日常交流
━━━━あれはいつの頃の話だったか。
僕がまだ幼い子供だった頃の話だ。━━━━━
シャルトリューズ家には双子の兄弟がいた。
活発で武術の心得を学ぼうとする僕……ピエールと学問に興味を持ち読書を好む弟のロジャー。
僕たちは王国に仕える父を尊敬しており、それぞれ得意なことは違ったが将来は父のような立派な騎士になりたいと夢見る純朴な少年だった。
そんな僕らにある出逢いが訪れた。
†††††††††††††††††††††
父の盟友であるレイディアント領の領主の屋敷に招かれたある日の出来事だ。
僕たちは一人の少年に出会った。
歳は同じぐらいだろうか?
ふわふわの銀色の髪を風に靡かせながらこちらをじっと見つめてくる空よりも青い瞳を持った少年がいた。
上品な身なりとどこか気品を感じさせる出で立ち。
おそらく彼がこの屋敷の領主の息子に違いない。『きっと仲良くなれるだろう。』そう思った僕は少年に歩み寄り満面の笑みを浮かべながら声をかけた。
「やあ!もしかして君はセデルかい?はじめまして!僕はシャルトリューズ家のピエール。よろし……」
パァン!!!!!
……となにかが弾けるような乾いた音が響き渡った。
「…………えっ??」
気がつけば僕の右手は宙を舞っていた。
何が起きたのか全く理解できず目を丸くする僕に向かって少年が一言呟いた。
「すまない、男は嫌いなんだ。」
沈黙が広がった。
目の前の少年はただ一言だけそう呟いた。
突然の出来事に思考が追い付かず固まる僕とそれを横で見ていたロジャーに衝撃が走った。
「野郎は嫌いだ」と言いたげに嫌悪の表情を浮かべながらこちらを睨みつける銀髪の少年。
……えっ??なにその顔……??言葉と表情が噛み合ってないんだけど????今まで出会った人のなかにそんな表情を浮かべる人なんか何処にもいなかったんだけど……??
まるでそう……屑籠の中のゴミを見るような……こう……なんとも形容し難い顔というかなんというか……
あれ???僕たち一応高貴な生まれだよね???
どうやら彼は『セデル』で間違いないのだろう。
野郎の握手は拒否したが名前は否定しなかったからな……。多分。
踵を返して屋敷に戻っていく彼を見送る。僕はその場に立ち尽くしたまま未だひりひりと痛む右手を擦っていた。
「おいピエール!なんで言い返さないんだよ!悪いのはあいつのほうだろ?」
「いや、びっくりしちゃって。」
そんなだからバカにされるんだろ?と文句を言うロジャーを宥めながらあいつが去っていった方へと視線を向けてみる。
するとそこに屋敷に仕えるメイドと仲良く手を繋いで歩いていくセデルの姿が見えた。
優雅に一礼をして右手を差し出しながら……
えっ?????なにあれ?????まるで別人じゃない??????
「あいつ……男が嫌いって本当なんだな……?」
ふと屋敷の窓のほうへ視線を向けてみると、美しい金髪の女性が何かを叫んでいるような……血相を変えながら慌てふためいているような姿が見えた。
これが僕達の……最初の出逢いだった。
それから数年後、様々な事情があってセデルは父上に連れられて煤だらけの姿になって僕の屋敷にやって来た。
一体何があったのか……その時の僕には解らなかったけれど……。
父上が『今日からセデルも我が家の息子だ。』と彼の頭を優しく撫でながらそう言ったんだ。
セデルに拒絶されたにも関わらず何度もレイディアント領に遊びに行った僕は最初の頃に比べたらセデルと仲良くなれたが、弟のロジャーはそうはいかなかった。
「はあ!!!???何故です!?何故こんな色惚け男を!?正気ですか父上!!!!!」
なんて言う始末。流石に貴族の息子としてその言い方はどうかと思った。
当然父上も黙ってなかった。
「騎士として恥じぬよう振る舞いなさいロジャー。
彼は最早客人ではない。新しい家族として迎えると私が決めたのだ。
ここに馴染めるように優しく接するように。いいね?」
ムスーーーーーーッ……
唇を突き出し、これ以上無い不細工な顔を浮かべた弟と、男嫌いで目を合わせることもしない友人に挟まれながら僕はセデルの為に用意された部屋へ案内するために廊下を歩いていた。
「ねえ……もう少し……仲良くしようよ……?これからここで暮らすんだよ?解ってる?セデル?」
「……目の前に美女がいたなら機嫌を治さない事もないが……?」
「相変わらずだなお前?」
流石に僕は馴れた。
だがロジャーは違った。
音をつけるならきっと猫が威嚇するようなシャーーーッ!!!!と言う音がしていたに違いない。
「またかお前!!口を開けば女!!女!!そうやっていつも女の尻を追いかけて!!恥を知れ恥を!!!!!」
そんなロジャーに向かってセデルは「ふん。」と余裕の表情を浮かべながらこう答える。
「おや?ロジャーは女性の素晴らしさを知らないのか??まあ……そうだな、まだファーストキスも経験してないようなウブな顔をしているからな……(チラチラ…)
『チェリー』で間違いない。そういう事だろう????」
ヒデェ。
そういうお前だってまだチェリーだろう??何歳だお前??
ところがそんな見え透いた挑発にも関わらずロジャーは『チェリー』の意味を正しく理解していなかったせいか酷くショックを受けた様子だった。
「う……っ…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「ロジャー…!」
「可哀想に……酷くショックを受けたようだ。」
「それお前が言う????後でちゃんと謝れよな????あいつ絶対怨むぞ????」
そういうお前はチェリーの意味を理解しているのか?というツッコミが飛んできたが僕はそれをかわしてセデルを部屋に送り届けることに専念した。
まあ……僕はもうファーストキス経験したことあるし……???
僕の言葉は……的中した。
ロジャーはそれから何かにつけてセデルを意識するようになり力でも口でも勝てもしないくせに向かっていくようになった。
それは長い話になるのでまたの機会に話すことにしよう。
僕がまだ幼い子供だった頃の話だ。━━━━━
シャルトリューズ家には双子の兄弟がいた。
活発で武術の心得を学ぼうとする僕……ピエールと学問に興味を持ち読書を好む弟のロジャー。
僕たちは王国に仕える父を尊敬しており、それぞれ得意なことは違ったが将来は父のような立派な騎士になりたいと夢見る純朴な少年だった。
そんな僕らにある出逢いが訪れた。
†††††††††††††††††††††
父の盟友であるレイディアント領の領主の屋敷に招かれたある日の出来事だ。
僕たちは一人の少年に出会った。
歳は同じぐらいだろうか?
ふわふわの銀色の髪を風に靡かせながらこちらをじっと見つめてくる空よりも青い瞳を持った少年がいた。
上品な身なりとどこか気品を感じさせる出で立ち。
おそらく彼がこの屋敷の領主の息子に違いない。『きっと仲良くなれるだろう。』そう思った僕は少年に歩み寄り満面の笑みを浮かべながら声をかけた。
「やあ!もしかして君はセデルかい?はじめまして!僕はシャルトリューズ家のピエール。よろし……」
パァン!!!!!
……となにかが弾けるような乾いた音が響き渡った。
「…………えっ??」
気がつけば僕の右手は宙を舞っていた。
何が起きたのか全く理解できず目を丸くする僕に向かって少年が一言呟いた。
「すまない、男は嫌いなんだ。」
沈黙が広がった。
目の前の少年はただ一言だけそう呟いた。
突然の出来事に思考が追い付かず固まる僕とそれを横で見ていたロジャーに衝撃が走った。
「野郎は嫌いだ」と言いたげに嫌悪の表情を浮かべながらこちらを睨みつける銀髪の少年。
……えっ??なにその顔……??言葉と表情が噛み合ってないんだけど????今まで出会った人のなかにそんな表情を浮かべる人なんか何処にもいなかったんだけど……??
まるでそう……屑籠の中のゴミを見るような……こう……なんとも形容し難い顔というかなんというか……
あれ???僕たち一応高貴な生まれだよね???
どうやら彼は『セデル』で間違いないのだろう。
野郎の握手は拒否したが名前は否定しなかったからな……。多分。
踵を返して屋敷に戻っていく彼を見送る。僕はその場に立ち尽くしたまま未だひりひりと痛む右手を擦っていた。
「おいピエール!なんで言い返さないんだよ!悪いのはあいつのほうだろ?」
「いや、びっくりしちゃって。」
そんなだからバカにされるんだろ?と文句を言うロジャーを宥めながらあいつが去っていった方へと視線を向けてみる。
するとそこに屋敷に仕えるメイドと仲良く手を繋いで歩いていくセデルの姿が見えた。
優雅に一礼をして右手を差し出しながら……
えっ?????なにあれ?????まるで別人じゃない??????
「あいつ……男が嫌いって本当なんだな……?」
ふと屋敷の窓のほうへ視線を向けてみると、美しい金髪の女性が何かを叫んでいるような……血相を変えながら慌てふためいているような姿が見えた。
これが僕達の……最初の出逢いだった。
それから数年後、様々な事情があってセデルは父上に連れられて煤だらけの姿になって僕の屋敷にやって来た。
一体何があったのか……その時の僕には解らなかったけれど……。
父上が『今日からセデルも我が家の息子だ。』と彼の頭を優しく撫でながらそう言ったんだ。
セデルに拒絶されたにも関わらず何度もレイディアント領に遊びに行った僕は最初の頃に比べたらセデルと仲良くなれたが、弟のロジャーはそうはいかなかった。
「はあ!!!???何故です!?何故こんな色惚け男を!?正気ですか父上!!!!!」
なんて言う始末。流石に貴族の息子としてその言い方はどうかと思った。
当然父上も黙ってなかった。
「騎士として恥じぬよう振る舞いなさいロジャー。
彼は最早客人ではない。新しい家族として迎えると私が決めたのだ。
ここに馴染めるように優しく接するように。いいね?」
ムスーーーーーーッ……
唇を突き出し、これ以上無い不細工な顔を浮かべた弟と、男嫌いで目を合わせることもしない友人に挟まれながら僕はセデルの為に用意された部屋へ案内するために廊下を歩いていた。
「ねえ……もう少し……仲良くしようよ……?これからここで暮らすんだよ?解ってる?セデル?」
「……目の前に美女がいたなら機嫌を治さない事もないが……?」
「相変わらずだなお前?」
流石に僕は馴れた。
だがロジャーは違った。
音をつけるならきっと猫が威嚇するようなシャーーーッ!!!!と言う音がしていたに違いない。
「またかお前!!口を開けば女!!女!!そうやっていつも女の尻を追いかけて!!恥を知れ恥を!!!!!」
そんなロジャーに向かってセデルは「ふん。」と余裕の表情を浮かべながらこう答える。
「おや?ロジャーは女性の素晴らしさを知らないのか??まあ……そうだな、まだファーストキスも経験してないようなウブな顔をしているからな……(チラチラ…)
『チェリー』で間違いない。そういう事だろう????」
ヒデェ。
そういうお前だってまだチェリーだろう??何歳だお前??
ところがそんな見え透いた挑発にも関わらずロジャーは『チェリー』の意味を正しく理解していなかったせいか酷くショックを受けた様子だった。
「う……っ…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「ロジャー…!」
「可哀想に……酷くショックを受けたようだ。」
「それお前が言う????後でちゃんと謝れよな????あいつ絶対怨むぞ????」
そういうお前はチェリーの意味を理解しているのか?というツッコミが飛んできたが僕はそれをかわしてセデルを部屋に送り届けることに専念した。
まあ……僕はもうファーストキス経験したことあるし……???
僕の言葉は……的中した。
ロジャーはそれから何かにつけてセデルを意識するようになり力でも口でも勝てもしないくせに向かっていくようになった。
それは長い話になるのでまたの機会に話すことにしよう。
