Inquisitio Veritatis
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「……へ?友達が出来たかって?あ、ああ……当然でしょ?ほら、この大歓声!大学の友達にどうしてもマジック見せろってせがまれてさー本当はやりたくなかったんだけど、仕方なく……そうだ!お母さん今月の仕送りなんだけど―……ちょっ!?まっ!?お母さん!!だから、仕送りしてもらわないと今月の―……切りやがった」
耳に当てた受話器が通話が切れたことを告げる無常な音を奏でる。その向こう側にある強欲で金に汚い母親の顔を思い出したあたしは、八つ当りをするように受話器を投げ飛ばした。
日焼けをし、けば立った畳に四肢を投げ出し上を仰げば、雨漏りで染みだらけのきったねえ天井が目に入った。
池田荘。
母の紹介で入ったこのオンボロは、神掛かり的なボロさを誇るアパートだった。何がオートロック付きの高級マンションだ。確かに無駄にオートロックだけど、今時、エアコンどころか風呂なしトイレなしなんて物件あるか!?……ここにあるな。
……それにしても。
「……腹減ったなぁー……」
とても可愛らしい……そう、まるで子猫の欠伸のようなお腹の音が部屋に響く。ひもじさのあまりパン屋がどうしてもと言うので貰ってやったパンの耳をかじれば、小麦のあまい味が口の中に広がった。
……申し遅れました。あたしの名前は上田 真理。天才物理学者(自称)を父に、天才奇術師(自称)を母に持つ美人女子大生である。
親元を離れ、勉学に励む天才美人女子大生こと上田真理―……つまり、あたしですが、同時に性格も大和撫子たる慎ましさも併せ持っている。
だから、こんなオンボロアパートでも文句の一つも言わず―……
「……上田ッ!!上田ッ!!そんのやかましいラジオいい加減に止めんかいッ!!」
不意に鳴りだした薄っぺらいガラス戸。ガタガタとガラス戸が振動する音と怒鳴り声は徐々に大きくなっていった。
この声は―……大家のハルのものだ。ヤベぇ!!家賃の取り立てに来やがった!!
あたしは条件反射的に座布団に隠れたが……、よく考えたら今月分の家賃(一万八千円)は一昨日払ったはずだ。じゃあ、いったい……
「……やーぱり、部屋にいた。ほれ、これ!!部屋の前に生ゴミ出すんじゃないっていつも言ってるでしょ!」
合鍵を使ったのだろう。派手な音を立ててドアを空けると、ハルは何やらでかい黒い固まりをあたしの部屋に向かって思いっきり蹴っ飛ばしたのだ。
「……あ、あたしそんなの出してませ―……ちょっ?待って!!うぎゃあ!!」
鼻を鳴らして言うと、ハルは部屋から立ち去るべく背を向けた。その様子を見たあたしは慌てて立ち上がる。当然、抗議をするためだ。今回はまだ生ゴミを出していない。大体、捨てに行くならバレない夜中に行くに決まっている。濡れ衣にもほどがある。
あと少しでハルに手が届く。その時だった。
額に鈍い痛みが走る。額に手を当てて足元を見れば、あたしが突っ掛かった生ゴミ(仮)があった。……これ生ゴミじゃないじゃん!! 人じゃん!?っうか、ハル、マジで置くだけ置いて帰りやがったし!
……これが、不幸の始まりだったということを、この時、あたしが知る良もなかった。