日常交流

僕は小さな頃からずっと騎士になりたかったんだ。
強くて、カッコよくて、お姫様を守れるような騎士に。



僕とセデルは幼少の頃からの付き合いがあって、よく父上に連れられて遊びに行ったんだ。

広い庭園で二人で木の剣を持ってまるで本物の騎士のように振る舞ってちゃんばらをしたっけ。


「どうした?降参かピエール。」

「いいや、まだまだ!」

激しくぶつかり合う木の剣。
打ち合い、離れて、走り出して、追いかけて…

遊びと言うには少々激しいものだった。
子供の頃からセデルは決して手加減なんかしなかったからね。

だから僕も手加減なしで手合わせをするのが礼儀だと思っていた。

熱中し過ぎて両親が止めに入ったこともあったっけ。

そんな俺達が想定外の出来事で手合わせの手を止めた日があったんだ。


「……ル……セデル!!……セデル!!」

どこからか女の子の声が聞こえてきたんだ。
その声を聞いた瞬間、いつものように木の剣を激しく打ち合わせていたセデルの表情が変わった。


「待てピエール!一時休戦だ!」

「……はっ?どうしたのさ、何かトラブルかい?」

「ああ、呼んでるやつがいる。」

そう言って踵を返して正門の方へ走って行ってしまった。

走り去ったセデルの後を追いかけて正門の方へと走っていくと、そこにいたのは青髪の妖精の女の子の姿。

正門の鉄格子越しに会話をするセデルとその子はどうやら知り合いのようだ。

僕は少し離れた場所でその子とセデルのやり取りを見守る事にした。

「セデル…!お願い助けて!
私のお友達が倒れちゃったの…!」

「友達…?その子はどこにいるんだ?」

「あっち…!あそこで倒れちゃったの…!」

そう言って女の子が指差す方に視線を向けてみれば長い白髪の女の子が倒れている姿が見えた。

「僕が行く!」

「あっ…!おいピエール!」

セデルの言葉を待たずに僕は鉄格子の柵をよじ登って外へと飛び出した。

だって…いてもたっても居られなかったから。

あの子を助けなきゃって思ったらもう身体が動いてた。

「君!大丈夫かい?」

苦しそうに呼吸をする兎の亜人の女の子。
抱き起こして声をかけてあげると、うっすらと目を開けてこちらを見つめてきた。

「あなたは……?」

「僕は……」

「おい、一人で先に行くなピエール!」


女の子の問いかけに答えようと口を開いたとほぼ同時にあの女の子と一緒にセデルがこちらへ駆け寄ってきた。

「ほら、水を持ってきた。その子に飲ませてやれ。」

そう言って差し出された水筒を受け取って兎の女の子に水を飲ませたんだ。

「全く、状況も解らないのに飛び出すんじゃない。
話は最後までちゃんと聞けピエール。」

「ごめん、倒れてる姿を見たら黙っていられなくなって……。」

「そうだろうな。全くお前らしい。」

そう言って呆れた様子で溜め息をひとつ。

セデルの言うとおり、冷静さが欠けていたと思う。

だけどどうしてもこの子のところへすぐに飛んでいきたい気持ちになったんだ。

「水は飲ませたがこのままでは良くない。家まで送り届けてやらないと…。」

「それなら僕が背負うよ。セデルはあの子にこの子の家まで案内してほしいって言ってくれないかな?」

「それはいいが…お前大丈夫か?」

「平気だよ!この子軽いから!」

セデルにそう言い放って僕はぐったりとした様子の兎の女の子を背負った。

セデルと青髪の女の子は周りに落ちていた買い物籠と果物を拾い集めて女の子の家へと向かって歩きだす。

時折こちらを心配そうに振り返って僕を見る二人に「大丈夫だよ」と返事をしながら歩き続けた。

僕の背に背負われている女の子がとても軽いから本当に僕一人でも平気だったんだ。

ただ……この子の苦しげな様子と儚げな姿を見て僕が守ってあげないとなって気持ちがどんどん強くなっていって…

「大丈夫だよ、僕が君の家まで送り届けてあげるから。」

聞こえていたかどうか僕にはわからないけど、そう言って僕はこの子の家まで背負って歩いたんだ。

セデルには無理をしなくても良いのにと呆れられたけど、それでも僕はこの子を守るのは僕の役目だとそう思って最後まで譲らなかったんだ。


それが僕の……初恋の女の子との最初の出会いだった。
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