本編アフター 物語のその先
あれから一年。
親友のクロトはピエールと一緒にシャルトリューズ領へお嫁に行くことになった。
ピエールは弟のロジャーに任せきりだった実家に戻って家督を継いで国を立て直すための手伝いをするんだって。
そして今度はロジャーが家を出るとも言っていた。
ロシュフォールの領主様の妹君とのご縁を頂くためにご挨拶に伺うんだって。
みんなそれぞれの道を歩み初めている。
「結婚式の時は呼んでね?必ずお祝いに駆けつけるからね?」
……と祝福の言葉を贈って二人と別れた。
私も行きたいところがあるから。
大人になってからなかなか足を運ぶことができなかったけれど、国が落ち着いて旅ができるようになったら、お爺様のお墓にご挨拶に行こうって決めてたの。
本当はセデルと一緒に行こうかな……って思ってたけど……
セデルにはセデルのやるべきことがあると思うから。
あの人は国のために尽くすひとだから。
あの人の行く道を私はずっと見守っていたい。
あの人が疲れて癒しを求めて帰りたくなったなら、安心して眠れるような場所を用意して待っていたい。
それが一般人の私があの人にしてあげられる事だと信じているから。
でもその前に、私はお爺様に報告したい。
私は元気です。って。
†††††††††††††††††††††
お爺様が亡くなってから私はお爺様の古い知り合いの元に弟子入りしてしまったから、それからずっとここには帰って来た事が無かった。
嘗て自分が住んでいた小さな家は朽ち果て、屋根からは光が差し込んで大気に漂う埃がキラキラと舞っていた。
「まだ……お爺様の薬草の香りがする。」
軋む床板をゆっくりと踏みしめながら家のなかを見渡していく。
幼い頃はとても広く感じていたのに、今は何もかもが懐かしく、そして……とても小さく見えた。
腕の中でウォーリアが小さく鳴いた。
「うん、ごめんね。あまり身体には良くないね。外に出ようか。」
家の裏へと回る。
まだちゃんと残っているだろうか……
「あった……お爺様のお墓。」
蔦が絡んでしまっていたけれど、間違いなくそれは私のお爺様のお墓だった。
お爺様が愛用していた杖を傍らに立てたそのお墓を綺麗に手入れしていく。
伸びすぎた草を刈り取って買ってきた花とお爺様が好きだったお酒も添えて。
祈りを捧げる。
世界が平和になったことも、自分のことも、みんなのことも……
全部お祈りと一緒にお爺様に伝えた。
お祈りを捧げる間ずっと静かだったウォーリアがまた小さく『ニャオ』と鳴いた。
「ありがとうウォーリア。ちゃんとお爺様に伝えたから大丈夫だよ。
でも……ごめんね、まだ帰れない。
まだ……行きたいところがあるの。」
どれだけ時が経とうともずっと変わらない景色があった。
懐かしくて懐かしくて……胸が締め付けられるような不思議な気持ちになった。
よくこの道をクロトと一緒に歩いたっけ……。
クロトは病気がちで、お姉さんに心配かけて、時々買い物の途中で倒れたりして、その度にピエールがおんぶして連れて帰ったんだっけ……。
ピエールはセデルと仲良しでよくここに遊びに来ていて……。
だけど……セデルの家は……今は残っていない。
何があったのか私は詳しくは知らないけれど……ピエールが言ってた。
セデルの家は焼けてしまってもう残っていないんだって……。
ピエールの家でセデルを保護して……それからもいろいろあったんだって。
だからクロトにも私にも会えなかったし誰にも話せなかったんだって……。
セデルにとっては辛い思い出が残る地なのかもしれない……だから誘えなかった。
でも私は一度ここに足を運んでセデルのご両親の安息を祈りたかった。
お墓があったならそこで祈りたかったけれど、流石に勝手に屋敷の奥に踏みいることはできなくて。
おそらく玄関ホールがあったであろう大理石のタイルが残ったその場所を綺麗に整えてお祈りをすることにした。
持ってきたお花と葡萄酒を供えて、聖水をふりまいて、浄化の力があると言うミルラの香を焚いた。
ここは私にとっても大切な場所だからセデルのご両親の魂が迷わないように祈りを捧げたい。
地に膝をつけ、両手を組んで静かに祈る。
どうか安らかに……これからもセデルを守ってくださいますように……って。
ここが私にとって始まりの場所だから。
ここから沢山の縁を貰ったの。
糸紡ぎのように絡み合って離れてまた紡がれて……
幼かった私たちはいつの間にか大人になってまた会うことができた。
だから、ありがとうございますってセデルのご両親にも伝えたかった。
きちんとした場所じゃないけど、私は聖職者ではないし、所詮真似事でしかないけれど、届くかな……届くといいな。
「またいつかお祈りに来ます。その時はきっとセデルも一緒に……。」
親友のクロトはピエールと一緒にシャルトリューズ領へお嫁に行くことになった。
ピエールは弟のロジャーに任せきりだった実家に戻って家督を継いで国を立て直すための手伝いをするんだって。
そして今度はロジャーが家を出るとも言っていた。
ロシュフォールの領主様の妹君とのご縁を頂くためにご挨拶に伺うんだって。
みんなそれぞれの道を歩み初めている。
「結婚式の時は呼んでね?必ずお祝いに駆けつけるからね?」
……と祝福の言葉を贈って二人と別れた。
私も行きたいところがあるから。
大人になってからなかなか足を運ぶことができなかったけれど、国が落ち着いて旅ができるようになったら、お爺様のお墓にご挨拶に行こうって決めてたの。
本当はセデルと一緒に行こうかな……って思ってたけど……
セデルにはセデルのやるべきことがあると思うから。
あの人は国のために尽くすひとだから。
あの人の行く道を私はずっと見守っていたい。
あの人が疲れて癒しを求めて帰りたくなったなら、安心して眠れるような場所を用意して待っていたい。
それが一般人の私があの人にしてあげられる事だと信じているから。
でもその前に、私はお爺様に報告したい。
私は元気です。って。
†††††††††††††††††††††
お爺様が亡くなってから私はお爺様の古い知り合いの元に弟子入りしてしまったから、それからずっとここには帰って来た事が無かった。
嘗て自分が住んでいた小さな家は朽ち果て、屋根からは光が差し込んで大気に漂う埃がキラキラと舞っていた。
「まだ……お爺様の薬草の香りがする。」
軋む床板をゆっくりと踏みしめながら家のなかを見渡していく。
幼い頃はとても広く感じていたのに、今は何もかもが懐かしく、そして……とても小さく見えた。
腕の中でウォーリアが小さく鳴いた。
「うん、ごめんね。あまり身体には良くないね。外に出ようか。」
家の裏へと回る。
まだちゃんと残っているだろうか……
「あった……お爺様のお墓。」
蔦が絡んでしまっていたけれど、間違いなくそれは私のお爺様のお墓だった。
お爺様が愛用していた杖を傍らに立てたそのお墓を綺麗に手入れしていく。
伸びすぎた草を刈り取って買ってきた花とお爺様が好きだったお酒も添えて。
祈りを捧げる。
世界が平和になったことも、自分のことも、みんなのことも……
全部お祈りと一緒にお爺様に伝えた。
お祈りを捧げる間ずっと静かだったウォーリアがまた小さく『ニャオ』と鳴いた。
「ありがとうウォーリア。ちゃんとお爺様に伝えたから大丈夫だよ。
でも……ごめんね、まだ帰れない。
まだ……行きたいところがあるの。」
どれだけ時が経とうともずっと変わらない景色があった。
懐かしくて懐かしくて……胸が締め付けられるような不思議な気持ちになった。
よくこの道をクロトと一緒に歩いたっけ……。
クロトは病気がちで、お姉さんに心配かけて、時々買い物の途中で倒れたりして、その度にピエールがおんぶして連れて帰ったんだっけ……。
ピエールはセデルと仲良しでよくここに遊びに来ていて……。
だけど……セデルの家は……今は残っていない。
何があったのか私は詳しくは知らないけれど……ピエールが言ってた。
セデルの家は焼けてしまってもう残っていないんだって……。
ピエールの家でセデルを保護して……それからもいろいろあったんだって。
だからクロトにも私にも会えなかったし誰にも話せなかったんだって……。
セデルにとっては辛い思い出が残る地なのかもしれない……だから誘えなかった。
でも私は一度ここに足を運んでセデルのご両親の安息を祈りたかった。
お墓があったならそこで祈りたかったけれど、流石に勝手に屋敷の奥に踏みいることはできなくて。
おそらく玄関ホールがあったであろう大理石のタイルが残ったその場所を綺麗に整えてお祈りをすることにした。
持ってきたお花と葡萄酒を供えて、聖水をふりまいて、浄化の力があると言うミルラの香を焚いた。
ここは私にとっても大切な場所だからセデルのご両親の魂が迷わないように祈りを捧げたい。
地に膝をつけ、両手を組んで静かに祈る。
どうか安らかに……これからもセデルを守ってくださいますように……って。
ここが私にとって始まりの場所だから。
ここから沢山の縁を貰ったの。
糸紡ぎのように絡み合って離れてまた紡がれて……
幼かった私たちはいつの間にか大人になってまた会うことができた。
だから、ありがとうございますってセデルのご両親にも伝えたかった。
きちんとした場所じゃないけど、私は聖職者ではないし、所詮真似事でしかないけれど、届くかな……届くといいな。
「またいつかお祈りに来ます。その時はきっとセデルも一緒に……。」
