第二十八章『桎梏の塔』
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桎梏の塔
「〝鍵を開けるな〟外へは出るな〟〝世界にお前の席は無い〟」
強い意志に満ちた真昼と瑠璃の眼差しと眇められた塔間の視線がぶつかり合い。
程なくして塔間が唱え始めた呪文に込められた重苦しい気配が周囲に漂い始める。
「〝同じ顔をした化け物が今夜も苦痛を連れて来て〟〝私のいない世界で笑う。お前を許せる日は来ない〟」
そんな中でさらに威迫をするように、右足の靴先で床を踏み鳴らす仕草をした塔間の口から紡ぎだされていく呪文の〝根源〟は塔間の中に在る〝負の記憶〟だけではなく―――――己の元から離れることを選択した吊戯に対する〝厭悪の感情〟含まれたもので。
吊戯は反射的に顔を強張らせ。真昼と瑠璃もまた神妙な面持ちで塔間を見据えていた中で。
「〝世界は苦痛で満ちている〟」
左右の脚を交差させた塔間の動きに合わせるように、肩に掛かっていた格子模様のストールが翻り―――――塔間の足元から伸びていた長身の影がズと圧倒的な存在感を纏いながら色濃く変質し始める。
「〝
そして呪文が完結した刹那―――――。
「・・・!?」
―――――――塔間さんの姿が!?
「消え・・・」
スゥと姿を消した塔間に対し瑠璃と真昼は驚愕に目を見開いてしまう。
しかし、その直後。その場に残されていた〝黒い影〟がスッと地を滑るように動いて。
「―――――っ!!」
微かに感じたその気配に瑠璃は無意識の内にロッドを具現化させて構えると防御壁を張った。
その瞬間―――――姿を視認することは叶わなかったが、バチッ!と何かが打つかってきた音がして。
「え・・・・・・?」
真昼が戸惑いの声を漏らす。そこに吊戯が険しい顔つきで剣を構えたまま走ってきて。
バキン!―――――と2発目となるであろう、目に見えない何かを剣で弾くと、ヒュッとそのまま振り翳そうとしたのだが。
しかしそこでドッと脇腹に一撃を食らってしまい。
「・・・ッ」
ミシッと骨が軋む音とともに息を詰まらせてしまった吊戯の顔が引き攣ったものになり。
「なっ・・・・・・!?」
「吊戯さん!?」
目を見開いた真昼と瑠璃が声を上げると。
「なんだ吊戯。お前、本当に俺を殺せるのか?」
冷然とした台詞が聴こえてきて。
「忘れるなよ。お前に戦い方を教えたのは俺だぞ。お前の動きの癖は自分のことのようにわかる」
「塔・・・間さ・・・・・・」
ドサと膝から崩れ落ちた吊戯は剣を手放した右手を地面に着けた態勢で、げほっと咳いた後、微かに荒い息を吐き出しながら彼の名前を口にする。
と―――――
「まあ。それでも俺を殺せなきゃお前は俺から解放されないんだがな」
嘲笑するように塔間が口にしたその言葉に―――――。
「・・・・・・ちがう。オレは・・・」
動揺を見せた吊戯の顔には冷や汗が浮かんだのだが。
『吊戯さん!』
その様を目にした真昼と瑠璃が強い口調で呼び掛けると。
―――――・・・・・・そうだ。オレがここに来たのは二人と一緒に彼を止める為だ。
平静さを取り戻した吊戯は、口端を吊り上げながら笑みを浮かべて。
「・・・気をつけて。姿が見えなくなっただけで彼は
右手に剣を握り締めながら、ゆっくりと立ち上がり。視線を前方に佇む影に向けながらそう告げてくる。
「真昼。瑠璃」
そこへトンと壁を蹴って、此方側に跳躍してきたクロが合流してきて。
「クロ。遅くなって悪い」
トッと下り立った相棒にそう言った真昼に続いて。
「クロ。色々とごめんなさい。私・・・・・・」
「瑠璃、覚えとけよ。どんなことがあろうと、お前はオレの〝ミストレス〟だ」
言葉を口にしようとした瑠璃の心情を察したクロは間髪を入れずにそう言うと。
「・・・・・・クロ・・・・・・」
目を見開いた瑠璃の左手にそっと伸ばした右手で触れながら、傷ついた親指に唇を寄せて。
「―――――〝解約〟は受け付けてねーから安心しろ」
さらにそう宣言した処で。主人の方に向き直ると―――――
「真昼・・・腕、どーした?」
「折れた。でも大丈夫」
平然とした面持ちで負傷したという事実を告げた上で。「一緒に戦うお!?」共に戦うというその意思を口にしようとした真昼はいきなり反対の左腕を無造作にクロに掴まれて。そのままぐいと持ち上げられた為に、言葉をどもらせてしまい。「なっ、なんだよ!?」と驚きの声を上げてしまう。
しかし、そんな真昼の反応にはクロは構うことなく。
「・・・ったく・・・。両腕折るなよ。オレは家事とかできねーし。お前のお世話すんのはごめんだそ・・・」
そう言いながら真昼の腕に牙を立てる。
そこでクロの行動の意図を理解した真昼は口元に笑みを浮かべると小気味よく言い返す。
「クロに家事なんて期待してねーよ!」
そしてクロの首元から伸びた主従の証の鎖とともに、真昼の左手に鎖を繋ぐ輪と武器である槍も具現化した処で。ロッドを構え直した瑠璃もまたクロの傍らに立つと。
「真昼君、大丈夫よ。クロには私のお手伝いっていう形で家事をお願いするから」
小さく微笑み、名案でしょ?と言ったのだが。
「しかしオレに出来る事は限られてるからな。毎食カップ麺でも文句言うなよ・・・」
「なんでそうなるんだよ!? それはさすがに文句言うぞ!」
前方を注視しつつ、己の本分を主張したクロに真昼の突っ込みが入る。
一方、気を緩めることなく、黙っていた吊戯もまた―――――
―――――多分、真昼くんと瑠璃ちゃんが揃った中での、この日常的なやり取りがいまのクロちゃんにとっては一番の〝原動力〟になるんだろうな。
顔には出さなかったものの、ははっと心中で笑いを零した。
刹那―――――
もう十分に猶予を与えただろうというように、ヒュンと姿を消したままの塔間からの攻撃が真昼目掛けて繰り出されてきて。
「―――――!」
瞬時に左手を地に突きながら真昼の前に体制を低くして跳んだ吊戯はバキッと剣で弾く。
「「!!」」
そこでハッとなった真昼と瑠璃も臨戦態勢を取った中で。
「あの鎖も見えねーのか」
ヒュンと鎖の音が聴こえた方向を見据えながらクロが漏らしたその言葉に、
「影は見えてるよ。慣れるまで難しいと思うけどオレが・・・」
吊戯は応じた中で突如として、ぐんと何かに右脚を絡め取られてしまい。
「!」
「え」
「吊戯さん?」
剣を右手に持ったまま、右脚を滑らせる体制で地面に座り込んでしまった吊戯の姿に、真昼と瑠璃は呆然となってしまう。
その隙を突くように、吊戯が手にしていた漆黒の刃が真昼と瑠璃目掛けて振り翳されてきて。
「・・・!!」
「な・・・?」
しかし、それは吊戯の意思によるものではなく。不可解な事態に当事者となる吊戯だけでなく、攻撃を防いだクロもまた困惑の声を漏らしてしまう。
その次の瞬間、吊戯の両手首と首周りには、頭上から具現化した漆黒の楔が絡みついた状態になっていて。
「何を驚いてるんだ? 俺の
ぐぐぐ・・・と身体の動きを操ろうとする楔に吊戯は必死に抗おうとするも敵わず。
「俺は所有物はもし落としても困らないよう、ちゃんと紐をつけておくタイプでな」
「・・・・・・っ」
塔間の台詞に、吊戯が微かに口元を引き攣らせる。
「お前のようにうっかり自分の
「塔間さん。この期に及んでまだ貴方はそんな心無い物言いをするんですか」
瑠璃もまた、塔間が口にしたその言葉に憤りを滲ませたその刹那―――――。
「『物』じゃねぇって言ってるだろ・・・!!」
真昼が塔間に向かって激昂したのだ。
ビリ・・・ッと空気を震わせた真昼の本気の怒号にクロが呆然と目を見開いた。
―――――けれどそれはほんの僅かな間の事で。
「・・・真昼。オレは・・・よかった」
ふと、眉尻を下げるとそう呟いたクロに対して今度は真昼が「え?」と目を瞬かせる。
一方、クロの言葉に込められた〝万感の想い〟にすぐさま気付いた瑠璃は静かな眼差しでクロを見つめる。
「お前がその言葉に怒れる人間でよかった」
主人である真昼は言ってしまえば〝単純なお人好し〟で、とにかく〝世話焼き〟だ。けれど―――――そんな真昼のおかげで〝
だからこそ―――――
「大丈夫だ。お前は負けねぇよ」
〝誓言〟を口にしたクロが両手の先に牙の爪を具現化させる。
強い絆で繋がった真昼から伝わってくる〝意志〟と〝想い〟によって、サーヴァンプであるクロは〝強靭な力〟で戦うことが出来る。
さらに真昼の隣には同じ志を持っている、唯一無二の存在である〝ミストレス〟の瑠璃が居るのだ。
「そうね。真昼君のことはクロと一緒に私が全力でサポートするから大丈夫よ」
クロの〝誓言〟に同調した瑠璃がロッドを掲げると、左腕に在る真紅のリングが光り耀いた。
「・・・ッ」
刹那、バッと右手に剣を握り締めた吊戯が此方に向かって駆け出してきて。
「―――――吊戯さん・・・・・・っ!」
瑠璃がロッドを構えて応戦の姿勢に入る。
同時に動いたクロが突き出されてきた吊戯の剣を牙の爪で弾こうとした。
その瞬間、ビタッと吊戯の身体は動きを止めていて。
「・・・・・・く・・・・・・」
吊戯の口から苦悶の声が漏れ出す。
金色の瞳と真紅の瞳がぶつかり合う。
塔間に肉体を支配された吊戯は必死に抗おうとしている。
唯一、己の意思で動かせる視線を吊戯はクロの後方に向けていく。
「!」
吊戯からの訴えに気付いたクロは右腕に瑠璃を。左腕に真昼を抱えて跳躍する。
その瞬間、バキッとクロ達が立っていた足元のコンクリートが大きく抉られて―――――微かに視えたのは塔間が操る〝鎖の影〟だった。
ハッキリと視認できるのは、剣を手に攻撃してくる吊戯のみだ。
ならば此方が打つべき施策は―――――
「デコちゃんのほうはオレが抑える。真昼、お前は集中してノッポの影をよく見てろ。瑠璃もそっちを頼む」
「お、おう」
「わかったわ」
体力と精神力の限界を迎えて昏睡状態になっていた弓景は、先に戦線離脱して物陰から戦況を見守っていた面子の中の一人であるロウレスの手により、ずるずると引きずられて何とか回収されたことから巻き込まれる心配はない。
そうして再び戦いの火蓋が切られた中で。
―――――腕や足の影が伸びたら攻撃が来る―――――
サーヴァンプと戦う時はまず主人を無力化させることが定石だ。
だからこそ瑠璃が真昼に付く事である程度は対処できるかと思われた。
しかし、かつて吸血鬼を相手に前線で戦っていた戦闘員という経歴を持つ塔間との経験値の差から、やはり優位な状況に持ち込むのは容易な話ではなく―――――。幾度もの激しい攻防を繰り返していた中で、クロをかわして此方に跳んできた吊戯の姿を目にした真昼と瑠璃はすぐさま体制を入れ替えて応戦しようとするも。ひらりと吊戯には身を翻されてしまい。その後に塔間からドッと真昼に一撃が撃ち込まれてしまったことから、すぐさまロッドに閃光を纏わせた瑠璃が〝影〟の動きを目で追いつつ、ブンッと撃ち出そうとするも。
「―――――・・・・・・っっぅ!!」
ドカッと右腕に打撃を受けてしまい、ロッドが手から転がり落ちてしまう。
「・・・・・・瑠璃姉っ!!」
それを目にした真昼が瑠璃の名前を叫んだ後に、そこに居るであろう塔間目掛けて槍を振り翳していこうとしたのだが。
「ッ」
バキッとさらに勢いを増した塔間からの打撃を食らってしまった真昼もまたバランスを崩して背中から倒れ込んでしまったのだ。
「真昼!! 瑠璃!!」
その様を目にしたクロが急ぎ二人の側に駆け付けようとすると。
「右だよ!」
先んじてバッと上に向かって跳躍した吊戯がそう叫んで。
「!?」
その吊戯からの呼びかけにクロは驚いた様子で眉を顰めながら一足飛びで真昼と瑠璃の前に移動すると―――――ヒュと振り下ろされてきた吊戯の剣を牙の爪で受け止める。さらにそこへ塔間から追い打ちの攻撃がくるも。そちらは鉤爪に変形させたコートの裾でバチッと弾くと。
「・・・いやあ。オレが言うなって感じ・・・だけど。見えてるオレにばっかり惑わされないで。ちゃんと・・・彼を見て」
ギギ・・・と互いに一歩も引くことが出来ない状態となった中で、眉を下げつつそう告げてきた吊戯に「無茶言うぜー・・・」とクロは顔を顰めながら応じる。
そんな吊戯とクロの攻防を、自力で左手を使って状態を起こした真昼とともに、瑠璃は呆然と立ち尽くしながら見ていることしか出来なかったのだが。
ふいに視界に捉えた〝影〟の動きにハッと瑠璃は目を見開くと。
「―――――クロっ!! 上!!」
地面に転がっていたロッドをバッと拾い上げて空間跳躍をしようとした。
「っ・・・・・あっ!?」
「瑠璃・・・・・・っ!?」
その刹那、ヒュッと足に見えない鎖が絡みついて―――――ダンッと床に投げ飛ばされてしまったのだ。
その様を見たクロは焦燥感を滲ませながら吊戯を振り切ろうとするも。
「ッ!」
クロもまたドッと頭部から背に掛けて、〝影〟から打撃を撃ち込まれたことにより、目を剥くと身体をくの時に折り曲げてしまう。
「瑠璃姉・・・・・・っ!! クロ・・・・・・っ!!」
―――――その二人の様に愕然となった真昼が声を上げると。
「ははは。なんだ。〝ミストレス〟のお嬢さんも君も威勢ばっかりだな」
嘲笑いを浮かべた塔間が真昼のすぐ傍まで接近してきて。
ヒュッと伸びた〝影〟の足の動きにハッと真昼が気づいた時には間に合わず―――――
「・・・・・・っ!」
ドッと下から腹部を蹴り上げられてしまったのだ。
「・・・・・・瑠璃ちゃん、真昼くん・・・・・・」
「―――――・・・・・・っっ」
―――――大丈夫。まだ私も真昼君も諦めるつもりはないわ・・・・・・。
眉を寄せながら瑠璃は身体を起こすと、地面に左手を突きながらげほっと咳き込んだ後に立ちあがった真昼もまた強い眼差しで〝影〟を見据えていた。
「せっかく高性能なサーヴァンプを持っているのにな。宝の持ち腐れと言うんだぞ」
そんな中、せせら笑うようにバキッと額への打撃が真昼に浴びせられる。
しかし、今度は倒れることなく、がばっと真昼がすぐに体制を戻すと。
真昼の傍らに空間跳躍した瑠璃がロッドを突き出していく。
「真昼・・・! 瑠璃・・・!」
クロが叫ぶ。
と―――――
「やれやれ。単調な攻撃だな。―――――君達のサーヴァンプは戦い方を教えてくれなかったのか?」
失笑を漏らした塔間からビッと瑠璃と真昼双方に向かって変則的な鎖攻撃が放たれてくる。
それをガキンと瑠璃はロッドで弾き、真昼もまたギリギリの処で避けた処で。
「違うわ」
「何を勘違いしてんだ」
揃って射るような眼差しで塔間を見据えると―――――バチン!と真昼が鎖を左手で掴んだのだ。
その光景にクロと吊戯が呆然となった中。
「クロが私達に教えてくれたのは戦い方じゃないわ」
「お前が吊戯さんに教えたのは戦い方じゃねぇ」
―――――私達は一人(独り)だった―――――
―――――けれど私達はクロと出逢って―――――
―――――再び手にすることが出来た―――――
―――――それは―――――
「大切な人と食卓を囲める〝幸せ〟よ!」
「誰かと一緒に食事ができる〝喜び〟だ!」
瑠璃と真昼の言葉が重なって響き渡る。
そして鎖による攻撃を止めて一気に塔間との距離を詰めた真昼が「バカ野郎!!」という怒声とともに、左手を拳に変えると塔間の右横面を殴ったのだ。
ドッと壁に叩き付けられた塔間が僅かに信じられないと言った面持ちで、眉を顰めながら睨みつけてくるも真昼は気にすることなく。
「席に着けって言ってんだ!!」
―――――勢いよくそう言い放つと。
塔間の制御が解けて、がく・・・と身体と両膝を突いた吊戯は―――――〝彼〟に救われてから―――――〝彼〟から分け与えられた食事を口にした時の出来事を思い出し。
「・・・しあわせとよろこび・・・。ああ、あれはそういう名前だったのか」
己の中に込み上げてきた〝充足感〟を噛みしめるように目を細めながらそう呟いた。
一方、真昼から怒りの鉄拳による制裁を受けた塔間は、口元に滲んだ血を左手の甲で拭う仕草をしながら、す・・・とまた姿をまた消そうとしたのだが。
「塔間さん。まだ、向き合おうとすることを避けるんですか」
「逃げるなよ。見えてんだぞ」
そんな塔間に対し、瑠璃と真昼が鋭い言葉をぶつけると―――――。
冷ややかな眼差しで、無表情に此方を見据えてきた塔間は、ドカッと真昼のことを左脚で蹴り飛ばしたのだ。
「真昼君!?」
「真昼!!」
瑠璃とクロの叫び声が重なって響き渡る。
そうしてドドッと床を転がって倒れた真昼の元に瑠璃がすぐさま駆け寄って行くと。
「ガキが」
先程、真昼が己の殴ったことに対する報復ということだったのだろう。
吐き捨てるように右手で口元を覆いながらそう言った後、今度こそス・・・と塔間は姿を晦まそうとしたのだが。
そこに剣を握り締めた吊戯が疾走してきて、塔間の右肩を貫いたのだ。
その予想だにしていなかった出来事に、塔間だけでなく、瑠璃と真昼もまた一瞬、呆然とした面持ちになったのだが―――――。
「・・・クロ!」
―――――程なくして我に返った真昼が相棒の名前を呼ぶと。
「おー」
体制を低くしたクロが、ズと闘志を漲らせながら返答をするのと同時に、地を蹴って空中で一回転すると。ジャケットの裾を伸ばして塔間の両手足を拘束しながら右手を突き出し、壁に叩き付けた処で左胸を貫いたのだ。
それを目にした吊戯は強張った面持ちで息を呑み―――――
「や・・・殺ったのか!?」
「・・・・・・兄さ・・・・・・」
憤怒の下位達とロウレスもまた戸惑いと不安に満ちた眼差しで様子を見ていたのだが。
「大丈夫よ」
―――――クロは塔間さんを殺すつもりはないわ。
静かな声音で瑠璃がそう言うと同時に、ずっ、と塔間の左胸から無数の鎖が絡みついた漆黒の小箱を掴んで取り出したのだ。
そしてその漆黒の小箱をクロが空中に向かって投げると、左手の中に武器である漆黒の槍を呼び寄せた真昼が―――――
「〝
そう叫ぶのと同時に漆黒の槍を漆黒の小箱目掛けて投げつけると。
真昼の武器であった槍は『鍵』に形態を変えていき。
鍵穴に突き刺さって―――――カチンという音が聴こえた瞬間。
瑠璃もまたロッドを掲げるとカッと眩い閃光が放たれて。
―――――真っ白な光がその場に満ち溢れたのだ。
【本館/24・11/16/別館/24・11/30掲載】
