ゲーム考察

※注意注意※
この考察はクロノクロス信者のクロノクロス信者によるクロノクロス既プレイ者の為の考察です。よって、百割のネタバレ(誤字ではない)で構成されております。従って、未プレイ者ならびに今プレイ中の方々に優しくありません。タイトルにある通り、そりゃあもう全力でウザいぐらいに肯定していくのでクロスアンチの方にはもっと優しくありません。
この考察はクロノクロスアルティマニアの情報を鵜呑みにし作成してあります。あと、個人の妄想。

おkですか?

【前書き】
さて、注意書きはきちんと読みましたね?読んでいない方はいないと思うので最初からぶっ飛ばしていきますよ。
“クロスはトリガーの続編だと認めない”という方がいます。
そんな人達に言いたい。まずは題名をよく読め。どこにもトリガー2とは書いてないだろうが。
確かにクロスは前作トリガーが下地となり作られた作品です。題名の通りクロスとトリガーは見事交差することになります。しかし、クロスとトリガーの関係は少々特殊です。続編でありながらクロスとトリガーは一つの線として繋がるのではなく、線と線として互いに交差しているのです。これがクロスが続編でありながらトリガー2ではない理由です。では、何故、このような奇妙な事が起こったのでしょうか?
答えは簡単。クロスが扱っているのがパラレルワールドだからに他なりません。似ているようで異なる世界。無数に分岐した世界。クロスの作中でプレイヤーはHOMEとANOTHERという二つの次元を行き来することになりますが、何も世界は二つしかないというわけではありません。作中でも語られるように無数の世界が存在しています。つまり、私達プレイヤーはそんな無数ある世界のうちたまたま二つの世界を見ただけなのです。
クロスが嫌われる理由の一つとして、前作の主人公達が悲劇的な最期を遂げたことが上げられるでしょう。しかし、クロノ(前作主人公)が前作のエンディングの後、必ずしもクロスの世界へと進んでいったわけではありません。クロスはあくまでも可能性の一つを語っているだけであり、無数ある物語のうちの断片を語っているに過ぎないのです。気持ち悪いぐらいのクロス厨だな?OKOK誉め言葉です。
さて、前書きはここまでとして、ここから更に細かく分類して難解な部分を紐解いていきましょうか。言われなくても何となく察している方もいると思いますが、ここからもっと濃くなるよ。

【年表(アルティマニアより引用)】
AD1000
クロノ、ルッカ、マール(前作の主人公と仲間)、異星生命体ラヴォスを倒し帰還。歴史改変が行われる。
のちにルッカの手によりAIプログラム・プロメテウス理論が完成される。

AD2300年代
BC1200より時を越えてきた理の賢者ガッシュにより、クロノポリスの前身である時間研究所が設立される。島なきエルニド海にて重力場発見。凍てついた炎が発掘される。エルニド海に人工島造営開始。時間研究所にて時についての研究を進めていたガッシュが突如姿を消す。

AD2400年代
人工島に時空要塞クロノポリス設立。旧マザーブレインを雛型として、AIフェイト機動。反時間転移実験失敗。タイムクラッシュ発生。クロノポリス、フェイト、内部職員もろとも過去に横滑りする。同時に、別時間軸における未来から恐竜人達による未来都市ディノポリスも過去へ飛ばされる。

BC10000年代
進化した人類の産物クロノポリスと進化した恐竜人の産物ディノポリス間で戦闘が起きる。フェイト、恐竜人側の生体マシンである龍神に勝利。フェイト、エルニド海の多島化計画を実行。同時にエレメントや運命の書を作成。研究所員達、未来の記憶をフェイトにより消去されクロノポリス外へ。エルニド最初の原住民となる。

AD1003(17年前)
セルジュ(主人公)誕生。

AD1005(15年前)
ガルディア王国滅亡。軍事国家パレポリが大陸の覇権を握る。

AD1006(14年前)
セルジュ(3歳)、豹鬼に襲われ瀕死の重傷を負う。大規模な時空嵐が発生。フェイト、一時的にシステムダウン。フェイトの機能不全に伴いフェイトが住まう海域神の庭が開かれる。
ツクヨミ誕生。
セルジュを助けるために航海していたワヅキ(セルジュの父)とその友人であるミゲル、遭難をし神の庭に漂着。クロノポリスにて凍てついた炎と接触したセルジュが一命をとりとめる。ワヅキの精神に異変が発生。
フェイト復旧、再起動。それと同時にフェイト内に隠されていたガードシステム・プロメテウス回路始動。凍てついた炎のガードシステムがフェイトの命令を拒否。
ミゲル、神の庭に固着。ワヅキ、セルジュと共にアルニ村に帰還するも程なくして姿を消す。

AD1007(13年前)
ルッカ、キッドを拾い自身の経営する孤児院にて育てる。

AD1010(10年前)
セルジュ(7歳)、オパーサの浜で溺れかけていたところを未来から来たキッド(16歳)により救出される。セルジュの生死をポイントにしたパラレルワールド誕生。
HOME→セルジュの生存するイレギュラーな世界。フェイトの介入不可。
ANOTHER→セルジュ死亡後の世界軸。未来から来たフェイトの知る本来の世界であり、フェイトによる介入可。

AD1015(5年前)
ヤマネコ、ツクヨミを伴って孤児院を襲撃し、ルッカを殺害。HOMEキッドはその後消息不明。ANOTHERキッド(11歳)、未来から来たセルジュ(17歳)に救出される。

AD1020(現在)
セルジュ(17歳)、オパーサの浜より次元を越える。ゲームスタート。


分かりやすい年表をありがとう、アルティマニア。こうやって改めて時系列通りに並べてみると、やはり分かりやすいですね。では、ここから年表に登場した時間軸を整理していきましょう。
まず、セルジュの生死によって時間軸が10年前に分岐します。これが、ゲーム中のHOMEとANOTHERの世界ですね。現時点で世界軸は二つです。
更に一万年前、それぞれ異なる未来から飛ばされてきた、人類側のクロノポリスと恐竜人側のディノポリスとの間で激しい戦闘が起きました。つまり、人類が進化した世界と恐竜が進化した世界の二つが未来にあるということになります。
人類の未来がクロノポリスだと仮定した場合、先程の二つの世界の他にももう一つ、恐竜が進化した世界があるわけです。世界軸は三つになりました。
更に更に、クロスの世界は前作トリガーにおいて改変された、ラヴォスによる滅びの未来がない世界線上に存在しています。言い換えれば、クロノ達による介入が行われる前の滅びの未来もあるというわけですね。ここでも世界軸は一つ増え、四つになりました。
つまり、クロスの世界は二つどころじゃない。実は四つの世界軸がゲーム当初から存在しているわけです。実にややこしい話ですが、ここを理解しないと全くストーリーが理解できないって事になるので頑張ってください。
それじゃあ、次は物語のキーワード、キーパーソンを一つずつ説明していくよ。超頑張ってついて来て下さい。

【凍てついた炎】
いきなり核心に迫ります。凍てついた炎はゲーム中何度も何度もその名を耳にするキーアイテムです。あらゆる傷を癒し、どのような夢も叶えると言われている伝説の宝―……凍てついた炎。では、その正体とはなんなのでしょうか?ただの宝石に過ぎないのでしょうか?
答えはもちろん否。凍てついた炎とは異星生命体ラヴォスの欠片の総称であり、作中に登場する欠片はAD2300年の未来でクロノポリスの前身である時間研究所によって発掘された、欠片の中でもとりわけ大きな力を秘めた危険なものです。
異星生命体ラヴォスの欠片と聞いて、前作をプレイ済みの方はピンと来たと思いますが、トリガーに登場したドリストーンと凍てついた炎は同種なのです。
前作トリガーにて、ドリストーンは、聖剣グランドリオンや古代魔法文明ジール王女サラのペンダント、ラヴォスの力を引き出す魔神器の材料になるなど様々な用途に使用され、神のごとき力を発揮します。つまり、それと同種である凍てついた炎にも同じ事が言えるのです。
時間を操り、望みを叶える生ける、赤き石、凍てついた炎。しかし、その力を使いこなせるものは限られてしまいます。前作で魔神器を扱えたのが王女サラただ一人だったように。凍てついた炎は石自身が使用者を選んでいるのです。

【調停者】
凍てついた炎は、炎が認めた者以外には使うことはおろか触れることすら出来ません。作中では、凍てついた炎に認められた者を調停者と表現しています。
調停者とは、凍てついた炎を介して炎の本体であるラヴォスとリンクし、星に寄生するラヴォスと星の争いの調停をつとめる事が可能な選ばれた者です。調停者は強大な力を手中に出来ますが、その力を生命の調停―……即ちラヴォスと星の争いを止めさせ、争いの元凶である負の感情を還元させる方向に導く義務があります。
もし、この義務を怠った場合、調停者自身が負の感情に飲まれ時喰いとして覚醒し、世界を破滅へと導いてしまうのです。作中では、セルジュが調停者となり、星と異星生命体ラヴォスとの争いの“調停”をすることになります。
古代においてドリストーンの力を自在に操れた王女サラも調停者に近い存在だったといえるでしょう。

【セルジュ】
前述したようにクロスに登場するパラレルワールドは全部で四つ。

① トリガーにおける時間改変が行われなかった滅びの未来
② 人類との生存競争に勝った恐竜人達の世界(ディノポリスの世界)
③ 十年前にセルジュが死亡した世界(ANOTHER)
④ キッドによってセルジュが救出された世界(HOME)

この四つのうちセルジュが移動できるのは③と④の世界です。
では、何故、セルジュは③と④の世界の行き来が可能だったのでしょうか?それは、セルジュがこの二つの世界の分岐点であり、彼にとって次元の境界が不確かだったからです。
更に最初の次元転移には別次元からセルジュを招いたある女性の力―……旅を終え、すべてを知り、自分の正体や過去の記憶を思い出したキッドの力が関係しています。最初の転移の際、セルジュは誰かが自分を呼ぶ声を聞きますが、あの声はキッドがセルジュを呼ぶ声なのです。

【セルジュの運命】
“人の世はまもなく終わりを迎える。その時、セルジュ、お前は世界の敵になり世界はお前の敵になる。”
上の言葉はクロスのダサ番長、ヤマネコ様のありがたいお言葉ですね。ありがたやー。あの帽子マジないと思います。
では、本題。セルジュは世界の敵になりえるのか。ぶっちゃけると要素あり有りです。
① セルジュの体を乗っ取ったヤマネコがセルジュの名で各地で破壊行動を行う。
② セルジュがフェイトを倒し、結果的に人類の敵である龍神を復活させてしまう。
③ 調停者として調停を行わなかった場合、セルジュ自身も時喰いと同化し世界を破滅に導いてしまう。

ここまで来るともはや歩く滅亡フラグです。その証拠に、セルジュが死亡したANOTHERでは人類が進化した産物であるクロノポリスが存在しますが、セルジュが生存するHOMEに存在するのは死海と廃墟となった未来都市郡です。これは、セルジュが存在するとやがて滅びが来るという暗示に他なりません。
まあ、これはプレイヤーの行動次第で回避できる未来ですけれど、セルジュが死海を訪れた時点では滅びの可能性の方が高かったんでしょうね。

【十年前の記憶】
最終盤のオパーサの浜でクロノが語るようにセルジュは本来死ぬはずでした。
未来の人類の産物であるクロノポリスがANOTHERにのみ存在するのが証拠だというのはさっき述べた通りです。しかし、セルジュは生存しました。未来から来たキッドに助けられて。
しかし、歩く滅亡フラグであるセルジュが何故助けられたのでしょうか?
実は、この分岐はセルジュが世界崩壊を招く危険を承知しつつ、なおセルジュの存在に望みを賭けたキッドとある者の手によって行われた計画的な分岐なのです。
ここでOPのデモムービーを思い出してみましょうか。思い出してほしいのはキッドが微笑み振り返るシーンです。私は脳内再生余裕でした。さて、思い出しましたか?思い出せない方は是非もう一度デモムービーを見てみましょう。キッドの目線が自分より身長の低い者を見るものだと分かりますね。実はこのシーン、キッドが幼少のセルジュに手を差し伸べているのです。

【サラ・キッド・ジール】
主人公を語ったら次はヒロインを語らねばなりません。……と、言っても既に名前で最大のネタバレをしていますが。
サラ・キッド・ジール
前作経験者ならこの名前を見るだけで誰だか分かると思いますが、キッドはサラ王女です。(正確に言うならサラ王女の半身がキッド)14年前の嵐の夜、引き金はひかれました。
伝説の超古代魔法文明ジールの王女サラ。サラは前作でラヴォスの作り出した次元の渦に巻き込まれて行方不明となりました。時間と次元の狭間に落されたサラはただひたすら無に帰りたいと思い続けてきました。しかし、そんなサラに変化が起きたのです。彼女を起こしたのは一人の赤ん坊の泣き声でした。
目覚めたサラはその子供―……セルジュと接触をはかろうとします。しかし、サラがいるのは時の闇の彼方。現世に接触をしようとすれば当然反発が起きます。そのサラの干渉が時空間の嵐を発生させ、結果的にAIフェイトのシステムダウンを引き起こしました。この時、接触を計ろうとしたサラ自身にも大きな歪みが生じ、彼女は自分の半身とも言える分身を生み出す事になります。
希死念慮に囚われひたすら無に帰ることを望む自分とは違う、生きる事に貪欲で生に輝く存在―……かつて自分が憧れた王女と同じく太陽のように輝く金の髪をもつ正反対の人間。
キッドはサラがなりたかった理想の存在なのです。ところで、キッドはがさつだけどいいんですか?サラさん。

【もう一人のキッド】
先程、キッドはサラの半身だと言いましたが、では、もう一人のキッドであるサラは一体どこにいるのでしょうか?
後の項目で詳しく書きますが、彼女は今、次元の闇の彼方で新種の生命体である時喰いに飲み込まれています。
肉親である母親の暴走を止められず、ただ黙って従い、結果、王国を滅ぼしてしまったサラ。彼女の絶望、悲しみは計り知れません。彼女もセルジュと同様、調停者と呼べる存在でした。しかし、サラは調停をしていません。むしろ、負の感情に飲まれてしまいました。時喰いはありとあらゆる生命の負の感情を糧に成長していきます。絶望の果てに次元の渦に巻き込まれたサラが時喰いになってしまったのは、当然だったのかもしれません。

【第七の龍神ツクヨミ】
ヒロインについて語ったらもう一人のヒロインについても語らねばなりませんね。クロスのヒロインはキッドとツクヨミ!わりと本気で異論は認めません。
キッドの項目で、サラが生じさせた歪みによってキッドは誕生したと書きましたが、実はこの時もう一つの生命が誕生しました。AIフェイトがダウンしたことにより、フェイトが龍神に課していた時間封印が弱まり、第七の龍神―……ツクヨミが誕生したのです。
ツクヨミは龍神から分離した一部ですが、彼女の立場はあくまで付属的であり、他の六龍神ほど大きな役割を持ってはいません。
それでもツクヨミは龍ですから、ヤマネコを介してフェイトを利用し、龍側に有利になるように影で計画を進めていきます。しかし、ツクヨミは人間であるサラが干渉した結果龍から生まれた存在であり、言うなれば、人間でも龍でもない半端な存在です。故に、ツクヨミには龍でありながら人の心がありました。
今一緒にいるセルジュや他の仲間と、人の敵である自分はやがて世界を賭けた命懸けの戦いをしなければならない。彼女はそれを知っていました。だから、ツクヨミは最期の決別のシーンで涙を流すのです。光り輝く恒星ではなく自ら輝くことができない月のように半端な異端者。人と龍を結ぶ浮き橋―……それがツクヨミなのです。

【フェイト=ヤマネコ=ワヅキ】
クロスの主要人物と言ったらこいつを語らないわけにはいきませんね。ダサいだけの中二じゃないんです。
まず、結論から言った方が早いので結論を言うとヤマネコ=未来のコンピューターAIフェイトです。
AD2400年の未来、起動した機械フェイトは、時間実験の失敗で起きたタイムクラッシュで過去に飛ばされた後も人類を見守り続けてきました。……と、いうのもフェイトは人類を守る目的で作られた、人類の守護者とも言える機械だからです。それ故、フェイトは人類にとって驚異になる恐竜人達の都市と龍神を封印し、自身の知る平和な未来とのズレが生じないように歴史を操って来ました。
クロノポリスの職員が言うように、人の感情は電気信号と僅かな神経伝達物質によって支配されています。そこでフェイトは人の感情を操るため、運命の書(セーブポイント)と呼ばれる情報端末を作り上げました。それを大量に人の世界に放出し、脳に暗示を掛け、フェイトの名の通り運命の神として人を導いてきたのです。
しかし、作中、フェイトは本来守るべき対象である人類に牙を剥き危害を加えようとします。何故、人の守護者であるフェイトがそのような凶行に走ったのでしょうか?死海でのフェイトの言葉の中にその答えはあります。
“わたしは、こんなにもお前を愛している……だから、時々お前をメチャクチャにしてやりたくなるのだよ!!”
かのカチュア姉さん級の見事なヤンデレっぷりです。この言葉の裏には、一万年の長きに渡り、人類を守護し続けてきたフェイトの、人類に対する愛情とそれ故の深い羨望、憎しみが込められています。
フェイトは長きに渡り人類を見守り続けているうちに一つの夢を見るようになりました。それは、機械と人が同化し、新たな種へと進化するという狂った夢でした。それがフェイトの中で自然に生まれた感情か、凍てついた炎の影響で生じた感情かは分かりません。まあ、フェイトの雛型がマザーブレインって時点でお察し下さいなんですけどね。
マザーブレインとは前作トリガーに登場した、やっぱりCPUあっぱっぱーな機械です。
さて、そんなこんなで現時点でも相当にバグったAIなわけですが、14年前に起きた事件が切っ掛けとなりフェイトは益々暴走していくことになります。
それは、フェイトがセルジュの父であるワヅキを取り込んだためです。
人の運命を操っているとは言え、フェイトはただの機械。生物のように自分自身が自由に動き回ることは出来ません。そこで、フェイトが自分の手足として目を付けたのが幼いセルジュを連れて神の庭にやって来たワヅキでした。調停者であるセルジュは凍てついた炎によって傷が癒されましたが、ワヅキは逆に精神を病む事になります。
前作トリガーでサラの母親である女王ジールが発狂した事を考えれば当然ですね。更に厄介な事に凍てついた炎には精神を狂わせる力の他にDNAを組換え、対象を別人に変えてしまう力がありました。恐らく、フェイトは炎のこの力を知っていて、ワヅキの体を亜人ヤマネコに作り換え、精神を乗っ取ったのでしょう。
ワヅキの体が人間ではなく恐ろしいヤマネコの姿に変化したのには、セルジュが絡んで来ます。幼いセルジュは豹鬼と呼ばれる猫型の魔物に襲われて瀕死の重傷を負いました。その時生まれたセルジュの恐怖心が凍てついた炎を通じてワヅキに伝わり、ワヅキをヤマネコに変えたのです。
だから、ヤマネコ=ワヅキ=フェイトなのです。

【プロメテウス】
さて、念願の手足を手に入れたフェイトですが、全てがそう簡単にいくはずもありません。キッドの項目でサラが干渉した事により、一時的ではありますがフェイトがシステムダウンをしたと書きましたが、ダウンから復旧したフェイトは凍てついた炎へのアクセス権を失っていたのです。
凍てついた炎はラヴォスの欠けらであり、高密度のエネルギー体です。そのエネルギーが使用不可ともなれば当然、フェイトは焦りました。
しかし、何故急にアクセスが出来なくなったのでしょうか?フェイトはすぐに自分の中に存在していた裏切り者に気が付きました。
回路プロメテウス
それは、機械が暴走したときに発動するセーフティプログラムでした。フェイトのダウンと同時に起動したプロメテウスは凍てついた炎に最後に接触した人間―……セルジュ以外のいかなる者のアクセスを拒否するようになりました。
だからこそ、10年前、フェイトはセルジュの殺害を試みたのです。
セルジュは14年前と10年前の2回で死にかけています。14年前は豹鬼に襲われ、そして10年前は海で溺れかけて。10年前にセルジュを溺死させようとしたのはヤマネコ(=フェイト)です。その結果、ANOTHERの世界でセルジュは死ぬ事になりました。ですが、セルジュが死んだにも関わらず炎へのアクセス権は帰ってきません。そこで、ヤマネコは方針を変え、今度はセルジュの登場を待つ事にしました。何者かの手によってセルジュが助けられ、いずれ自分と接触する事を運命は知っていたのです。
因みに、ヤマネコがルッカを殺害した理由もこのプロメテウスを巡ってのことです。フェイトにプロメテウスを組み込んだのはルッカではありませんが、プロメテウス理論を完成させたのはルッカでした。そこでフェイトは、ルッカを捕らえプロメテウスを解除させようとしたのです。しかし、ルッカは頑なに協力を拒みます。
ルッカが協力しない以上、彼女の豊富な知識はフェイトにとって驚異でしかありません。故に、フェイトはルッカを殺害したのです。

【父殺し、自分殺し】
物語が進むと、ついにセルジュはクロノポリスにてフェイトと決着を着ける時がやってきます。
先程から述べているようにフェイトはワヅキでもありますから、セルジュがフェイトを倒すという事はワヅキをも殺すという事に他なりません。更に、作中でフェイトは凍てついた炎へのアクセス権を取り戻すべく龍の涙という龍族の秘宝を使い、セルジュの体と自分の手足であるヤマネコ(=ワヅキ)の体と精神を入れ換えています。
体が入れ換わった後、セルジュも龍の涙を使い元の自分の姿を取り戻しますが、それはヤマネコとセルジュの精神が元通り入れ換わったから―……ではありません。
龍の涙は、龍族にとっての秘宝であり、フェイトが持っている凍てついた炎と対になる存在です。故に、龍の涙にも凍てついた炎と同様に精神を入れ換える効果やDNAの配列を組み換える力があったのでしょう。セルジュは龍の涙のDNAを組み換える力を使い、ヤマネコ(=ワヅキ)の体のDNAを元のセルジュのものに組み換えたのです。
結果として、セルジュはDNA的には元の体に戻りますが、彼本来の体は依然フェイトに奪われたままです。そして、セルジュは自分の体を持ったフェイトと戦い、自らの手でこれを殺すことになります。フェイトを殺す事は、父殺しと同義であると同時に自分自身を殺す事とも言えるのです。

【龍神】
人類側の未来の産物クロノポリスとフェイトについて今まで考察してきましたが、では、恐竜人側の未来の産物―……ディノポリスと龍神とは一体なんなのでしょうか?
ディノポリスと龍神は人類が生存競争に敗れた後という、クロノポリスがある次元とは別次元に存在していました。前作トリガーにおいて、恐竜は人類との生存競争に敗れて絶滅したわけですが、異なる時間軸では恐竜人が勝ち、更なる進化を遂げていたのです。
龍神は進化した恐竜人社会における一種の生体マシンであり、その正体は星のエネルギーの集合体とも言えるプラズマなのです。龍の姿はあくまで仮の姿でしかありません。
人類は異星生命体ラヴォスの欠片である凍てついた炎に触れる事により、急速に猿からヒトへと進化しました。言わば、ラヴォスは人類にとっての親のような存在なのです。
星に寄生するラヴォスとその子たる人類。かたや、星に近い進化を遂げた星の子たる恐竜人。決して交差することのない二つの種。それが交わってしまった時、争いは避けられませんでした。そして、それに勝ったのはラヴォス側―……人類とフェイトでした。
フェイトは凍てついた炎の力を使い龍神を封じましたが、龍の憎しみまで封じることは出来ませんでした。いつか来る復讐の時を、龍神はずっと夢見ていたのです。そして、彼らは自分達にとって邪魔なフェイトを殺すべく一人の人間を利用することを考え付きました。それがセルジュでした。
龍神はセルジュに手を貸す振りをして、自身の復讐の駒として利用していたのです。

【龍神の目的】
龍神達の思惑通り、セルジュによって邪魔な運命は死にました。それと、同時に龍神達を縛り付けていた時間封印が完全に解かれます。彼ら龍神の目的はただ一つ。この海の星から進化の異端種である人類を抹殺する事です。では、封印が解けた後、龍神達は直ぐ様人類に危害を加えるべく動きだしたのでしょうか?その前に彼らにはやるべき事がありました。凍てついた炎を人類の手から奪い去るという仕事です。凍てついた炎は彼らにとって驚異でしかありませんから、みすみす人類に渡しておくわけにはいきませんでした。
凍てついた炎奪取を遂行したのは七番目の龍神―……人間と行動をともにしていたツクヨミでした。そして、炎を持った彼女は自分の兄弟とも言える龍神達と融合し、人類の、セルジュの敵になったのです。

【時喰い】
“新生命体時喰いの姿を垣間見る。遠い世界で世界の時間を止めてしまう。”
“あなたの行動次第では未来は永遠の死の世界になってしまう”

フェイトとも龍神とも異なる生命体時喰い。調停者やセルジュの項目で出てきたこの生命体の正体とは?
時喰いは、時の闇に巣食う新種の生命体です。その核になっているのは、前作においてクロノ達によって倒されたラヴォスとラヴォスに取り込まれた王女サラ。その核とこの星の生命体のありとあらゆる負の感情が融合する事によって時喰いは誕生したのです。
融合が完全に終わり、時喰いが時空を食らい始めると、世界は全ての憎しみが消えた世界―……無へと帰ってしまいます。それを防ぐ事が出来るのは、核であるラヴォスと鎧である星の憎しみを断ち切る事が出来る者、憎しみ合う二つの種の調停を行う調停者―……セルジュしかいません。
クロノポリスやフェイトの設立者とも言える理の賢者ガッシュはそれを知っていました。だから、彼はキッドを利用し、本来死ぬはずだったセルジュを生かしたのです。調停者として調停行わせるために。

【賢者ガッシュの目的】
では、ガッシュの目的は時喰いを完全に消滅させる事だったのでしょうか?答えはおそらく違います。ガッシュは時喰いの消滅よりもその時喰いに飲まれている王女サラを解放しようとしていたのではないでしょうか?
AD2300年の未来でクロノポリスを設立したガッシュ。しかし、ガッシュは本来、未来の住人ではなく古代魔法文明ジールにて王族に仕えていた理の賢者でした。そのガッシュが自分と主従関係にある王女を助けるために計画を立てた―……なんら不思議ではありません。
サラを時喰いから解放するためには調停者であるセルジュとクロノクロスが必要。調停者が生まれる歴史にするにはフェイトと龍神が争わなければならない。フェイトと龍神が争うためにはそれぞれ別次元同士にあるクロノポリスとディノポリスを引き会わさねばならない。では、両者を引き会わすタイムクラッシュを起こすには?
龍神もフェイトもガッシュの手の平のうえで踊っていたに過ぎないのです。

【クロノクロス】
時喰いを解放するためには調停者であるセルジュが必要ですが、それだけでは足りません。セルジュ達ラヴォス側の意志を星側に伝えるための媒介がないためです。その媒介となるのが龍の涙の欠片から生じたクロノクロスです。
星側の欠片とも言えるクロノクロス。
それは、ラヴォス側の欠片である凍てついた炎とリンクした調停者と同調しあらゆる負の感情を癒します。つまり、セルジュがクロノクロスを用いて時喰いを浄化することによってのみ、時喰いを消滅させることが可能になるのです。

【夢路の終わりに】
さて、調停者として、サラを、ラヴォスを、龍神やフェイトを含んだあらゆる星の命を癒したセルジュは、キッドはどこへ向かうのでしょうか。
あらゆる歪みや捻れがなくなった今、全ては、あるべき場所へ帰り、セルジュもまた旅の記憶を失い、時を遡ります。しかし、もうフェイト―……運命は存在しません。人は運命の関与しない本来の生へと新たに歩み出すのです。全てが終わった後、幼いセルジュを助けるという役割があるキッド一人を除いて。
旅の終わりに残ったのはキッドと思い出だけ。だから、彼女は再び旅に出るのです。どこにいるかも分からない、旅や自分の事も忘れてしまっただろうけれど、確かに存在するであろうセルジュを探して。ただ一つの想いをセルジュに届けるために。
EDテーマで実写のキッドが映るのは、あなたのキッドがセルジュ(=プレイヤー)を探しているという暗示なのです。

【終幕】
ここまで読んでくださりありがとうございました。正直、間違って解釈してるところもありそうですが、この考察がクロノクロス理解に少しだけでも役立てれば幸いです。

2013・3・31

Fin
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