夢主コラボ童話(リレー小説)


『……にしても一体どこに行ったんだろう。そのフミカって子とリフィルって人。ハオリなんか当てでもある?』


「そうね……私達がフミカを見失ってから時間は経ってないし……リフィルの家も荒らされた形跡はなかった。しいなはどう思う?」


「リフィルもフミカも足は早くないはずだしねえ……案外まだ近くにいるんじゃないかい?」


昼下がりの緑の森に四人と一匹の足音が響く。

最初はロイドとあたしの二人しかいなかったのに随分賑やかになったと思わずにはいられなかった。

……と、言っても人が二人も行方不明になってるんだから楽しさとは無縁なわけだけど。


「……なあ、ハオリ一つ聞いてもいいか?」


「何かしら、ロイド?」


「フミカって金髪でハオリと同じような頭巾を被ってた子だろ?
でっ、リフィルって人って……もしかして銀髪で肩ぐらいまでの長さじゃないか?」


「え、ええ。でも、よく知ってるわね……あっ。」


突如、あたし達から先行していたロイドの歩みが止め、そう言葉を切りだした。

突然の行動と言葉にハオリもあたし達も揃って首を傾げる。また悪いもんでも拾い食いしたか?

一方、ロイドはと言えば、次におもむろに手を伸ばし、ある一点を指差して―……当然だがあたし達の視線も指の指し示す方向に誘導される。

そこにいたのは……


『……いくらなんでも近過ぎやしない?』


いや、手間が省けるというかなんというか……


「さあ!観念なさいッ!!」


「リ、リフィルさん…あ、あの……」


「クッ……!しつこい女だ!クラトス何をモタモタしているッ!!」


「……。」


高い声、低い声―……様々な音が森の木々を騒つかせる。

……オオカミさんのお出ましってわけ、ね。


「……なあ、どうしてリフィルって人とあいつら仲良さげに話してるんだ?」


『……どこをどう見たらそんなあさってな答えになる。
あれどう見ても人さらいとそれを阻止しようとしてる人でしょうが。』


咄嗟に近場の茂みに隠れてみたのはいいけど……

隠れたところからそう遠くない位置では、一人の女性と二人の男達による一触即発の睨み合いが繰り広げられ、あたし達はその様子を息を潜め窺っていた。

相手の出方が分からない以上、こちらも動きようがない。下手に踏み込んでフミカを盾に取られたら……なくはない話だ。

女性は―……しいなよりもやや年上だろうか?

少しキツい印象を受ける綺麗な顔をした大人びた女性だ。もっとも今の険しい表情は彼女本来の表情ではないのだろうけど。

そして、肝心の女性と対峙している二人の男―……

どちらも女性と同じぐらいの年齢だろうか?整った顔立ちをした二人組だ。

青く長い髪を一つに束ねた男とくすんだ赤髪の男―……

強盗や人さらいの類といったら、モヒカンかスキンヘッドのむさっくるしいおっさんというのが相場だというのにこの二人は約束違反にも程がある容姿を持っていた。

人さらいするぐらいならせめて肩パッドくらい用意しておきなさいよ。


「……そんなお約束どうでもいいだろ。そんなことよりこれからどうすんのサ。」


『しいな分かってないなー。……はいはい真面目に考えるから睨まない。
手っ取り早く強行突破したいところだけれど、下手に踏み込んでフミカを人質に取られるのは困るわ。
かと言って、いつまでもこの硬直状態が続くとも―……って!?』


う か つ


その三文字が頭をよぎる。

あたしは思わず痛む眉間を手で押さえた。

ああ……こいつの性格忘れてた……


「お前ら!フミカを返しやがれッ!!」


「貴様、何者だッ!?」


「あ、あなたは……?」


三者三様の大声が森を響き渡る。

何の考えもなしに飛び出していったロイドの背中を、あたしとしいなは、ただただため息を吐いて見る他なかった。

……って、あれ、そう言えばハオリは?さっきから姿が見えないけれど―……
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