日常交流
彼女に出会ったのは、数年前のこと。
穏やかな日の光の射す森の奥、大きな樹の根元で眠る彼女を見つけたのが最初の出会いだった。
こんなところで何故寝ているのだろう?そう思いながら彼女を見ていた。
思い返せば、俺はあの頃から彼女に心を奪われていたのかもしれない。
柔らかな金の髪、見たことの無い不思議な髪飾り。
小さな呼吸に合わせて上下する琥珀のペンダント。
傍らに立つ大樹は、まるで彼女を守っているかのように聳え立ち、さわさわと揺れる葉が心地よい風を運び涼やかな影を作る。
「ん…。」
小さな呻き声と共に彼女は寝返りをうつ。
そしてもぞもぞと動き始め、ゆっくりと半身を起こす。
ごしごしと小さな手で目元を擦り、小さく欠伸をひとつ漏らす。
「あー…良く寝たー。」
独り言かは解らないが、彼女は確かにそう呟いた。
そしてようやく開かれた彼女の瞳が俺の姿を捉えた。
「げっ…!狼じゃない…!しかもけっこうでかいし…!」
俺の姿に驚いたのか、彼女はすぐ側に立て掛けてあった槍を手にした。
(しまった…!狼の姿だったのを忘れてた…!)
お互い微動だにせずそのまま見つめあい暫し沈黙が流れた。
俺は極力敵意が無いことを伝える為にその場に伏せて彼女の様子を見守った
。
「…?変なやつ。
てっきり襲いかかってくると思ってたのに。」
そう言って彼女は傍らにあった荷物を手に、「じゃあね、ぼんやり狼。」と言いながらその場を去っていった。
これが最初の出会い。
その後彼女を再び見かけたのは、白い花が咲き乱れる野原だった。
爽やかな風が吹き抜け、温かい日差しを浴びながら伸びをする彼女の姿が見えた。
(もしかして彼女は一人で旅をしているのだろうか?)
そう思うと気になって仕方がなかった。
ゆっくりと歩を進め、彼女に歩み寄る。
そんな俺に気づいたのか、彼女はこちらへ視線を向ける。
「ん…?あれ?もしかしてこの間の狼?
…もしかしてあたしを追いかけて来たの?」
そう問われ、俺は敵意は無いということを示すために尻尾を振った。
そんな俺の姿に、彼女は笑みを溢し、その場にしゃがんで手を差し伸べた。
「あはっ!面白いやつね!なに?あたしと一緒に行きたいの?」
そう言われ、先程よりも強く尾を振り、彼女の言葉に答えるように「ゥオン!」と一つ吠える。
「へぇ、言葉が解るんだ。
いいよ、あなたが行きたいって言うなら勝手についてくるといいよ。
別れるのもあなたの自由。わかった?」
その言葉にもう一度俺は「ゥオン!」と吠えて答える。
こうして俺は彼女と共に旅をはじめた。
実は人間の姿になれるのだが、そのことを隠しながら何故か俺は狼の姿のまま彼女と暫く旅をしていた。
