日常交流
「ねえねえノルンさん。」
「はい、なんでしょう?」
「これ練金術のお店じゃないよね?
どっちかっていうとパン屋に近いよね?」
「あはは、ばれちゃいましたか?」
新しいお手伝いさんがお店に来るようになって数週間。
以前よりも私は工房での作業に集中できるようになり、カボちゃんもお店の売り子としての仕事が板についてきた。
不足し始めた品物を並べていると、カボちゃんがポツリと呟いたのが事の始まり。
言われてみれば、薬や魔法道具より明らかに食料に部類される商品の方が多い。
特に多いのがパンだ。
アトリエのすぐ裏側に水車小屋があり、そこで粉を挽いて小麦粉を作っているので、材料を手に入れやすく、かつ良質の粉が挽けるものだからついついパンばかり作ってしまった。
その結果、付近の村ではなかなか評判の良いパン屋として売り上げを伸ばしている。
「ノルンさん!ここパン屋じゃないんだよ!?」
「そ…そうですね…!」
カボちゃんの言う事も最もです。
ここは練金工房。
本来ならもっと魔法アイテムをウリにしなくてはいけません。
「うーん…しかし手頃な材料でかつ一般的なお客様が注目してくれそうな目新しい魔法アイテムですか…」
工房のすぐ側にある村は農村。
つまり鉱山を開拓するための爆弾など必要ない。
特に大きな怪我をするわけでもないので薬もそれほど売れ行きは良くなかった。
より珍しいものを作れば、高額過ぎて買う人は現れず、店を覗いて終わってしまう。
「うーん…なかなか難しいですね。
あ、カボちゃんこの新商品はどうですか?」
「えっ?ナニナニ??」
瞳を輝かせてこちらを伺うカボちゃんに私は今日作った新商品を差し出す。
通気性の良い編み篭の中には四角くてふっくらとした…
「日持ちの良いデニッシュを作ってみたんです。味はシンプルにバターでつけてみたんですがどうでしょうか?」
「パンじゃん!!味がどうとかじゃなくて、パンから離れてって話だよ!!」
「ううっ…では昨日の夜から仕込んで今朝作ったこちらはいかがでしょう?」
「ナニナニ??」
ワクワクしながらテーブルに身を乗り出すカボちゃんの目の前に私はとっておきの新商品を差し出した。
「パンプキンパイです!
日持ちも良いですし自然な甘さでお子様でも食べやすいですよ!」
「こ れ も!! パ ン だ よぉぉぉぉお!!!!」
暫しこのようなやりとりをしながら新商品について思案を続けたが、全くと言っていいほど良い案は浮かばなかった。
「すみません…工房にいるとパンしか思い付かないみたいです…
少し付近を散歩しながら考えてきます…。」
このまま室内で考えていても良い案は浮かばないと結論付けた私は、外の空気を吸いにいくついでに調合用の素材を集めに近くの森へフィールドワークに出ることにした。
「いってらっしゃーい!
ゆっくり行ってきていいからねー!」
篭を手にドアノブに手をかける私にカボちゃんがパンプキンパイを頬張りながら明るく手を振る。
帰る頃にはきっと全てのパイが食べられている事だろうなと思いながら私はアトリエを後にした。
††††††††††
「夢見のキノコと…青灰石と…薬草と…
うーん…特に珍しい収穫はないな…」
いつも同じ森に来ているのだから、目新しい材料などそう簡単に見つかる筈もなく、今まで行ったことのない森の奥の方へと足を伸ばしてみることにした。
木の根の周辺や石の影などもくまなく探してみる。
そしてようやく初めて見かける素材に出会った。
「これは…」
思わず手に取り観察する。
球状のさやの中には3粒の小さな黄色い豆が入っていた。
「…なんだかひよこみたいな形をした豆ですね。
これを沢山栽培できたら…もしかしたら良い食料になるんじゃ…」
そう思い立った私は豆を出来る限り収穫し、それをアトリエに持ち帰ることにした。
(必要な材料は深くて丈夫な容器と、植物の成長を促す栄養剤と…それから…
ふふ…何だか楽しくなってきました!
今度はカボちゃんをびっくりさせるような物を作れるように頑張りますからね!)
思わず緩む頬をそのままに私は篭一杯の豆を抱えてアトリエへの帰路についたのだった。
「はい、なんでしょう?」
「これ練金術のお店じゃないよね?
どっちかっていうとパン屋に近いよね?」
「あはは、ばれちゃいましたか?」
新しいお手伝いさんがお店に来るようになって数週間。
以前よりも私は工房での作業に集中できるようになり、カボちゃんもお店の売り子としての仕事が板についてきた。
不足し始めた品物を並べていると、カボちゃんがポツリと呟いたのが事の始まり。
言われてみれば、薬や魔法道具より明らかに食料に部類される商品の方が多い。
特に多いのがパンだ。
アトリエのすぐ裏側に水車小屋があり、そこで粉を挽いて小麦粉を作っているので、材料を手に入れやすく、かつ良質の粉が挽けるものだからついついパンばかり作ってしまった。
その結果、付近の村ではなかなか評判の良いパン屋として売り上げを伸ばしている。
「ノルンさん!ここパン屋じゃないんだよ!?」
「そ…そうですね…!」
カボちゃんの言う事も最もです。
ここは練金工房。
本来ならもっと魔法アイテムをウリにしなくてはいけません。
「うーん…しかし手頃な材料でかつ一般的なお客様が注目してくれそうな目新しい魔法アイテムですか…」
工房のすぐ側にある村は農村。
つまり鉱山を開拓するための爆弾など必要ない。
特に大きな怪我をするわけでもないので薬もそれほど売れ行きは良くなかった。
より珍しいものを作れば、高額過ぎて買う人は現れず、店を覗いて終わってしまう。
「うーん…なかなか難しいですね。
あ、カボちゃんこの新商品はどうですか?」
「えっ?ナニナニ??」
瞳を輝かせてこちらを伺うカボちゃんに私は今日作った新商品を差し出す。
通気性の良い編み篭の中には四角くてふっくらとした…
「日持ちの良いデニッシュを作ってみたんです。味はシンプルにバターでつけてみたんですがどうでしょうか?」
「パンじゃん!!味がどうとかじゃなくて、パンから離れてって話だよ!!」
「ううっ…では昨日の夜から仕込んで今朝作ったこちらはいかがでしょう?」
「ナニナニ??」
ワクワクしながらテーブルに身を乗り出すカボちゃんの目の前に私はとっておきの新商品を差し出した。
「パンプキンパイです!
日持ちも良いですし自然な甘さでお子様でも食べやすいですよ!」
「こ れ も!! パ ン だ よぉぉぉぉお!!!!」
暫しこのようなやりとりをしながら新商品について思案を続けたが、全くと言っていいほど良い案は浮かばなかった。
「すみません…工房にいるとパンしか思い付かないみたいです…
少し付近を散歩しながら考えてきます…。」
このまま室内で考えていても良い案は浮かばないと結論付けた私は、外の空気を吸いにいくついでに調合用の素材を集めに近くの森へフィールドワークに出ることにした。
「いってらっしゃーい!
ゆっくり行ってきていいからねー!」
篭を手にドアノブに手をかける私にカボちゃんがパンプキンパイを頬張りながら明るく手を振る。
帰る頃にはきっと全てのパイが食べられている事だろうなと思いながら私はアトリエを後にした。
††††††††††
「夢見のキノコと…青灰石と…薬草と…
うーん…特に珍しい収穫はないな…」
いつも同じ森に来ているのだから、目新しい材料などそう簡単に見つかる筈もなく、今まで行ったことのない森の奥の方へと足を伸ばしてみることにした。
木の根の周辺や石の影などもくまなく探してみる。
そしてようやく初めて見かける素材に出会った。
「これは…」
思わず手に取り観察する。
球状のさやの中には3粒の小さな黄色い豆が入っていた。
「…なんだかひよこみたいな形をした豆ですね。
これを沢山栽培できたら…もしかしたら良い食料になるんじゃ…」
そう思い立った私は豆を出来る限り収穫し、それをアトリエに持ち帰ることにした。
(必要な材料は深くて丈夫な容器と、植物の成長を促す栄養剤と…それから…
ふふ…何だか楽しくなってきました!
今度はカボちゃんをびっくりさせるような物を作れるように頑張りますからね!)
思わず緩む頬をそのままに私は篭一杯の豆を抱えてアトリエへの帰路についたのだった。
