夢主コラボ童話(リレー小説)


森の中にある小さな小さな一軒家。
そこには小さな一軒家によく似合う、背の小さな女の子と胸の小さな女の子が住んでいました。
この二人は姉妹で、マイナスイオンが発生する森の中伸び伸びと暮らしています。
少々不便そうな点を除けば、ストレス社会とは無縁そうで羨ましい限りですね。

胸の小さな方の女の子の名前はフミカ。 彼女はいつも頭に真っ赤な頭巾を被っている為、人々から『赤ずきん』と呼ばれ、親しまれています。

そして…もう片方の背の小さな女の子の名前はハオリ。

彼女もいつも出かける際に、赤の頭巾を被っているのですが…赤の色合いよりも背の低さが目立ってしまう為、人々からはいつも『ちびずきん』と呼ばれ、ハオリはそう呼ばれる度に口を尖らせては、自分の方がお姉さんなのに…と不機嫌になるのでした。

おや?赤ずきんのフミカがなにやら困った顔をして自分の家へ帰って行きます。手にカゴを持っている様子からして、買い物の帰りでしょうか。
一方お留守番をしていたちびずきんのハオリは、眉をハの字に下げた妹を見て首を傾げました。


「ただいまお姉ちゃん!大変!一大事だよ!」

「おかえりフミカ、どうしたのよそんなに慌てちゃって」

「あのね、町に買い出しに行った時に、 いつも野菜を売ってくれるおじさんから聞いた話なんだけど…今、リフィルさんが風邪で寝込んでて大変なんだって」

「へぇ…あの料理以外は完璧なリフィルも風邪には負けちゃうのね」

「感心している場合じゃないよお姉ちゃん…ええっと、それでね、私今からリフィルさんのお家にお見舞いに行こうと思うの」

「あら、それじゃあ私も一緒に…」

「ううん、私一人で大丈夫。それに二人で押し掛けちゃったらリフィルさん気を遣うだろうし…お姉ちゃんには夕食の支度をして待ってて欲しいの」

フミカに言われ、ハオリは渋々頷きました。
そしてリフィルへのお見舞いに…と、今日のお昼ご飯に作りすぎていたリゾットと、朝に野原で摘んだ野苺をカゴに入れてフミカに渡しました。
本当だったら某スポーツドリンクや十秒チャージに最適な某ゼリー飲料、額にピタリと貼って冷え冷えとさせる某冷却ジェルシートを持たせるべきなのでしょうが、ここは童話の世界。
そんな便利な品など存在しているはずがありませんでした。

「じゃあお姉ちゃん、行ってきまーす! 夕方までには帰るから心配しないでね」

「ええ、行ってらっしゃい」


赤頭巾を被りカゴを持ったフミカを、 手を降りながら見送ったハオリは…彼女の姿が見えなくなると、お気に入りの赤頭巾を被って出掛ける支度を始めました。
どうやらフミカの言う事を聞かずに、こっそりと付いていくようです。

町へ向かえる道は整備されている上に人通りが多い為、妹一人で買い出しに行かせる事が出来るハオリですが、リフィルの家に行くとなると話は別です。
森を抜けなければならない上に、稀に山から下ってきた狼が出るとの噂があるのです。
それに変な気を起こした男が、人通りの無い中で無防備なフミカを食べてしまう可能性だってあります。


「”男は皆狼なのよ。だから気を付けなさい”…ってこの前リフィル、言ってたもの」


そう呟いて、ちびずきんのハオリはフミカの尾行を始めるのでした──。
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