第2節 仮面舞踏会
「舞踏会…ですか?」
「ああ、そうさ。
御子様の生誕祭と同時に仮面舞踏会が開催されるのさ。
んで、天青がそこで見張り番の仕事をしてるらしいからさ、こいつを届けてやっておくれ!
今頃デカイ図体丸めて腹空かしてるだろうからさ!」
そう言われてリザさんが差し出してきたのは、蔓で編まれたバスケット。
その中にはリザさんの作ってくれたライ麦パンが2つと葡萄酒が1本。
それとチーズとソーセージ。
私一人ではとても食べきれないぐらいの食べ物がバスケットの中に入っていた。
リザさんからそれを両手で受けとると、ずっしりとその重さが伝わってきた。
「はい!それじゃあ行ってきます!」
そう言ってリザさんに背を向け、ギルドから出ていこうと私は扉に手をかける。
幾度となく蝶番を壊してきた扉を今度こそ壊さないよう慎重にドアノブにてをかけて私はゆっくりとそれを捻る。
キィ…と音を立てながらゆっくりと扉が開く。
もう少しで半分…という時に、何かを思い出したかのように突然リザさんが声を上げて私を引き留めた。
「ちょっとお待ち!
舞踏会に遣いに行くんだし、ちょっとおめかししていったらどうだい?」
それと同時にビクリと身体が跳ね上がり、ドアノブがバキリと音を立てて折れた。
「あっ…ドアノブが…!」
「そんなもんあとで直しとくよ!
ほらほら、パンが冷めちまうから早く支度しな!」
そう言ってリザさんはドアノブを掴んだままの私の背中をぐいぐい押して二階の部屋へと誘導していく。
言われるままにドレスに着替え、バスケットを手渡されて、「今度は大丈夫!」と言われて壊れた扉を開け放たれ、軽快な声で「行っておいで!」と背中を押された。
「あっ、ちょっと待ってください!」
そこで私はある事を思い出して自室へ戻った。
部屋の窓の傍らに置かれたそれを手にしてバスケットに忍ばせ、リザさんの待つ扉の前に戻った。
「忘れ物はないかい?」
リザさんがふわりと笑みを浮かべてそう問いかける。
その言葉に私は笑顔を浮かべて「はい!」と答えた。
†††††††††††††
冬の寒空の中、私は毛皮の外套を羽織り大聖堂を目指して歩いた。
左手にワイン、右手にバスケットを下げ、降り積もった雪を踏みしめながら歩き続けた。
ハァ…と息を一つ吐けばたちまちそれは白い氷の息に変わってふわりと浮かぶ。
(こんな寒い中でずっと立ってお仕事してるなんて…)
ふとそんな事を思いながら右手に持ったバスケットに視線を落とし、食べ物が冷気で冷めてしまわないようそっと包みを直す。
(早くこれを温かいうちに届けなくちゃ。)
気持ちを新たに歩を進める。
時折雪に足をとられて転びそうになったが、食べ物だけは雪に触れないようにとバスケットを自分より高く上げ、背中から倒れるようにしてそれらを守った。
「…うわっぷ…つ…冷たい…!」
外套には収まらない私の竜の翼と尾だけは生身の自分の身体である。
それゆえに刺すような雪の冷たさが手のひらで感じるよりも鋭く全身に伝わってくる。
(く…ぅ…!でも…ずっと外でお仕事をしている人の辛さに比べたらこのくらい…!)
ゆっくりと身体を起こし、感覚を失いそうになる翼と尾を振るいながら外套の雪を払い、バスケットとワインの無事を確認すると、再び大聖堂を目指す。
ようやく目的地が見えてきたときには毛皮の外套は再び雪まみれになっていた。
「…やっと着いた。」
思わず安堵のため息を吐く。
右手に持ったバスケットの包みをそっと開いて中の無事を確認する。
そして部屋から持ってきた小さな包みの無事も確認すると、私は届けるべき人がいるであろう大聖堂の中へと歩を進めた。
バスケットの包みの中にギルドのドアノブが混ざっていたなどとは露ほどにも気づかないまま…。
「ああ、そうさ。
御子様の生誕祭と同時に仮面舞踏会が開催されるのさ。
んで、天青がそこで見張り番の仕事をしてるらしいからさ、こいつを届けてやっておくれ!
今頃デカイ図体丸めて腹空かしてるだろうからさ!」
そう言われてリザさんが差し出してきたのは、蔓で編まれたバスケット。
その中にはリザさんの作ってくれたライ麦パンが2つと葡萄酒が1本。
それとチーズとソーセージ。
私一人ではとても食べきれないぐらいの食べ物がバスケットの中に入っていた。
リザさんからそれを両手で受けとると、ずっしりとその重さが伝わってきた。
「はい!それじゃあ行ってきます!」
そう言ってリザさんに背を向け、ギルドから出ていこうと私は扉に手をかける。
幾度となく蝶番を壊してきた扉を今度こそ壊さないよう慎重にドアノブにてをかけて私はゆっくりとそれを捻る。
キィ…と音を立てながらゆっくりと扉が開く。
もう少しで半分…という時に、何かを思い出したかのように突然リザさんが声を上げて私を引き留めた。
「ちょっとお待ち!
舞踏会に遣いに行くんだし、ちょっとおめかししていったらどうだい?」
それと同時にビクリと身体が跳ね上がり、ドアノブがバキリと音を立てて折れた。
「あっ…ドアノブが…!」
「そんなもんあとで直しとくよ!
ほらほら、パンが冷めちまうから早く支度しな!」
そう言ってリザさんはドアノブを掴んだままの私の背中をぐいぐい押して二階の部屋へと誘導していく。
言われるままにドレスに着替え、バスケットを手渡されて、「今度は大丈夫!」と言われて壊れた扉を開け放たれ、軽快な声で「行っておいで!」と背中を押された。
「あっ、ちょっと待ってください!」
そこで私はある事を思い出して自室へ戻った。
部屋の窓の傍らに置かれたそれを手にしてバスケットに忍ばせ、リザさんの待つ扉の前に戻った。
「忘れ物はないかい?」
リザさんがふわりと笑みを浮かべてそう問いかける。
その言葉に私は笑顔を浮かべて「はい!」と答えた。
†††††††††††††
冬の寒空の中、私は毛皮の外套を羽織り大聖堂を目指して歩いた。
左手にワイン、右手にバスケットを下げ、降り積もった雪を踏みしめながら歩き続けた。
ハァ…と息を一つ吐けばたちまちそれは白い氷の息に変わってふわりと浮かぶ。
(こんな寒い中でずっと立ってお仕事してるなんて…)
ふとそんな事を思いながら右手に持ったバスケットに視線を落とし、食べ物が冷気で冷めてしまわないようそっと包みを直す。
(早くこれを温かいうちに届けなくちゃ。)
気持ちを新たに歩を進める。
時折雪に足をとられて転びそうになったが、食べ物だけは雪に触れないようにとバスケットを自分より高く上げ、背中から倒れるようにしてそれらを守った。
「…うわっぷ…つ…冷たい…!」
外套には収まらない私の竜の翼と尾だけは生身の自分の身体である。
それゆえに刺すような雪の冷たさが手のひらで感じるよりも鋭く全身に伝わってくる。
(く…ぅ…!でも…ずっと外でお仕事をしている人の辛さに比べたらこのくらい…!)
ゆっくりと身体を起こし、感覚を失いそうになる翼と尾を振るいながら外套の雪を払い、バスケットとワインの無事を確認すると、再び大聖堂を目指す。
ようやく目的地が見えてきたときには毛皮の外套は再び雪まみれになっていた。
「…やっと着いた。」
思わず安堵のため息を吐く。
右手に持ったバスケットの包みをそっと開いて中の無事を確認する。
そして部屋から持ってきた小さな包みの無事も確認すると、私は届けるべき人がいるであろう大聖堂の中へと歩を進めた。
バスケットの包みの中にギルドのドアノブが混ざっていたなどとは露ほどにも気づかないまま…。
