第二十六章『賽の一振り』
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賽の一振り
―――――なんで塔間さんがここにいるんだ!?
―――――確か指令室のほうにいたはずじゃ・・・。
吊戯と〝憤怒〟の真祖を捜していた中で遭遇した塔間に真昼が当惑した中。
瑠璃は警戒の色を浮かべた眼差しで塔間を見据えると―――――。
「・・・・・・塔間さん、どうして貴方が此処に居るんですか?」
「それはこちらの台詞なんだがな。てっきり〝怠惰〟と一緒に逃げ出したとばかり思っていた〝ミストレス〟のお嬢さんと、まさかこんな処で再会できるとはな」
肩越しに此方に目を向けてきた塔間は皮肉めいた口調でそう返してきた後。スッと右側に向かって反れる動作をして見せてきて。そこで塔間の姿に隠されて見えていなかった、俯せに倒れている吊戯と、瓦礫の山に下半身を圧し潰されかけた状態で、さらに血を流しながら倒れ伏す、ザ・マザーの姿が晒されることとなり。
「吊戯さん!? マザーさんっ!?」
その姿を目にして愕然となった瑠璃が二人の元に走り寄って行くと。
「な、何があったんです」
真昼もまた塔間の元に近づいて行って事情を尋ねようとしたのだが。
「〝ミストレス〟のお嬢さんの同行者は君だけか?」
刹那、チラリと視線を向けてきた塔間から感じた威圧的な気配に「え?」と立ち竦んでしまう。しかしその後に「あ、はい」と一先ず頷いて見せると。
「どうして君と〝ミストレス〟のお嬢さんが、こんなところまで来ている・・・?」
「あ・・・えと、御国さんにここまでの通路を教えてもらって・・・。そこから上に戻れます!」
為された詰問に真昼が戸惑いの色を浮かべつつも包み隠さず答えると。
「御国か・・・」塔間は目を眇めながら嫉妬の吸血鬼の主人である彼の名前を呟いて。
その時、吊戯とマザーの様子を確認していた瑠璃は―――――
―――――吊戯さんは呼吸をしていて、気を失っているだけみたいだけど・・・・・・。
―――――マザーさんのほうは下半身が瓦礫に埋もれているだけでなく、上半身は銃で撃たれたらしき形跡がたくさんあって出血が酷い・・・・・・っ。
グッと眉根を寄せると、右手で胸元の『鍵』を握り締めながら立ち上がり。
「―――――塔間さん、もうあまり猶予がないことは貴方も分かっていらっしゃる筈ですよね。私と真昼君は吊戯さんとマザーさんを助けに来たんです。ですから私達の邪魔はしないで貰えますか」
塔間に対する不信感を隠すことなく、刺々しい口調で瑠璃が口にした言葉に対して。
「〝邪魔はしないで貰えますか〟―――――とは、随分な物言いだな。〝ミストレス〟のお嬢さん」
塔間は淡々とした声音で応じてきたものの。徐に掲げられた塔間の右掌の中には具現化した漆黒の拳銃があり。
「まったく本当に扱いずらいことこの上ないな」
冷めた眼差しで瑠璃を見遣った塔間がそう呟いた刹那―――――その拳銃の照準もまた瑠璃に向けられていて。
「・・・・・・っ!?」
「・・・・・・瑠璃姉っ!!?」
しかし、瑠璃が『鍵』の力を発動させて防衛しようとしたのと同時に、焦燥感を滲ませた真昼が瑠璃の元に向かってダッと駆け出した瞬間。
「・・・・・・」
塔間は真昼のほうに視線を滑らせると―――――
―――――パン
スッと標的を真昼に変えて発砲したのだ。
「な・・・・・・」
その塔間の思わぬ行動に瑠璃は一瞬、絶句してしまうも。
ガガガガッ!!!!
黒い影に覆われた状態で後方に向かって勢いよく飛ばされていった真昼の姿を目にして。
「―――――真昼君・・・・・・っ!!?」
蒼白な面持ちになりながら『鍵』をロッドに変えて、白銀の閃光を纏わせながらダッと真昼の傍に一気に跳躍すると。
黒い影は真昼の右手の中で武器である槍の形状に戻っていったものの―――――銃弾は武器に食い込んでいて。
咄嗟に武器を発動させたおかげで、九死に一生を得ることができたものの。
真昼の顔は恐怖に苛まれたものになっていて。
「・・・・・・瑠璃・・・・・・姉・・・・・・・」
「えぇ・・・・・・」
身体を戦慄かせながら名前を口にした真昼に瑠璃は膝を突きながら頷いて。
ロッドを『鍵』に戻した処で真昼を落ち着かせるために
ドッドッドッドッという激しい動機が伝わってきたのと同時に真昼の鼻からは僅かながら血が垂れてきていて。
「真昼君、鼻血が・・・・・・」
そう瑠璃が言うと、真昼自身もまた気づき、そうして左手で鼻を抑えながら起き上がると。
「・・・なんだ。
此方の様子を黙って見ていた塔間が冷めた声音でそう言いながら手にしていた銃を下ろして。
「本能的な恐怖は自身を守る砦だ」
勉強になっただろうと言わんばかりの口調でそう言った塔間に対して。
「塔間さん!! 貴方って人は!! 本当に一体何を考えているんですか!?」
〝―――――塔間は吊戯と何かをしようとしている―――――〟
眦を吊り上げながら瑠璃が激昂する。
その時、真昼が思い出したのは盾一郎から聞かされたその言葉で。
一方、塔間はやれやれと言わんばかりの態度で左手をズボンのポケットに突っ込むと。
「なんにでも突っ込んでくる習性は
瑠璃の言葉には答えることなく、真昼に目を向けながら嘲笑の笑みを浮かべて。
「!?」
塔間のその言葉に真昼が微かに動揺した面持ちになると。
「受け売りの
―――――『シンプルに考えて』―――――
塔間が口にしたその台詞は、真昼の思想を構成している言葉だった。
「シンプルにどうするって言うんだ? 話し合いか? 殴り合いか? ブッ飛ばして目を覚まさせてくれるか? そもそもシンプルに考えてって字数が多いんだよな。全然シンプルじゃない。たまにお前ら適当に言ってるだろ。鬱陶しい。聞くたびにウザったいと思ってた。殺すぞ」
それからゆっくりと此方に向かって『悪意』に満ちた言葉を紡ぎ出しながら塔間は近づいてきたのだが。その時、塔間の足元からは凄惨な『殺意』がまるでクジャクの羽の如く広がって具象化していたのだ。
「あいつが嘆くのは見物だろうから首から上は残してやりたいが・・・どうせ崩落に巻き込まれてグチャグチャ。もともと見れた顔でもないしどうでもいいか。何よりそうなれば、さすがの〝ミストレス〟のお嬢さんも堪えて従順になるだろうしな」
そうして嘲りの笑みを浮かべた塔間に対して―――――
「塔間さん。そんな事態になるのを私が黙って見ているなんてことがあると、本気で貴方は思ってるんですか」
瑠璃は怒りの感情を露わにすると、一度、ナイフで傷を付けていた左手の親指に自ら歯を立てて。
―――――クロ! ごめんなさい。この人を止める為には〝血〟の力が絶対に必要になるから・・・・・・っ!!
心の中で詫びるのと同時に、ジワリと滲み出てきた血を『鍵』に触れさせる。
刹那、カッと真紅の閃光を放つのと同時にその色に染まったロッドを手にした瑠璃が臨戦態勢の構えに入ると。
「・・・・・・瑠璃姉・・・・・・」
瑠璃のその行動を目にして真昼が呆然自失状態になった中。
「そうだな。やはり〝ミストレス〟のお嬢さんには一度、痛い目を見て貰う必要があるか。言葉ですべてが解決できるのはママのお腹の中までだからな」
塔間は二つ目の武器である漆黒の鎖を、ジャラ・・・と音を響かせながら、左手の中に具現化させると。
「さっさと生まれろ。ハッピーバースデーMr.シンプル二世」
真昼に対してもまた、挑発するようにそう言ったのだ。
結果、真昼は塔間のその言葉によってさらに大きく精神を揺さぶられることになってしまう。
「ミスターシンプル・・・・・・〝二世〟・・・・・・? 二世って・・・誰のことを・・・言って・・・」
―――――真昼の『母親』は事故で亡くなっている。
―――――そして一人になって、行く先がなかなか決まらなかった真昼を引き取ったのが『叔父』である徹だった。
―――――だから真昼は『父親』が何者であるのかを知らない。
しかし、いま対峙している男は真昼の事を〝二世〟と呼んだ・・・・・・。
「まさか・・・」
張り詰めた面持ちで真昼が塔間を見返す。
―――――・・・・・・真昼君の父親と塔間さんは何か関係があるっていうの?
そして瑠璃も緊張感を漲らせながら眉を顰めつつ塔間を見据えると―――――。
「・・・ああ」
塔間は一瞬、過去を思い起こすかのように、スッと視線を逸らす仕草をして見せたものの。
「〝叔父さん〟と〝甥っ子〟じゃ二世とは言わないか」
そのすぐ後に真昼に対して口にした〝二世〟という呼び名を否定する言葉を口にしてきて。
そこで真昼が無意識の中で、ほ・・・と安堵の息を漏らすと。
「まあいいだろ。血は繋がってるんだしな」
塔間は蔑むような笑みを浮かべて―――――真昼の気が緩んだその隙を突いて、手にしていた鎖で攻撃を仕掛けてきたのだ。
「―――――っくぅ!!」
しかし、ゴッと振り翳されてきたその鎖を、塔間の様子に注意を払ったままでいた瑠璃がギリギリの処でロッドを用いて弾き飛ばすと。
「瑠璃姉っ!?」
愕然となりながら声を上げた真昼に向かって、
「城田徹とは
瞬時に身を翻した塔間がまた鎖を使って奇襲を仕掛けてきて。
真昼は槍で応戦するも、しかし間に合わずに壁際に向かって弾き飛ばされてしまう。
「―――――真昼君っ・・・・・・!?」
そして背中から壁に叩き付けられてしまった真昼の元に瑠璃が急いで走り寄ると。
トンと地面に着地した塔間は冷え冷えとした眼差しで此方を見遣りながら、
「・・・・・・結局のところ、お前がやってんのは大好きな叔父さんの真似事だろ」
吐き捨てるようにそう言い。鎖を消失させてから代わりにズボンのポケットから取り出した煙草にシガレットで火を付けて。
「ヒーロー面して『シンプルに考えて俺達だろ』『俺達が助ける』『きっとわかりあえる』吊戯と何を話したか知らんが所詮他人だろ」
スパ・・・と紫煙とともに吐き捨てるようにその言葉を紡ぎ出した塔間は真昼を抱き起した瑠璃のこともまた蔑むような眼差しで一瞥すると。
「〝ミストレス〟のお嬢さんも、やたらと吊戯のことを気にかけてくれてはいたが、それもまた結局はただの〝自己満足〟であり〝偽善的〟でしかない。『悲しんでる人を放っておけない』か? 相棒が、恋人が、困ってるから手を貸してやりたいってか?」
紫煙を燻らせながら塔間は抑揚のない声音で言う。
「さらに言っちまえば吸血鬼がどうのこうのも本来お前らには関係ない話だ。・・・弱すぎるんだよな。戦う理由が」
―――――〝自己満足〟であり〝偽善的〟でしかない。
―――――それなら〝本当の優しさ〟というのは一体どういうモノなのか。
―――――他者を〝偽善者〟呼ばわりして自らは向き合おうとしない。
―――――〝黙止〟を決め込むことが本当に正解なのか。
それを聞いた瑠璃は自らの心の内で自問自答する。
しかし、それに対する瑠璃の『答』は何度考えても〝同じモノ〟にしか辿り着かないのだ。
「戦う理由が弱すぎる? それはあくまでも〝貴方だけ〟の〝判断基準〟で物事を考えた場合にだけ当てはまるモノなんじゃないですか? 戦う理由は人それぞれで、その〝価値〟を決めるのもまた他の『誰』でもない!! 『自分』なのよ!!」
―――――だから私は『自分』の『意志』を絶対に曲げたりしない!!―――――
そして瑠璃が自ら選んだその『答』を示すべく、塔間に対して強い眼差しを向けると。
意識を完全に取り戻した真昼もまた―――――
「戦う理由が真似事で何が悪い。助けたいと思って何が悪い! ・・・クロじゃねぇけど
塔間の言葉に憤りながらそう言い放つと。
「それが『大人』でそれが『社会』だろ」
塔間は歯牙に掛けることなく、左手の人差し指と中指に煙草を挟んで持ちながら、冷笑したのだが。
「大人は子供にそう言うのが好きだな!」
―――――瑠璃姉は『大人』だけどそんなふうに誤魔化したりしない―――――
―――――そして『立ち向かう側』で在る事を決して諦めたりしない―――――
けれど、今真昼の目の前にいる男はまるで―――――
「自分にそう言い聞かせてるみたいだ」
―――――だから俺は―――――
「俺はただ、今
射るような眼差しで自分を見据えながらそう言い放った真昼を塔間は目を細めながら失笑して。
「はは、本当にとんだシスコンだな。〝ミストレス〟のお嬢さんとは血が繋がっている訳じゃないというのに」
「血の繋がりなんて関係ない!! 瑠璃姉も俺の大事な『家族』だ!! だけどお前は―――――誰かから伸べられた手の取り方も知らないのか!?」
「その手に毒が塗られていると考えたことがないのか?」
煙草を口に銜えながら見下すような視線を塔間は此方に向けてくる。
やはりどれだけ〝言葉〟を繰り返そうとも、この男は耳を傾けようとしない。
「本当に塔間さん、貴方はどこまでも性格が捻くれていらっしゃるんですね。やっぱり私はそんな貴方の事が大嫌いです」
そこで瑠璃は塔間に向かって心底呆れ果てたと言わんばかりの口調でそう言ったのだが。
その後にスッと目を伏せると―――――
「―――――だけどそんな貴方のことをずっと待っている誰かが居る」
静かな声音でそう言った瑠璃の意識の内に浮かんできたのは金色の瞳をした〝幼子〟で。
一方で真昼の中に浮かんできたのは食器が並んだテーブルに独りで座っている〝彼〟の姿だった。
「お前は誰かと向き合うべきだ。その席に俺達が押し込んでやる!!」
―――――〝言葉〟だけで通じないのなら、真正面から〝ぶつかり合う〟しかない。
そして塔間に向かって真昼が啖呵を切るのと同時にその意志を示すべく武器である槍を大きく振りかぶると。
「・・・・・・」
口に銜えていた煙草の火が消失したことに気づいた塔間が微かに眉を顰めて。
プッと煙草の吸殻を吐き捨てると、ドッと此方に向かって鎖で攻撃を仕掛けてきたのだ。
―――――今度は完全に防いで見せるわ!!
その塔間の攻撃をカッとロッドの力を発動させて、真紅の防御壁を展開した瑠璃がガキンッと弾くと。
「真昼君!!」
瑠璃の掛け声を合図として、右手に携えていた槍を後ろ手にグルンッと回転させて左手に持ち替えた真昼が塔間との距離を保ちつつ。
「ああ!」
―――――まずは一撃を与えて鎖を手放させる!!
塔間の左肩を打ち据えようとしたのだが。
ガッと塔間がまた左手に具現化させた銃身で真昼の攻撃を防いだのだ。
「・・・・・・」
「―――――!」
それから塔間は無言のまま真昼を見遣りながら、右手で真昼の槍の柄の部分を掴むとぐんっと引っ張ってきて。
「・・・っ!」
武器を奪われないように、真昼はすぐさま反射的に後退しようとしたのだが。
塔間は冷静な面持ちのまま、左脚を掲げると真昼の腹部目掛けてドッと蹴りを繰り出してきたのだ。
「間合いが広いのは結構だが。気を付けろ、俺の足もわりと長いぞ」
かは、と目を剥いた真昼に塔間は冷たい笑みを浮かべながら言う。
そして槍を手放してしまうのと同時に地面に膝を突いた真昼の髪をガと左手で掴んで無理矢理顔を上げさせると。
「なんてな」
残忍な眼差しで真昼を見下ろしながら、右手に所持していた拳銃を真昼の顎の下に突き付けようとしたのだが。
「させない・・・・・・っ!!」
空間転移の力を発動させた瑠璃がすぐ近くに顕現するのと同時に、塔間目掛けてロッドを振り翳すと。
塔間はチラリと瑠璃のほうを一瞥した後に。
「やれやれだな」
然したる感情を込めず、しかし敢えて嘆息交じりにそう呟いて。
拳銃を真昼ではなく瑠璃に向けて発砲しようとしたのだが。
バチバチッと真紅の閃光を纏ったロッドの打撃により、銃の照準がズレて。
瑠璃の左頬を掠めることとなり。
「・・・・・・っぅ」
痛みを堪える為に、ギュッと瑠璃が眉を顰めたその直後。
「・・・・・・―――――っ!!」
瑠璃のその姿を目にして、グッと奥歯を噛みしめた真昼が―――――ドンッと左手の平で塔間が握っていた銃のグリップを押しやって。
さらに右脚で槍の柄を蹴って、ブンッと武器を跳ね上がらせて右手に握りしめると。僅かに身を引いて見せた塔間からそのまま距離を取る為に、ギャギャッと槍の先端を地面に滑らせていく。
その真昼の動きに合わせて、瑠璃も後方にタッと跳躍して下がると。
「・・・・・・ごめん、瑠璃姉っ。俺の所為で・・・・・・」
「大丈夫よ、真昼君。このくらい・・・・・・」
塔間を睨みつつ、詫びの言葉を口にした真昼に対して、チリチリと痛む左頬を左手の甲でが瑠璃グイッと拭いつつ答えた―――――その刹那。
「―――――」
「・・・・・・っっ!」
何らかの『言葉』を発しようとした塔間目掛けて、今度は真昼がバッと槍を振り翳していったのだ。
【本館/23・2/11/別館/23・2/11掲載】
