第13章 来襲

『エテル、人のために何かできる人でありなさい。もちろん、自分を犠牲にしてまで何かをする必要はないけれど……こんな時代だから、人のために、という気持ちを忘れないで欲しいの』


 体が弱くてベッドに臥せていることが多かったお母さんだけど、その分私や弟に色々と話を聞かせてくれた。それらが今の私を形作っている。

 決して自分は犠牲にせず、人のために行動できる自分でありたい。そして、最期まで諦めずにあがく。

 私の愚かな“祈り”は潰えて、次にあるのはわかっていなかった、“現実”。目を背けたくなってしまうかもしれないような“現実”。でも、私は進まなくてはいけない。自分に恥じない自分であれるように。



 目が覚めたとき、最初に目に入ったのはメドラウトさんの心配そうな顔だった。どうして、そんなに心配そうな顔をしているんだろう、と思って――倒れる前の出来事を、思い出す。
 そうか、メドラウトさんが助けてくれた。私は、私は……。

 涙が溢れ出して、止まらなくなる。何もわかってなかった、彼らにも、何もできなかった。けれど、謝罪は、できない。

 そうしているうちにふわりと、暖かい温度に包まれる。一拍遅れて、メドラウトさんに抱きしめられているんだと気づいて、そして。



「エテル。俺のそばから離れるな。……言っただろう?お前の事守るって。いなくなるな、俺のそばから。……助けに行くのが遅くなって……悪かった」


 ああ、この人は、なんて素敵な言葉をくれるんだろう。彼は私がその言葉にどれだけ救われているのかきっとわかっていない。無意識に、私を救ってくれている。それがとても嬉しくて、言葉にできない感情が溢れてくる。まだそれに名前はないけれど、いつかつけられるような、気がした。

 そんなことをなんとなく考えているうちに、涙はだんだんとおさまってくる。ゆっくりと体を離すと、心配そうにこちらを見つめるメドラウトさんがいる。そんな彼に、私は笑ってみせる。たくさん泣いたから、もう後悔する時間はおしまい。次は前に進むの。私は、“現実”を受け止める。


「メドラウトさん、助けに行くのが遅くなったなんて言わないでください。私は、メドラウトさんに助けてもらったから、ここにいるんです」


 どんなことがあってもおかしくなかったあの状況で、私は傷ひとつない。それはきっと、メドラウトさんが守ってくれたから。そして彼にも怪我はない。それが本当に嬉しい。


「私を守ってくれて、本当にありがとうございました」


 うまく言葉が見つからないけれど、伝わっているといいな。……ううん、きっとメドラウトさんに伝わっている。彼が受け取ってくれる人だって知れるだけの時間を、過ごしたから。



 ――泣いて、慰められて、もう一度決意して、ということをして、自分のことで精一杯だった私は、気付かなかった。

 羽音が、キャンプ地に近づいてきていることに。
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