Inquisitio Veritatis
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……つまり、記憶喪失だけど、自分は魔法が使える魔法使いだ、と―……そう言いたいわけ?」
「それ以外に何がある?馬鹿か貴様は」
我が家に不法侵入してきた生ゴミは頭が相当アッパッパーなゴミだった。
押し問答に続けられるこの会話が始まっていったい何時間経過しただろうか?にも、関わらず話は一向に前進せず今だ平行線状態だ。
だって、名前もどこから来たかも何であたしの部屋の前にいたかも分からないくせに、自分が魔法使いだったことは覚えている!間違いない!!の一点張りですよ?このゴミさん。都合がいいにも程がある。いや、それ以前に―……
「やっぱ、うっさんくせえ」
心の底から吐き捨てるように言ってやれば、目の前のゴミさんはまるで人殺しか何かのような目であたしを睨んだ。確かに、最初はビビりもしたけど、こう何度も睨まれていると自然になれてくるもので、いくら睨まれようがもはやこっちは欠伸で返事しているような状況だ。人間の適応能力ってすんばらしい!!
でっ、一方あちらといえば、あたしの態度に益々苛立ちが募ってまた睨み返し――……以下、会話共々ループである。
「……貴様も先程身を持って体験しただろう。貴様と私の言葉が通じるようになったのは魔法の力に他ならない」
「証拠は?し・ょ・う・こ。今どき、日本語とアメリカ語を両方話せる人間は珍しくもないし。だったら、あなたが魔法使いという証拠にもう一度魔法を使ってみてよ」
「……後悔するなよ。アバダケタブラ!」
「……ッ!!」
生ゴミの口角が弧を描く。蛇に似た瞳はぐにゃりとひしゃげ、そこからは狂気とも歓喜とも言えない歪んだ感情が見て取れた。そして、次の瞬間、あたしを真っすぐ指差すと、生ゴミは意味不明の単語を羅列する。
……うるさい虫の羽音にも似た音を立てながら年代物の扇風機が、西日に蒸され蒸し風呂状態の空気を撹拌する。キィイイ……と、母から譲り受けたキンクマハムスター(10代目)の甲高い声があたしの鼓膜を揺すった。
「……で?」
そして一文字口火を切れば、生ゴミさんはまさに顔面蒼白。まるで、幽霊や妖怪(まっ、いないけど)を見たかのように瞳孔を見開いてあたしを見つめたのだ。
「……今のが魔法?まっさか、調子が悪い云々言うんじゃないでしょうね?」
「……何故だ。今、私は確かに―……調子が悪い……?」
「やっぱりね」
ほら、やっぱりインチキだ。
母がよく言っていた。自称霊能力者とか超能力者という連中は、都合が悪かったり自分のインチキがバレそうになると
調子が悪い
邪念が邪魔をする
……―とかなんとか言って逃げるのだ、と。ここまでテンプレ通りだと呆れを通り越して笑えるわ。
奇術師はたとえ舞台で失敗したとしてもそんな言い訳は通用しない。やっぱ、ズルいよなーこういう人達って。
ん?そうだ、いい事考えた。
「生ゴミさんはさっきから自分は魔法が使えるとかなんとか言ってますけど、あたしにだってそれぐらい出来ますよ?」
「何!?―……嘘を吐くな。貴様はマグルだろう?そのような芸当が出来るはずもない。……やれるものならやってみたらどうだ?」
おっ、食い付き良好。
「では、ここにトランプの束があります。今からあなたにこの中の一枚だけを選んでもらって、あたしは魔法を使いあなたの心を読みそれを当てる。シンプルだけど分かりやすいでしょう?」
棚からトランプを出して生ゴミさんに手渡せば、案の定、彼は訝しげな表情を浮かべ食い入るようにあたしが渡したトランプの束を調べ始めた。
「調べたら、ちゃんと束を切ってくださいね。あとで、全てのカードの位置関係を覚えてたんだろうとか言われると面倒なんで」
うんうん。切ってる切ってる。こういう頭が堅そうな人って本当カモなんだよね。マジックの。
「種も何もありませんね?……ってか、いい加減一枚選べや。あたしも暇じゃないんで。でっ、選んだカードは束から抜いてあたしに見えないようにテーブルの上に伏せる。ほれほれ」
あたしの言葉に顔を顰めつつもカードは決めたのだろう。生ゴミさんは一枚を選び、他のカードから抜いてテーブルの上にそっと伏せた。そして―……
「うにゃあああああ!!……分かりました。まーた、微妙なのを選びましたね。スペードの4。どう?当たりましたか?」
満面の笑みを浮かべて言えば、生ゴミさんは表情こそ変えないものの慌ただしい手つきでトランプの束を再び調べ始めた。その手の横から自分の手を伸ばし、伏せてあったカードを引っ繰り返せば、そこにあったカードは当然―……
「じゃじゃーん!スペードの4!」
うーん………マジックを披露した後に見れるこの唖然とした表情って、やっぱたまらないわ。
「言っておきますけど、種も仕掛けもないからね」
……ウッソ。本当は呆れ返るぐらい簡単なトリックがあるけれど―……
「何故―……どうしてマグルのお前が―……」
面白いから教えてあげないよッ!ジャン!!
……って、さっきからマグルマグルって―……マグロでも食いたいのか?こいつ。