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たとえ、どんな運命がこの先で待ち構えているとしても―…
《Meet again after a long time》
「…やっぱり、ここにいたのね。」
寄せては返す潮騒が鼓膜を揺らす。
以前であれば煩わしく感じる事はあれ、それ以上は何の感慨も浮かばなかった音だが、今はどこかこの音を心地よく思う自分がいた。
「うん、あなたなら絶対、彼女を見つけるって思ってた。」
先に言葉を漏らした紫髪の女の言葉に同調するように、金髪の女が笑う。
いつか横で見ていた太陽のような金の光は、巡り巡って自分の姉の色にもなっているのだから複雑な気持ちにならざる得ない。
「そうそう。だって、お前のしつこさは何世紀もんだもんなー。見つけられないはずがないって。」
また一つ、波が寄せて母なる海へと帰っていく。
時間も次元が変わっても変わらない奴らの能天気さに、怒りとも呆れとも呼べないため息が漏れた。
昔と変わらない三人の声。三人の言葉。
自分と同じ高さだったはずの奴らの目線が、自分のはるか下にあるという―…その一点を除いて。
「…フフッ。クロノもマールも言い過ぎ。でも、本当に久しぶり。ねっ、…ジャキ?」
長い間、決して外さなかった仮面に手を掛ける。
仮面を取った自分の瞳に写った奴らの姿は―……やはり、子供の姿のままだった。
「…フン。まさか、このような形で貴様らと再び相間見えるとはな。」
「あいっかわらず、偏屈だなー、お前。」
「まあまあ。それに偏屈とシスコンをジャキから取っちゃったら何も残らないじゃない?ねっ、ルッカ。」
「…マール、それフォローになってないわよ……」
昼の光に照らし出された色の海は束の間の夢の中へと。
眠りについた色彩に変わり、闇一色に色付いた海に、南天の星々の弱い光が点々と跡を作る。
「セルジュたちは?」
「奴らなら近くの村で休んでいる。明日はいよいよだから、な。」
「そっか。」
そう呟くと少年―…クロノは瞳を閉じた。
奴が何を思い、何を感じているのか―……知る由も知る理由も私にはない。
「ごめんなさい、ジャキ。あなたに押しつけてしまって。」
白い衣装を身に纏った少女―……マールは頭を垂らす。
奴らは……この三人は、この時間、この次元では既に存在していない過去の残響だった。
それを踏まえて、人一倍お節介な女は謝罪の言葉を口にしたのだろう。
「…お前が謝る必要などない。私は私の意志でここにいる。」
「…そうだね。そうね、あなたはそういう人だね。」
吹っ切れたように笑うマールの姿に、何故、自分の姉がこの女に憧れたのか―……その理由を垣間見たように思えた。
「…ジャキ、分かってると思うけど―……」
「ああ。だが、心配はいらないだろう。セルジュとキッド達なら、な。
私達は奴らの背中を押すだけでいいい。」
女の紫髪が潮風に踊る。
女―……ルッカは、その答えを聞くと、笑みを浮かべて満足そうに一つ頷いた。
既に、私達の時代は終わっている。
だが、過去の影でしかない私達にもまだやれる事が残っている残っているのだとしたら―……
「うん。あなたと……セルジュ達なら大丈夫。
たとえ、どんな運命がこの先の曲がり角で待ち構えていようとも、ね。だから―……」
いつか―…いつだったか……こいつらと語り明かした森の野営地での夜を思い出す。
下らない話と一蹴しようにも、ついつい耳を傾けていた―……あの復活した緑の森での宴。
星の夢は終わらない。終わらせない。
その結果、歴史が変わろうと、世界が滅びようとも。
私達もまた星の夢の一部なのだから。奴らと共に夢の終わりまで走ってみるのも一興だろう。
「…それじゃあ、よろしくね。私の大切な妹を―……。」
波の音は―……星の音は……どこまでも優しいものだった。
Fin
《Meet again after a long time》
「…やっぱり、ここにいたのね。」
寄せては返す潮騒が鼓膜を揺らす。
以前であれば煩わしく感じる事はあれ、それ以上は何の感慨も浮かばなかった音だが、今はどこかこの音を心地よく思う自分がいた。
「うん、あなたなら絶対、彼女を見つけるって思ってた。」
先に言葉を漏らした紫髪の女の言葉に同調するように、金髪の女が笑う。
いつか横で見ていた太陽のような金の光は、巡り巡って自分の姉の色にもなっているのだから複雑な気持ちにならざる得ない。
「そうそう。だって、お前のしつこさは何世紀もんだもんなー。見つけられないはずがないって。」
また一つ、波が寄せて母なる海へと帰っていく。
時間も次元が変わっても変わらない奴らの能天気さに、怒りとも呆れとも呼べないため息が漏れた。
昔と変わらない三人の声。三人の言葉。
自分と同じ高さだったはずの奴らの目線が、自分のはるか下にあるという―…その一点を除いて。
「…フフッ。クロノもマールも言い過ぎ。でも、本当に久しぶり。ねっ、…ジャキ?」
長い間、決して外さなかった仮面に手を掛ける。
仮面を取った自分の瞳に写った奴らの姿は―……やはり、子供の姿のままだった。
「…フン。まさか、このような形で貴様らと再び相間見えるとはな。」
「あいっかわらず、偏屈だなー、お前。」
「まあまあ。それに偏屈とシスコンをジャキから取っちゃったら何も残らないじゃない?ねっ、ルッカ。」
「…マール、それフォローになってないわよ……」
昼の光に照らし出された色の海は束の間の夢の中へと。
眠りについた色彩に変わり、闇一色に色付いた海に、南天の星々の弱い光が点々と跡を作る。
「セルジュたちは?」
「奴らなら近くの村で休んでいる。明日はいよいよだから、な。」
「そっか。」
そう呟くと少年―…クロノは瞳を閉じた。
奴が何を思い、何を感じているのか―……知る由も知る理由も私にはない。
「ごめんなさい、ジャキ。あなたに押しつけてしまって。」
白い衣装を身に纏った少女―……マールは頭を垂らす。
奴らは……この三人は、この時間、この次元では既に存在していない過去の残響だった。
それを踏まえて、人一倍お節介な女は謝罪の言葉を口にしたのだろう。
「…お前が謝る必要などない。私は私の意志でここにいる。」
「…そうだね。そうね、あなたはそういう人だね。」
吹っ切れたように笑うマールの姿に、何故、自分の姉がこの女に憧れたのか―……その理由を垣間見たように思えた。
「…ジャキ、分かってると思うけど―……」
「ああ。だが、心配はいらないだろう。セルジュとキッド達なら、な。
私達は奴らの背中を押すだけでいいい。」
女の紫髪が潮風に踊る。
女―……ルッカは、その答えを聞くと、笑みを浮かべて満足そうに一つ頷いた。
既に、私達の時代は終わっている。
だが、過去の影でしかない私達にもまだやれる事が残っている残っているのだとしたら―……
「うん。あなたと……セルジュ達なら大丈夫。
たとえ、どんな運命がこの先の曲がり角で待ち構えていようとも、ね。だから―……」
いつか―…いつだったか……こいつらと語り明かした森の野営地での夜を思い出す。
下らない話と一蹴しようにも、ついつい耳を傾けていた―……あの復活した緑の森での宴。
星の夢は終わらない。終わらせない。
その結果、歴史が変わろうと、世界が滅びようとも。
私達もまた星の夢の一部なのだから。奴らと共に夢の終わりまで走ってみるのも一興だろう。
「…それじゃあ、よろしくね。私の大切な妹を―……。」
波の音は―……星の音は……どこまでも優しいものだった。
Fin