第7章 過去・追憶

三人で、


「最近、サンソン元気ない!」
セティが叫んでも、サンソンはいつもと変わらない表情で「そんなことはありませんよ」と言う。嘘だ、絶対に嘘。こういうのって何て言ったっけ……そうだ、うわのそら!サンソンうわのそら!
「そういうお嬢様は、元気そうですね」
「セティはいつでも元気だよ!」
「では、お嬢様がもっと元気になる甘いものをお作りしますね」
「ほんと?やったー!」
……はっ!なんだか上手くのせられている気がする!
首をぶんぶん振って、何とか我にかえる。キッチンへと向かって歩いていくサンソンの後ろで、セティはサンソンの観察を始めることにした。この前お出掛けしたときもそう、サンソンは何か考え事をしているように見えた。そして、とても苦しそう顔をしてた。セティはサンソンに元気になってもらいたい。
このままサンソンがどこかへ行ってしまって、今の暮らしがなくなってしまいそうな気がしたから。



「サンソンは……いなくならない?アメリアみたいにセティを置いて一人でどこか遠いところに行かないよね?」
「……お嬢様が望む限り、あなたのお傍にいますよ」



前にサンソンが言ってた言葉をふと思い出した。セティがサンソンと一緒にいたいから、一緒に暮らしてる。だけどそれは、セティが嫌だって言っちゃったらサンソンはいなくなるってことだよね。サンソンはどこかへ行きたくても、セティのせいで行けないってことだよね。
「セティは……ワガママ、なのかな?」
サンソンは、アメリアに頼まれてセティのことを助けてくれているって言ってた。アメリアはあれから帰ってこないけど、サンソンと暮らす今も楽しい。だけどセティは、アメリアともサンソンとも離れたくない。アメリアがいなくなった今、ひとりぼっちが寂しいから、サンソンにすがってばかりいる。もしサンソンがいなくなったら、セティは……
「……」
なんだか、セティもうわのそらな気分になっちゃった。
サンソンの観察をやめて、セティは歩きはじめた。アメリアと二人で作ったお庭へ。ここへ行くと、もやもやーってしたものがパーっと飛んでいくの。セティはこの場所が大好き!サンソンのことを置いてっちゃったけど、きっとおやつができあがったら来てくれるわ。



「ここはね、セティと私の秘密のお庭」
「秘密?」
「そう、秘密なのよ。だから、誰にも言っちゃダメ。もしもバレたときには……」
「バレたときには?」
「ふふ、そうね……一緒にお世話をしてもらう、なんてどうかしら?」
「あっ!今決めたでしょ!」



「アメリア、アメリア。セティね、一生懸命お花を育てたんだよ。サンソンも一緒にお世話してくれてるの」
セティね、忘れていないよ。アメリアに最後にお話した日のこと。雨と風でぐちゃぐちゃだったお庭を直すよって、次にお庭に来たときには綺麗になってるよって。
アメリアはあれから帰ってこない。いつの間にかお母様もいなくなって痛いことはなくなったし、サンソンはとても優しくしてくれる。毎日が楽しいの、楽しくて楽しくて……
「こんなに楽しい日々を、アメリアと一緒に過ごせたらいいのにって思うの」
アメリアが好きな薔薇の花を眺める。アメリアの瞳のと同じ色、美しいでしょう?きっと喜んでくれると思うの、こんなにも咲き乱れているんだもの。セティはね、アメリアが帰ってくる為にこのお庭を元通りにしたんだよ。
「……どうして帰ってこないの?」
ワガママかな?サンソンがいるのにアメリアのことを考えちゃうのは、ワガママなのかな?セティは、サンソンを失ってしまうことが怖いの。アメリアが帰ってこないから、サンソンも帰ってこなくなるんじゃないかって思っちゃうの。きっとそれは、サンソンとアメリアが似てるから。
セティに美味しいお料理を作ってくれて、一緒にお買い物へ行ってくれて、同じお布団で眠ってくれる。すっごく似てるのに、サンソンはアメリアじゃないから……苦しくて苦しくて、仕方ないの。
「会いたい。会いたいよ、アメリア。セティはあなたに会うことができたら、このおうちで過ごしたいの……三人一緒に」






(セティ・クロイツ)
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