シルヴァラント編(TOS)
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「……」
「どうしたんだ?急に立ち止まったりして?」
「……ううん、ロイド、何でもないよ。少し目に砂が入っただけ。じゃあ、ちゃっちゃと帰ろうか!」
どうしてこんな気持ちになるんだろう。
どうしてあなたの声が聞こえるんだろう。
あたしが“アーティファクト使い”だから?
あたしが“マナの英雄”だから?
それとも……
あたしがこの世界にとって“異質”だから?
《Tales of Mana》
「……変なところだねー、ここって」
「うん。僕も……見たことがないものばかりだ……」
ロイドが捕まったと聞いたあたし達は、砂漠にはおおよそ似付かわしくない外見の、これまた妙な建物の中を歩いています。……うん。戦うとか走るとかじゃなくて“歩いてる”ってのがポイント。何故なら
「ふはははっ!何だ、この機械は!!そこのお前!これはどうやって使うのだ!?」
「えへへっーロイドの居場所を教えてくれないと……ふふふっ……どうなっちゃうんだろうね~……」
「ひぃいいいッ…!?な、何なんだあんたらっ!!」
そう。コレットとリフィルの二人が、非常に禍々しいオーラを出しているので敵さんが怯えて逃げてしまうのだ。
「……ちょっと同情するかも」
「……僕も」
「……」
チャクラムをグルグル回して出会う敵出会う敵を脅しまくるコレットと、何かのスイッチが入りリミッターがぶっ壊れたリフィル。そして、極めつけは歩く紫タイツ男だ。そりゃあ、逃げたくもなるよ。あたしなら逃げるもん。しかも、全力で。明らかに不審者集団だ。
「しっかし、ロイドどこ行っちゃったんだろう?牢屋にもいなかったし、入り口からここまで会わなかったし……」
「ロイドのことだから、脱走したのはいいけど、入り口と間違って敵のど真ん中に突っ込んでいったんじゃない?」
あたしは軽い冗談を言うように、ヘラヘラと笑いながらジーニアスの疑問に答えた。こんな時こそ笑いは大切だと思うんだ。たとえ敵さんに変質者集団と思われていても。いや、思われているからこそ現実逃避的な意味で笑いは大切だ。
「……こうしちゃいられない!急ごう!マナ!!」
ちょっと待て。何、今の“はっ!?”みたいな顔は!!まさか、まさか……本当にやりかねないのか…ロイドって…
ちなみに、途中にある仕掛けというか、スイッチみたいなものはコレットとリフィルが片っ端からぶっ壊しています。
「ねえ、タイツ」
「……なんだ」
あたしはタイツに今思っている疑問をぶつけることにした。ってか、今さり気なく“タイツ”認めたよね?
「正直、コレットに護衛っていらなくない?リフィルさえいればよくない?」
「……」
タイツが前方を見る。もちろんどこぞの破壊神二人組のおかげで、ひっきりなしに悲鳴が聞こえるわ、プスプスとあちこちで黒い煙が立ち上っているわで……
「阿鼻叫喚?」
「……そうだな」
珍しく気が合うあたしとタイツ。まあ、この地獄絵図を見たら誰でもそう思うだろうけど。
しっかし、広いな~……ここ。あたしは改めて建物の中を見回した。広いだけじゃない。あたしは、この世界に来てから日が浅いけど、こんな幾何学的な建物なんて見なかったし、こんな機械(リフィルがぶっ壊したけど)元の世界でも見たことがなかった。
―…マナ…―
「ヒィイイイッ!!」
「!?ど…どうしたの!?マナ!?」
不意にあたしの頭の中に鈴の音が転がるような綺麗な女性の声が響いた。思い当たる節がありまくるその声に反射的に顔が引きつる。こ……この声……この声って……
―……マナ私の声が聞こえていますね……―
うっわ……やっぱりこの声、自称女神のマーテルさんじゃん……この定期通信なんなの……じゃなくて!!
「いやぁああああああ!!」
「おい!!!」
あたしは、恐怖のあまり近くにいたタイツに抱きついた。びっくりされようがタイツだろうがこの際、なんでもいい!!普通に考えて怖いでしょ。頭の中で自分だけにしか聞こえない声が聞こえてくるの!
―……マナ……お願いがあります。どうしても会いたい人がいるのです。でも、あの人は紫タ……ではなく、クラトスがいる状況では会えないでしょう。だから、お願いします。あなた一人であの人を探していただけないでしょうか?……断ったら……わかっていますね……―
「拒否権ないのかい!!」
あたしは天上に向かって叫んだ。あたしの声が虚しく辺りにこだまする。
「ちょ…!?マナ!?しっかりしてよ!ただでさえ、今、まともな人が少ないのに!」
ジーニアスが悲鳴に似た声を上げ、あたしの方を見た。……ああ、お願い。そんな目で見ないで。
ちなみに、あたしに抱きつかれているタイツも世にも奇妙なものを見る目であたしを見下ろしている。いつものあたしなら「世にも奇妙なのはお前の格好だよ」と言ってるだろうが、生憎今のあたしにはそんなゆとりなどない。
怖い。でも、逆らったらもっと怖い。あの人のことだ、逆らった日には釘付きバットでこっちの尻を殴打するぐらいやりかねない。ううん。きっとやる。
仕方ない。やるしかあたしに選択肢はない。でもここで一つ問題がある。この状態からどうやって単独行動に移ろう?
マーテルさんの事がみんなにバレたらそれもそれで怖いことになりかねないし……ここで手段として三つパッと思いつく。一つ目は正直に話す。二つ目は何も言わないでとっととみんなから離れる。三つめは現実から逃げる、だ。あたしの考えを言わせてもらえば、三番が妥当ではないかと……
「ふにゃああああ!!嘘です!冗談です!っうか、あったま痛ァアアアア!!だから、なんか変な電波飛ばしてこないでェエエエエ!!」
「!?ま、待て……マナ!単独行動は……!!」
「いやぁああああああ!!」
あたしは、タイツを突き飛ばして思いっきり走りだした。なんって……なん冗談が通じない人なんだ、マーテルさん!!……冗談じゃないけど。本気で現実逃避して無視しようかと思ってたけど!
++++++++++++++++++++
「でっ?……あの人って誰なの?」
強引に単独行動に移ったあたしはマーテルさんが言う“あの人”の特徴を知るべく、さっきからマーテルさんにコンタクト取ろうと話しかけているんだけど、……反応なしですか……。
そういえば、あたし、なんでマーテルさんの声が聞こえたのだろうか?そして今も聞こえるのだろうか?他の人には彼女の声は聞こえてなかったみたいだし……
「……もしかしてマーテルさんっておばけ?」
突如、感じた悪寒に腕を擦りながらあたしは乾いた笑みを浮かべた。……触らぬ女神に祟りなし。ここ数日で骨身に染みて理解した気がする。
「でもこんなに広いと……どこをどうしろと」
とりあえず、適当に施設の中をウロウロしているけど、こうも同じような風景が続くと……
「困った……」
「……俺もあいにく、自分がいやらしいって事を知らない能無しに名乗る名前はないぜ!」
「……貴様ッ!……!そのエクスフィア!まさか、貴様がロイドか!?」
この声!?ロイド!?……でももう一人違う声がする……?
慌てて声がする方向の扉を開けようとしたけれど、押しても引いても開きそうもない。こんにゃろー……そう来るならこっちだって強硬手段取るからな!
「ふう……」
あたしは自分の槍をかまえ、深呼吸をした。扉が開かない?だったら―……
「強行突破ッ!!……でりゃあああ!!」
「何事だ!……お前は……!?」
「マナ!?」
「やっほーロイド、助けにきたよ~」
扉を無理矢理ぶち破って部屋に入ると、そこにはロイドと青色長髪のすかした感じの見知らぬ男がいた。
……ん?なに、コイツ?なんだかすんげー見られてない?あたし?
「……マー……テル……?」
「はぁ?頭だいじょうぶ?」
初対面でいきなり言うことじゃないけど、この人頭大丈夫か?そもそも、あたしはあんなに黒くない。
「……違う。マーテルのマナではない。しかし、このマナは……お前は一体……」
「リーダー!神子達が侵入して来ました!!」
「お前は……イセリアを襲ったディザイアン!」
「!?お前がロイドだったのか!これは傑作だ!」
あのー……あたしってば、置いてきぼり?しかも、なんか一人増えてるし。
「おーい、ロイド~。とっとと逃げるよ。そのうちコレット達も来るしさ」
「コレット達も来てくれているのか?」
あたしはロイドの肩を軽く叩いて逃げるように促した。あたしの話を聞くや否や、途端にきらきらと輝くような顔を向けるロイドくん。……破壊神化してましたけどね、コレットちゃん。あたしはあの惨劇を思い出し心の中で合掌をした。
「くっ……!私はいったん退く。奴に私のことが知られたら計画は水の泡だ」
「神子の処理はいかがなさいましょう。」
「まかせる」
「処理ねえ……無理だと思うけど」
見知らぬ男たちの会話を聞き、あたしは腰に手を当てて、ゆるゆると首を横に振った。なんたって今のコレットとリフィルは破壊神状態だ。あれを止めるまして処理をするなんて……命知らずとしか思えない。
まあ……本気でそんなことをする気ならあたしも黙っちゃいないけど、ね。
「ロイド!次こそは必ず貴様を我がものとする!そこの小娘!お前もだ!!覚悟をしておくのだな!」
……あっれー、ちょっと待って~~~???あの人、今さりげなくとんでもない発言しなかった?あたしは、女の子だけど……ロイドくんは“男”だぞ。
慌ててロイドを見ると、青髪ロン毛と入れ違いに入ってきた妙にガタイがいいお兄さんと睨み合ってるし……
「……いいのか……ロイド?貞操の危機かもしれないのに」
あたしは、君が心配だよ。
「ロイド!?生きてる!?あれ、マナ!?」
「だいじょぶ?怪我はない?」
「二人とも無事のようだな」
あたしが心の底から心配をしていると、他のみんなも追い付いたようで、次々とこの部屋の中に入ってくる。
しっかし、コレットってばすごい。何がすごいかって、さっきまでの黒さをロイドの前では微塵も感じさせないところだ。神子ではなく役者が天職なのかもしれない。
「ちょうどよい。ここで神子共々、始末してくれようぞ!!」
「……来るぞ!」
クラトスの鋭い声が短く、部屋を走った。その声を合図に皆一斉に散っていく。あたしはというと……一呼吸おいて槍を下段に構えた。まずは、戦況を見なきゃ。
しっかし、しょせん1対5。戦いの序盤から手数でこちらが相手を圧倒的に上回っている。相手も自分の身の丈近い剣を使い防いではいるが、ジーニアスが放つ火球で体勢が崩れかけている。そこに前線のロイドが双剣で突きをくり出し、それに合わせてクラトスが剣から衝撃波を放った。
相手は技を捌ききれず、もろにダメージを食らっているのは目に見えて明らか。
「へぇ……ロイドとタイツ、けっこう息ぴったりじゃん」
……と、あたしは秘かに感心なんぞをしてみたりする。そして、我らがコレット様がにっこにこしながらチャクラムぶん投げてとどめを刺されていて
「……あたしの出る幕はない、かな?」
戦いの勝敗はすでに決していた。
「くっ……力量を計りそこねたか……。やはり、貴様に対して私一人では荷が勝ちすぎていたか……」
ガタイのいいお兄さんはこう捨て台詞をはくと、自分の使っていた大剣を投げ捨て逃げていった。……気のせいかな?貴様と言った時にタイツのこと見ていたような?でも、何で?この中で一番、タイツが剣の腕が立つからだろうか?
「これは……確か……」
「先生!?」
ガタイのいいお兄さんが出ていった方とは逆の扉が開き、その先にはさっきよりは少しは落ち着いた様子のリフィルの姿を見せる。…そういや、リフィルどこ行ってたの?
「ロイド。ジーニアスから色々聞いているわ。この子が迷惑かけたみたいで……ごめんなさいね」
リフィルはこう言うとジーニアスを見た。ジーニアスはと言えば俯き悔しそうに唇を噛む。……辛いよね、きっと。”死”は故人が近ければ近いほど、遺された人の心を蝕む。
「つもる話は後だ。ここにいつまでもとどまるのはよくない」
「その通りだわ。今、脱出口を開いてきたの。行きましょう」
あー……だからいなかったんだ。納得。
そして、あたしたちは足早にこの基地の出口に向かって走りだした。
++++++++++++++++++++
「ノイシュ!お前も来てくれてたのか!」
「くーん……」
建物から外に出ると、大きな白い犬の姿があった。ここでノイシュは私達のことを待っていてくれたようだ。
「へーっ……ノイシュって賢いんだねー」
あたしはノイシュの喉下を軽く撫でた。うっわ~~、ふわふわだ!!
撫でられるとくすぐったいのかノイシュが軽く身じろぎをする。でも、目を細めているのを見るかぎり嫌がってはいないみたい。
「ちょっとよくって?この武器についている結晶のようなもの。これが、ジーニアスが言っていたエクスフィアというものかしら?」
「そのようだな。」
リフィルの問いに答えたのはタイツだった。ってか、それ、あのガタイがいいお兄ちゃんが置いてった武器だよね?……リフィル……わざわざ持ってきたのかい……
「そういえば、あんたもエクスフィアを使っていたな」
「さすがに気付いていたか」
「はいはい!質問!”エクスフィア”って何?その宝石みたいなやつ?」
あたしはここぞとばかりに前々から思っていた素朴な疑問を投げ掛けた。この世界の事を何も知らないままではこれから先、旅を続けるにはあんまりにも都合がよろしくないしね。
「……話が長くなりそうだ。トリエットで話をすることにしよう」
「……あー、そういえば、ここって敵さんの玄関口だしね。さんせーい」
「クラトスとマナの言う通りだな。……よし、ノイシュ、帰るぞ!」
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「……」
「どうしたんだ?急に立ち止まったりして?」
風が砂を飛ばす。熱気がこもった風は、髪をバタバタとうるさくはためかせ通り過ぎていった。
「……ううん。何でもないよ。少し目に砂が入っただけ。じゃあ、ちゃっちゃと帰ろうか!」