夢主コラボ童話(リレー小説)
「貴様、何者だッ!?」
「人に名前を聞く時はまず自分から名乗りやがれ!」
『だあああもうっ、なにやってんのよ馬鹿兄貴っ!』
ロイドの勇気ある(無謀とも言う)行動に内心でガッツポーズを送りながら、私はナイフを構えた。
フミカはと言うと、長身二人組のうちの赤い方の男の近くでーー足でも捻ったのだろうかーーへたり、と座り込んでしまっていて、とても逃げられそうにない。
こうなったらあの赤い方の男を…始末する!
「せやぁっ!!」
「!」
「お…お姉ちゃん!?」
「痛っ!?」
男は気配に気が付いていたらしい。
実に鮮やかな動作で、私の手からナイフが叩き落とされてしまった。
そんな私の様子を見て、マナとしいなが狼狽える。
『ちょっと、しいな!しいなは何か武器とか持ってないの!?』
「えっと…ごめん、あたしは罠の専門家だから、武器の類は何一つ…」
『それでも猟師かっ!』
こんな状況でもどこか抜けたやり取りを繰り広げている二人を、リフィルと青い方の男が呆れた目で見ていて、ロイドは何故か「罠ってどんなのを使うんだろうな?」と初対面のフミカに質問している。
「ねえ、そこの赤いお兄さん」
「…クラトスだ」
「じゃあ、クラトス。降参するからそのナイフ返してくれない?大丈夫、もう刃向かったりしないから」
「あの…お姉ちゃん!私の話を…」
「良いから黙ってて」
無言でクラトスと言う男は地に落ちたナイフを拾う、私は彼が屈んだ瞬間を見逃さなかった。
「なーんてね、さあ…言い遺す言葉は?」
私はブラウスの袖に仕込んでいた銃をクラトスに向けた。
これはさっき兄妹やしいなを脅す時に使ったモノと同じ…弾なんて入っていない。ただのハッタリだ。
「卑怯だぞ、小娘!」
青い方の男は叫び、私の銃の事を知っている面々は祈るような面持ちで私を見守り、クラトスは眉をひそめながら銃口を見つめている。
そしてフミカは…
「もうっ!いい加減にしてよお姉ちゃん!」
…えっ、怒ってる?
「だってフミカ、この二人にさらわれそうになってたんじゃ…」
「違うよ!」
「だったらどうして足を痛めて…」
リフィルの質問を受け、フミカは近くにあったリンゴの木を見上げながら答える。
「私、リフィルさんが川の水を飲みに行っている間に…珍しい鳥が、あの木で休んでいるのを見つけたんです」
「珍しい鳥だと!?」
『その鳥、青くなかった!?』
餌に食いつくように近付いてきたロイドとマナに若干怯えながら、フミカは言葉を続ける。
「え…ええ…確かに青かったです。リフィルさん、珍しい動物に詳しいでしょう?だから、その青い鳥を捕まえたいな…って、それにリンゴを食べたら風邪も早く治るんじゃないかなあ…って思って、木に登ったら…」
「…そこから落ちて、足を痛めたのね?」
「うん…それでね、そこにたまたま通りがかったユアンさんとクラトスさんが、私の足を手当てしてくれてたんだけど…川から帰って来たリフィルさんが…」
「私達を見るなり勝手に暴漢の類と勘違いし、そこに貴様らが来たと言う訳だ」
青い方の男改めユアンは、そう言って私達の顔をジト目で睨み付けた。
「あら、この森って危ない輩がしょっちゅう出るのよ?誤解されるような真似をしているあなた達に非があるわ」
「なんだと小娘、小さい癖によくも生意気な口を…」
「今小さいって言ったわね…?」
「やめろユアン、みっともないぞ」
「お姉ちゃんも恥ずかしいからやめて」
せっかくフミカを助けてくれたお礼を言おうと思ってたのに、このユアンとか言う男のせいで言う気無くしちゃったじゃないの!
それにしても青い鳥の情報、思わぬ所で手には入ったわねえ…