トレジャーハント!

――これはハロウィンが終わった頃の、とある冬の日話。












(布は手に入ったけど…中々難しいな…。)

この日カナタはマイホームの作成小屋に篭って何やら作っていた。

事の始まりはカナタが書斎である本を発見したのがキッカケだった。その本には何処かの国に古くから存在する、ある言い伝えが書いてあったのだ。

(不思議な伝説だな。男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳の年の11月15日に成長を祝う風習があるなんて…生存を祝う意味合いもあったらしいが…。)

「……………。」

カナタはそこで一旦思考を止めると書斎から持ってきたその本を見た。

何でもその本によると、昔その国には乳幼児が成人するまでの生存率が低い時代があったとか。
それで成長を祝う他にも、昔は生存を祝う意味合いもあった様だ。

そしてそのお祝いの日、その国の3歳の男女はずっと剃っていた頭髪を伸ばす事で祝い、5歳の男の子は初めて‘袴’をつけて祝う。

そして7歳の女の子はそれまでの子供用の紐付き着物ではなく初めて大人と同じ様な、帯を結ぶ本格的な着物を着る‘帯解’を行うそうである。

(7歳って言ったらコロナだもんな…。)


――祝ってやりたい。


カナタはこの本を見た後真っ先にそう思ったのだ。勿論バドとコロナは双子だからバドの祝い歳はもう過ぎている。

しかしカナタは袴も作って二人一緒に祝う気満々だったのだ。

現に‘袴’用の布も既に大量に購入していた。

(やっぱり一緒がいいよな…。バドとコロナはいつも共に育ってきたんだ…。)

――二人とも祝ってやりたい。

「……………。」

カナタはただその想いだけで一心不乱になって、コロナの着物とバドの袴を作っていた。

まだ一緒になって間もないが、既にコロナには普段の家事等で多大な世話をかけているとカナタは思っていた。
そしてバドはいつも明るくて既にマイホームのムードメーカーだ。

そんな二人の両親は、聞いた話によると二人がまだ幼い頃に亡くなった様だった。
それはカナタにとっては他人事ではなかったのである。

だから余計に‘何か’が、カナタに祝いたいという気持ちを強く抱かせたのかもしれない。

(…あまり日にちがない。どうせなら本格的に千歳飴もつくりたいしな…。どうするか…。)

カナタがそうして思考を巡らせていた時だった。
「カナタいるーー?」
「…!」

ちょうどソラが、カナタがいた作成小屋に入って来たのだ。


「カナター!コロナがお茶にしようって………あれ?カナタ何やってるの…?何これ??」

作成小屋に入ったソラがカナタに訊ねると、カナタはああ、と頷いた。
「これはなソラ、ある異国の伝…」
「可愛い!こっちの黒いのもなんかカッコイイっ…!!私も作りたいよっ…!!」
「……………。」

ソラはカナタが説明する前に瞳をキラキラさせてカナタを見つめていた。
その瞳が既に『私も一緒にやりたい』と物語っている。

「……。」

カナタは暫く何かを考えていたが直ぐに笑顔を見せた。
「…そっか…ソラもいた方が早く出来そうだし、何より二人で作った方がバドやコロナも喜ぶかもな!」
「バドやコロナ?これバドとコロナの??」
「ああ。でも…そうだな、まずは説明を聞いてくれないかソラ…?」

カナタの言葉にソラは大きく頷いた。
「………!うん!分かったわ!」
「―ああ…。ありがとなソラ。」

カナタはソラの協力申し出に穏やかな顔で微笑んで、再び詳しい七五三の説明をソラにし始めたのだった。












――そうして五分後。

「じゃあ…その‘着物’を着たり‘袴’を着たりっていうのは、日々の収穫の感謝も兼ねて子供の成長や生存に感謝したり、長寿の願いを込めたりする行事なんだ…!」

カナタから一通りの説明を聞いたソラが感心した様な声を上げると、カナタは穏やかな顔で微笑んでソラを見つめた。
「ああ…。親が子供の為に祝う日、大人への一歩の日だな。親にとっては大事な行事なんだ。」
「何より長生きして欲しいって……?」
「ああ。」
「…そっかぁ…。それでその本を読んでコロナは七歳だしバドも一緒にって訳なんだ…。」
「ああ…。」

カナタが頷くと、ソラも納得いった様に頷いた。
「………。そうだね…。バドもコロナも私達と一緒で…ううん、マナの木はまだ‘生きてる’けど、バドとコロナの親は小さい頃…。」
「……………。」
「…そうよ!私達‘家族’だよ…!私達は親じゃないけど…祝っても…いいよね?」

カナタはソラのその必死な様子に微笑んで、ソラの頭を優しく撫でながら言った。
「―勿論だソラ…。」
「……!うんっっ…!!…カナタ教えてくれるの…?」
「ああ。」
「やったーー!じゃあじゃあ…!絶対バレない様にして驚かそうっ!!その千歳飴っていうのも一緒に作るよ!」
「そうだなソラ…そうしようぜ!」
「うんっ…!!」
「……。」

ソラはカナタの言葉に頷くとニッコリ笑顔をカナタに見せた。カナタはよく解らないが、その事がなんだか無性に嬉しかったのだ。

「―頑張ろうな…。」

カナタが穏やかな顔でそう言うとソラは嬉しそうに笑った。
「うん!!バドやコロナを祝いたいっ!!」
「そうだな…。」


――そうしてカナタは再び嬉しそうに微笑むと、小屋の奥からソラの分の裁縫道具やらを取りに向かった。


――その翌日。

果樹園では野菜やらを収穫しつつコロナやバド、ラビが遊んでいた。

そこでふとバドが疑問を口にした。
「なぁコロナ~。」
「何ー?」
「兄貴達作成小屋で何やってんだろう?気にならないか??」
「知らないわよ。でも師匠が入って来ちゃ駄目だよって言ってたわ。入っちゃ駄目よバド!」

コロナはそう言うとバドを怖い顔で見据えたがバドは特に気にすることもなく膨れっ面で、収穫したサイコロイチゴを軽く空中に投げつつ不満を口にした。

「だって兄貴も師匠も小屋に篭っていないんだぞ~!暇じゃんかっ!!なっーーラビ~~?」

――ぴょこぴょこ…

そうしてバドに話しかけられたラビは確かにバドの言う通りカナタに会えないのは寂しいが、だからと言ってコロナの言うことが解らないわけでもないので半分同意、という程度の意思を、耳を少しだけ動かしてバドに伝えた。
「なんだよー!!ラビまで大人しく待ってるっていうのかよ~~??」
「そうよ…!当たり前でしょもうっ!ラビも解ってるんだからバドも邪魔しちゃ駄目よ!」

コロナはバドに姉としてそう言うと収穫を続けていた――次のバドの台詞迄は。
「ちぇっ…!なんだよ~~。俺はコロナの為に言ってやったんだぞ~。」
「…………。」


――ピタッ。


その言葉に動きを止めて固まったのはコロナだ。

「……??何言ってるのよバド…?」

コロナが意味が解らないと首を傾げると、バドはアッサリ言い放った。


「だってコロナ、最近明らかに兄貴と一緒にいる事が多くなったじゃんか~。夜も兄貴に寝ろって言われるまで一緒にいたり、書斎で一緒に勉強したり。師匠や俺とかラビには前と変わらないのにな~~。」


「……………はあ??」


その時コロナは、バドが何を言ってるのかよく解らなかった。

「一緒にって??何言ってるのバド~~??そんな事全然な……。………。」
(……ん?)

コロナはバドに言われて考えてしまった。

(……確かに最近何故かカナタさんと一緒にいる事が多い様な……。)

コロナが考え込んでいるとバドがまた話始めた。
「だからコロナが一緒にいたそうだからさ~~。」
「………。…カナタさんはこの家皆の保護者みたいなものだから、一緒にいる事が多くても当たり前じゃない。とにかく邪魔しちゃ駄目よ!」
「ちぇっ~~!…分かったよ!」

バドはコロナに再度説教されて遂に諦めた様だが、コロナは何だか心臓がどきどきしていた。

(…?)

しかし‘コレ’がこの時はなんなのかまだよく解らなかったコロナは、まあいいわ、とアッサリと納得して再び収穫作業を開始した。


――その頃作成小屋では。








「…ここはこうして…。いたっ…!!絆創膏…!」

カナタに軽く土台を作って貰い、それでも唸り悪戦苦闘しながら一生懸命袴用の布を縫っているソラがいた。


「頑張ろう…!」
(ううっ…難しいよ…!カナタはなんであんなにアッサリ作ってるの??やっぱりおままごとの時とか衣装作ってたから慣れてるの…?)


「………………。」


ソラがしょぼんと項垂れているとその様子を観察していたカナタが話しかけてきた。
「大丈夫かソラ…?」
「あっ…!!うんっっ!!カナタは…?」
「ああ…大丈夫だ。コロナのはもう作り終わる。」
「そっ…そうなの…!私も頑張るよ!」
「…………。」

ソラは誤魔化し笑いで平静を装っていたが内心では焦っていた。カナタはそんなソラを静かに見つめた後、ソラの頭を優しく撫でた。
「…カナタ…。」
「焦らなくていいぜ。まだ時間はあるからな。」
「………。…うん!!有難うカナタっ…!」

ソラはそう言ってニッコリ笑うとまた一生懸命作業にかかった。カナタはその様子を見守る様に一瞬見つめると、自らもコロナの着物の仕上げに取りかかった。
「…カナタ。」
「なんだ?」

その時ふとソラが疑問を口にした。
少しだけ切なそうに微笑みながら。
「そう言えば私達はやった事ないね…。」
「ああ。」
「お父さんが生きてたら…お母さんがまだマナの木になってなかったら…やってくれてたかな…?」
「…………。多分な。知ってたらやってくれたんじゃないか?」
「………!!そうだよね!!…そっかぁ…。」

ソラはカナタの言葉に嬉しそうにニコニコした。
「…私はバドとコロナの親になれるとかは思わないけど…喜んでくれたらいいな。」
「そうだな…。」

カナタはこの時ふと思った。


(ソラ、もしかして…。)


――七五三やってみたかったのか?


「……………。」


カナタはそんな予想を立てるとソラを見た。ソラのその顔は少しだけ寂しそうだった。

(…ソラ…。)

カナタはそのソラの顔を見て胸が傷み、密かに苦しそうに顔を歪めた。


――気付かなかった。


そういう親独特の感覚は、幾ら親代わりとはいえ子供だった自分は気付かない部分だった。

「……………。」

知らず知らずの内にソラに寂しい思いをさせていたのかもと思い、カナタはソラに見えない様に顔を伏せてたまま、悲しそうな表情をしていた。

自らの無力さを幼い頃から度々感じて努力はしてきたつもりだったが、やはり自らの至らなさは幾度なくと痛感するもんだなとカナタは思った。

またそれと同時に親の存在の偉大さを感じていた。

「……………。」

しかし数秒後、カナタは再び顔を上げて、真っ直ぐなその瞳でソラを見つめた。

(………。着物と袴か。まだ時間はあるしもう一着ずつ位作れるかもな…。)

「……………。」

そうしてカナタは色々考えた末にある事を決意をした。
今からでもソラのその寂しさを自分は埋められるだろうかと、そんな事を考えながら。

(あっちの自宅で夜作業するか…。)

「…………。」

こうして刻々と時間は過ぎていった。


――そしてその日の夜。








「……………。」

皆が寝静まったのを察知してマイホーム一階で本を読んでいたカナタは、コッソリとドミナの自宅に出かける準備を進めた。

バドやコロナを驚かせると張り切っているソラを更に驚かせるのかと、そう思うと少しワクワクする―そう思いながら片手剣やらを装備して軽装からいつもの装備に着替えていると、上から誰かが降りてきた。


――ぴょんっぴょん…。


そう、ラビである。


「ラビ…!お前寝たんじゃ…。」


――ぴょんぴょん!


ラビはカナタの足元に到着するとカナタの回りを飛び跳ねた。

このラビはカナタが最近マイホームに連れて来たばかりで、カナタに特になついていて甘えてくるのだ。まだ成長途中の子供だからなのかこの頃は特に夜カナタの布団の中に潜りにきていたのだ。


「もしかして…行きたいのか?」


――ぴょんぴょん!


カナタが問うとその通りだ、とばかりにラビは一生懸命高く飛び跳ねた。


「でもラビ、俺は当分寝ないかもしれない――…」


――ぴょこぴょこ…。


カナタが言いかけると、ラビはうるうるした瞳でカナタを見つめて耳を動かしていた。

「…そっか…。………。」

どうやら置いていって欲しくないらしいとカナタには解った。

カナタは一瞬間を置くとラビに向かって優しく微笑んだ。

「…解った。じゃあ……一緒に行こうな!!でも…他のやつには内緒だぜ…?」

カナタがそう言ってラビの頭を優しく撫でると、ラビはうるうるした瞳をカナタに向けながらシッポと耳をせわしなく動かした。

どうやら全面的に同意しているらしい事がカナタには理解出来た。


「…ありがとなラビ。じゃあ…行くか!」


――ぴょんぴょん!!


カナタのその言葉にラビは張り切って飛び跳ねてそんなラビにカナタも笑顔を向けた。

―パタン…。

そうして着物と袴作成の材料を持つと静かにマイホームを出て、ラビと共にドミナの自宅に向かったのだ。

その日からカナタは当日まで毎晩それを繰り返した。
ラビも何故か一緒に。


そうして――。


――数日後。


「出来たっっ…!!出来たよカナタ!!」

作成小屋に歓声が響いた。

「やったなソラ…!」
「うん!!結構ギリギリだった…!!」

カナタが近付くとソラが嬉しそうに袴をカナタに見せた。

「…………。」

手渡されたソレを見ながらカナタは顔を綻ばせた。
「――うまいぜソラ!丁寧だし…こんなに立派ならバドも喜ぶな…!」
「ほんとっ…?!」
「ああ。」
「…………!!」

ソラはカナタのその言葉に瞳をキラキラ輝かせて万歳した。

「やった~~~!!これで七五三が……って、千歳飴!!千歳飴を作らなきゃもう明日だよっーー!!カナタ千歳…」

ソラが万歳途中で慌てた様子で言ったのを見て、カナタは微笑んだ。
「それなら大丈夫だ…。もう作ったからな。」
「………。作っ……って……えええっっ…?!」

ソラはその言葉に驚愕した。
数日間カナタは自分にかかりっきりで色々教えてくれていたのに一体いつ作ったのかと。
驚愕しているソラにカナタは話を続けた。
「ごめんな…。ソラ飴も作りたそうだったから本当は一緒にやろうと思ったんだけど…俺のレシピだともう日にちが…。」
「……!」

ソラはそんな心底悲しそうな顔のカナタを見て慌ててフォローに入った。
「ううんっ…!!いいのっいいの!!助かったよーー!!」
「しかも本に載ってた千歳飴みたいに細くはならなかった。悪いなソラ…。」
「ううん…!!気持ちだよカナタ!!バドもコロナも絶対喜ぶよ!!!!」
「……。」

ソラが力説するとカナタは微笑んだ。
「…ありがとな。じゃあ千歳飴は当日のお楽しみにしておくな。」
「うんっ!!じゃあ私、バドやコロナの所行ってくるね!なんか数日間あまり一緒にいれなかったからちょっと気になってるみたいだから…。」
「ああ。ありがとな。」
「うん…!」

ソラはそう言うと素早く周辺を片付けてバドやコロナの元へと向かった。


――バタン…。


「……………。」


そしてソラの背中を笑顔で見送り、作成小屋の扉が閉まるとカナタは小さく息を吐いた。

(俺の方もギリギリ間に合ったな。今夜で終わるだろうけど…今からやるか。あとバドの袴は俺がいるからいいとしても着物の着付けの手配も…。)

カナタは色々と一通り考えると早速自分の袴とソラの着物を仕上げる為に、ドミナの自宅に向かった。

七五三はいよいよ明日だ。

――七五三前夜。


マイホームの屋根裏部屋ではバドとコロナがベッドに潜ったまま、小さい声で何やら話していた。
「なあコロナ…、最近ラビが夜ずっといないよな??」
「ラビだけじゃないわ…カナタさんもいないわ。」
「え??兄貴が???」
「うん…。心配だわ…。カナタさんって何でもこなすけど自分の体の事とか無関心だし…。」
「なんだよコロナ~~。母さんみたいなこといってんなーー。俺にするみたいに怒ればいいじゃんか~。」

バドが普段コロナに叱られてる事を不満に思ってなのか抗議を口にすると、コロナは顔を赤くして反論した。
「カナタさんはそのっっ…!……多分大丈夫よ……。」
「何が大丈夫なんだよー。兄貴って自分の事には無頓着そうじゃんか!ほんとはいつもの調子で怒ったら嫌われるかもって思って怖いんじゃないのか??」
「ちっ……!違うわよ!!」

コロナが叫んでベッドから体を起こすとバドは人差し指を自身の鼻に当てた。
「しっ~~…!静かにしろよコロナ…師匠は寝てるんだ!」
「ご……ごめん……。」

珍しくいつもと逆の役割に苦笑しつつコロナはベッドにそっと潜り直すと、小さな声で呟いた。
「…私はマイホームの栄養管理係よ。お料理で栄養バランス整えて影から二人を支えるんだもん!カナタさんは…師匠のお兄さんだから立場似てるし…特に心配なだけよ。いつも笑顔だし冷静だし…怒らなくても大丈夫なのよ!」
「そっかぁ?兄貴はあれで結構人と感覚がズレてる所がある気がするっていうか…危ないような気がしなくもないけどな~。」

バドの言葉にコロナは苦笑した。
「まさかーー。考え過ぎよバド!…もういいから寝るわよ!明日は午前中から師匠達が皆で遊ぼうっていってたし…。」
「あー…そうだったっ!!おやすみコロナ!」
「…まったくもー。」


――そう言ってため息を吐いたコロナは、この時はまだ知らなかった。

カナタがやけに心配なその気持ちはある感情の前兆だという事も。

そしてカナタの本質も。

やがてコロナも布団の中に潜ると明日に備えてスヤスヤと眠り始めた。


――そして此方はドミナのカナタの自宅。









「…出来た…!」

カナタは小さく息を吐くと嬉しそうに笑った。

その居間のテーブルには立派な着物と袴が一着ずつ。

(間に合ったな。急だったけどキッチリ作れて良かった。あとは料理の下ごしらえを…。)

カナタがそう考えながら欠伸をすると、ラビが瞳をうるうるさせてカナタを見つめていた。


「…ラビ…。」


――ぴょこぴょこ…。


ラビは小さく耳を動かした。ここ数日ろくに寝てないカナタが心配なのだ。

「…ありがとなラビ!ソラの顔を思い浮かべるとなんだか止まらなくてな…心配しなくても大丈夫だ!本当にありがとな…。下ごしらえが終わったら寝るからラビは寝室で先に寝てていいぜ…。」

カナタがそう言って穏やかな顔で微笑んで、ラビの頭を優しく撫でると瞳を潤ませてラビは耳としっぽを激しく動かした。

どうやら嫌だ待ってる!…という事らしいとカナタは解釈した。

「…そうか…。分かった。一緒に寝ような…。」

カナタはそう言ってラビの頭を更に優しく撫でると散らかった辺りを片付けて、料理の下ごしらえの準備を進めた。


――ぴょこぴょこ…。


そんなカナタをラビは僅かに耳を動かしながら心配そうに見つめていた。
カナタはいつもこうと決めたら振り返らずに、ひたすら一直線だなと思いながら。

そして無事下ごしらえを終えるとカナタはラビと眠りについた。


いよいよ起きれば七五三である。

――そして七五三当日朝。











「師匠?おはよーございま……」
「兄貴!師匠!おは……」
「…………………。」

マイホーム一階に降りてきたソラとコロナとバドは唖然としていた。

何故か目の前には、天井から大きめのハンガーに吊るされた着物と袴が一着ずつと、子供用の着物と袴が一着ずつ。

全体的に赤い着物に、深紅と明るめの赤、ピンク、橙色、深緑や黄緑、金色などで描かれている華や葉、鮮やかな模様。

それらは大人用の着物と子供用とお揃いだ。
そして立派な袴。

「こっ……!!こっ…これはっっっ……?!えっっ…??何これ…?!」

ソラは呟くと口をパクパクさせていた。言葉が出てこないらしい。

「……………。」
「……………。」

バドとコロナに至っては完全に口を開けたまま唖然としていた。

そこにキッチンからカナタがやってきた。

「おはようソラ!コロナ!バド!!今日は‘七五三’だ!昼は皆でお祝いしようぜ!でも取りあえずそれを着てみようぜ!着付けはジェニファーさんに頼んだんだ…。」

カナタが笑顔でそう言うと、我に返ったソラは走って勢いよくカナタの懐に飛び込んだ。

――タッタッ…


「カナタっーーー!!」


「…ソラ…?!うわっっ……!!」


――ドサッッ!!


ソラが勢いよく飛び乗ったからカナタは後ろに倒れつつ、ソラを支えて顔を上げてソラを見ると、ソラは泣きそうな顔をしていた。
「…ソラ…?」
「カナタ!!あれ…あれは……私達の分……?」
「………。…ああ。ちょっと遅いけど…ソラと俺の七五三だ!」

カナタがそう言い愛しそうにソラを見つめながらソラの頭を優しく撫でると、ソラは涙を流しながら笑顔で頷いた。

「……!…うんっ…!!うんっ……!!嬉しいよ……!嬉し…っ……!…ほんとは…やりた…かった…から……。」

そうして顔を涙で濡らしてべしょべしょのまま泣きじゃくる妹の頭を、カナタは優しく撫で続けながら呟いた。
「…一緒にやろうな。俺達も…七五三。」
「うんっ……!」

そして。

その光景を見ながら、未だに唖然としている二名は――。

「これって……。」

暫くしてやっとの事でコロナが一言呟くと、ソラを撫でながらカナタがコロナに顔だけ向けて穏やかな顔で微笑んだ。
「それはある異国の伝統行事で‘七五三’って言うんだ…。」
「しちごさん?」
「なんだよそれー?」
「それはな…」

こうしてカナタはソラを落ち着かせつつ、ゆっくりとバドとコロナに七五三の説明をした。











――数分後。

「それじゃあこれは…師匠とカナタさんが作ってくれた私とバドの分の着物と袴なんですか?!」

コロナが目を丸くして着物を凝視しながら訊ねると、カナタは穏やかな顔でああ、と頷いた。
「そうだぜ!それはコロナとバドの着物と袴だ。コロナの着物は俺が…バドの袴はソラが作ったんだ!」
「えええっ…?!カナタさんが私のっ…?!」
「すっげ~~!!ししょーも兄貴もすげ~~や!!!!」

微妙にコロナはバドとは違う所で驚いていたがそれは本人含め誰も気付かないまま、更に会話は続いた。
「その‘着物’っていうのはちょっと着るのにコツがいるんだ…。ジェニファーさんが出来るわよっていってたから、ドミナにいったら二人ともジェニファーさんに着付けして貰ってそれから俺の自宅でお祝いしようぜ…!」
「………!!」
「やったああぁっ~~~!!!!」

カナタのその言葉にバドは飛び跳ねて喜び、コロナは少し顔を赤くしながらも嬉しそうに微笑んだ。


――ぴょこぴょこ…。


そんな家族の様子を耳を動かしながら、羨ましそうに覗いてたのはラビだ。

「!」

それに気付いたカナタはソラの頭を一回優しく撫でて立ち上がると、ラビの目の前まで歩いていき、しゃがんでラビを見つめた。


――ぴょこぴょこ…


なんだろう?と思いながらラビが、耳を動かしながらつぶらな瞳でカナタを見つめているとカナタは微笑んで、それから近くに置いてあった袋を手に取りその中身を取り出した。


――…!


ラビはそれを見て動きを止めた。
なんと袋の中から取り出された‘ソレ’は――。
「うわ~~…!ミニサイズの着物と袴だ!すっげ~~!」
「凄い…!」
「カナタいつ作ったの…?!」

そう、ミニサイズの着物と袴だったのだ。


いつの間にかカナタの後ろからそれを覗いてたソラとバドとコロナが驚愕している中で、一番驚いていたラビは、しっぽをプルプルさせながら瞳を潤ませてカナタを見つめた。

「これはラビの分だ。どちらがいいか分からなかったから二つ作ってみたんだ。好きな方を取っていいぜ…。」

やがてカナタが穏やかな顔で微笑んでラビにそう言うと、ラビは感激の余り耳を激しく動かし瞳をうるうるさせながらカナタを見つめて、それからミニサイズの着物と袴を凝視した。
そして数秒後。


――ぴょんぴょんぴょん!!


袴の前でぴょんぴょん飛び跳ねた。

「…そっか!じゃあ…ラビは袴な…。」

カナタはラビの喜んでいる姿に嬉しそうな笑顔でラビにそう言うと、優しくラビの頭を撫でた。


――ぴょこぴょこ…。


ラビはそんなカナタを見て耳としっぽを激しく動かして、瞳を潤ませてカナタを見つめた。

いつ作ったのだろうと思っていた。
自分が寝た後にコッソリと作ってくれてたのだろうかと。

魔物である自分の為に、家族と同じ様に。

そう思ったラビの胸の中に、なんだか泣きたくなる様なとっても嬉しいという気持ちがいっぱい湧いてきた。

‘自分は人間じゃなくてもマイホームの家族なんだ’

何よりカナタの――。


――ぴょこ…。


「…ラビ…?………。」


ラビの胸に色々な思いが駆け巡り、なんだか解らないけれど胸がいっぱいになって瞳から少し涙が出ると、カナタはそれを優しく指で拭った。


「一緒に祝おうな…。」


そして優しくラビの頭を撫でると、ラビを抱いて立ち上がり三人の方に向き直った。


「よし…じゃあ着付けしようぜ!」


そのカナタの言葉に――。


「はいっ…!楽しみです!!」
「やったーーっ!!」
「うん…!」


バドとコロナとソラは笑顔で返事を返し、そして女性陣はドミナのジェニファー宅に向かい、男性陣はマイホームで着替えるとドミナに向かった。


――そして数十分後。

ジェニファーに自分の家ではちょっと都合が悪いと言われたので、ソラが宿屋の一室を借りて着付けを済ませた。
「あらまあ…二人共とっても似合うわ。まるであつらえた様にサイズも二人にぴったりねぇ…。」
「コロナ可愛いっっ…!!可愛いよ~~!!」
「……………。」

ソラがコロナの可愛い着物姿に興奮し、ジェニファーが感心している中コロナは顔を赤くして硬直していた。

「……………。」
(…なんかこう…気恥ずかしいです…。)

普段着ない物を着ると恥ずかしくなるという心境の他に、コロナは別の事実にも照れていた。

(これをカナタさんが作ってくれたなんて…。)

そう思ってコロナが着物を見つめると、一針一針丁寧に縫ってあるのがよく分かった。

(なんだろう…?このよく解らない嬉しさは…。)

「…………。」

(カナタさんがこの布でこの着物を…作った…。)

「…………!」

考えているとドキドキして嬉しくて、何故か胸の動悸が納まらなくて、コロナは自分は変なのかと思って首を横に振った。
「コロナ??」
「なっ…!なんでもありません師匠っ…!早く出ましょう!多分そろそろバド達も来てますよ!」
「……??」

コロナの様子にキョトンとして首を傾げたソラにコロナは慌てて弁解(?)し、ジェニファーの方に向き直った。
「ジェニファーさんお忙しい中有難うございましたっ。」
「……!!有難うございました…!」

向き直ったコロナがペコリとお辞儀してお礼を言うとソラも慌ててお礼を言い、そんな二人にジェニファーは明るく笑い手を横に振りながら答えた。

「気にしないでいいわよー。カナタちゃんには武器とか色々譲って貰ってるし、こんな事で良ければいつでもやってあげるから遠慮なく来なさい。」

そしてそんなジェニファーの好意に顔を綻ばせて笑顔を見せるのは約二名。
「…はい!!」
「………!ほんとに有難うございます!行こうコロナっ!!」
「はい師匠!」

――バンッ!

それからコロナとソラは宿屋を出る直前で再びジェニファーの方を向いて手を振ると、勢いよく扉を開けて宿屋から出ていった。

「コロナちゃんってもしかしてカナタちゃんの事…?はあー…青春ねえ。」

ジェニファーは出ていった二人の背中を見送ると何処か懐かしそうに独り言を呟き、また自宅に帰っていったのだった。

――ジェニファーにソラとコロナが着付けをして貰っていたその頃。













ドミナの入口ではちょっとした騒ぎになっていた。

カナタとバドとラビが袴姿で揃ってドミナに入ると、丁度『アマンダ&パロット亭』にやって来た酒場の常連客がカナタ達と鉢合わせして、物珍しい格好故に二人と一匹はその常連客達に囲まれていたのだ。


――ざわざわ…。


「カナタおめぇ~…なんだそりゃあ??バドまでお揃いでよぉ。」
「これか…?これは異国の‘袴’っていう服だ!」
「そうだよ!師匠と兄貴が作ったんだ!」
「へえ……二人とも結構似合うじゃねえか!」
「そっか…?」
「………!!へへっ!!似合うだろっ!!」

男の言葉にカナタとバドが嬉しそうに笑顔を見せると、男はバンッとカナタの背中を叩いてカナタの肩に腕を乗せた。
「おうよ!あつらえた様に二人とも似合うとも!!…しかしなぁ…おめぇ~~はほんとマメだよなぁ。この前はハロウィンやったんだろ?」
「俺行事とか好きなんだ。皆でやると楽しいしな…!」
「はあ~~。そこのラビまで袴じゃねえか。それもお前が作ったんだろ?」
「ああ…。ラビも家族だ!」


――ぴょんぴょん!


男の質問にカナタが穏やかな顔で微笑んで答えると、男と目が合ったラビは‘どうだ!’とばかりにカナタの回りを飛び跳ねた。

そんなラビを見て男はガハハと笑った。

「良かったなあラビ!!ご主人様に作って貰えて……ってもう一人客がきたみたいだな!俺はアイツ苦手なんだ。おいとまするぜ!」

男はそう言うとそのすぐ後ろに現れた、ある男の姿に苦笑し酒場へ早々に入っていった。

――そのある男とは。


「アンタは……。…なんだその格好…?」


「瑠璃?お前もしかして…また真珠姫が迷子か?」


ラピスラズリの騎士、瑠璃である。


カナタの質問に瑠璃は渋い顔をして唸り、頷いて肯定の意を表した。
「ああ…そうなんだ。ちょっと見当たらなくてな。また此処に探しに来たんだが…いない様だな。煌めきを感じない。」
「そっか…。一緒に探すか?」
「その格好でか?流石に無茶だろ?というかアンタのその格好は一体…」

瑠璃がそう言いかけた時だった。


「あれ?瑠璃…?!」


「…………!」


瑠璃は其処に現れた人物を見て絶句した。

そこには何かと自分の仲間探しを手伝ってくれる変わった人間、もとい瑠璃が初めて信用してもいいと思えた人間であるソラがいたのだ。
しかもいつもと違う格好をしていて、瑠璃が思わずその珍しすぎる姿を凝視しているとソラは途端に真っ赤になった。

「~~~っっ~~!!」
(いやーー!!なんかっ…なんか恥ずかし過ぎるよっーー!!!!)


――バタンッッ!!


そしてその直後だ。
ソラは猛ダッシュでカナタの家に走って駆け込んでしまった。


――しーん…。


「……!ソラ…?!」
「え…えっーと……。」
「どうしたんだ師匠??」

その一部始終を見て瑠璃が唖然としてバドとコロナが顔に疑問符を浮かべている中、カナタは何か考える様に瑠璃を見た。


(……………。)


‘七五三は子供の成長を祝い’


「なっ…なんだ?どうしたんだソラのヤツ…。」
「俺達に聞かないでくださいよー。わかんないからさ~。」
「……えっと……多分恥ずかしいんじゃないですか?」
「恥ずかしい?綺麗だったが…恥ずかしいってあの珍しい格好が?」


‘大人の装いを…’


(……………。)


カナタはバドとコロナと話す瑠璃を見ながら、穏やかな顔で幸せそうに微笑んだ。

ある未来をほんの少し垣間見ながら。

そんなカナタを見ていたラビが、カナタの足元でぴょんぴょん跳ねた。

「ラビ…?」

ラビはカナタが自分の方を向くと一生懸命耳を大きく動かした。

なんだかカナタが一瞬寂しそうな顔をしていた様な気がしたラビは、励ましたつもりだった。

「……?なにもないぜ?大丈夫だ。よく分からないけど…励ましてくれてありがとな…!」

カナタは笑顔でそう言うと、ラビを抱き上げて腕で抱えて三人の元へと向かった。

カナタがラビを抱き抱えたまま瑠璃に近付くと、瑠璃は全く解らないという顔をしてカナタに訊ねた。
「ソラのヤツは一体どうしたんだ…?」
「さあな…。お前はこの後また真珠姫を探しに行くんだろ?」
「勿論だ。真珠に何かあったら大変だ…嫌な予感がするからな。…………。」

瑠璃はそこまで言うと押し黙ってしまった。


「――さっきのソラの様子も気になるか…?」


「……!」


カナタの言葉に瑠璃は目を見開いた。


「………。どうしたのか気になるだろ普通は…。仲間…にあんな態度取られたら…。」


「…………。」


カナタは気持ち少し照れている様な、ぶっきらぼうな態度で、小さい声でそう言った瑠璃を穏やかな顔で見つめていた。そして柔らかく微笑んで瑠璃に言った。
「心配するな。…多分ソラは…。」
「多分?」
「いや……。とにかく大丈夫だ。気にするな…。」
「…………?」

瑠璃はそのカナタの意味深な言葉に少し引っ掛かりを感じたがもたもたはしていられなかったと思い直して、カナタの言葉を信用して去る事にした。
「まあ…兄のアンタがそう言うなら大丈夫なんだろ。じゃあな。」
「ああ…。」

そして瑠璃は去って行った。

「………。」

カナタはそんな去り行く瑠璃の背中を見送ると、バドとコロナの方に向き直った。
そして笑顔で言った。
「――コロナもよく似合ってるな!」
「あっ……。はいっ!!赤が綺麗で凄く気に入りましたっ!!」
「………。そっか…。」
(良かった…。)

カナタはコロナの言葉に一瞬微笑むと自宅の方に目をやり、二人に言った。
「じゃあ…後は髪の毛も綺麗に着飾って、コロナの化粧はソラがするって言ってからな…千歳飴もあるし、家に行くか!」
「…お化粧っ?!」
「千歳…飴??手作り?」

その瞳を輝かせている二人に、カナタは悪戯好きな子供が悪戯を成功させた様にニッと笑った。

「ああ!」

その一言を聞いた途端に二人は飛び跳ねて駆け出した。
「やったーーっ!!早く行こう!!」
「お化粧ですっ!」


――バタンッッ!


そしてまた、ソラと同じくカナタの家の中に猛ダッシュで入っていった。

「……。」

カナタがその様子に一瞬だけ少し苦笑すると、カナタに抱きかかえられていたラビがカナタの胸元で、耳を激しく動かして瞳を輝かせてカナタを見つめていた。


――ぴょこぴょこ…。


「…そっか…。俺達も行くか…!」


カナタはそう言うとラビに笑いかけて自宅へと向かった。


――そしてカナタが自宅の扉を開けると其処には、千歳飴と豪華な料理の数々に歓喜しているバドとコロナの声が響き渡り、未だ顔を赤くして椅子に座って固まっているソラがいたという。



~end~


※次はオマケです。

●オマケ●

――数分後。

「…どうかな?」
「テへへ…。どうバド?」

ソラに化粧を施されたコロナと、自らも化粧をしたソラが隣の部屋から出てきたのを見て、バドとラビは瞳を輝かせて驚いていた。
「すっげ~~~!!コロナ綺麗だ!!いつもと全然違う!」

――ぴょんぴょん…!


「………。」


バドとラビが興奮覚め止まぬ横で、カナタは嬉しそうに二人を見つめると二人に近付いた。
「…綺麗だな、二人とも。」
「あ…。」
「いいでしょー!頑張ったよ!!」
「………。」
「ああ。コロナもソラも違う人みたいだ。…あとコレな。」

カナタはそう言うとソラの束ねた頭の上に造花のかんざしを差し、続いて何故か俯いていたコロナのポニーテールのゴム部分にも小さい造花の飾りを丁寧に差した。
「…!」
「カナタこれは…??」

ソラが質問すると、コロナの頭から手を離したカナタは説明した。

「着飾るって髪型もだからな…何かないかと思ってドミナの商店街で探してたら、丁度いいのがあったんだ…。」

カナタが穏やかな顔で二人にそう言うと、ソラはパッと顔を明るくした。
「有難うっカナタ…!」
「良かった…似合うな!」
「うん…!この着物にとっても合うよ!」
「………。」
(…っ…??)

ソラがそうして無邪気に喜んでカナタが嬉しそうに笑っている横で、コロナはドキドキしながら俯いていた。











――そして一方で。


「凄いよなこれ!見てみろよラビ、この飴兄貴が作ったんだってさ!!巨大だよな~~!!直径一センチ、長さ二メートル以上のが五個もあるぞっ!」


――ぴょんぴょん…!


何故千歳飴がそんな巨大なモノになったのかは、マイホームの家族は後になって理解するのだが、ともかくバドとラビは飴を早く食べてみたくて興奮していた。

その千歳飴の中には一人一人の家族の似顔絵。


――ぴょんぴょん…!


ラビの顔の千歳飴もあって、それを見てラビはまた瞳を潤ませていた。


――そうしてマイホームの七五三はこの後、夜まで続いた。



~オマケend~
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