第16章 デミアン

先ほどは、柄にもなく取り乱してしまった。
あの密談、そしてその後に起こった騒動を片した後、混乱した気持ちを落ち着かせたいと思い、私は外で風に当たっていた。北はまだ春ではないのか、冷たいそよ風が吹いている。また、現在は夜に差し掛かった時間であるためか、昼間よりも空気が冷えてきており雪も降り出した。

「にしても、アマダス殿やダンタリオン卿がおっしゃっていたことは―」

本当なのだろうか。何度問うても、アマダス殿は依然として黙ったままであった。
この作戦は、民を助けるための人道支援のためではなかったのか?確かに、支援のためだけに陣を張る必要はあるのかとは疑問には少し思っていたが…それでも、民が少しでも助かるのならばと思い、私は喜んで作戦に参加した。なのに。

「これでは…民を助けるどころかその逆ではないか」

まさか戦を誘発するためのものだったとは。いや、真の目的はそのもっと先の結果なのだろうが。
しかし、私が最も動揺したのは、餓死者を出すという点だった。過去に故郷の領で起こっていたことが繰り返される。否、この私の手によって繰り返されようとしていたのだ。故郷の領で起こっていたことを二度と起こすまいと思っていたのに、二の舞を踏んでしまった気分だ。

「ああ…今日は本当によく冷えるな」

風が少々強まり、周りの空気が一段と冷えたように感じた。体も冷たくなり、感覚がどんどん奪われていく。思考も真っ白になり、何も考えられなくなってしまっている。降っている雪も、灰が降り注いでいるように濁って見えた。

兄上にはとても面目無く思う。ロジャー様にはこんな無様な姿は晒せない。……もう、そろそろ室内に戻ろうか。
しかしそう思っても、私は体を動かすことができないでいた。
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