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ぼろぼろのバット
安っぽいクリスマスツリー
貧相なクリスマス料理
一番可哀想な子はだあれ?
《X'mas》
「ねえ、ポーキー!明日はクリスマスだね!」
いつもの遊び場からの帰り道。
夕日に照らされて細く伸びた影に背を向けて振り返れば、俺様の予想どおりのウザい隣人の姿。
「…ねえ、ポーキー?僕の話、聞いてる?」
ああ!うるさいッ!大体、話が聞こえないのなら振り返るわけがないだろうが。
だから、バカは嫌いなんだ。
そんな思いを込めてわざと大きく舌打ちしてやったけれど、そんな俺様の崇高でセンチメンタルな気持ちが、この馬鹿にきちんと伝わったかどうかは分からない。
ただ、分かることは、今、目の前にいるこの馬鹿がやけに嬉しそうに笑っているという事だった。
「…そうだ!ポーキーの家もクリスマスパーティーをするんでしょ?
僕ね、クリスマスすごく楽しみなんだ!
だからね、クリスマスのためにトレーシーやママと一緒にツリーの飾り付けをしたんだよ。」
ああ、あの安っぽい飾りのツリー?
どこからか拾ってきた松ぼっくりやらどんぐりやら自分達で焼いたクッキーやらを飾り付けただけの、あの、安っぽいツリー?
可哀想なお前に教えてやるよ。
俺様の部屋にはダディがデパートで買ってきた一番でっかくて立派なツリーが飾ってあるんだよ。
電球がビッカビカついて、金ぴかのツリーがな!
―…だけど、ダディもマミィも飾り付けを手伝ってはくれなかった…―
「それとね、明日はご馳走なんだ!
ママが今年は頑張ってチキンを焼くんだって!お腹にお米とハーブを詰めて作るってはりきってたし、丸太型のケーキも作るって!
…でも、僕としてはいつもよりちょっと大きめのオムライスを作ってくれた方がいいんだけどなー…」
はっ?チキン?そんな貧乏臭い食べ物、この偉大なるポーキー・ミンチ様が口にするわけないだろう?
いい事教えてやるよ。
俺様の家はな、毎日食べてるんだよ。
…チキン?
そんなわけないだろう?ビーフだよ、ビ・ー・フ!
おまけにただのビーフじゃない。白い筋のたくさん入った、舌の上に乗せたら溶けるんじゃないかってくらい高級なやつをな。
―…でも、ダディもマミィも一緒に食べてくれない。
だって、ダディとマミィはいっつも夜は二人でお外に遊びに行くから…―
「ところでさ、ポーキーは何をサンタさんにお願いしたの?
僕ね、今年はグローブをお願いしたんだ!
サンタさんってすごいよね!僕が今使ってるこのバット、去年サンタさんがクリスマスにくれたんだよ!」
ああ。その、どこのメーカーが作ったかも分からないようなぼろっちいバット?
哀れで間抜けなお前に教えてやるよ。
俺様のバットは一流メーカーの一流職人が作った一流バットだ。
バットだけじゃない。このグローブもスパイクも…全部!全部だ!!
それに、サンタなんかいないんだよ。
お前のそのぼろっちいバットだって、お前の両親が働いて働いてようやく出た陳家な給料から買ったボロいバットだろうが。
―…でも、うちにはサンタが来てくれたことなんか一度もなかった…―
「…どうしたの?ポーキー?」
「…うるっせーなッ!いないんだよ!サンタなんて!
お前、本当にバッカじゃねーのッ!?」
いっつもそうだった。
今だってそうだ。
俺様は、最高にかっこよくて強い機械を操縦する正義のヒーローで…
お前は、あろう事か自分の体を捨てて、そんな雑巾みたいにボロっちい機械の体に入った哀れな三流の、カスみたいな悪役で。
俺様のほうが持っている。
俺様のほうがえらい。
俺様のほうが…俺のほうが!!
なのに…なのに…!!
一番可哀想な子はだあれ?
Fin
安っぽいクリスマスツリー
貧相なクリスマス料理
一番可哀想な子はだあれ?
《X'mas》
「ねえ、ポーキー!明日はクリスマスだね!」
いつもの遊び場からの帰り道。
夕日に照らされて細く伸びた影に背を向けて振り返れば、俺様の予想どおりのウザい隣人の姿。
「…ねえ、ポーキー?僕の話、聞いてる?」
ああ!うるさいッ!大体、話が聞こえないのなら振り返るわけがないだろうが。
だから、バカは嫌いなんだ。
そんな思いを込めてわざと大きく舌打ちしてやったけれど、そんな俺様の崇高でセンチメンタルな気持ちが、この馬鹿にきちんと伝わったかどうかは分からない。
ただ、分かることは、今、目の前にいるこの馬鹿がやけに嬉しそうに笑っているという事だった。
「…そうだ!ポーキーの家もクリスマスパーティーをするんでしょ?
僕ね、クリスマスすごく楽しみなんだ!
だからね、クリスマスのためにトレーシーやママと一緒にツリーの飾り付けをしたんだよ。」
ああ、あの安っぽい飾りのツリー?
どこからか拾ってきた松ぼっくりやらどんぐりやら自分達で焼いたクッキーやらを飾り付けただけの、あの、安っぽいツリー?
可哀想なお前に教えてやるよ。
俺様の部屋にはダディがデパートで買ってきた一番でっかくて立派なツリーが飾ってあるんだよ。
電球がビッカビカついて、金ぴかのツリーがな!
―…だけど、ダディもマミィも飾り付けを手伝ってはくれなかった…―
「それとね、明日はご馳走なんだ!
ママが今年は頑張ってチキンを焼くんだって!お腹にお米とハーブを詰めて作るってはりきってたし、丸太型のケーキも作るって!
…でも、僕としてはいつもよりちょっと大きめのオムライスを作ってくれた方がいいんだけどなー…」
はっ?チキン?そんな貧乏臭い食べ物、この偉大なるポーキー・ミンチ様が口にするわけないだろう?
いい事教えてやるよ。
俺様の家はな、毎日食べてるんだよ。
…チキン?
そんなわけないだろう?ビーフだよ、ビ・ー・フ!
おまけにただのビーフじゃない。白い筋のたくさん入った、舌の上に乗せたら溶けるんじゃないかってくらい高級なやつをな。
―…でも、ダディもマミィも一緒に食べてくれない。
だって、ダディとマミィはいっつも夜は二人でお外に遊びに行くから…―
「ところでさ、ポーキーは何をサンタさんにお願いしたの?
僕ね、今年はグローブをお願いしたんだ!
サンタさんってすごいよね!僕が今使ってるこのバット、去年サンタさんがクリスマスにくれたんだよ!」
ああ。その、どこのメーカーが作ったかも分からないようなぼろっちいバット?
哀れで間抜けなお前に教えてやるよ。
俺様のバットは一流メーカーの一流職人が作った一流バットだ。
バットだけじゃない。このグローブもスパイクも…全部!全部だ!!
それに、サンタなんかいないんだよ。
お前のそのぼろっちいバットだって、お前の両親が働いて働いてようやく出た陳家な給料から買ったボロいバットだろうが。
―…でも、うちにはサンタが来てくれたことなんか一度もなかった…―
「…どうしたの?ポーキー?」
「…うるっせーなッ!いないんだよ!サンタなんて!
お前、本当にバッカじゃねーのッ!?」
いっつもそうだった。
今だってそうだ。
俺様は、最高にかっこよくて強い機械を操縦する正義のヒーローで…
お前は、あろう事か自分の体を捨てて、そんな雑巾みたいにボロっちい機械の体に入った哀れな三流の、カスみたいな悪役で。
俺様のほうが持っている。
俺様のほうがえらい。
俺様のほうが…俺のほうが!!
なのに…なのに…!!
一番可哀想な子はだあれ?
Fin