第11節 芋煮ヶ原
「エテル君、唐突な話で大変恐縮なのだが、今私はとても芋煮会というものをしてみたくてね」
「えっ?あ、あれ??フリードリヒさん、ですか?ど、どうしてここに?」
「ふむ……そうか、エテル君、君はもしかしたら芋煮自体を知らないのかもしれないね。芋煮会というのは遠い異国の―……更にその中でも東北地方と呼ばれる一部の地域に根付いているあきの年中行事なんだが」
「ちょっと待て。おっさん、なんであんたがシレっと生きてるんだよ。数か月前に俺にぶっ刺されておまけになんかいきなり出て来たポッと出ラスボスにこんがりウェルダンに燃やされてただろうが。ってか、まずなんだよこの不思議空間。漂白されたみたいに異様に白いしだだっ広いし……」
目覚めると俺は”白”の中にいた。こんな意味深なモノローグを書くと何かの伏線かフラグのようだが、残念ながらここは本編扱いされる”章”ではなくパロディ・ご都合主義なんでもござれの”節”の世界だ。
普通に第4の壁を破るな?そもそも節の世界に第4の壁など存在していない。それが”節”というものだ。
「アルフォート君、君はまだ私が生きているように見えるのかい?」
「見える―……や、すまん。やっぱ見えねーわ。なんか他より薄いし透けてるし何より足がねーし」
俺の目の前の自分と何かと因縁めいた相手は、目元の皺を増やすように微笑むと自分から一番近い白い壁に手を通して見せた。なるほど……確かに腕が透けて壁を通り抜けている。……なるほどじゃねーよ。だからここどこなんだよ。説明不足にもほどがあんだろ。主人公に説明しないからしっちゃかめっちゃかになった話とか普通にあるだろうが。
「話が少し脱線してしまったね。戻そう。芋煮とはサトイモと呼ばれる粘性がある芋を主役に白菜、ゴボウ、油揚げ、大根、ニンジン、豆腐、こんにゃく、キノコ類といった様々な具材を投入し、大鍋で煮込む料理の事だ。一般的に使用する肉は豚、そして味付けは味噌と呼ばれる発酵させた大豆調味料で―……」
「お待ちなさいッ!!!!!!!」
「……この忌々しい声は―……ブランチュール教皇、か。本編同様どこまでも私の邪魔をしてくれる。そもそも君を私のプライベートゾーンに招いた覚えはないのだが?」
「ふふふっ……相変わらず笑わせてくれますね、フリードリヒ。芋煮の肉が豚、味付けが味噌とは。言わせていただきましょう。真の芋煮とは牛肉を用い、味付けは醤油ベースのものであると!あなたが今仰ったものは芋煮ではない。……そうでしょう?豚を使い、味噌で味をつける……世間一般ではそれは豚汁と呼ぶのです!!」
「なあ結局どっちが正しい芋煮なんだ?」
「えーっと……私に聞かれましても……ラシュクーレは分かる?」
「えっ?ここで私に話を振るの、エテル!?ちょっと待ってください……wikiるので……」
「世界観ガン無視し過ぎじゃね?第4の壁、ベルリンの壁のように砕けてるから構わないのかもしれないけどよ」
「あっ、ありました。宮城県仙台平野と呼ばれる地域を中心とした場所で食されている芋煮は豚肉味噌味、山形県内陸部を中心に食されているものは牛肉醤油味―……となっていますね」
「つまりどっちも正しいんじゃねーか。何張り合ってんだ、あのおっさんども」
視線の先を言い争う声がする方へと戻せば、がっぷりと頭の上で互いに手を組み合いお互いの身体を押し合っているいい年をしたおっさん二人がいた。いや、ブランチュール教皇はまだ生きて実体があるからいいとして問題はもう一人のおっさんの方だよ。お前、BBQの肉よろしくこんがり焼けてただろうが。
「やはりどう足掻いても己の非を認めないということだな」
「強情な方だ。……仕方ありません。ここはこの国の民全てに問おうではありませんか。どちらが真の芋煮であるかを!!!!」
芋煮会始まるよー!!!!!
≪アルフォート≫
