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だって、彼女は私だから。
《Chain》
静かに……断末魔の金切り声すらなく、未来の魔女は滅んだ。
一瞬前まで確かに存在していた彼女は文字通り、無に飲まれ原初の海へと還っていく。
薄れていく意識、バラバラに溶けていく細胞の海。
あの時、過去・現在・未来―……曖昧になった時の回廊を進む私の脳裏に浮かんだのは彼女の、魔女アルティミシアの最期。
未来の恐怖の魔女アルティミシア。
いったい、アルティミシアは何を望んでいたのだろう?
自身の障害となるスコール達SEEDを滅ぼす事?
それとも、時間を圧縮し自分だけが生き残った世界に君臨する事?
たぶん、どっちも違う。
だって、もう彼女の世界は完成していたんだもの。
彼女は孤独だった。彼女の世界には自分一人分のスペースしかなかった。
そんな彼女にとって、今更自分だけが生き残った孤独な世界なんて必要ない。圧縮するまでもなく、世界には自分一人しか存在していないのだから。
完成していた孤独な世界。
じゃあ、どうしてアルティミシアは世界の敵になる事を選んだのだろうか?わざわざ時間の因果を狂わせてまで過去を呼び寄せたんだろう?
そこまで考えて私の思考はまた振り出しへ。だけど、同時にフッと思ったの。
もしかしたら、彼女は自身を滅ぼすために私達を過去から呼び寄せたんじゃないか、って。
いつだったか、私、スコールに言ったことあるもの。
もし、私が心まで魔女になってしまったら、その時は―……って。
彼女も同じだったんじゃないかな?
私には分かる。だって、彼女は私だもの。
私が魔女の力をイデアから継承した時、私の中に入ってきたのは魔女の魔力だけじゃなかった。
今までの―……始祖ハインから脈々と受け継がれて来た歴代の魔女達の記憶。
愛、憎しみ、羨望―……それらも同時に私に継承されたの。
私の気持ちも記憶も恐らく次代の魔女が受け継ぐんだと思う。
私から誰かへ、そして、また他の誰かへと。アルティミシアまで。
アルティミシアと私達魔女は、一本の鎖で繋がっているの。
それぞれ別の人間でありながら、同時に私達魔女は一つの存在―…“力あるハイン”だから。
一つの存在だからこそ分かる。
彼女は自分の存在を消したかった。
自分に受け継がれた鎖の重さに、たった一人で耐えて耐えて―……彼女は壊れた。
「……。」
「まっ、あくまで仮定の話だから。ちょっとー、そんな深刻に考えないでってば。」
暖かな陽光が照らし出すのは、一点の曇りもない空と一面に芽吹き花開いた花畑。
“平和”を具現化したような景色。
そんな景色の端っこに腰掛けて、ちょっと不格好なサンドイッチを頬張りながら私は彼にそう語り掛けた。
「それに、今更何を言ったって今更でしょー?
って、ほら、スコールも遠慮せずに一つ食べたまえ。結構頑張って作ったんだよ?」
「しかし―…」
まったく、この人はいっつもこう。
もはや、彼のトレードマークとも言える傷に見慣れた深々とした皺が数本刻まれる。
いくらこの表情がらしいとは言え、せっかくのデート中なんだからもう少しマシな顔しなさい!
なーんて言ったらスコールは怒るかな?呆れるかな?
「……今、変な事考えただろう?」
「いいえー。滅相もございません!」
確かに私、あなたの気持ち分かるんだ。
私もあなただから。
でもね、世界は皆に平等でも優しくもないかもしれないけれど―……
「さっさ!スコール、たーんと召し上がれ!」
「……食べられるのか?」
「失礼ーッ!!」
今、私が感じている暖かな記憶も気持ちも嘘じゃないんだよ。
その記憶の輪があなたに伝わらなかったのは、やっぱり少し寂しいです。
薄桃色の花弁が舞う。暖かな風が舞う。
少しだけ泣きたくなったのは、たぶん空があまりに綺麗だから。
Fin
《Chain》
静かに……断末魔の金切り声すらなく、未来の魔女は滅んだ。
一瞬前まで確かに存在していた彼女は文字通り、無に飲まれ原初の海へと還っていく。
薄れていく意識、バラバラに溶けていく細胞の海。
あの時、過去・現在・未来―……曖昧になった時の回廊を進む私の脳裏に浮かんだのは彼女の、魔女アルティミシアの最期。
未来の恐怖の魔女アルティミシア。
いったい、アルティミシアは何を望んでいたのだろう?
自身の障害となるスコール達SEEDを滅ぼす事?
それとも、時間を圧縮し自分だけが生き残った世界に君臨する事?
たぶん、どっちも違う。
だって、もう彼女の世界は完成していたんだもの。
彼女は孤独だった。彼女の世界には自分一人分のスペースしかなかった。
そんな彼女にとって、今更自分だけが生き残った孤独な世界なんて必要ない。圧縮するまでもなく、世界には自分一人しか存在していないのだから。
完成していた孤独な世界。
じゃあ、どうしてアルティミシアは世界の敵になる事を選んだのだろうか?わざわざ時間の因果を狂わせてまで過去を呼び寄せたんだろう?
そこまで考えて私の思考はまた振り出しへ。だけど、同時にフッと思ったの。
もしかしたら、彼女は自身を滅ぼすために私達を過去から呼び寄せたんじゃないか、って。
いつだったか、私、スコールに言ったことあるもの。
もし、私が心まで魔女になってしまったら、その時は―……って。
彼女も同じだったんじゃないかな?
私には分かる。だって、彼女は私だもの。
私が魔女の力をイデアから継承した時、私の中に入ってきたのは魔女の魔力だけじゃなかった。
今までの―……始祖ハインから脈々と受け継がれて来た歴代の魔女達の記憶。
愛、憎しみ、羨望―……それらも同時に私に継承されたの。
私の気持ちも記憶も恐らく次代の魔女が受け継ぐんだと思う。
私から誰かへ、そして、また他の誰かへと。アルティミシアまで。
アルティミシアと私達魔女は、一本の鎖で繋がっているの。
それぞれ別の人間でありながら、同時に私達魔女は一つの存在―…“力あるハイン”だから。
一つの存在だからこそ分かる。
彼女は自分の存在を消したかった。
自分に受け継がれた鎖の重さに、たった一人で耐えて耐えて―……彼女は壊れた。
「……。」
「まっ、あくまで仮定の話だから。ちょっとー、そんな深刻に考えないでってば。」
暖かな陽光が照らし出すのは、一点の曇りもない空と一面に芽吹き花開いた花畑。
“平和”を具現化したような景色。
そんな景色の端っこに腰掛けて、ちょっと不格好なサンドイッチを頬張りながら私は彼にそう語り掛けた。
「それに、今更何を言ったって今更でしょー?
って、ほら、スコールも遠慮せずに一つ食べたまえ。結構頑張って作ったんだよ?」
「しかし―…」
まったく、この人はいっつもこう。
もはや、彼のトレードマークとも言える傷に見慣れた深々とした皺が数本刻まれる。
いくらこの表情がらしいとは言え、せっかくのデート中なんだからもう少しマシな顔しなさい!
なーんて言ったらスコールは怒るかな?呆れるかな?
「……今、変な事考えただろう?」
「いいえー。滅相もございません!」
確かに私、あなたの気持ち分かるんだ。
私もあなただから。
でもね、世界は皆に平等でも優しくもないかもしれないけれど―……
「さっさ!スコール、たーんと召し上がれ!」
「……食べられるのか?」
「失礼ーッ!!」
今、私が感じている暖かな記憶も気持ちも嘘じゃないんだよ。
その記憶の輪があなたに伝わらなかったのは、やっぱり少し寂しいです。
薄桃色の花弁が舞う。暖かな風が舞う。
少しだけ泣きたくなったのは、たぶん空があまりに綺麗だから。
Fin