第2節 仮面舞踏会
今夜は聖夜。
大聖堂で行われる舞踏会の招待を受け、私は今まで着たことのないドレスを纏いここにいる。
多くの貴族達がこの宴に参加するなか、貴族でもない私は王城からの招待を受けてこの舞踏会に参加する事になった。
この国にとって利益をもたらすと認められた魔術師等はこうして招待を受けることもあり、私は過去に幾度か師匠と王城に足を運んだことがあるし、舞踏会も初めてのことではない。
しかし、それは利益をもたらすと同時に異端の存在でもある魔術師の存在をこの舞踏会でその存在を確認する為でもある。
危険とみなされば顔を覚えられ、いずれ闇に葬られる可能性もある。
だから私は顔を知られないよう仮面で顔を隠し、いつもは着ないであろう少し派手なドレスを身に纏い、貴族のふりをしてこの場を過ごしている。
先月のアトリエの爆発事故による騒動の鎮圧を行った錬金術師の一人として招かれたらしいが、そもそも私の管理不行き届きが原因の騒動だっただけに私がこの場にいるのが場違いな気がしてどことなく居心地が悪かった。
ある意味無害だったわけだが、それでも街の人たちに迷惑をかけたことには違いない。
下手をすれば教会に目をつけられて異端審問にかけられたっておかしくはない。
もしそんな事になったら、私は全ての責任を負って火炙りにだってなんにだってなるつもりだ。
私は絶対にカボちゃんの身を危険に晒すようなことはさせない。
そう思いながら舞踏会を眺めていると、一人の騎士がこちらへ向かって近づく姿が視界に映った。
思わず身体を強張らせてしまったが、ここは貴族として通さなくてはいけないと思い直して、近づく騎士に向かってあえて視線は外さず堂々とされど優雅さも失わないよう騎士と向かい合った。
「ごきげんよう騎士様。
私(わたくし)に何か御用でしょうか?」
いつもとは違う口調で精一杯貴族のふりをする。
すると騎士は
「いや、私の見間違いのようだ。
失礼した、御婦人。」
といって笑みを浮かべた。
肩口まで伸びた緩やかにウェーブがかったブループラチナの美しい髪を揺らして彼は私に一礼をすると、そのまま自然な流れで私の手を取った。
予想外の彼の行動に胸がトクンと音を立て、私は何かを見透かすような彼の深い藍青の瞳に釘付けになった。
「お詫びに私と一曲踊っていただけますか?」
「…わ…私とですか?」
はっ…!として思わず自分の口元に手を当てる。
今まで貴族のふりをしてきたが、ここで思わず自分の言葉で私(わたし)と答えてしまった。
聞こえていないだろうか…?
先程とは違う鼓動が身体の中で煩く響いている。
そんな私の心を知ってか知らずか、目の前の騎士は顔色を変えることなく私を舞踏会の輪の中へと手を引いた。
「あっ…あの…!私踊りは……」
初めてだと言いそうになったところで騎士の後ろ姿が視界に映る。
その瞬間、私はどこか懐かしさを覚えて言葉を詰まらせた。
(あれ…?
この光景…どこかで見たことが……。)
揺れる銀の髪…
後ろ姿…繋いでくれたあの子の温かい手……
そう思考を巡らせて呆けていると、いつの間にか私は彼と向かい合うように立っていた。
「あの…私こうして踊るのは初めてなのですが…」
今言える精一杯の言葉を呟くと、彼は
フッと笑って騎士らしく優雅に一礼をし、私に向かってこう答えた。
「大丈夫だ。私が貴女をエスコートしよう。」
その姿に私は思わず頬が紅潮するのを感じたが、それと同時にこのどこか見透かされているようで、彼の思うままに転がされているような、ほんの少し…ほんのちょっとだけ屈辱を感じるような気がして…過去の記憶をどんどん揺さぶられているような不思議な感覚を覚えた。
私の目の前にいる彼は…誰…?
大聖堂で行われる舞踏会の招待を受け、私は今まで着たことのないドレスを纏いここにいる。
多くの貴族達がこの宴に参加するなか、貴族でもない私は王城からの招待を受けてこの舞踏会に参加する事になった。
この国にとって利益をもたらすと認められた魔術師等はこうして招待を受けることもあり、私は過去に幾度か師匠と王城に足を運んだことがあるし、舞踏会も初めてのことではない。
しかし、それは利益をもたらすと同時に異端の存在でもある魔術師の存在をこの舞踏会でその存在を確認する為でもある。
危険とみなされば顔を覚えられ、いずれ闇に葬られる可能性もある。
だから私は顔を知られないよう仮面で顔を隠し、いつもは着ないであろう少し派手なドレスを身に纏い、貴族のふりをしてこの場を過ごしている。
先月のアトリエの爆発事故による騒動の鎮圧を行った錬金術師の一人として招かれたらしいが、そもそも私の管理不行き届きが原因の騒動だっただけに私がこの場にいるのが場違いな気がしてどことなく居心地が悪かった。
ある意味無害だったわけだが、それでも街の人たちに迷惑をかけたことには違いない。
下手をすれば教会に目をつけられて異端審問にかけられたっておかしくはない。
もしそんな事になったら、私は全ての責任を負って火炙りにだってなんにだってなるつもりだ。
私は絶対にカボちゃんの身を危険に晒すようなことはさせない。
そう思いながら舞踏会を眺めていると、一人の騎士がこちらへ向かって近づく姿が視界に映った。
思わず身体を強張らせてしまったが、ここは貴族として通さなくてはいけないと思い直して、近づく騎士に向かってあえて視線は外さず堂々とされど優雅さも失わないよう騎士と向かい合った。
「ごきげんよう騎士様。
私(わたくし)に何か御用でしょうか?」
いつもとは違う口調で精一杯貴族のふりをする。
すると騎士は
「いや、私の見間違いのようだ。
失礼した、御婦人。」
といって笑みを浮かべた。
肩口まで伸びた緩やかにウェーブがかったブループラチナの美しい髪を揺らして彼は私に一礼をすると、そのまま自然な流れで私の手を取った。
予想外の彼の行動に胸がトクンと音を立て、私は何かを見透かすような彼の深い藍青の瞳に釘付けになった。
「お詫びに私と一曲踊っていただけますか?」
「…わ…私とですか?」
はっ…!として思わず自分の口元に手を当てる。
今まで貴族のふりをしてきたが、ここで思わず自分の言葉で私(わたし)と答えてしまった。
聞こえていないだろうか…?
先程とは違う鼓動が身体の中で煩く響いている。
そんな私の心を知ってか知らずか、目の前の騎士は顔色を変えることなく私を舞踏会の輪の中へと手を引いた。
「あっ…あの…!私踊りは……」
初めてだと言いそうになったところで騎士の後ろ姿が視界に映る。
その瞬間、私はどこか懐かしさを覚えて言葉を詰まらせた。
(あれ…?
この光景…どこかで見たことが……。)
揺れる銀の髪…
後ろ姿…繋いでくれたあの子の温かい手……
そう思考を巡らせて呆けていると、いつの間にか私は彼と向かい合うように立っていた。
「あの…私こうして踊るのは初めてなのですが…」
今言える精一杯の言葉を呟くと、彼は
フッと笑って騎士らしく優雅に一礼をし、私に向かってこう答えた。
「大丈夫だ。私が貴女をエスコートしよう。」
その姿に私は思わず頬が紅潮するのを感じたが、それと同時にこのどこか見透かされているようで、彼の思うままに転がされているような、ほんの少し…ほんのちょっとだけ屈辱を感じるような気がして…過去の記憶をどんどん揺さぶられているような不思議な感覚を覚えた。
私の目の前にいる彼は…誰…?
