トレジャーハント!

「マナ!風の噂で聞いたよ!!マナの世界で何かとってもいい事があったって…!
お祭りなんでしょう?!おめでとうっっ!!」


『へっ…?!』



マナはドミナで買い物をしていた時、突然後ろから声をかけられて驚いた。

声をかけて来たのは以前とんでもないお昼ご飯を出してきたソラだった。正確に言えばお昼を用意したのはその兄だが。



「マナ!今日はね!カナタがマナの為にケーキ作ったんだよ!
なんか‘マイホームを完璧に再現する!’とか言っててスッゴク凝ってるんだよ!!」


『ちょっと待ってソラ!そのいつもにも増して脈絡のない唐突な話は何??
というかカナタがケーキって…物凄く嫌な予感がす―…』



「早く行こう~!」


『ちょっ…!ソラ待って!!買い物がーー!』



マナの叫びも虚しく、ソラはマナを連れ去った。












―マナは案の定だと思った。


『ねえソラ…この‘ミニチュアマイホーム~お菓子の家’みたいなのは何?ケーキ…?』



そう、マナの目の前には人が入れる位の、ミニマイホームとも言うべきだろうか。

全てお菓子で出来た、文字通り‘お菓子の家’が建っていた。



「買い物の師匠!ソラ!おかえり!丁度出来たぜ!」



そのお菓子の家を作っていたのは勿論、ファ・ディールでも100年に一度でも現れるのかどうかという大食い王、カナタだ。

カナタは心底楽しそうにマナに話しかけた。



「見てみてくれマナ!かつてない程精巧に出来たぜ…!」


『か…かつてない程??』



マナが怪訝な顔をして言うと、カナタは嬉しそうに笑って言った。



「ああ!‘お菓子の家’はかれこれ20回目だ作るの!
小さい頃からソラが作って欲しいっていう度に作ってたら凝り始めてしまってな…。
これはその今まで作った中でも一番いいやつだ!
マナのお祝いに一番いいやつが出せて良かった…。」



カナタはそう言うとマナの前に来て、お菓子の家を作る際に頭にしていたバンダナを取って、ソラの兄としてマナに言った。



「…いつもありがとなマナ!
ソラの買い物の師匠として友人として、ソラに色々と教えてくれて…。」



カナタはそう言うと穏やかな顔で微笑んで、もう一言付け加えた。



「…今日はマナの世界での、とても嬉しい祝い事の日なんだろ…?おめでとうマナ…。」


『カナタ…。』

マナが驚いていると、後ろからソラが抱きついてきた。



「マナ本当におめでとうっ!!いつも値切り術とか教えてくれて有難う!!
マナの冒険の話もとっても楽しいよ!」


『わっっっ!!ちょっ…ソラ値切り術とか』


「師匠ー本当おめでとう!」


『聞いちゃいないわね。何これ誰に似たんだろうね…』



マナは苦笑しつつそう言うとちらっとカナタを見たが、カナタはやはりというか案の定解っていなかった。



「………?良かったな…ソラ!これからも師匠に教えて貰おうな!」


「うん!!」


『…うんまあいいか。カナタとソラだもんね解らないのがデフォだもんね。』



心底嬉しそうな二人を見てマナは一人頷いて何かを納得しつつ、さて、と張り切って二人に言った。



『じゃあ…折角だし頂こうか!』


「…ああ!」


「……!うんっ!食べようマナ!」



カナタとソラはそのマナの笑顔を見れた事が、パーティーを開いた甲斐があったと一番嬉しく思った。

そしてカナタは早速端に寄せてあったテーブルからお皿を取ってマナに渡した。



「…これ、一日で食べ終わってしまって物足りないかもしれないが…
買ってきた材料とこのマイホームの中だとこれが限界なんだ…。ごめんなマナ…。」



お皿をマナに渡しつつそう言ってしょぼんとしたカナタに、ツッコミを入れたのは勿論マナだ。



『ごめんカナタそれ全力で否定するわ。寧ろこれは一週間分以上だから!』


「そうか…?」



尚もしょぼんとして心配そうなカナタを見て、マナはソラの方に振り向いた。



『そうよ!どう考えてもそうでしょ!?ねえっ…ソラ……』


「え…?」


『……………。』



最早カナタの食事の量に慣れつつあったソラは感覚が麻痺していたのか、今のカナタの発言を特に変とは思っていなかったらしかった。



『……………。』



(今度から消化にいい薬持参だなー…。)

マナはひっそりと心の片隅で決意しつつ、カナタから皿を受け取ると、‘お菓子の家’に挑んだのだった。


~end~

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