夢主コラボ童話(リレー小説)
むかし、むかし。とあるクリスマス・イブの日。
サンタクロースも素通りしてしまうような小さな森の木こり小屋に二人の兄妹が暮らしていました。
いや、もしかしたら姉弟なのかも―……まあ、これから語る物語の上でそこまで重要ではありませんので、兄妹で通させていただきます。
兄の名前はロイド。
妹の名前はマナ。
二人の生活はけして裕福とは言えませんでした。
丸々と焼けたハーブの香りが漂う、肉汁が溢れてこぼれ落ちそうな七面鳥。
ふわふわにホイップされたクリームが乗った真っ白なデコレーションケーキ。
色とりどりな紙やリボンで包装された沢山のプレゼント。
クリスマスにはつきもののそれらは、この兄妹にとっては夢のまた夢でした。
『起きろッ!ちょっと、ロイド起きなさいってば!この寒さで寝たら二度と起きられないからね!』
「……ん?ああ…肉がどうしたって?おやす―……」
『馬鹿言ってないでさっさと起きる!このまま寝たらあたし達凍死して春には熊の胃袋の中よ!?』
……思ったよりも切実な貧窮っぷりでした。
すきま風吹き荒ぶ小屋にマナの声がこだまします。
「…もし。一つお尋ねしたいことが―……って、何をしてるんですか!?」
『えっと、起きないから殴れば起きるかな―……って。』
「それ、殴る云々の騒ぎじゃありませんから。殴るというかエルボーしただろ、お前。」
『大丈夫大丈夫。ロイドは強いから。シベリアだろうがソマリア沖だろうが核戦争後だろうが生き残れるって、妹信じてるから!』
「兄を死地に送る気ですか!?っうか、送る気なの!?」
老婆の指摘はもっともです。
……ん?老婆?
今まで寒さと飢えで頭が回らなかった兄妹ですが、時間が経つにつれて徐々に思考が戻ってきました。
そして、頭が回るようになるにつれて、当然のようにある疑問が二人の心の中に浮かび上がります。
“誰だ、コイツ”と。
「あっ、紹介が遅くなりました。私は怪しいものですが、実は二人にお願いがあってやって来たのです。」
「おい、マナ……。こいつ自分で怪しいって言ってるぞ?もしかして怪しい奴なのか?」
『……むしろ、どこに怪しくない要素あった?』
いく筋も、まるで年輪のように刻まれた老婆の目元の皺に、また一つ新たな皺が刻まれます。どうやら老婆は微笑んだようです。
しかし、その微笑みも束の間の間。薄い唇を真一文字に結び、今までの穏やかな笑みを消すと、真剣な面持ちで老婆は兄妹に向かい合いました。
「実は私には弟がいるのです。しかし、重い病にかかってしまって―……お医者様から残りいくばくもないと言われました。そんな時に幸せの青い小鳥の話を耳にしたのです。
もしかしたら、弟はその幸福の小鳥さえ見つければ治るかもしれない―……お願いです!青い鳥を探して下さい!」
老婆が兄妹に語った話はどう考えても眉唾ものでした。
どこの世界に鳥で病気が治る人間がいるというのでしょう?
当然二人の反応は―……
『はっ?そーんな胡散臭い話誰が信じるわけ?ね、ロイ―……』
「大変だったんだな!婆ちゃん……ッ!!」
ここにいました。
がっちりと老婆の両手を握り締め、涙を浮かべながら熱く力説するロイドに、言い出しっぺの老婆ですら若干引きました。
一方のマナはと言えば―……彼女は頭を抱え、山よりも海よりも深いため息を一つ零していました。
そうだ。ロイドはこういう人間だった。……と。
そもそも、年の瀬のクリスマス・イブに何故こんな貧窮しているかと言うと、人が良すぎるロイドが僅かばかりの蓄えを自分達よりも貧しい子供たちに与えてしまったことが原因なのです。
仕方がない。兄がそこまで言うのなら―……マナは腹を括りました。一度言い出したら梃子でも動かない事を妹は知っていたのです。
『三食昼寝付き―……』
「……はい?」
『あたし達がその青い鳥とやらを見つけてきたら三食昼寝付きの職を寄越す事ッ!
ま・さ・か、ただで何とかしようなんて思ってないわよね~?』
「……あなた、それでも主人公の一人ですか?」
これでも兄から見ればかなり妥協したほうです。
兄は人がいいですが、妹はわりと現実的なのです。見た目も似ていない二人でしたが、中身はもっと似ていませんでした。
これは一筋縄ではいかないと悟った老婆は、しぶしぶマナの出した条件を飲むことに決め、どこかからマナが出した契約書にサインをしました。
『いよっし!そうと決まればこっちも頑張らなきゃ!ロイド、準備は?』
「ばっちりだぜ!」
……こうして、マナとロイドの青い小鳥を探す当てのない旅が始まりました。
しかし、青い小鳥など一体どこにいるというのでしょうか―……
サンタクロースも素通りしてしまうような小さな森の木こり小屋に二人の兄妹が暮らしていました。
いや、もしかしたら姉弟なのかも―……まあ、これから語る物語の上でそこまで重要ではありませんので、兄妹で通させていただきます。
兄の名前はロイド。
妹の名前はマナ。
二人の生活はけして裕福とは言えませんでした。
丸々と焼けたハーブの香りが漂う、肉汁が溢れてこぼれ落ちそうな七面鳥。
ふわふわにホイップされたクリームが乗った真っ白なデコレーションケーキ。
色とりどりな紙やリボンで包装された沢山のプレゼント。
クリスマスにはつきもののそれらは、この兄妹にとっては夢のまた夢でした。
『起きろッ!ちょっと、ロイド起きなさいってば!この寒さで寝たら二度と起きられないからね!』
「……ん?ああ…肉がどうしたって?おやす―……」
『馬鹿言ってないでさっさと起きる!このまま寝たらあたし達凍死して春には熊の胃袋の中よ!?』
……思ったよりも切実な貧窮っぷりでした。
すきま風吹き荒ぶ小屋にマナの声がこだまします。
「…もし。一つお尋ねしたいことが―……って、何をしてるんですか!?」
『えっと、起きないから殴れば起きるかな―……って。』
「それ、殴る云々の騒ぎじゃありませんから。殴るというかエルボーしただろ、お前。」
『大丈夫大丈夫。ロイドは強いから。シベリアだろうがソマリア沖だろうが核戦争後だろうが生き残れるって、妹信じてるから!』
「兄を死地に送る気ですか!?っうか、送る気なの!?」
老婆の指摘はもっともです。
……ん?老婆?
今まで寒さと飢えで頭が回らなかった兄妹ですが、時間が経つにつれて徐々に思考が戻ってきました。
そして、頭が回るようになるにつれて、当然のようにある疑問が二人の心の中に浮かび上がります。
“誰だ、コイツ”と。
「あっ、紹介が遅くなりました。私は怪しいものですが、実は二人にお願いがあってやって来たのです。」
「おい、マナ……。こいつ自分で怪しいって言ってるぞ?もしかして怪しい奴なのか?」
『……むしろ、どこに怪しくない要素あった?』
いく筋も、まるで年輪のように刻まれた老婆の目元の皺に、また一つ新たな皺が刻まれます。どうやら老婆は微笑んだようです。
しかし、その微笑みも束の間の間。薄い唇を真一文字に結び、今までの穏やかな笑みを消すと、真剣な面持ちで老婆は兄妹に向かい合いました。
「実は私には弟がいるのです。しかし、重い病にかかってしまって―……お医者様から残りいくばくもないと言われました。そんな時に幸せの青い小鳥の話を耳にしたのです。
もしかしたら、弟はその幸福の小鳥さえ見つければ治るかもしれない―……お願いです!青い鳥を探して下さい!」
老婆が兄妹に語った話はどう考えても眉唾ものでした。
どこの世界に鳥で病気が治る人間がいるというのでしょう?
当然二人の反応は―……
『はっ?そーんな胡散臭い話誰が信じるわけ?ね、ロイ―……』
「大変だったんだな!婆ちゃん……ッ!!」
ここにいました。
がっちりと老婆の両手を握り締め、涙を浮かべながら熱く力説するロイドに、言い出しっぺの老婆ですら若干引きました。
一方のマナはと言えば―……彼女は頭を抱え、山よりも海よりも深いため息を一つ零していました。
そうだ。ロイドはこういう人間だった。……と。
そもそも、年の瀬のクリスマス・イブに何故こんな貧窮しているかと言うと、人が良すぎるロイドが僅かばかりの蓄えを自分達よりも貧しい子供たちに与えてしまったことが原因なのです。
仕方がない。兄がそこまで言うのなら―……マナは腹を括りました。一度言い出したら梃子でも動かない事を妹は知っていたのです。
『三食昼寝付き―……』
「……はい?」
『あたし達がその青い鳥とやらを見つけてきたら三食昼寝付きの職を寄越す事ッ!
ま・さ・か、ただで何とかしようなんて思ってないわよね~?』
「……あなた、それでも主人公の一人ですか?」
これでも兄から見ればかなり妥協したほうです。
兄は人がいいですが、妹はわりと現実的なのです。見た目も似ていない二人でしたが、中身はもっと似ていませんでした。
これは一筋縄ではいかないと悟った老婆は、しぶしぶマナの出した条件を飲むことに決め、どこかからマナが出した契約書にサインをしました。
『いよっし!そうと決まればこっちも頑張らなきゃ!ロイド、準備は?』
「ばっちりだぜ!」
……こうして、マナとロイドの青い小鳥を探す当てのない旅が始まりました。
しかし、青い小鳥など一体どこにいるというのでしょうか―……
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