日常交流
これはお師匠様の家に赤ちゃんが生まれるよりもずっと前のお話。
ミロクさんがお嫁さんに来て、新しい暮らしに馴染んだ頃のある日の出来事の話です。
爽やかな秋風を感じる頃となり、実り多い秋を迎えたその年はお師匠様の家では果物も畑の野菜も川の魚も食べきれない程沢山採れたそうで……。
その年の出来事を少しお話しましょうか。
「お母さん!こっちのお芋も掘れたのです!」
土にまみれながら穴を掘るシャオフーの両の手には沢山のサツマイモが抱えられていた。
それを見たミロクはにっこりと微笑みながら「まあ大きなサツマイモね。後で天ぷらにして頂きましょうね?」と労いの言葉をかけていた。
彼女もまた土にまみれながら夫の愛用している大きなスコップを使って里芋を掘り起こしていた。
「ミロク。それをこちらへ寄越しなさい。確かにそれは私も畑仕事に使うことはあるがそれは武器だ。怪我をするといけない。」
「まあ、そうなのですか?申し訳ございません旦那様。」
そう言って彼女はお師匠様の愛用の武器を……ジャマハダルに着いた畑の土を衣の裾で優しく拭いながら返したのだった。
(これは……もしかしてツッコミ待ちなのでしょうか?)
仲睦まじく微笑む夫婦の手には野良仕事には似つかわしくない巨大な銀の武器が握られていた。
この光景がこのご夫婦の当たり前の光景なのだろうかと鳳翔は少々困惑していたが気をとりなおして……。
「コホン…!お師匠様、お久しぶりでございます。鳳翔でございます。
お師匠様のもとにお嫁様がいらしたとお聞きしてご挨拶に伺いました。」
「わーーい!姉弟子様がいらしたのです!!」
私の姿を見るなりシャオフーは満面の笑みを浮かべてこちらへ向かって走ってきた。
ドスドスドスドスドスドス…!
「こんにちわシャオフー。しばらく見ない間に……えっと……なんだか……こう……」
頬が……ちょっと艶々している……???
それに足音もなんだか……
気のせいかしら……??
「これシャオフー。落ち着きなさい。
ここではゆっくり話せないだろう?畑仕事も一区切りついたことだし家に戻るとしようか。」
†††††††††††††††††††††††
「おかわりなのです!!」
「はいはい。沢山食べてくださいね?」
ニコニコと微笑みながらミロクさんは空になったシャオフーのお椀にご飯をよそっていく。
テーブルの上には旬の野菜を使った天ぷらと里芋の煮転がしにお月見だんごそして川で獲れたイワナも用意されていて……
ちょっと待ってください……三杯目ですよね……?
「お師匠様……?」
「どうした?鳳翔。」
「シャオフーちゃん……もしかして……ぷにぷにになってませんか……?」
「……………………うむ。」
「……おなか……出てますよね……。」
「やはり……そう思うか?」
「はい。足音がもう以前とは違いますので……その……顔もちょっとムチムチしてますので……」
「育ち盛りだと思って静観していたが、やはり気のせいでは無かったか。」
「どうしてこんなことになったのですか……?」
「うむ……。今年の豊作に加えてミロクが料理の楽しさに目覚めてしまってな……少々作りすぎてしまってな。
そしてシャオフーの食欲もどんどん増していってしまってな……」
お師匠様の話によればシャオフーも怠けていた訳ではなく外で遊んだり仕事を手伝ったりしているのだが、食べる量に対して運動の量が明らかに足りていないらしい。
その結果このようにぷにぷにのシャオフーになってしまったのだ……と。
そう言えばさっきもお師匠様のお祝いに持ってきた紅白饅頭を食べていた気が……。
「それに……な……」
「お母さんのご飯はとっても美味しいのです!おかわりしたいのです!」
「ふふ。ありがとうシャオちゃん。沢山食べてくださいね?」
「あれを言われるとミロクは弱くてな。
ねだられたらねだられた分だけ与えてしまってな。」
これは……いけないっっっ……!!!!!!
†††††††††††††††††††††††††
「で。俺のところに連れてきたのか……」
「由々しき事態です兄弟子様…!シャオフーはこのままではいつまで経っても痩せることができません…!
ここは一度お師匠さまのところから離れてダイエットに励むべきだと思ったのです…!」
「それはいいのだがな……何故俺なのだ……?」
「兄弟子様は体術使いでございましょう?私よりも運動に関しては兄弟子さまのご指導の方がずっと上手だと思ったのです。」
「うぅん…!そうかもしれないが……まあいい……シャオフー。ちょっと見せてごらん?」
そう言って兄弟子様の索冥はシャオフーの身体に触れながら体格の確認をしていく。
ぷにっ。ぷにっ。ぷにっぷにっぷにっ……。
「確かに窮屈そうではあるな……。特にこの帯の辺りが……身長も伸びてはいるようだが……帯がギリギリだ……それに……どこを掴んでもぷにぷにしている……。特に……この……腹のあたりが……。」
ぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
「そうでしょう!?」
「これは……成る程まずいな……」
表情を曇らせる兄弟子と姉弟子の姿に不安になったシャオフーが少々気まずそうに問いかける。
「良くないのですか?」
「ああ……このままだとシャオフーはまんまるになってしまうな?」
「ヌエちゃんみたいにですか……?」
「……いや……ヌエより丸くなってしまうな??」
「ヌエちゃんよりも…!」
ショックを受けたシャオフーは暫し泣きそうな顔を浮かべていたが、やがて兄弟子のほうへと向き直るとゆっくりと言葉を口にした。
「もっと沢山運動したらお師匠様や兄弟子様みたいにカッコよくなれますか?
まんまるは嫌です兄弟子さま…!カッコいいお兄ちゃんになりたいです…!」
「そうか。よし、なら頑張って痩せるとしようか。その気持ちが一番大事だからな。」
そう言ってくしゃくしゃと幼子の頭を撫でながら慰める索冥の姿が私にはとても頼もしく…優しくて素敵な人に見えていました。
「私も…!お手伝いします…!お料理は任せてください!私もお泊まりしてもいいですよね?兄弟子様!!」
こうしてシャオフーのダイエットが始まったのでした。
ミロクさんがお嫁さんに来て、新しい暮らしに馴染んだ頃のある日の出来事の話です。
爽やかな秋風を感じる頃となり、実り多い秋を迎えたその年はお師匠様の家では果物も畑の野菜も川の魚も食べきれない程沢山採れたそうで……。
その年の出来事を少しお話しましょうか。
「お母さん!こっちのお芋も掘れたのです!」
土にまみれながら穴を掘るシャオフーの両の手には沢山のサツマイモが抱えられていた。
それを見たミロクはにっこりと微笑みながら「まあ大きなサツマイモね。後で天ぷらにして頂きましょうね?」と労いの言葉をかけていた。
彼女もまた土にまみれながら夫の愛用している大きなスコップを使って里芋を掘り起こしていた。
「ミロク。それをこちらへ寄越しなさい。確かにそれは私も畑仕事に使うことはあるがそれは武器だ。怪我をするといけない。」
「まあ、そうなのですか?申し訳ございません旦那様。」
そう言って彼女はお師匠様の愛用の武器を……ジャマハダルに着いた畑の土を衣の裾で優しく拭いながら返したのだった。
(これは……もしかしてツッコミ待ちなのでしょうか?)
仲睦まじく微笑む夫婦の手には野良仕事には似つかわしくない巨大な銀の武器が握られていた。
この光景がこのご夫婦の当たり前の光景なのだろうかと鳳翔は少々困惑していたが気をとりなおして……。
「コホン…!お師匠様、お久しぶりでございます。鳳翔でございます。
お師匠様のもとにお嫁様がいらしたとお聞きしてご挨拶に伺いました。」
「わーーい!姉弟子様がいらしたのです!!」
私の姿を見るなりシャオフーは満面の笑みを浮かべてこちらへ向かって走ってきた。
ドスドスドスドスドスドス…!
「こんにちわシャオフー。しばらく見ない間に……えっと……なんだか……こう……」
頬が……ちょっと艶々している……???
それに足音もなんだか……
気のせいかしら……??
「これシャオフー。落ち着きなさい。
ここではゆっくり話せないだろう?畑仕事も一区切りついたことだし家に戻るとしようか。」
†††††††††††††††††††††††
「おかわりなのです!!」
「はいはい。沢山食べてくださいね?」
ニコニコと微笑みながらミロクさんは空になったシャオフーのお椀にご飯をよそっていく。
テーブルの上には旬の野菜を使った天ぷらと里芋の煮転がしにお月見だんごそして川で獲れたイワナも用意されていて……
ちょっと待ってください……三杯目ですよね……?
「お師匠様……?」
「どうした?鳳翔。」
「シャオフーちゃん……もしかして……ぷにぷにになってませんか……?」
「……………………うむ。」
「……おなか……出てますよね……。」
「やはり……そう思うか?」
「はい。足音がもう以前とは違いますので……その……顔もちょっとムチムチしてますので……」
「育ち盛りだと思って静観していたが、やはり気のせいでは無かったか。」
「どうしてこんなことになったのですか……?」
「うむ……。今年の豊作に加えてミロクが料理の楽しさに目覚めてしまってな……少々作りすぎてしまってな。
そしてシャオフーの食欲もどんどん増していってしまってな……」
お師匠様の話によればシャオフーも怠けていた訳ではなく外で遊んだり仕事を手伝ったりしているのだが、食べる量に対して運動の量が明らかに足りていないらしい。
その結果このようにぷにぷにのシャオフーになってしまったのだ……と。
そう言えばさっきもお師匠様のお祝いに持ってきた紅白饅頭を食べていた気が……。
「それに……な……」
「お母さんのご飯はとっても美味しいのです!おかわりしたいのです!」
「ふふ。ありがとうシャオちゃん。沢山食べてくださいね?」
「あれを言われるとミロクは弱くてな。
ねだられたらねだられた分だけ与えてしまってな。」
これは……いけないっっっ……!!!!!!
†††††††††††††††††††††††††
「で。俺のところに連れてきたのか……」
「由々しき事態です兄弟子様…!シャオフーはこのままではいつまで経っても痩せることができません…!
ここは一度お師匠さまのところから離れてダイエットに励むべきだと思ったのです…!」
「それはいいのだがな……何故俺なのだ……?」
「兄弟子様は体術使いでございましょう?私よりも運動に関しては兄弟子さまのご指導の方がずっと上手だと思ったのです。」
「うぅん…!そうかもしれないが……まあいい……シャオフー。ちょっと見せてごらん?」
そう言って兄弟子様の索冥はシャオフーの身体に触れながら体格の確認をしていく。
ぷにっ。ぷにっ。ぷにっぷにっぷにっ……。
「確かに窮屈そうではあるな……。特にこの帯の辺りが……身長も伸びてはいるようだが……帯がギリギリだ……それに……どこを掴んでもぷにぷにしている……。特に……この……腹のあたりが……。」
ぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
「そうでしょう!?」
「これは……成る程まずいな……」
表情を曇らせる兄弟子と姉弟子の姿に不安になったシャオフーが少々気まずそうに問いかける。
「良くないのですか?」
「ああ……このままだとシャオフーはまんまるになってしまうな?」
「ヌエちゃんみたいにですか……?」
「……いや……ヌエより丸くなってしまうな??」
「ヌエちゃんよりも…!」
ショックを受けたシャオフーは暫し泣きそうな顔を浮かべていたが、やがて兄弟子のほうへと向き直るとゆっくりと言葉を口にした。
「もっと沢山運動したらお師匠様や兄弟子様みたいにカッコよくなれますか?
まんまるは嫌です兄弟子さま…!カッコいいお兄ちゃんになりたいです…!」
「そうか。よし、なら頑張って痩せるとしようか。その気持ちが一番大事だからな。」
そう言ってくしゃくしゃと幼子の頭を撫でながら慰める索冥の姿が私にはとても頼もしく…優しくて素敵な人に見えていました。
「私も…!お手伝いします…!お料理は任せてください!私もお泊まりしてもいいですよね?兄弟子様!!」
こうしてシャオフーのダイエットが始まったのでした。
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