第二十六章『賽の一振り』
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それは真昼自身の〝防衛本能〟がもたらした行動だった。
塔間の武器は『鎖』と『銃』だけではない。
『魔術師』である以上、その口から紡ぎ出される〝何らかの言葉〟も、攻撃手段に為りえるものなのだ。
しかし、不意を突いた真昼の攻撃にも、やはりというべきか塔間は眉一つ動かすことなく。
両手をズボンのポケットに入れたまま、右脚を曲げながら軽く背を反らして避けると。
「・・・なんだ。俺が呪文を使うのを警戒してるのか。安心しろ。お前ごときに―――――否、〝ミストレス〟のお嬢さんが相手だとしても必要ねぇよ。あれは疲れるしな」
塔間は冷然とした視線を真昼から後方に置いて厳戒態勢の構えを取りながら、無言で己を注視してきていた瑠璃にも滑らせると。
「あれは深く自分の記憶に呼びかけることで抑圧された強い感情を呼び起こす。その感情のエネルギーを道具を媒介にして力に変換できるのが魔術師ってわけだ」
魔術師が使う『呪文』に関しての補足説明を行い。
「感情が強いほうが勝つ・・・なんて言葉もあるが。あながち間違いでもない」
そう結論付けた後にチラリと昏倒したままの吊戯を一瞥すると。
「その点、吊戯はよく仕上がっただろ? 我ながらブリーダーの才能もある。わんわん! ってな」
徐に左手で影絵の犬の姿を模して見せながらそんな台詞を口にしてきたのだ。
「―――――っ!!」
しかし塔間のその言動は、瑠璃だけでなく、真昼もまた到底聞き流せるものではなかった。
決して比喩などではなく、文字通り〝全てを投げうって〟今日迄 、吊戯は『家族』であると想っていた塔間の為に生きてきたのだという『真実』だけでなく、吊戯の 『心の叫び声』にも気づいてしまったから。
「―――――まったく笑えない『最低最悪』の冗談ですね」
そして瑠璃が険しい眼差しで塔間を見遣ったその時、真昼も憤りを滲ませながら塔間を睨みつけていたのだが。
「ははははは。〝ミストレス〟のお嬢さんだけじゃなく、お前もか。揃いも揃って、ほんとに吊戯が好きだな」
塔間はしれっとした態度のまま、ニヤリと口端を吊り上げると。
「俺も少しは好かれたいもんだ。どうだ、何か同情を買える身の上話でもしようか。どんな話なら・・・」
此方に目線を合わせるように、長身の体躯を折り曲げる仕草をすると、左手を胸に添えながら、そんな提案をしてきたのだが。
「今聞こえてる叫び声はお前の 声だぞ」
真昼が鋭い眼差しで塔間を見据えながらそう言い放つと。
刹那、塔間から放たれる空気がこれまでとは比べ物にならない程の重圧感を感じさせるものに変わっていって。
「自分をヒーローにするために人様をかわいそう扱いすんじゃねぇよ」
迫るような低い声でそう言いながら、元の姿勢に戻った塔間は凄みのある眼差しで真昼を見下ろすと。
「俺の両親はクズだった。よくあるクズ親のイメージを適当に寄せ集めた感じで相違ない。虐待が日常の中で育ったが運良く俺は生き延びた」
塔間は自身の過去の境遇を口にしたのだ。
瑠璃は吊戯の精神と繋がってしまった時―――――〝始まりの記憶〟の断片を垣間見てしまったことから、塔間を取り巻く家庭環境が決して恵まれたものではなかったのだということだけは窺い知っていた。
だから塔間の口からその生い立ちを聞かされた真昼が戸惑いの色を滲ませた時、瑠璃は遣る瀬無さを覚えてそっと目を伏せたのだが―――――。
「そして十五の時、事故に見せかけて両親を殺した」
「・・・・・・っ!?」
その後に続けられた想定していなかった衝撃の告白に絶句してしまう。
しかし、塔間の非道な行いに関する話はそれだけには留まらず。
「その後も何度か邪魔になった奴を偽装して殺したが一度もバレたことはない。そう、だから、何も心配してくれなくていいぞ。殺したい奴は自分で殺すからな」
そうして自ら「・・・俺はただの 『純潔の悪人』『血統書』付きの悪人だ」そう宣言した塔間が左目の下にある模様のような傷跡をスッと左手で示しながら凄然とした笑みを浮かべると―――――それに呼応して具象化した漆黒の鎖が茫然とした面持ちで立ち尽くしていた真昼の右足首にジャッと絡みついてきて。
「―――――!」
「真昼君っ!!」
塔間が鎖を引っ張った事により、ズダッとバランスを崩して後ろに倒れかけた真昼の身体を瑠璃が咄嗟に後ろから支えるも。
塔間は容赦なく、真昼を引きずり倒そうとしてきて。
「吊戯の〝父親〟の話は聞いたか? あれもなかなかでな。俺が十三の時だ。隣の家から死にかけた赤ん坊を攫った。俺はその何も知らない赤ん坊を自分に都合がいいように飼い殺したわけだが」
目を眇めながら此方を見遣りつつ、無情な言葉を紡ぎ出す。
そしてぐんっと強い力で鎖を引っ張られたことにより、遂に真昼の身体をその場に瑠璃の力だけでは踏み止まらせることが出来なくなりかけた処で。
「―――――瑠璃姉、俺なら大丈夫だから手を放してくれっ!!」
「っ!」
そう叫んだ真昼の言葉に従って、瑠璃がパッと手を離すと、手にしていた槍の先端をカッと地に突き立てながら真昼は鎖に捕らわれたままの足を引っ張られた勢いに任せる形で塔間目掛けてブンと振り被ると。塔間は真昼の蹴りを避ける形で一歩後ろに下がり。
右足首に絡みついていた鎖が頬を掠めた後に外れた処で真昼がトッと地に着地すると。
「成長するにつれ吊戯 は父親に似てきた。一見、気の弱そうな細身の男だった。困ったように笑う顔なんかそっくりだ。笑っちまうぜ。あんな人がよさそうに笑う冴えない男が家の中じゃあ、三歳にも満たないガキをストレスの捌け口にしてんだからな。本質なんてのは外からじゃわからねぇもんだ」
塔間は右手に握りしめていた拳銃を指先で器用にくるくると回転させながら言う。
そこで塔間の動きを止めるべく、槍を手にまた踏み込みながら攻撃を仕掛けに行った真昼と連携して瑠璃もまたロッドを突き出していく。
「まあ『本当』のことなんてどこにもありはしないんだがな。すべての事象は結局、誰かの視点の『語り』でしかない。『どんな奴か』じゃない。『どんな奴だと語られるか』だ」
しかし、塔間は焦る様子もなく、二対の此方の攻撃をまるでステップでも踏むように躱しながら〝自らの視点〟による見解を語り続ける。
―――――お前らが「猫を拾った」と語ったから「それ」は「猫」だが―――――
―――――実際は「何 」だ?―――――
―――――お前らが「事故で死んだと」と語れば死因は「事故」だが―――――
―――――実際はどうだ?―――――
―――――俺が「吊戯 を攫った」と語れば「それ」は「人」だが―――――
―――――俺が「剣 を拾った」と語れば「それ」は「武器」だ―――――
―――――信頼できる事象など何もないんだ―――――
―――――誰もが信用できない語り手だ―――――
一方で真昼と瑠璃も、塔間とぶつかり合いの戦いを繰り広げる中で、それに対する『答』を導き出そうとしていた。
―――――たとえばこの置かれたサイコロの底面は何 か―――――
一人目は《見えている面から推測できる「6」だよ》と言った。
二人目は《どうだろうオレにはわかんないな。「7」かも》と言った。
三人目は《オレが前に振った時は「6」だった・・・》と言った。
四人目は《僕が「8」にしといたよ》と言った。
―――――コーヒーを飲んでいる時、コップの底は見えないみたいに―――――
―――――テーブルクロスの下に何が書いてあるかわからないみたいに―――――
―――――紙の表と裏を一度には見られないみたいに―――――
―――――結局世界はどこか一面しか見えない―――――
―――――隠れた部分が多すぎる―――――
―――――誰も《俺》に―――――
―――――誰も《私》に―――――
―――――すべてを語ってはくれない―――――
―――――・・・《いや》―――――
―――――・・・《いいえ》―――――
―――――本当は誰もが「自分の見える世界」のことしか知らないんだ―――――
―――――《俺》は―――――
―――――《私》は―――――
―――――《俺》に―――――
―――――《私》に―――――
―――――見えている情報のみで何を考えるのか―――――
―――――《考えろ》!―――――
―――――《考えて》!!―――――
―――――【自分】は!!!―――――
真昼が右手に構えた槍を指先で大きく円を描くようにフォンと旋廻させる。
瑠璃も真昼の動きに合わせて閃光を纏ったロッドをブンと勢いよく振るう。
そんな阿吽の呼吸による攻撃が遂に拳銃を持っていた塔間の手元に中り。
バシッと拳銃が弾かれて円を描きながら宙に飛んでいくと―――――。
「今だわ!!」
「どこまでなめてやがるんだ」
瑠璃が上げた言葉に対して、ぼそと塔間が悪態を吐く。
「塔間!!」
そんな塔間目掛けて、槍を手放した真昼が叫びながら勢いよく右手を伸ばしていく。
そして塔間のネクタイをガシッと掴むことに成功したのだが―――――。
刹那、冷徹な眼差しで真昼の姿を捉えた塔間が、漆黒の鎖を真昼の右腕に絡みつかせた状態で具現化させて―――――ボギン! と腕の骨を圧し折ったのだ。
我が身に起った事態に、一瞬、「え」と真昼は茫然と目を見開いて。
「―――――あ゛あ゛ああっ」
「っ・・・・・・!!?」
襲ってきた痛みに絶叫した真昼の姿を目にした瑠璃は愕然となり。
「―――――真昼君を離してっっっ!!!」
バチバチバチッと真紅の放電を纏ったロッドを塔間目掛けて振り翳そうとするも。
ドカッと塔間の脚で腹部を蹴られてしまい。
「・・・・・・っっっぁ!!?」
激しい痛みと共に込み上げきた吐き気に、左手で口元を覆いながらガクと片膝を折った瑠璃の右手から、カランとロッドが地面に転がり落ちる。
「さっき〝弟〟が同じ目に遭ったばかりだというのに。間合いには気をつけるべきだというのをもう忘れたのか?」
そんな瑠璃の様を尻目に、塔間は乱れたネクタイを左手で締め直しつつヒュンと円を描きながら落ちてきた拳銃を、ぱしっと右手でキャッチすると。
「もういいだろ」
―――――これ以上はもう時間の無駄だ。
吐き捨てるようにそう言って。
ゴンと真昼の米神に銃口を突きつけたのだ。
「・・・・・・まひる、くん・・・・・・」
絶望の淵に立たされた瑠璃の瞳から涙が零れ出す。
―――――・・・・・・私の力じゃ・・・・・・やっぱり塔間さんには勝てない・・・・・・。
―――――だけど・・・・・・それでも『私』はクロの〝ミストレス〟として〝立ち向かう側〟で在り続けなければいけない・・・・・・っ。
―――――・・・・・・人は独りでは生きていけない。けれど、手を伸べてくれる人が一人でもいてくれたら。自分の『名前』を呼んでくれる人が一人でもいてくれたら。それが心を照らす〝希望の光〟になると『私』は信じているから・・・・・・っ。
刹那―――――
―――――瑠璃の心の叫びに応えるように、意識の内に浮かんできたそれは・・・・・・。
―――――果たして救いとなるモノだったのだろうか。
カッと眩い真紅の閃光が瑠璃の身体から放たれる。
ドン!!
それと同時に―――――塔間もまた真昼に突き付けていた銃のトリガーを引き絞った事により弾丸が勢いよく発射されたのだ。
―――――『クロ』―――――
「―――――!」
真昼と別れて、強欲組の後を追っていたクロはふと、耳朶に聴こえた声にハッと通ってきた道を振り返る。
―――――チリン―――――
クロの首に在る契約の証の鈴が鳴り響く。
―――――真昼? 否、瑠璃の声も一瞬だけど、聴こえた気がする。
しかし眉を顰めたクロがその場に立ち止まっていたのは数秒のことだった。
崩落が続く支部の完全崩壊までに残された猶予時間は決して長くはないのだ。
―――――とにかく急いでロウレス達を見つけ出すしかねー。
【本館/23・2/11/別館/23・2/11掲載】
LYRICS~詞 By laudese
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※詩は素材サイト(閉鎖済み)よりお借りしたモノになります。
塔間の武器は『鎖』と『銃』だけではない。
『魔術師』である以上、その口から紡ぎ出される〝何らかの言葉〟も、攻撃手段に為りえるものなのだ。
しかし、不意を突いた真昼の攻撃にも、やはりというべきか塔間は眉一つ動かすことなく。
両手をズボンのポケットに入れたまま、右脚を曲げながら軽く背を反らして避けると。
「・・・なんだ。俺が呪文を使うのを警戒してるのか。安心しろ。お前ごときに―――――否、〝ミストレス〟のお嬢さんが相手だとしても必要ねぇよ。あれは疲れるしな」
塔間は冷然とした視線を真昼から後方に置いて厳戒態勢の構えを取りながら、無言で己を注視してきていた瑠璃にも滑らせると。
「あれは深く自分の記憶に呼びかけることで抑圧された強い感情を呼び起こす。その感情のエネルギーを道具を媒介にして力に変換できるのが魔術師ってわけだ」
魔術師が使う『呪文』に関しての補足説明を行い。
「感情が強いほうが勝つ・・・なんて言葉もあるが。あながち間違いでもない」
そう結論付けた後にチラリと昏倒したままの吊戯を一瞥すると。
「その点、吊戯はよく仕上がっただろ? 我ながらブリーダーの才能もある。わんわん! ってな」
徐に左手で影絵の犬の姿を模して見せながらそんな台詞を口にしてきたのだ。
「―――――っ!!」
しかし塔間のその言動は、瑠璃だけでなく、真昼もまた到底聞き流せるものではなかった。
決して比喩などではなく、文字通り〝全てを投げうって〟
「―――――まったく笑えない『最低最悪』の冗談ですね」
そして瑠璃が険しい眼差しで塔間を見遣ったその時、真昼も憤りを滲ませながら塔間を睨みつけていたのだが。
「ははははは。〝ミストレス〟のお嬢さんだけじゃなく、お前もか。揃いも揃って、ほんとに吊戯が好きだな」
塔間はしれっとした態度のまま、ニヤリと口端を吊り上げると。
「俺も少しは好かれたいもんだ。どうだ、何か同情を買える身の上話でもしようか。どんな話なら・・・」
此方に目線を合わせるように、長身の体躯を折り曲げる仕草をすると、左手を胸に添えながら、そんな提案をしてきたのだが。
「今聞こえてる叫び声は
真昼が鋭い眼差しで塔間を見据えながらそう言い放つと。
刹那、塔間から放たれる空気がこれまでとは比べ物にならない程の重圧感を感じさせるものに変わっていって。
「自分をヒーローにするために人様をかわいそう扱いすんじゃねぇよ」
迫るような低い声でそう言いながら、元の姿勢に戻った塔間は凄みのある眼差しで真昼を見下ろすと。
「俺の両親はクズだった。よくあるクズ親のイメージを適当に寄せ集めた感じで相違ない。虐待が日常の中で育ったが運良く俺は生き延びた」
塔間は自身の過去の境遇を口にしたのだ。
瑠璃は吊戯の精神と繋がってしまった時―――――〝始まりの記憶〟の断片を垣間見てしまったことから、塔間を取り巻く家庭環境が決して恵まれたものではなかったのだということだけは窺い知っていた。
だから塔間の口からその生い立ちを聞かされた真昼が戸惑いの色を滲ませた時、瑠璃は遣る瀬無さを覚えてそっと目を伏せたのだが―――――。
「そして十五の時、事故に見せかけて両親を殺した」
「・・・・・・っ!?」
その後に続けられた想定していなかった衝撃の告白に絶句してしまう。
しかし、塔間の非道な行いに関する話はそれだけには留まらず。
「その後も何度か邪魔になった奴を偽装して殺したが一度もバレたことはない。そう、だから、何も心配してくれなくていいぞ。殺したい奴は自分で殺すからな」
そうして自ら「・・・俺は
「―――――!」
「真昼君っ!!」
塔間が鎖を引っ張った事により、ズダッとバランスを崩して後ろに倒れかけた真昼の身体を瑠璃が咄嗟に後ろから支えるも。
塔間は容赦なく、真昼を引きずり倒そうとしてきて。
「吊戯の〝父親〟の話は聞いたか? あれもなかなかでな。俺が十三の時だ。隣の家から死にかけた赤ん坊を攫った。俺はその何も知らない赤ん坊を自分に都合がいいように飼い殺したわけだが」
目を眇めながら此方を見遣りつつ、無情な言葉を紡ぎ出す。
そしてぐんっと強い力で鎖を引っ張られたことにより、遂に真昼の身体をその場に瑠璃の力だけでは踏み止まらせることが出来なくなりかけた処で。
「―――――瑠璃姉、俺なら大丈夫だから手を放してくれっ!!」
「っ!」
そう叫んだ真昼の言葉に従って、瑠璃がパッと手を離すと、手にしていた槍の先端をカッと地に突き立てながら真昼は鎖に捕らわれたままの足を引っ張られた勢いに任せる形で塔間目掛けてブンと振り被ると。塔間は真昼の蹴りを避ける形で一歩後ろに下がり。
右足首に絡みついていた鎖が頬を掠めた後に外れた処で真昼がトッと地に着地すると。
「成長するにつれ
塔間は右手に握りしめていた拳銃を指先で器用にくるくると回転させながら言う。
そこで塔間の動きを止めるべく、槍を手にまた踏み込みながら攻撃を仕掛けに行った真昼と連携して瑠璃もまたロッドを突き出していく。
「まあ『本当』のことなんてどこにもありはしないんだがな。すべての事象は結局、誰かの視点の『語り』でしかない。『どんな奴か』じゃない。『どんな奴だと語られるか』だ」
しかし、塔間は焦る様子もなく、二対の此方の攻撃をまるでステップでも踏むように躱しながら〝自らの視点〟による見解を語り続ける。
―――――お前らが「猫を拾った」と語ったから「それ」は「猫」だが―――――
―――――実際は「
―――――お前らが「事故で死んだと」と語れば死因は「事故」だが―――――
―――――実際はどうだ?―――――
―――――俺が「
―――――俺が「
―――――信頼できる事象など何もないんだ―――――
―――――誰もが信用できない語り手だ―――――
一方で真昼と瑠璃も、塔間とぶつかり合いの戦いを繰り広げる中で、それに対する『答』を導き出そうとしていた。
―――――たとえばこの置かれたサイコロの底面は
一人目は《見えている面から推測できる「6」だよ》と言った。
二人目は《どうだろうオレにはわかんないな。「7」かも》と言った。
三人目は《オレが前に振った時は「6」だった・・・》と言った。
四人目は《僕が「8」にしといたよ》と言った。
―――――コーヒーを飲んでいる時、コップの底は見えないみたいに―――――
―――――テーブルクロスの下に何が書いてあるかわからないみたいに―――――
―――――紙の表と裏を一度には見られないみたいに―――――
―――――結局世界はどこか一面しか見えない―――――
―――――隠れた部分が多すぎる―――――
―――――誰も《俺》に―――――
―――――誰も《私》に―――――
―――――すべてを語ってはくれない―――――
―――――・・・《いや》―――――
―――――・・・《いいえ》―――――
―――――本当は誰もが「自分の見える世界」のことしか知らないんだ―――――
―――――《俺》は―――――
―――――《私》は―――――
―――――《俺》に―――――
―――――《私》に―――――
―――――見えている情報のみで何を考えるのか―――――
―――――《考えろ》!―――――
―――――《考えて》!!―――――
―――――【自分】は!!!―――――
真昼が右手に構えた槍を指先で大きく円を描くようにフォンと旋廻させる。
瑠璃も真昼の動きに合わせて閃光を纏ったロッドをブンと勢いよく振るう。
そんな阿吽の呼吸による攻撃が遂に拳銃を持っていた塔間の手元に中り。
バシッと拳銃が弾かれて円を描きながら宙に飛んでいくと―――――。
「今だわ!!」
「どこまでなめてやがるんだ」
瑠璃が上げた言葉に対して、ぼそと塔間が悪態を吐く。
「塔間!!」
そんな塔間目掛けて、槍を手放した真昼が叫びながら勢いよく右手を伸ばしていく。
そして塔間のネクタイをガシッと掴むことに成功したのだが―――――。
刹那、冷徹な眼差しで真昼の姿を捉えた塔間が、漆黒の鎖を真昼の右腕に絡みつかせた状態で具現化させて―――――ボギン! と腕の骨を圧し折ったのだ。
我が身に起った事態に、一瞬、「え」と真昼は茫然と目を見開いて。
「―――――あ゛あ゛ああっ」
「っ・・・・・・!!?」
襲ってきた痛みに絶叫した真昼の姿を目にした瑠璃は愕然となり。
「―――――真昼君を離してっっっ!!!」
バチバチバチッと真紅の放電を纏ったロッドを塔間目掛けて振り翳そうとするも。
ドカッと塔間の脚で腹部を蹴られてしまい。
「・・・・・・っっっぁ!!?」
激しい痛みと共に込み上げきた吐き気に、左手で口元を覆いながらガクと片膝を折った瑠璃の右手から、カランとロッドが地面に転がり落ちる。
「さっき〝弟〟が同じ目に遭ったばかりだというのに。間合いには気をつけるべきだというのをもう忘れたのか?」
そんな瑠璃の様を尻目に、塔間は乱れたネクタイを左手で締め直しつつヒュンと円を描きながら落ちてきた拳銃を、ぱしっと右手でキャッチすると。
「もういいだろ」
―――――これ以上はもう時間の無駄だ。
吐き捨てるようにそう言って。
ゴンと真昼の米神に銃口を突きつけたのだ。
「・・・・・・まひる、くん・・・・・・」
絶望の淵に立たされた瑠璃の瞳から涙が零れ出す。
―――――・・・・・・私の力じゃ・・・・・・やっぱり塔間さんには勝てない・・・・・・。
―――――だけど・・・・・・それでも『私』はクロの〝ミストレス〟として〝立ち向かう側〟で在り続けなければいけない・・・・・・っ。
―――――・・・・・・人は独りでは生きていけない。けれど、手を伸べてくれる人が一人でもいてくれたら。自分の『名前』を呼んでくれる人が一人でもいてくれたら。それが心を照らす〝希望の光〟になると『私』は信じているから・・・・・・っ。
時鳥の記憶
忘れていた想い
手をつないで確かめた絆
覚えている君の温かみ
雲雀の記憶
夜明け前
君の源さえも無くなって
眠っていた心が蠢き出す
此処に居るよと言って
忘れていた想い
手をつないで確かめた絆
覚えている君の温かみ
雲雀の記憶
夜明け前
君の源さえも無くなって
眠っていた心が蠢き出す
此処に居るよと言って
刹那―――――
―――――瑠璃の心の叫びに応えるように、意識の内に浮かんできたそれは・・・・・・。
―――――果たして救いとなるモノだったのだろうか。
カッと眩い真紅の閃光が瑠璃の身体から放たれる。
ドン!!
それと同時に―――――塔間もまた真昼に突き付けていた銃のトリガーを引き絞った事により弾丸が勢いよく発射されたのだ。
―――――『クロ』―――――
「―――――!」
真昼と別れて、強欲組の後を追っていたクロはふと、耳朶に聴こえた声にハッと通ってきた道を振り返る。
―――――チリン―――――
クロの首に在る契約の証の鈴が鳴り響く。
―――――真昼? 否、瑠璃の声も一瞬だけど、聴こえた気がする。
しかし眉を顰めたクロがその場に立ち止まっていたのは数秒のことだった。
崩落が続く支部の完全崩壊までに残された猶予時間は決して長くはないのだ。
―――――とにかく急いでロウレス達を見つけ出すしかねー。
【本館/23・2/11/別館/23・2/11掲載】
LYRICS~詞 By laudese
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※詩は素材サイト(閉鎖済み)よりお借りしたモノになります。
