シルヴァラント編(TOS)
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「次の封印で待っている。再生の神子にして我が最愛の娘コレットよ」
「コレットに……羽根が……」
「うん。それにほら、しまえるんだよ~」
「すごーい!かっこいー!」
何が……
「あら?マナ、どうしたの?いつものあなたならロイド達と一緒にはしゃいでいるでしょうに」
「……バカみたい」
「……何が、だ?」
何が、神子よ。バッカみたい。
最愛の娘?なら、どうして“最も愛すべき娘”に父親が苦しみを与えるのだろうか?
試練?体のマナを無理矢理変化させてまでする試練なの?体や精神への負担は?それを分からずにやっているとも思えない。
……それにあいつ
「……目、笑ってなかったよね。あいつ」
《Tales of Mana》
「……これでようやく封印の解放に向かえるな」
「あー、もう!だから、ごめんって~~!!!……ってか、朝一に掛ける言葉が嫌味!?」
「……はあ、二人とも、もうお止めなさい」
今日は封印とやらの解放の日。朝に弱いか弱いマナちゃんはちょこっとばかり集合に遅れたために、暑苦しい天気の中、これまた暑苦しい格好のタイツ男のお小言をくらっております。
「大体、タイツはおっさん一歩手前だから早起き過ぎるだけなんじゃないの~?」
そう言ってジト目でタイツを見る。
「……お、おっさん……?」
「もう、マナ!本当のことが言われて一番傷つくんだよ?たとえ、クラトスさんが紫タイツで変態一歩手前の犯罪者予備軍だっていっても傷つくんだから!」
そんなあたしを頬っぺたを軽く膨らませながらコレットが怒った。あっれー……コレットちゃん。仕草は可愛いけど、あっれーー?ちらっと横を見ると、“ピシッ”という擬音が聞こえそうな勢いで固まっているタイツがいた。
「あの……えっと……ごめん。クラトス……あたしのせいで流れ弾食らう形になって」
あまりにも哀れに見えたもんだから、とりあえず謝っておく事にした。
余談だけど、あたしがタイツに謝っている間にロイドがリフィルから宿題という名目で厄介事(=モンスター記録係)の任命を受けていた。
ロイドはあたしを巻き込もうという算段だったようだけど、「あたしの文字、ロイドが訳してね」と言えば、がっくりと首を落として諦めたようだった。だって、あたしはこの世界の文字を知らないもんね~。
++++++++++++++++++++
「あぢ―……疲れた―……」
「ロイドはこれだから……ほら、やっぱりバテてる」
「う―……ここ数日、ずっと砂まみれ……ロイドの気持ちも分かるかな~……まあ、着いたみたいだけど」
「マナ分かってくれるのか!?って着いた……?」
ばてばてのロイドにジーニアスはため息混じりにそう答える。現在、あたし達はトリエットよりちょっと西。朽ち果てた遺跡のようなところに来ていた。リフィルの話だと、ここが第一の封印とか何とかってところで今日の目的地らしい。
「くう―ん……」
「ん?どったの?ノイシュ?」
遺跡に近づけば、急にノイシュの様子がおかしくなった。ノイシュを慰めるように、宥めるように一撫でする。……あたしの頭の上に乗っているラビはアホな顔をして爆睡してるから、こいつがノイシュに何かしたわけじゃないだろうし……
「気を付けろ!魔物だ!!」
そんな時だったタイツの叫び声がしたのは。その言葉を聞き、すぐさま戦闘態勢に入るロイド達。一方あたしはと言えば生あくびを噛み殺していた。
あたしは何をしてるかって?これくらいの敵、あたしが出るまでもないっしょ?……と、柱に寄り掛かって高みの見物なんぞをしている。まあ、いざとなったら助けに入るけど……ほら、終わった。
戦闘後にロイド達はタイツから新しい防御技を教えてもらっているみたいで……って、んあ!?
「あたしは!?何、のけ者?」
「お前には必要なかろう。……敵の攻撃を完璧に見切っているのは、お前だけだ。それにこれはマナを使う。お前のマナが我々と同質とは言えない以上教えても仕方ないだろう」
「……さいで」
うんと……これは誉めてくれてるのかな?しかし、タイツに誉められるとか……
「なんか、変な感じ」
「……」
無言かよ。何か反応ちょうだいよ。
「あら?ノイシュとラビは?」
リフィルが辺りを見回しながらみんなに尋ねる。たしかにさっきまでここにいたペット組の姿が見えない。
タイツが言うには、ノイシュは魔物に敏感なんだろうとのこと。つまり、ラビを乗っけたままとんずらしたわけ、か。
「まあ、後から戻ってくるっしょ?ラビもいるし。……ってか、それ以上にあれ、ほっといていいの?」
あたしはずいっと前方を指差した。あたしの指先にみんなの視線が集まって……そこにいたのは…
「素晴らしい!見ろ、この扉を!周りの岩とは明らかに性質が違う!くくく……ふははは!思ったとおりだ!これは古代の……」
どう見ても頭のネジをどこかに落としてきたようにしか見えないリフィルでした。
見事にキャラ崩壊をしているリフィルを見てポッカーーンと間抜けに口を開けているタイツとロイド。対照的にジーニアスはガクッとうなだれている。なかなかシュールな光景である。
「隠してたのに……」
ポツリと呟かれた悲痛なジーニアスの声は実の姉の高笑いのせいで完封なきまでに封じ込められるのでした。
「ツッコミ、がんば……」
あたしはおそらくこの中で一番の苦労人であろうジーニアスの肩をポンと叩いた。ああ、この感じ……わかるぞ、少年。ボケが飽和するともう手に負えないんだ。……どこぞの腹黒女神を思い出したあたしは同情をするしかないのでした。
「ん?このくぼみは?信託の石板と書いてあるな。コレット!これに手を当てろ!それで扉が開くはずだ!」
石板を見付け、ひとしきり頬摺りした後、リフィルは鼻息も荒くこんなことを言いだした。どうやら、この石板には神子を識別するための仕掛けが施してあって、神子が手をかざすとそれに反応するらしい。結果は、リフィルが言った通り。コレットが手をかざすと鈍い音と砂埃を舞上げながら石戸が動きだして、地下へと続く道がぽっかりと口を開けた。
「あつ―――――い!!意味わからないし!」
「マナ―……騒がないでよ―……余計に暑く感じるじゃん……」
「しゃーないじゃん……ジーニアス!だって暑いんだから!あーーー!!茹るーーーー!!」
遺跡の中はまさに灼熱地獄。外のジリジリと肌を焼く太陽も嫌だけど、地下のマグマの影響からか引っきりなしに熱い蒸気が吹っかけてくるここはまるでサウナ。
「うー……お風呂に入りたいとは言ってたけど、蒸し風呂はごめんだよー……でも、どうしてこんなにクソ暑いわけ?」
あたしは手でパタパタ扇ぎながら隣を歩くリフィルに尋ねてみた。
「ここは、イフリートの業火で滅んだ街なのよ。その影響ね」
「イフリートぉ?」
「あら?マナの世界にはいないのかしら?火を司る精霊よ」
「ああ、サラマンダーみたいなやつね」
あたしは、ファ・ディール(元いた世界ね)の火の精霊サラマンダーを思い出した。世界が変わればそこに住む精霊も違ってくるらしい。
ちなみに、この遺跡は松明に火を灯すと道が変わる作りなんだけど、テキトーに火を点けても先に進めるのだから盗賊に優しい仕様だよね。まあ、魔物もウジャウジャしてるけど。
「ここも魔科学で作られているな、素晴らしい!」
そんなこんなであたし達はこの遺跡の最深部のような部屋にたどり着いた。相変わらず頭のリミットが大破しているリフィルは、タイツをはねのけ部屋の壁に頬摺りをしている。
「…あぁ、この感触…素晴らしい」とか言いながらすりすりしている様子は何というか……ホラーである。うん、ほっとこう。
「うわっ!?何!?」
ジーニアスが驚いたように声を上げながらあたりを見回した。遺跡の床全体が震え出す!震えているだけじゃない、部屋のなか一面を熱い蒸気が満たしていった。
「見て!何かくるよ!」
あたしはコレットを背中に庇い、槍を構えた。もしかして試練?ってやつですか?
「あー!もう!暑いんだってば!」
揺れと蒸気の正体は、火をまとった犬っぽい魔物だった。そして、あたし達はそいつらと戦闘の真っ只中だったりする。敵の数は三匹。でっかいワンコと小さいのが二匹。あたし・ジーニアス・ロイドででっかいのを担当してるんだけど……
「こう暑いと、やる気なくなるよねー」
「何、バカなこと言ってんだよ!ッハ!瞬神剣!…くそっ!弾かれた!?」
ロイドが双剣で突きを繰り出す。がっ、ワンコの方もこちらの動きを読んでいるらしく、防御であっさりと弾いているようだ。あーっ……そんなに力入れたら、読まれちゃうってのに。
「はいはい。じゃあ、ロイド?あたし、いい考えがあるんだけど、乗らない?」
バックステップでワンコのブレス攻撃を避けつつ、あたしはロイドにウインクをした。
「考え!?」
攻撃の手は休めずに、でもしっかりとロイドは返事をした。
「そっ。ねー!ジーニアス!ジーニアスって氷の魔法使えたよねー?」
あたしは、後衛であるジーニアスに聞こえるように大声を上げた。
「魔法?何それ!?……氷の魔”術”だったら一つだけ使えるよ」
しめた!!あたしはニヤリと口角を上げる。この勝負もらった!古今東西火のモンスターの魔物の弱点は水か氷かと決まっているのだ。……異世界でそれが通じるかどうかはまだ未知数だけど。
「んじゃ、それ一発よろしく!大丈夫、守るから!」
「うん!」
そう言うとジーニアスは術の準備に入ったようだ。
「いい?ロイド?あたしがまずワンコに攻撃するから、ロイドは追撃すること!わかった?」
「なあ、ついげきってー……」
「あたしに続けて攻撃するってこと!」
そう言うと、あたしはワンコに向かって一直線にダッシュをする。敵に向かって槍を横に凪ぎ払う。もちろん急所を狙ってないからたいしたダメージを与えていないけど……あたしはクスリと笑いながら、直ぐ様、横にステップした。あたしの影にいるのは……
「でりゃあああ!!散沙雨!!」
そう、ロイド。はじめっからあたしの攻撃でダメージを当てる気なんてないわけ。あたしの攻撃の対処でいっぱいいっぱいはワンコはロイドの攻撃に対応しきれていない。ロイドの双剣から突き出される突きに相手がよろめいた!
「今だよ!ジーニアス!」
「アイシクル!!」
あたしの声とほぼ同時に、ジーニアスが氷の魔法を放つ。地面から突き出す氷の刄が防御がおざなりになっているワンコの体を容赦なく突き刺していった。鈍い音を立てながら、魔物は床にひれ伏す。……たぶん、もう動くことはないと思う。あたしは魔物に近付いて、見開いたままになっている魔物の目を静かに閉じた。
「マナ、ロイド、ジーニアス!!だいじょぶ!?」
「びくとりー!」
そう言って駆け寄ってきたコレットにVサインを出す。どうやらあちらも終わったようだ。
―……まあ、正直なところ、あの程度の魔物ならあたし一人でも楽勝なんだけど……でも、ロイドやジーニアスにも強くなってほしいんだよね。
そう、これがあたしの本音。そうじゃないと、きっと先に進むにつれて旅が辛くなるだろうから。今のうちから少しずつ鍛錬をして力を付けていった方が絶対にいい。
―……再生の神子よ。祭壇に祈りを捧げよ!……―
不意に部屋全体に居丈高な男の声が響いた。それを聞いたコレットは前に進み出て、祈りを捧げる。
「大地を守り育む女神マーテルよ。御身の力をここに」
「女神マーテル?……釘バットの?」
某腹黒女神の笑顔を思い出し、軽く引きつった笑顔になる。名前同じなのかよ。あの人と。
「……何の話だ?」
「こっちの話。ってか、クラトス。あの、どう見ても中年男のくせに羽根とかいうタイツと負けず劣らず痛いオプション付けて、こっちを虫けらみたいに見下してるあれ。誰?」
そう言って、あたしは祭壇を指差す。そこにはコレットの祈りに応じて現われた、これまた痛い奴がいた。
「ちょっと、マナ!?」
ジーニアスが真っ青な顔で口をパクパクさせながらこっちを見る。……金魚?
「……お前は?……まあ、いい。封印を守護するものは倒れ第一の封印は解かれた。程なくイフリートも目覚めよう。クルシスの名のもと、そなたに天使の力を授けよう」
痛い中年男はあたしを少しだけ見たが、すぐにコレットの方を向き直り、大げさな身振りをしながら高らかにこう言った。すると、天上の方からすーっと光が降りてきて……コレットの体を包み込んで……光が消えるとそこには、鮮やかなピンクの羽をゆっくりとはばたかせる……コレットの姿があった。
「天使への変化には苦しみが伴う。しかし、それも一夜のこと。耐えるのだ。次の封印はここより遥か東、海を隔てた先にある。かの地で祈りを捧げよ。次の封印で待っている。再生の神子にして最愛の娘コレットよ」
こう言うと、中年男……レミエル(って言うらしい)はあたし達の前から消えてしまった。
「コレットに……羽根が……」ロイドが呟くと
「うん。それにほら!しまえるんだよー」と、コレットが笑い
「すごーい!かっこいー」ジーニアスがはしゃぐ
でも、あたしはレミエルの言葉が気に入らなかった。
「あら?マナ、どうしたの?いつものあなたならロイド達と一緒にはしゃいでいるでしょうに」
リフィルが首をかしげてあたしの方を見る。
「……、バカみたい」
「……何がだ?」
クラトスもあたしの方に目線を向ける。
「……目、笑ってなかったね。あいつ」
ああ……わかった。あたし、あいつが嫌いなんだ。
「まあ、ここでの用も済んだのだから……まずは、外に出ましょう」
「……そだね」
こうしてあたし達は祭壇を後にした。ただ、あたしは……何だかわからないけれど胸に引っ掛かるような……不安な気持ちでいっぱいだった。