日常交流


俺は兄上から留学を勧められたんだ。
従兄弟のメテオライトと一緒に…ね。

「おーい。そろそろ着くぞーゲオ。」

「…んぁ?」

「お前また本読みながら寝たのかよ…。」

「んー。読んだっつーか……文字を眺めてたら……寝た?」

船室のベッドの側に立つ従兄弟の方へと顔を向け、頭をポリポリと掻きながら俺はゆっくりと身を起こす。

あくび混じりに口にした言葉は少々間の抜けた声色で……
そんな俺を見下ろしてメテオラははぁ…とため息を一つ吐く。

「お前どんだけ本嫌いなんだよ。
俺も本は好きじゃねぇけど、さすがにそこまでじゃねぇぞ。」

「お俺とお前は実は双子なんじゃないかと思ってたんだけどなー?違うみたいだなー?」

「双子……それは俺も思ったことはあるな。
あれだ……双子でも違うところくらいあるだろ?」

メテオラは俺の従兄弟。

幼い頃からとても気が合う、仲の良い従兄弟だ。

メテオラの方が歳上だが、双子のようだ双子のようだとは使用人達に良く言われたが…本当に…良く似ていると俺も思う。

だからなのだろうか。兄上がメテオライトと一緒に王都に留学をしてこいと勧めてきたのは。

留学を終えて帰郷することになったわけだが、本当はもっとゆっくり帰ってくる筈だった。

メテオラと一緒に王都を見学して、ちょっと遊んで羽目をはずしたりするつもりだった。


でも事情は変わった。
兄上との手紙のやりとりで故郷が芳しくない状況であると知って俺達は荷物纏めもそこそこに船に飛び乗った。

荷物は……また取りに戻ればいいやと思ってるし、それが無理ならそのときはそのとき。

「なあ……大丈夫かな。」

「なにが?」

「お前の実家。」

「お前のとこも……だろ。」

そうメテオラの故郷も、俺の故郷と同様に良い状況とは言い難い。
お互い故郷の状況が心配になって船に飛び乗ったというわけだ…。

そういうとこは本当…俺ら良く似てると思うよ。

「大丈夫だよ。兄上達は俺らなんかよりずっと頭いいし、何より……強いからな!」

「ああ…そうだよな!」

メテオラの言葉を聞いて俺はようやく笑えたんだ。
ああ……ここで不安がってたって何も変わらないからな!


「よし、降りる支度すっか!!」

ぱんっ!と両頬を強く叩いて眠気を飛ばし、俺は少々の手荷物と愛用の剣を手にして船室を後にした。



†††††††††††††††


「久々だなぁ!!この空気!!」

遠くで鳴り響く鐘の音。空を飛び交う海鳥。活気のある港の市場と行商人。美しく整備された石畳の道。

何も変わってない俺の故郷。

「良かった…」

「ああ…どうやら無事なようだな。」

「あ…ごめん…」


お前の故郷は今どうなっているのかまだわからないのに…俺はつい安堵して言葉が口を突いて出てしまった事を後悔しながら隣に立つ従兄弟の顔を見ていた。

すると彼は「謝ることねぇよ!無事で良かったじゃないか!」と言って俺の肩をパンと強く叩き、白い歯を見せて笑って見せた。

本当、何でそんなに前向きなのか…
俺もポジティブな方だけど、こんな状況で笑ってられるのは本当凄いよお前…

「経験の差ってやつなのか…それとも単に……」

「あ?何か言ったか?」

「何も?
ほら、早く行こうぜ!モロク兄上が待ってる!」

納得のいかない顔を浮かべる従兄弟を追い越して俺は兄上の屋敷を目指して歩き始めた。

「何事も起こらなければ一番なんだけどな…。」

そうぽつりと呟きながら。
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