第12章 復興、そして北へ


「あっ……鳥だよぉ……うっぷ」

「大丈夫かいシーアンさん?休む?」


俺達の頭上を白い鳥が飛び去っていく。

目の前には青い海原。

風を帆に受け進む船。

気晴らしになるだろうかと甲板に連れ出してはみたけれど、シーアンさんはとても辛そうだ。


「だいじょばないよぉ~……でも風に当たってた方が気持ちいいから連れ出してくれてありがとぉ~……海はきれいなんだよぉ~……ただ目がグルグルするんだよ~」


海を見れたのは嬉しいようだけれど…船酔いじゃあな…。

俺は旅に慣れているから船酔いは平気だけど、シーアンさんは初めての旅だ。

最初は良かったけど、ゆらゆら揺れる船の上にいるうちに気分が悪くなってしまったようだ。

俺の服の裾を強く握りしめてずっと耐えているようだ。



「気持ち悪いときは無理しなくていいからね?」


気休めにしかならないだろうけれど、シーアンさんの背中をさすってみている。
シーアンさんは甲板の手すりに身を預けて海原を見つめている。

やっぱり辛そうだ……。


「早く港に着くといいんだけどねー?」

海原の先へ視線を向けてみても目的地の大陸は未だに見えない。


「だいじょばないけど飛燕がいるからだいじょぶだよ~飛燕といるとすこしおちつ……うっぷ……」


頼りにしてくれるのは嬉しいんだけど……やっぱりこのままにしとくわけにはいかないよなあ……


「誰かお薬持ってないかなー?」


甲板の方へ視線を向けて船員を探してみる。
もしかしたら常備薬を持ってるかもしれない。


「ごめんなぁ……海がこんなにつれえもんだとはオラ思ってなかったよぉ~でも綺麗なのは本当なんだよぉ~……うえっぷ」


「シーアンさん旅はじめてだから仕方ないよー。俺は何度も船乗ってるから平気だけどさー。


あっ…!いた!!船員さーん!船酔いのお薬ってないですかー?」


ようやく見つけた船員の方へ手を振りながら声をかける。


船員に事情を説明すると、彼は快く酔い止めの薬とコップ一杯の水を分けてくれた。


「こいつを飲んでゆっくり船室で休むといい。
まだ陸地までかかるからな。
一眠りすれば落ち着くだろう。」


「ああ!どうもありがとう船員さん!」


船員に感謝しながらシーアンさんのところに足早に戻る。


「シーアンさんお薬とお水もらってきたよー!」



手すりに寄り掛かる彼女がゆっくりと俺の方へ視線を向ける。

彼女の顔は顔面蒼白で、先程よりも具合が悪くなっているように見えた。



「どうしたの!?真っ青だよ!?」


「だ、大丈夫だよぉ~さっきよりむしろすっきりしてるくらいだよぉ~……」


「そう…?本当に?凄く顔白いよ?これ飲んで休も?」


彼女の声は弱々しく大丈夫とは言うけれどどう見ても大丈夫そうには見えなかった。

船員から貰った水を差し出し、薬を飲ませた。

少しでも早く効いてくれるのを祈りながら。


「ごめんな~……飛燕……わざわざ薬貰って来てくれて……でも嬉しいよぉ……」


「船室戻って休も?これ飲んで眠ると楽になるって聞いたよ!」

俺はシーアンさんを抱えて船室へ連れていくことにした。

シーアンさんは恥ずかしがるかもしれないけど、ふらふらしてて歩くのも辛そうだったからね。

船室にあるベッドにシーアンさんを横たえて休ませた。


「船員さんに聞いたんだけど、陸地までまだかかるんだってさ、一眠りすると薬が効いてきて落ち着くだろうからって。

だから眠っててシーアンさん。
目的地に着いたら起こすからさ。」

俺の言葉にシーアンさんは小さな声で「うん。」と答えた。

軽くかけた毛布から顔を覗かせて、シーアンさんは少し恥ずかしそうに俺の顔を見つめて何かを言いたげにしている。


「何か必要なのある?もう少しお水飲むかい?」


「ううん…あのな……オラが寝るときまででいいんだけんど……手、握っててほしいよぉ……」


「シーアンさんが楽になるならいいよいいよ!」


「ん……ありがとう……オラ、だから飛燕の事好きなんだぁ……」


シーアンさんのその言葉がとても嬉しくて……こっちに向けてくるその視線がとても可愛いくて……

胸の鼓動が早くなるのを感じる。



「えへへ、俺もシーアンさん大好きだよ!」

俺がそう言うと、シーアンさんは毛布に顔を埋めて「うん。」とだけ答えてくれた。
表情は読めないけれど、嫌われてはいないことだけは分かる。

シーアンさんはとても可愛い。


だから俺は……

彼女の事…守りたくなっちゃうんだ……。



「頭痛くない?
お薬効いて楽になるといいね。」


「ん。寝れば平気だよぉ……飛燕もいる……し……」



俺の手を握りながらシーアンさんは静かに眠りに落ちる。

さらさらと流れる海原のような青い髪を軽く鋤いて俺はシーアンさんに「おやすみ」と声をかけた。
6/38ページ
スキ