トレジャーハント!


(…ん?)
ある日の昼下がり、ソラがドミナの商店街で買い物をしていると、どこからか元気の良い声が聞こえてきた。


「高い!なんでこんなに高いのよ?!」


(…値切り交渉??)
ソラが気になってコッソリ見に行くと、自分とそっくりな女の子が露店の店主と、壮絶な戦い(?)を繰り広げていた。

「この品はもう少し安くしなきゃダメよ!ほら、ここ!他の品より少し色落ちしてるわよ…?」

「ねえちゃん、勘弁して~な~」
女の子の一押しに店主が苦笑する。
そのやり取りを見ていたソラの目が光った。
(神!買い物の神様だわ…!!マイ師匠!!是非教えを乞わなくては…!)

ソラは思い切ってその女の子に、話かける事にした。
「すみません!そこのお姉さん!」

「?」
女の子が振り返って、二人して絶句した。

「…あなた…私にそっくりね…」
女の子がマジマジとソラを見る。

(確かに似てるわ…。双子でもう片方が女の子だったら、きっとこんな感じね…)
ソラも呆然と女の子を見つめる。


「所で何か用だった?」
女の子に言われてソラはハッとした。


「そうだ!」

―ガシッ

ソラが女の子の手を掴む。
「師匠!!買い物の極意を教えて下さいっっ!!」


(ええっ…?!)
「―はあ…?」
女の子は突然何を言い出す?と言いたげに、ソラを見つめた。


―それから約30分後。


「助かった~!!本当有難うマナ!!一杯買うものあるから食費が高くて…。これなら助かるわ…!」
ソラの安堵の表情に、さっきの女の子―マナは笑った。

「ふぅ…。それだけ値切るのは至難の業だったわ…。しかし!このマナ様にかかれば出来ない事はないわ!買い物はあたしにまっかせなさいっ!」
得意気にそう言って、マナはウィンクした。


「マナ師匠ーー!」

「ソラ!ちょっとまっ…」
ソラが思い切りマナに抱きついたので、二人が持っていた荷物が全部地面に落ちてしまった。

買った物が入った袋15個全てが。

「わっ!」

―ドササササッ…


「ああー!ごめんマナ!」
ソラが慌てて荷物を拾う。マナも荷物を拾いつつ感心した様に呟いた。

「…それにしてもこれだけ買わなきゃなんないなんて…。ソラの双子のお兄さんってどこかの変態と、何か同じものを持ってる空気を感じるわね…。」
マナは言いながら唸った。

「どこかの変態??」
ソラがキョトンとして尋ねると、マナは顔をしかめて言った。
「うん!か弱き乙女の目には、余りにも変態に写り過ぎる紫タイツ男なんだ!」
(思い出しちゃったわ…)
自分で言って、マナはその姿を思い出して苦笑した。

「紫タイツ…どんななのかなぁ…。ちょっと会ってみたいかも。スパッツとどっちが危ないのかなぁ…。」
ソラはノンキに空想にふけった。

空想に更けっていたソラは、思いついた様にマナに言った。
「そうだマナ!今からこの荷物をその双子の兄の家に置きに行くんだけど、一緒に来ない??マナの旅の話とか聞きたいっー!」

目をキラキラさせたソラに言われて、マナは苦笑した。
「…しっかたないな~…。分かった!行こう!どんなだか見てみたいし!」

「やった~!」
ソラはニッコリ笑って万歳した。

(何か誰かを思い出すキャラねソラ…。)

マナは自分の旅を思い出しつつ、ソラと共に、ドミナに住むソラの双子の兄、カナタの家に向かった。


ドミナのカナタの家に着くと、ソラは早速ノックした。

―コンコンッ…

「カナタ~!」
ソラが言うとカナタが出てきた。

―カチャ…

「悪いなソラ!倉庫の整理が終わらなくて行けなくって…。………。」
カナタはソラの後ろの人物に、目を見開く。

「…ソラにそっくりだな…。…ソラ、この人は?」
カナタがソラに尋ねると、ソラはニッコリ笑って言った。
「師匠だよカナタ!買い物の神様!」

「ちょっ…ソラ!紹介になってな…」
マナがツッコミを入れようとして、カナタが納得した様に言った。
「分かった!それじゃとにかく、買い物神も入ってくれ!」
ごく自然に、爽やかに笑いながらアッサリ言って、カナタは二人を中へ通した。どうやら納得したらしい。

「…………。」
(うん何かあっちの仲間とはまた別の変さを感じる!)




マナは妙な納得をして、ソラに続き、カナタの家に入っていった。
















カナタの家の中は現在物でごった返していた。

「ごめんな…今倉庫の整理してる途中なんだ!その辺に適当に座ってくれ!」
カナタはそれだけ言うと、マナとソラが買った荷物を地下に運んで行った。

部屋には食べ物がそこら中に置いてあった。

(うわぁ…)
「このツッコミ所満載の部屋はなに?それにあの地下は一体??」
マナが一瞬唖然とした後怪訝な顔をして尋ねると、ソラが苦笑して答えた。
「あれはね、全部カナタの食糧庫なんだ!」

「…ちょっとまって?なんか覗いた感じ何か奥まで広いけど?10畳はあるよね?」
マナのツッコミにソラは平然と答える。
「うん。1週間位の食糧かなぁ…。」


マナは目を擦った。
「……ん??…何か5段棚一杯に食糧があるんだけど…??何これ何かの見間違い??その棚が10個位あるんだけど…??」


「んー。大丈夫!見間違いじゃないよマナ!カナタの胃は底なしだから~。」
ソラはもう当たり前の事の様にそう言うと、ちらかっている食糧を地下へと運んだ。

「………。」
(コレットといい紫タイツといい…何故あたしの出会う人間は何かこう…一癖あるのばかりな訳?…まあ紫タイツは一癖というか変態だけどね!)

マナはそんな事を思いつつ、食糧の片付けを手伝ったのだった。

食糧庫の片付けが終わった後、3人は昼食を取る事にした。

「悪いな買い物神!ソラに買い物指南までして貰った挙げ句に、俺の食糧庫の片付けまでして貰って…。」
カナタはすまなそうにしながら、二人の前と自分の席の前に、ミートソーススパゲッティを置いた。

そしてマナとカナタの前には、更に大皿に山盛りのミートソーススパゲッティ。

(…………。)
「…あ、ありがとう…。」
マナの顔には汗が。
(素?素なの…?素な訳?)

「買い物神は小食じゃないよな…?ソラは小食だから一皿分しか食べないからなー。取りあえず買い物神の分だけ…。」
カナタが少し残念そうに言っている横で、マナはブンブンと顔を横に振った。

(ちょっっっと待て!!いや小食じゃない!それ小食とちゃう!!というか!)
「ちょっと待って!!!まず買い物神ってなんなのよ?!」
マナが言うとカナタはキョトンとしてマナに聞いた。
「ん?違うのか?」

「ちゃうわ!!」
マナが全力で答えると、カナタが疑問を口にした。


「なんだ!買い物神は本当はなんてんだ…?」


「…その買い物神っていうのは止めて?あたしは‘マナ’よ!」
若干ヒキツリ笑いながら答えると、カナタは穏やかに笑って言った。

「…そうか…。マナの木と同じ‘マナ’なんだな…。マナとは‘真名’や‘愛’とも言うし…いい名前だな…!」
そして微笑み、手を差し出した。
「俺はカナタってんだ…!弟子を宜しくな!」


(………。)
「…宜しく。」
そう言われてマナは、カナタと握手したのだった。

そして3人はご飯を食べ始めたのだった。

















「―で、マナの旅した世界には、紫タイツ男とか白いのに黒い人とか、機械を見ると性格が変わる人がいるんだって!」
ソラはパスタを食べ終わり、お茶を飲みながらマナに聞いた話を夢中になってカナタに語った。

「へーー!俺も話してみたいなそいつらと!」
カナタはパスタを食べつつ答えた。


(………。)
「うん!カナタみたいな人がいたよ!」
マナはおもいっきり笑顔で答えた。

マナの目には、マナが食べれなかった分も大皿パスタを平らげようとする、カナタが映る。

(大丈夫大丈夫!この二人は黒属性じゃない!セーフセーフ!コ〇ットだったら今頃あたしの横を武器が通り過ぎて壁の向こう側に穴が空いてるわ!)

―オーケーこの二人はツッコミを安心して入れられる!

マナは頭にインプットした。


「しかし紫タイツか…。防寒具か…?」
カナタは大真面目に考えていた。

「いやあれは単なる変態だから。」
そこにマナは速攻ツッコミ、ソラはそれを楽しそうに眺めていた。






それからもマナが冒険話を延々と語りながら、それを楽しそうにソラが聞き、カナタが感心しながら、時々マナが全力でツッコミを入れながら、楽しい時間は過ぎていった。





―ある、晴れた日の昼下がり。


~end~
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