第12章 復興、そして北へ


何日ぶりの帰宅でしょうか…
私はアトリエにようやく帰ってくることができました。

街から王都へ向かう商人の馬車に相乗りさせてもらい、歩くよりもずっと早く帰ってくることができました。


アトリエの扉をくぐれば、その先に居たのはあの子の姿。



「あっ!!ノルンさん!!」


ちょっと癖っ毛のオレンジの髪が印象的な可愛いうちのお手伝い魔女さん。



「ただいまカボちゃん。
すみませんでした…突然出掛けてしまって。」


「もう!本当だよ!すっごく大変だったんだからね!!」


両手を腰に当てながらカボちゃんは頬を膨らませながらそう言った。

その姿がなんとも可愛らしく、思わずくすりと笑みが溢れた。


ああ…帰ってきたんだなという安堵感もあって、ついつい頬が緩んでしまう。


「ごめんなさいカボちゃん。
本当に突然いなくなってお店をお任せしてしまったことはずっと申し訳ないと思っていました…

でも…どうしても助けたい人がいたので…

今日帰ってきたのはその為でもあります。」


話しているうちに笑みが消え少しだけ
低い声色でそう話すと、カボちゃんも私の背後に見える事情を汲んでくれたのか、彼女も真剣な表情を浮かべて私を見つめ返す。



「…まだ解決してないってこと?」




「はい…北方の街でテロが起きて…怪我をされた方々が沢山いるのです。

食べ物も、お薬も、街を復興させる為の人手も足りていません。」


少し難しい話になってしまいましたが…カボちゃんは私の話を真剣に聞いてくれていて、少し悲しげな表情を浮かべつつ「そうなんだ」と呟いた。


「私はもう一度その街へ行こうと思ってます。

お薬が沢山必要なんです。


カボちゃんも…お手伝いしてくれますか?
もちろん、お礼は弾みますから。」


「いいよ!かぼちゃ爆弾もっと沢山作りたいし、お給料沢山貰えるなら頑張っちゃうよ!!」



私がそう彼女に問いかけると、カボちゃんは先程までの重い空気をはらうようかのように明るく笑って元気いっぱいに答えてくれた。


そんな彼女に私もなんだか元気を貰えたような気がしてつられたように笑みが溢れた。


「ありがとうございます。」


カボちゃんと一緒に倉庫に保管していたあらゆる薬草をアトリエに運び込む。

作りたいものは傷薬と滋養強壮になる栄養剤、それから鎮痛薬。

もっといろいろあった方がいいんでしょうけれど、今アトリエにある材料で作れるものはこれくらい。

戻ることも考えれば、それほど時間を多く取ることもできないでしょう。

今もなお痛みと餓えに苦しむ人々が沢山いるのですから。


私一人ではとても手が足りない……

やはりもっと手がほしい……そんなことを考えていると、アトリエの扉をコンコンとノックする音が聞こえてきた。


「すみません、こちらにノルンさんという方がいると聞いたのですが…。」


聞こえてきたのは小さな男の子の声。

作業を中断し、店の方へ行ってみるとそこにいたのは青い帽子を被った男の子。


旅人でしょうか?大きな荷物を背負ったその子は杖を手に扉を背に立ち、海のような青い瞳をこちらへ向けていました。

見覚えの無い男の子に私は少しかがんで声をかける。



「はい、私がノルンですが……?」


「あなたが…はじめましてノルンさん。僕はカイと申します。
錬金術師の卵です。
あなたの先生からの紹介を受けてこちらを訪ねさせていただきました。」


「まあ、先生からの…?」


確かによく見てみればその杖は魔法の加護が施されているようでした。
魔法のローブを身に纏い、丁寧な物腰で語るその姿は確かに普通のお子さまとは雰囲気が異なります。



「突然お邪魔してしまって…ご迷惑かとおもったんですけど、先生の知り合いのアトリエがこちらにあると聞いたので…。」


カイくんは私にこれまでのことを全て話してくれました。

先生の許可を頂き、無理を言って修行の旅に出た事を。


「そうですか…修行の旅を…事情は解りました。

ですが私も少々大きな仕事を請け負っていてまたアトリエを出なければいけないのです…」


「そうですか。」


本当は私がこの子をお世話してあげるべきなのでしょうが…私はお薬を届けなくてはいけない。

私が不在ではこの子の修行にもならない…。

カボちゃんにお店番をお願いするのとは違う…この子は勉強するためにここに来たんだから…


勉強…


脳裏にある人の面影が浮かぶ。

錬金術ではないけれど…とても研究熱心な友人が一人いるじゃないですか…!


「…そうですね…錬金術ではありませんが、私の友人に薬学に詳しい人がいます!
その人に一緒に会いに行きませんか?」


「薬学ですか…それはとても興味深いです!はい!是非お願いします!!」

彼女なら安心してこの子をお願いできる…確かこの子と歳の近い子の面倒を見ていた筈。

友人だからと甘えるのは申し訳ないですけれど…きっとヒュパティアの研究はこの子の勉強に役立つ筈です。


「その代わりなんですが…すみません、カイくんはお薬作りできますか?
お手伝いしてほしいんです…

カイくんに手伝ってもらえたらお仕事が早く進むと思うんです。」

先生が認めた程の子です、きっと実力があるのでしょう。

こんな小さな子が旅に出るなんて普通はありませんからね。



「紹介料…とまでは言いませんが、カイくんに手伝って貰えれば作業もはかどるでしょうしね。
時間に余裕ができれば彼女に会いに行けますから。」


「はい!大丈夫です!先生のところでは薬作りは毎日やってましたから!」


「では、よろしくお願いします。

ですが…その前にうちでご飯を食べていきませんか?
カボちゃんも、お昼御飯…まだでしたよね?

皆でご飯を食べてからお薬作りをしましょう。」


やることがいっぱいですけれど、なんとかなりそうな気がしてきました。

王都に行ったらギルドに物資運搬依頼をお願いして…それからヒュパティアに会いに行くことにしましょう。

長くとも5日後……そのくらいには旅立ちたい。
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