がまだ喋ってるのに・・・と、片手を上げながら、唖然とした表情で固まってしまう。
「ちょ・・・話もできねーよっ。おいクロっ、とりあえず血飲んで戦・・・」
「降参降参・・・」
双子の攻撃は、二人にではなく、そのすぐ傍の柱に当たっていた。
間一髪、双子の攻撃を避けた真昼が、咄嗟に黒猫の姿になる事でその場から離脱したスリーピーアッシュに呼びかける。
けれど、人型に戻ったスリーピーアッシュに、戦う意思はなく、何処から取り出したのか、白旗を掲げたのだ。
お前は―――――!! と、スリーピーアッシュの胸ぐらを掴んだ真昼に、御園がまた問いかけてくる。
「・・・貴様は何のためにその力 を使う? 1人のサーヴァンプにつき、主人 のイスはただひとつ。そのイスに座る覚悟と理由があるのか?」
―――――・・・御園、兄 。の事はもう忘れなさい
―――――次の当主 。にはお前が座るんだ
―――――リリイと下位 。・・・すべてにお前を守らせる
俯いた御園の脳裏に蘇るのは、幼い頃に父親から言われた言葉。
「ないなら僕に渡すべきだ・・・貴様は何のためにサーヴァンプの主人 。になった?」
そして、御園から向けられた問いかけに、真昼もまた思い出す。
―――――自分が、サーヴァンプの主人になった理由を。
―――――吸血鬼に襲われた友人を守るために真昼は力を望んだ。
「「・・・城田真昼。孤独なアリスを助けてくれる?」」
真昼に向かって、双子が問いかける。
―――――真昼君がしたいこと。
―――――御園君がしたいこと。
―――――簡単に考えれば、きっと二人とも・・・・。。
二人の様子を静観するように見つめながら、瑠璃は思う。
「・・・お前にクロはやらない」
けれど、双子は真昼のその一言を聞いた瞬間、またあの黒い花のような形をしたシールドを出現させ、臨戦態勢に入ってしまう。
「ちょ・・・っ待てよ!! 話は最後まで・・・」
それを見た真昼は、慌てて制止の声を上げる。
その時、先程の双子の攻撃により、抉れた柱が、限界がきてしまったようで、そこからバキッと音と立てて砕けたのだ。
「リリイ・・・」
椅子から立ち上がった御園が、リリイの名を叫ぶ。
けれど、リリイでは間に合わない。
「ユリーちゃん!! マリーちゃん!!」
バッと双子の元に瑠璃が走り寄る。
「クロ!! 双子と瑠璃姉を・・・っ」
そう叫ぶと、真昼もまた、そちらに向かって駆け出していく。
「いってええ!?」
真昼の手が三人に届いた刹那、黒猫が真昼の左脚に噛みつき、人型に戻ったスリーピーアッシュと真昼の間に、下僕の吸血鬼の証の鎖が現れる。
―――――手の届く範囲にあるすべてを、ただ守りたいだけなのだ。
双子と瑠璃と真昼目掛けて倒れそうになった柱は、スリーピーアッシュのジャケットの裾が鉤爪に変化したことにより止められ、事なきを得ることが出来た。
身体を起こした真昼は、は―――――っ、と、安堵の息を吐くと、スリーピーアッシュに振り返る。
「クロ・・・っ・・・ありがと! もーお前、面倒くさがったり助けてくれたり・・・気まぐれだな・・・」
「ユリー! マリー! 瑠璃!」
御園がこちらに向かって走り寄ってくる。
「「平気」」
「大丈夫よ、御園君」
―――――双子とともに、瑠璃もまた笑みを浮かべて御園に応える。
御園はそれを見て、ほ・・・・と、息を吐き出すと、真昼の方に顔を向けて、躊躇うような表情を見せながら、ゆっくりと口を開いた。
「・・・2人を・・・助けてくれたことには礼を言うが・・・」
「・・・お前はシンプルに言うとただ椿からみんなを守りたいんだろ。それなら俺も同じだよ」
それに対して、真昼は御園を真っ直ぐに見据えると、先程、途中になってしまった答えの続きを口にする。
「その子たちを守る『誰か』はお前1人である必要はないと思うんだ。2人とか4人とか・・・一緒にならできることもあると思うから。・・・御園、俺とクロも一緒にやるよ」
そうして、真昼は右手を御園に向かって差し出したのだ。
そこで、瑠璃もまた笑みを浮かべると、
「―――――御園君、勿論、私も一緒にやるからね」
「―――――ッ・・・」
御園は、目元を赤らめながら、口元を引き結び。
「・・・そんなに僕の下僕を希望するのなら使ってやってもいいけどな! 僕はあの椿とかいう吸血鬼を排除したいだけだ! 貴様が働かないなら、すぐにでも猫と瑠璃は僕が・・・」
それから息を吐くと、ツンとした態度で、顔を顰めながら言った御園の姿を、リリイがにこにこと笑みを浮かべながら見守る。
―――――御園のそれが、嬉しさの裏返しなのは分かるので、瑠璃もまたクスッと笑いを零すと、顔を赤くした御園が、何を笑ってるとリリイの方を睨みつける。
すると、蝶の姿に変わって真昼の元にやってきたリリイが、ある提案を告げてくる。
「真昼くんと瑠璃さんとクロも加わったところで、実は久しぶりにアレ をやりたいと思ってるんですが」
「・・・アレ?」
きょとんとした表情で真昼がリリイを見る。
瑠璃も、首を傾げると、
「サーヴァンプの〝定例会議〟です。幹事として私がひと肌脱ぎますよ♥」
人型にまた戻ったリリイが、上半身の服を着崩しながらそう言ったのだ。
―――――その姿を見た瑠璃は、視線を逸らしながら呟いた。
「・・・リリイ、幹事をしてくれるのは良いんだけど。服までは脱がなくていいから」
「なんで、そう偉そうなんだよっ」
「黒猫だから『クロ』・・・なんてネーミングセンス。知性のカケラもない・・・僕なら却下だ」
「う・・・うっせーな。シンプルだろ!! お前の『スノーリリイ』こそどうなんだよ!? カッコつけすぎじゃねーか!?」
―――――吸血鬼の定例会議とはどういうものなのか。
場所を子供部屋から御園の部屋に移し、リリイから話を聞いていたのだが、気づけば話題が両者の真祖の『名前』に移り変わっており、真昼と御園はその事で言い合いとなってしまっていた。
けれど、リリイは、そのやり取りすら、むしろ微笑ましいものを見るような様子で、口を挟むことはせず、スリーピーアッシュとチェスを始めてしまう。
―――――御園と真昼のこのやり取りは、友人として、互いを知り得ていく上で必要なものと思っているのだろう。
そう察しが付いた瑠璃も、あえて口を挟むことはせず、二人の様子を見守っていたのだが。
「まあ、お前ら落ち着け・・・ちょっとオレに癒されろ」
チェスに飽きたのか―――――人型から黒猫の姿になったスリーピーアッシュが、おらよ、という言葉とともにテーブルの上で仰向けのポーズで転がったのだ。
その黒猫の正体を知らないものが見たのならば、その愛らしい姿に、頬を緩めただろう。
しかし、真昼はその黒猫が、何者なのか解っている為。
「癒されるか!!」
逆にムカツクわ!! と言うや否や、拳骨を黒猫に落としたのだ。
「・・・で、サーヴァンプ7人の定例会議ってのを開いて集まって。ケンカを売り歩いてる椿をどう止めるか話し合うんだな!?」
「さすがに、7人全員は集まらないと思いますが」
話を戻した真昼に、リリイが頷き、言う。
一方、黒猫の姿から人型に戻ったスリーピーアッシュは、テーブルの端で、「お前・・・こんな癒し系猫を殴るなんて・・・」と、頭を押さえながら突っ伏してしまっていた。
「私もあの姿は可愛いと思うけれど。真昼君、相手にやるのは今後も避けた方がいいかもしれないわね」
隣に座っていた瑠璃は、苦笑いを浮かべながら、スリーピーアッシュの頭の痛みが少しでも和らぐようにと、そっと手を添える。
―――――と、チラリとこちらを見たスリーピーアッシュは、「・・・そうか」と呟くとまた、ポフンと黒猫の姿に変わり、「にゃ~ん」と鳴きながら瑠璃の膝の上にやって来る。
それに対して、フッと瑠璃は頬を緩めながら、黒猫の頭を撫でる。
それからリリイの言葉に「うん。それでも・・・」と真昼が言うと、
「貴様はまず自分のサーヴァンプを飼い馴らすべきだと思うがな」
「露出狂を放置してるお前が言うな!!」
わざとではないのだろうが、また、はん、と小馬鹿にするような笑いを浮かべた御園に対して真昼が眉を吊り上げて。
「お前はいちいち・・・」
そのまま、また、論争が始まるかと思われたのだが、室内の時計の針が、カチッと夜9時を示した瞬間。
「わあっ!?」
突如として、御園は糸が切れた人形のごとく、がくんっと倒れ込んでいったのだ。
「なっ御園っ・・・!?」
「御園君!?」
椅子から落下しそうになった御園の身体を、真昼が慌てて支えると、瑠璃が御園に呼びかける。
―――――けれど、御園から返答はなく。
「おや。いけませんねぇ。もう時間ですか」
「・・・リリイ? ・・・貴方、何でそんなに落ち着いて?」
主人が意識を失ったというのに、動じる様子のない真祖に瑠璃が眉を顰めると、
「御園は毎日9時には眠ってしまうんです」
花を飛ばしながらにこりと笑みを浮かべてリリイはそう言ったのだ。
確かによくよく様子を見れば、椅子に座らせ直した御園は、うと・・・と船を漕いでいる。
その姿を見て、「子供か!!」と思わず真昼は突っ込みを入れると、心配して損したとばかりに肩を震わせる。
「今日のところはお開きにしましょう。これ、お渡ししておきますね」
瑠璃もまた、それに対しては苦笑を浮かべるしかなく、けれど良かったと安堵の息を吐き出すと、リリイから一枚のメモを差し出された。
受け取ったそのメモには、ウエーブサイトのアドレスと、アカウントが書かれていた。
「今や吸血鬼もネットで情報交換する時代です。ログインしてみてくださいね」
―――――それは、いわゆるSNS的なものなのだろうか。
すっかり、現代に溶け込んでいる吸血鬼の在り様に、マジかよと、真昼が眉を顰めながら呟く。
―――――と、「あっ」と思い付いた様子で、真昼は声を上げると御園のほうを振り返り。
「御園! 俺らもアドレス交換しよーぜ」
「・・・・・!」
その呼びかけに、驚いた様子で御園が目を覚ます。
「し、仕方ないな・・・」
特別だぞ、という御園の表情は、その時ばかりは、角が取れており、リリイはまた、にこにこと笑みを浮かべながらその様子を見つめていた。
「あ・・・お前アドレス帳少なっ・・・・。瑠璃姉とはもう連絡先の交換は済んでるみたいだけど・・・今度、俺の友達紹介してやろうか?」
「・・・・・っ!!」
真昼の言葉に、また御園の眉尻が吊り上る。
「お前・・・体弱いんだって? 何かあったら、俺と瑠璃姉とクロ呼んでいいからさ」
けれど、続けられた真昼の言葉に、登録を終えたスマホの画面を見つめると、「・・・ふん」と満更でもなさそうな表情で応じたのだった。
<後書き>
第二章掲載から約一月で、今回は第三章を執筆することが出来ました。
これも、偏に、拍手から応援のコメントを下さった方。(そして、リア友さんにも感謝を(笑))
また、モバイルのランキングより投票をして下さった方々のおかげです!
ランキングに登録したのは先月の事ですが、それが、一桁にランクインし・・・。月が変わって、またランキングがリセットされたのにも拘らず、今月はさらに上位・・・2位と4位にランクイン致しました!!!!
見た瞬間、一瞬思考が停止しましたが・・・。
夢ではなく、本当の事でした。亀更新ですが、サーヴァンプ愛はまだまだ、冷め遣らないので、執筆は続けていきたいと思います。
(※モバイル向けランキングは、別館の『モバイルサイト』のみ、登録をしております。本館は参加しておりません)
これからも、どうぞよろしくお願い致します。
17・05/19掲載 朱臣 繭子 拝
と―――――そこで、真昼は人型に戻ったスリーピーアッシュに押しつぶされて、倒れ込んでしまう。
「わっ、いてっ・・・?」
「大丈夫っ、真昼君!」
寸でのところで、真昼が手を離した為、倒れずに済んだ瑠璃は、真昼の傍らに膝を折り尋ねかける。
「うん、なんとか・・・おいクロっ、重い!!」
瑠璃に返事を返し、すぐさま背に乗っていたスリーピーアッシュに真昼は抗議する。
そうして、スリーピーアッシュが降りると、身体を起こして、改めて辿り着いた部屋を見回し、そこに広がる意外な光景に目を瞬かせた。
「子供部屋・・・?」
あちこちに落書きが見られる室内には、床で寝転がって絵を描く子供たち、天井から吊るされたブランコで遊ぶ子供たち、壁に空いたのぞき穴から梯子を伸ばして、下を見下ろす子供たち、おもちゃ箱から遊具を取り出す子供たち、丸テーブルに着いて、カードゲームで遊ぶ子供たち、壁面に設置された巨大な本棚から絵本を取り出す子供たち――――――と、数えきれないほどの人数の子供の姿が在ったのだ。
「あいつの弟妹・・・? にしては人数が・・・」
子供たちの様子を見ながら首を傾げた真昼は、ふと、はっとした表情で目を瞬かせると、血の気の引いた顔で叫んだ。
「まさかリリイの子・・・!? 〝色欲〟とはいえ多すぎっ・・・」
それにより、こちらに気付いた子供たちが、だれ? と不思議そうな顔で視線を向けてくる。
「・・・真昼君、多分、この子たちはそうじゃないと思うわ・・・」
―――――あの、ホストのような外見ならば、確かに女性たちが、放ってはおかないかもしれないが・・・・・。
室内の子供たちにぐるりと視線を巡らせ、瑠璃は思案顔で言う。
「ふふ。瑠璃さんの言うとおりですよー」
ふいに、背後から聞こえてきた声に、ビクッと真昼は身体を震わせる。
いつの間にこちらに来たのか、笑みを浮かべたリリイが真昼の後ろに立っていた。
「あっリリイ―――――おかえりなさいー」
すると、リリイの姿に気付いた子供たちが一斉に、リリイの元に集まっていく。
「リリイ、ご本読んでー」
「お土産ないのー?」
その姿に、真昼が目を見開き唖然とする中、ぜ――――は――――と、息を切らしながら、何とかこの場に辿り着いた御園が、開かれた扉に片腕を着きながら、呼吸を整えていると―――――。
「みその―――――今日、御園の似顔絵描いたー」
御園の元にも、お絵かきをしていた子供たちが集まってくる。
「やめろ、チビどもっ。僕は今忙しいんだっ」
それに対して御園は、か~~~~~っと頬を赤らめると、子供たちにそう言って背を向けてしまう。―――――どうやら、照れているらしい。
「・・・・・・な・・・? なに??」
どことなく、ほのぼのとした雰囲気の漂う光景に、真昼が目を瞬かせ、首を傾げる。
すると、リリイは両手を広げて、子供たちを示しながら、真昼に答えを告げてくる。
「・・・この子達は私の
「やっぱり、そうだったのね」
―――――子供たちは全員、紅い瞳をしている。
瑠璃が微笑を浮かべると、リリイの近くに居た双子がこちらにやって来る。
「「・・・瑠璃、さっきはごめんなさい」」
「大丈夫よ、ユリーちゃん、マリーちゃん」
シュンとなった双子を瑠璃は、両腕を広げて抱きしめる。
その様子を見ながら、リリイは淡々と言葉を続ける。
「椿の勢力はまずこの子達のような下位を殺してまわっています・・・今週もわかってるだけで2人
リリイの言葉に、真昼の表情が強張る。
そして、リリイに続いて御園が口を開く。
「・・・お前はチェスを知っているか。ゲームが進むにつれて盤上からコマが減っていくだろう。そして最後にキングが残っていれば勝ちだ。・・・僕は現実でもそうであっていいとは思ってなんだよ!」
あの、アンティーク風の椅子に腰掛けた御園が、ギュッと眉尻を顰めながら真昼を見据えて言う。
「僕が王座に座るのは守られるためじゃない。だから僕には力が必要だ。より大きな力が・・・」
気付けば御園の傍らには真祖が立っており、その背後には下位の子供たちが勢ぞろいしている。
そして、瑠璃の腕の中から抜け出た双子たちもまた、そちらに加わるかと思われたのだが、そうではなく―――――。
その次の瞬間、手を繋いで跳躍した双子は、黒い花のような形をしたシールドのようなものを出現させると、それを真昼とスリーピーアッシュに目掛けて放ったのだ。
「わああ!?」
「真昼君!? スリーピーアッシュ!?」
目を見開き、瑠璃が声を上げる。
「・・・ユリー、マリー・・・」
一方、御園もまた、僕がまだ喋ってるのに・・・と、片手を上げながら、唖然とした表情で固まってしまう。
「ちょ・・・話もできねーよっ。おいクロっ、とりあえず血飲んで戦・・・」
「降参降参・・・」
双子の攻撃は、二人にではなく、そのすぐ傍の柱に当たっていた。
間一髪、双子の攻撃を避けた真昼が、咄嗟に黒猫の姿になる事でその場から離脱したスリーピーアッシュに呼びかける。
けれど、人型に戻ったスリーピーアッシュに、戦う意思はなく、何処から取り出したのか、白旗を掲げたのだ。
お前は―――――!! と、スリーピーアッシュの胸ぐらを掴んだ真昼に、御園がまた問いかけてくる。
「・・・貴様は何のために
―――――・・・御園、
―――――次の
―――――リリイと
俯いた御園の脳裏に蘇るのは、幼い頃に父親から言われた言葉。
「ないなら僕に渡すべきだ・・・貴様は何のためにサーヴァンプの
そして、御園から向けられた問いかけに、真昼もまた思い出す。
―――――自分が、サーヴァンプの主人になった理由を。
―――――吸血鬼に襲われた友人を守るために真昼は力を望んだ。
「「・・・城田真昼。孤独なアリスを助けてくれる?」」
真昼に向かって、双子が問いかける。
―――――真昼君がしたいこと。
―――――御園君がしたいこと。
―――――簡単に考えれば、きっと二人とも・・・・。。
二人の様子を静観するように見つめながら、瑠璃は思う。
「・・・お前にクロはやらない」
けれど、双子は真昼のその一言を聞いた瞬間、またあの黒い花のような形をしたシールドを出現させ、臨戦態勢に入ってしまう。
「ちょ・・・っ待てよ!! 話は最後まで・・・」
それを見た真昼は、慌てて制止の声を上げる。
その時、先程の双子の攻撃により、抉れた柱が、限界がきてしまったようで、そこからバキッと音と立てて砕けたのだ。
「リリイ・・・」
椅子から立ち上がった御園が、リリイの名を叫ぶ。
けれど、リリイでは間に合わない。
「ユリーちゃん!! マリーちゃん!!」
バッと双子の元に瑠璃が走り寄る。
「クロ!! 双子と瑠璃姉を・・・っ」
そう叫ぶと、真昼もまた、そちらに向かって駆け出していく。
「いってええ!?」
真昼の手が三人に届いた刹那、黒猫が真昼の左脚に噛みつき、人型に戻ったスリーピーアッシュと真昼の間に、下僕の吸血鬼の証の鎖が現れる。
―――――手の届く範囲にあるすべてを、ただ守りたいだけなのだ。
双子と瑠璃と真昼目掛けて倒れそうになった柱は、スリーピーアッシュのジャケットの裾が鉤爪に変化したことにより止められ、事なきを得ることが出来た。
身体を起こした真昼は、は―――――っ、と、安堵の息を吐くと、スリーピーアッシュに振り返る。
「クロ・・・っ・・・ありがと! もーお前、面倒くさがったり助けてくれたり・・・気まぐれだな・・・」
「ユリー! マリー! 瑠璃!」
御園がこちらに向かって走り寄ってくる。
「「平気」」
「大丈夫よ、御園君」
―――――双子とともに、瑠璃もまた笑みを浮かべて御園に応える。
御園はそれを見て、ほ・・・・と、息を吐き出すと、真昼の方に顔を向けて、躊躇うような表情を見せながら、ゆっくりと口を開いた。
「・・・2人を・・・助けてくれたことには礼を言うが・・・」
「・・・お前はシンプルに言うとただ椿からみんなを守りたいんだろ。それなら俺も同じだよ」
それに対して、真昼は御園を真っ直ぐに見据えると、先程、途中になってしまった答えの続きを口にする。
「その子たちを守る『誰か』はお前1人である必要はないと思うんだ。2人とか4人とか・・・一緒にならできることもあると思うから。・・・御園、俺とクロも一緒にやるよ」
そうして、真昼は右手を御園に向かって差し出したのだ。
そこで、瑠璃もまた笑みを浮かべると、
「―――――御園君、勿論、私も一緒にやるからね」
「―――――ッ・・・」
御園は、目元を赤らめながら、口元を引き結び。
「・・・そんなに僕の下僕を希望するのなら使ってやってもいいけどな! 僕はあの椿とかいう吸血鬼を排除したいだけだ! 貴様が働かないなら、すぐにでも猫と瑠璃は僕が・・・」
それから息を吐くと、ツンとした態度で、顔を顰めながら言った御園の姿を、リリイがにこにこと笑みを浮かべながら見守る。
―――――御園のそれが、嬉しさの裏返しなのは分かるので、瑠璃もまたクスッと笑いを零すと、顔を赤くした御園が、何を笑ってるとリリイの方を睨みつける。
すると、蝶の姿に変わって真昼の元にやってきたリリイが、ある提案を告げてくる。
「真昼くんと瑠璃さんとクロも加わったところで、実は久しぶりに
「・・・アレ?」
きょとんとした表情で真昼がリリイを見る。
瑠璃も、首を傾げると、
「サーヴァンプの〝定例会議〟です。幹事として私がひと肌脱ぎますよ♥」
人型にまた戻ったリリイが、上半身の服を着崩しながらそう言ったのだ。
―――――その姿を見た瑠璃は、視線を逸らしながら呟いた。
「・・・リリイ、幹事をしてくれるのは良いんだけど。服までは脱がなくていいから」
「なんで、そう偉そうなんだよっ」
「黒猫だから『クロ』・・・なんてネーミングセンス。知性のカケラもない・・・僕なら却下だ」
「う・・・うっせーな。シンプルだろ!! お前の『スノーリリイ』こそどうなんだよ!? カッコつけすぎじゃねーか!?」
―――――吸血鬼の定例会議とはどういうものなのか。
場所を子供部屋から御園の部屋に移し、リリイから話を聞いていたのだが、気づけば話題が両者の真祖の『名前』に移り変わっており、真昼と御園はその事で言い合いとなってしまっていた。
けれど、リリイは、そのやり取りすら、むしろ微笑ましいものを見るような様子で、口を挟むことはせず、スリーピーアッシュとチェスを始めてしまう。
―――――御園と真昼のこのやり取りは、友人として、互いを知り得ていく上で必要なものと思っているのだろう。
そう察しが付いた瑠璃も、あえて口を挟むことはせず、二人の様子を見守っていたのだが。
「まあ、お前ら落ち着け・・・ちょっとオレに癒されろ」
チェスに飽きたのか―――――人型から黒猫の姿になったスリーピーアッシュが、おらよ、という言葉とともにテーブルの上で仰向けのポーズで転がったのだ。
その黒猫の正体を知らないものが見たのならば、その愛らしい姿に、頬を緩めただろう。
しかし、真昼はその黒猫が、何者なのか解っている為。
「癒されるか!!」
逆にムカツクわ!! と言うや否や、拳骨を黒猫に落としたのだ。
「・・・で、サーヴァンプ7人の定例会議ってのを開いて集まって。ケンカを売り歩いてる椿をどう止めるか話し合うんだな!?」
「さすがに、7人全員は集まらないと思いますが」
話を戻した真昼に、リリイが頷き、言う。
一方、黒猫の姿から人型に戻ったスリーピーアッシュは、テーブルの端で、「お前・・・こんな癒し系猫を殴るなんて・・・」と、頭を押さえながら突っ伏してしまっていた。
「私もあの姿は可愛いと思うけれど。真昼君、相手にやるのは今後も避けた方がいいかもしれないわね」
隣に座っていた瑠璃は、苦笑いを浮かべながら、スリーピーアッシュの頭の痛みが少しでも和らぐようにと、そっと手を添える。
―――――と、チラリとこちらを見たスリーピーアッシュは、「・・・そうか」と呟くとまた、ポフンと黒猫の姿に変わり、「にゃ~ん」と鳴きながら瑠璃の膝の上にやって来る。
それに対して、フッと瑠璃は頬を緩めながら、黒猫の頭を撫でる。
それからリリイの言葉に「うん。それでも・・・」と真昼が言うと、
「貴様はまず自分のサーヴァンプを飼い馴らすべきだと思うがな」
「露出狂を放置してるお前が言うな!!」
わざとではないのだろうが、また、はん、と小馬鹿にするような笑いを浮かべた御園に対して真昼が眉を吊り上げて。
「お前はいちいち・・・」
そのまま、また、論争が始まるかと思われたのだが、室内の時計の針が、カチッと夜9時を示した瞬間。
「わあっ!?」
突如として、御園は糸が切れた人形のごとく、がくんっと倒れ込んでいったのだ。
「なっ御園っ・・・!?」
「御園君!?」
椅子から落下しそうになった御園の身体を、真昼が慌てて支えると、瑠璃が御園に呼びかける。
―――――けれど、御園から返答はなく。
「おや。いけませんねぇ。もう時間ですか」
「・・・リリイ? ・・・貴方、何でそんなに落ち着いて?」
主人が意識を失ったというのに、動じる様子のない真祖に瑠璃が眉を顰めると、
「御園は毎日9時には眠ってしまうんです」
花を飛ばしながらにこりと笑みを浮かべてリリイはそう言ったのだ。
確かによくよく様子を見れば、椅子に座らせ直した御園は、うと・・・と船を漕いでいる。
その姿を見て、「子供か!!」と思わず真昼は突っ込みを入れると、心配して損したとばかりに肩を震わせる。
「今日のところはお開きにしましょう。これ、お渡ししておきますね」
瑠璃もまた、それに対しては苦笑を浮かべるしかなく、けれど良かったと安堵の息を吐き出すと、リリイから一枚のメモを差し出された。
受け取ったそのメモには、ウエーブサイトのアドレスと、アカウントが書かれていた。
「今や吸血鬼もネットで情報交換する時代です。ログインしてみてくださいね」
―――――それは、いわゆるSNS的なものなのだろうか。
すっかり、現代に溶け込んでいる吸血鬼の在り様に、マジかよと、真昼が眉を顰めながら呟く。
―――――と、「あっ」と思い付いた様子で、真昼は声を上げると御園のほうを振り返り。
「御園! 俺らもアドレス交換しよーぜ」
「・・・・・!」
その呼びかけに、驚いた様子で御園が目を覚ます。
「し、仕方ないな・・・」
特別だぞ、という御園の表情は、その時ばかりは、角が取れており、リリイはまた、にこにこと笑みを浮かべながらその様子を見つめていた。
「あ・・・お前アドレス帳少なっ・・・・。瑠璃姉とはもう連絡先の交換は済んでるみたいだけど・・・今度、俺の友達紹介してやろうか?」
「・・・・・っ!!」
真昼の言葉に、また御園の眉尻が吊り上る。
「お前・・・体弱いんだって? 何かあったら、俺と瑠璃姉とクロ呼んでいいからさ」
けれど、続けられた真昼の言葉に、登録を終えたスマホの画面を見つめると、「・・・ふん」と満更でもなさそうな表情で応じたのだった。
<後書き>
第二章掲載から約一月で、今回は第三章を執筆することが出来ました。
これも、偏に、拍手から応援のコメントを下さった方。(そして、リア友さんにも感謝を(笑))
また、モバイルのランキングより投票をして下さった方々のおかげです!
ランキングに登録したのは先月の事ですが、それが、一桁にランクインし・・・。月が変わって、またランキングがリセットされたのにも拘らず、今月はさらに上位・・・2位と4位にランクイン致しました!!!!
見た瞬間、一瞬思考が停止しましたが・・・。
夢ではなく、本当の事でした。亀更新ですが、サーヴァンプ愛はまだまだ、冷め遣らないので、執筆は続けていきたいと思います。
(※モバイル向けランキングは、別館の『モバイルサイト』のみ、登録をしております。本館は参加しておりません)
これからも、どうぞよろしくお願い致します。
17・05/19掲載 朱臣 繭子 拝
