日常交流

 家族のかたちってなんだろう。いつも考える。あたしは両親がいるけど、仕事が忙しくて一週間とか一ヶ月とかいない時もある。両親がいていいね、ってどっちもいない友達に言われたことがあるけどなんか違和感があって、いるけどあんまり会わないし、って言ったら今度は変な顔された。そのかりおにいちゃんがいるよ、って言ったらきょとんとされて。

 家族にはいろんな形がある。いいとか悪いとか、あまり関係ないんじゃないって思うの。それを友だちに伝えたらさらに変な顔をしていた。


「ってことがあったんだよ、おにいちゃん。どう思う?」
「どう思うもなにも……それがきっかけで喧嘩になってあちらさんに怪我させてどうするんだよ」
「それはやりすぎたっておもうけどさ……」
「あのな……顔にあざをこしらえさせて、やりすぎたですませるな。なんで暴力にまで発展するんだよ……」

「だって! ……おにいちゃんのこと、悪く言われたんだもん……」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない!」


 両親の話からあたしの話になって、そんなの変だ! って言われるし、おにいちゃんのこと悪く言うし! 気がついたら手が出てたんだよね……。そんなこと恥ずかしくて言えないけど。おにいちゃんはきっと知らないと思うし、知って欲しくもない。あたしが恥ずかしい……。

 おにいちゃんが怪訝そうな顔をしているのはわかっていたけどあえて何も言わず、おにいちゃんが作ってくれたカレーを一口食べる。――うん!


「おにいちゃん、今日の料理もおいしい!」
「そうか。明日も食べに食るのか?」
「うん。お母さんたち戻ってくるの5日先だってー。本当、楽しそうに仕事してるよ」
「3日……週明けか。じゃあ週末はこっちだな」
「よろしくお願いします! お菓子作りたいから材料持っていくね!」


 友達がクッキーを学校に持ってきてみんなに振舞ってて、美味しかったからあたしもつくりたんだよねー。この前作った時は粉塵爆発起こしかけたけど今回は大丈夫! 材料もレシピもきちんと教えてもらったし。やっぱりわからないからって自分でアレンジするのはだめだよね。

 ひとりで納得しながらカレーを食べ進めていると、一緒に食べていたおにいちゃんがスプーンを置いた。


「待て、今なんて言った? お菓子を、作る?」
「そうだよ? この前はごめんね。ちゃんと友達からレシピと材料聞いてきたから大丈夫だよ? クッキーって簡単だよ、って言ってたし。今度は最初からマカロン作りたい、なんて言わないよ?」

「そういう問題じゃねーんだけど……っていうかこの前はマカロン作ろうとしてたのかよ……。あのな、お前は料理するな。俺がいるときは絶対にさせない」
「えー、なんで! あたしだって料理したい!」
「粉塵爆発起こしかけたやつが何を言ってんだ。クッキー食べたいなら俺が作ってやるからとりあえず禁止」
「えー……。おにいちゃんのお菓子おいしいからいいけどさー」
「ならいいだろ」


 本当は作りたいのに……。でも拒むおにいちゃんの表情があまりにもかたくなだったからそれ以上言うのはやめた。違う時に挑戦しよう。そういえばちゃんと聞いたけど、メモはしてなかった……。メモみないとさすがにあぶないよね。


「わかった。今日はやめとくよ」
「今日はってどういうことだよ……」


 なぜかぐったりと力が抜けたおにいちゃん。なんでそんな体勢になるのかよくわからないけどまあいいか。

 
 おにいちゃんの仕事はよくわからないけど、難しい顔をしているのを見るから、大変なんだと思う。だから甘いものを食べて元気を出して欲しい。さすがにそれは言わないけどね!
 
 クッキーを食べて顔をほころばせてくれるおにいちゃんを想像して、あたしは内心ほくそえんだのだった。
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