シルヴァラント編(TOS)
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「……というのが、大まかな説明かしら。」
「ふーん…でもさ、それって……」
「……どうした?」
「……この世界ってさ、なんか少し……おかしくないかな」
こう思うのは、あたしがこの世界の外側から来たものだからだろうか。
《Tales of Mana》
「マナー!!朝だよー!!起きて!!」
「んあ……?朝ぁ?」
おはようございます。マナです。うーんと……たしか昨日は……。寝起きでよく回らない頭が徐々に動き出した。
ロイドとダイクさんと別れて、リフィルとジーニアスを送って、タイツに生暖かな視線を送って……
「もう!!今日は朝早いって昨日言ったのにーー!!」
そう言うと、コレットがあたしが使っていた枕のすぐ横を叩いた。あっれぇー?なんで、柔らかい素材のはずなのにこんなに鈍い音がするのかなぁー?ちなみに、枕だか掛け布団かは知らないが…叩かれた衝撃で白い羽根がふわふわと舞って、とっても幻想的な光景があたしの目の前に広がっている。現在進行形で。
「うふふふ……マナ~ちゃっちゃと準備をしてねー」
「は……はい」
うん。今、確信した。コレット“も”黒属性だ。どこぞの誰ー……
「……マナ?どーしたの?」
「ううん!!なんでもない!!なんでもないから!」
そう言ってあたしは自分の首をありえない早さで横に振った。一瞬感じた寒気は気のせいだ。気のせいでしかないんだ!!……そう自己暗示をすることにしました。
「あら?マナ。ようやく起きて?」
「おはようリフィルー」
コレットと一緒に外に出ると、リフィルと紫タイツが準備万全な様子で待機をしていた。後ろにいるジーニアスは見送りかな?ちなみにご飯はしっかりいただきました!ただ飯食わねば女が廃る!ってか、紫タイツは今日もタイツ着てんのかよ。一張羅なのソレ?なんか、眉間が痛くなる。
「……何か言いたそうだな」
タイツがこっちを睨み付ける。
「自分の胸に手を当てて、何か感じることない?」
「あいにく、そのようなものはない」
手遅れだ。こいつ。
「きっと、頭のなかにプリンが詰まってるんだよ~マナ~」
……コレットちゃん?あのね……すんげーいい笑顔だけど黒さ隠くしきれてないよ?
「……コレット……いや、“神子様”。そろそろ時間が……」
「……はい」
コレットのお父さん、フランクさんの言葉が妙に他人行儀なものに変わったことに気が付き、はて?とあたしは一人首を傾げた。……なんで、娘の名前をわざわざ言い直したのだろう?それに昨日の二人はごく普通に話していたはずだ。こんな他人行儀なものではなく。
「……どうしたの?マナ?」
「ん、ジーニアス?うーん、ちょっと考え事。あっ、ロイドは?今日は一緒じゃないの?」
そういえばこの場所にロイドがいない。ロイドなら真っ先にぶっ飛んでくるだろうに……どうしたんだろ?コレットに聞こうにも、コレットの周りは旅の見送りの人で黒山の人だかりができていて近付けそうにないし……
「おっかしいなー……ロイド、どうしたんだろ?」
ジーニアスもおかしいって感じるってことはやっぱりおかしいんだ。とは言え、あたしに何かができるわけもなく―……
「マナ!みんな、ごめんねー。じゃあ、出発しよー!」
黒山の人だかりを縫うように進んできたコレットは、あたしたちの前までくると笑顔であたしの名を呼んだ。なんだろ……コレットこの笑顔って無理してる人がよくする笑顔に見える。
「あのさ、コレット。ロイー……」
「……行きましょうか。ジーニアス、私がいないからって羽目を外さないでちょうだいね」
「うん。姉さん」
あたしの言葉は、リフィルに遮られる。なんというタイミング……でも、なんで二人とも一瞬だけ暗い顔をしたのだろうか?
「さあ、マナ!いこう!」
「うわぁ!?」
コレットがあたしの手を引っ張り、歩きだす。何かが突っ掛かる気がするけど、きっと考えたって仕方がない。……というより考える為の材料がなさすぎるのだ。おいおい考えていくとして今は彼女達について行くのが最善だろう。
++++++++++++++++++++
「あのさ、……みんな……ハグッ…モグ」
村を出発してから数時間。あたし達は救いの小屋とかいう場所で休憩をとっていた。時刻も時刻だしここで昼食をとることになった、というわけである。みんなの話だと魔物(モンスターのことかな)が出るらしいのだけれど、幸運なことに出発してから今まで魔物らしい魔物には出会っていない。
「何かしら……マナ?」
「うーんと……パク……あたしってさ……モグッ……違う……ハグッ……」
「……食べるかしゃべるか、どちらかにしたらどうだ?」
紫タイツが呆れた目でこっちを見る。 うるさいぞ、タイツ。乙女の至福の時を邪魔すんな。……とも思ったけど、言わないでおくことに決めた。今はこいつと会話するよりサンドイッチと対話をしたい。あたしってば、やっさしい~~~!!ものを食べてる時は喋るな、って、相手の言ってることが正論だったからっていうわけじゃないからね。
「ふー……ごちそーさま!うーんとさ……あたしってこの世界のこと何も知らないでしょ?ディザイアン?とかエクスフィア?とか……この世界じゃ常識の範疇らしい知らないの、これから先まずいかな~、って思って。それに―……」
でも、そんなことよりも一番不思議なことは
「そもそも、どうしてコレットが旅しなきゃいけないの?普通の女の子じゃない」
そう。それが一番疑問で不思議だった。普通の女の子がどうしてモンスターが出るにもかかわらず旅をする必要があるのか、あたしには分からなかったのだ。コレットがあたしのようにモンスターを倒して素材を剥ぐことを生業にしているようには思えなかった。
「それはね、私が“マナの神子”だから」
「まなのみこ?」
何?それ?ってか、自分で言うのも何だけど、この世界に来てから「何、それ?」を言いすぎだと思う。
「そうね、あなたも旅をする以上、知らなくてはならないことね。いいわ、私が説明するわ」
……と言うやいなや、リフィルはあたしに丁寧な説明をはじめた。彼女の説明はとても分かりやすいものだった。彼女の話をまとめるとこうだ。
マナの神子は世界のあちこちにある封印ってやつを解いて、救いの塔と呼ばれる聖地を目指す。そして最後に神子は聖地で天使になって世界を再生する使命がある、と。で、その際に人間達を苦しめるディザイアンと魔物も封じられるとか……なんとか……
「……というのが、大まかな説明かしら」
「ふーん…でもさ、それって」
「……どうした?」
モヤモヤする。何が原因でこう思うのか、あたしにはわからない。けど、この世界って……
「…この世界ってさ、なんかこう、少しおかしくないかな」
これだけは、はっきりと感じたんだ。“おかしい”って。……こんな風に思うのは…あたしが第三者…部外者だからだろうか。この世界の外側から来たものだからこそ、一人に全てを押し付けるようなこの話をおかしく感じたのかもしれない。
その後、どことなーく気まずい雰囲気になっちゃって“しまった!”と思ったのはここだけの話。
沈黙を破ったのはリフィルだった。
「さて、そろそろ行きましょう。今日中にトリエットに向かわなくては」
「……そうだな。ずいぶん話し込んでしまった」
小屋の窓の外を一瞥するとリフィルとタイツが腰を上げた。
「トリエットぉ?」
「今日の目的地よ。今日はそこまで行くことになるわ。さあ、コレット」
「うん!マナ、行こう!」
++++++++++++++++++++
あーーーづーーーいーーー……はい。わたくし、マナ。ただ今絶賛バテ中です。トリエットって、砂漠かい!!さっきまであんなに森があったのに……嘘でしょー……
「……何をしている。置いていくぞ」
「うーーるーーーざーーいーー…」
あたしは、自分にできるかぎりのジト目でタイツを見た。ってか、なんでこいつ、こんなに暑い中タイツなんだ……んっ?
「ねえ?タイツ」
「だから、誰がタイツだ!」
あたしは意を決して言葉を紡ぐ。
「……むれない?それ」
「……」
シカトかよ。
と、思った時だった。近くの砂丘の影から黒い影が飛び出してきたのは。それは明らかに人の形をしていなかった。
「二人とも、漫才はそこまでにしてちょうだい。魔物よ」
「いや……リフィー……」
「誰が漫才だ!」
なぜお前がキレる、タイツよ。……疑問に思ったけど、暑いし何よりタイツに付き合うほど暇じゃないのよね。うん、暑いし。そう心の中で呟きあたしは槍を構えた。
「敵は三体ね。コレットは後ろに下がりなさい!マナはいけるわね?」
「はい!」
さて……どうしよう……三体はかったるいなー暑いし早くすませてしまいたい。
「……ねえ、クラトス?クラトスはあの一匹を相手にしてくれる?こっちはあと二体引き付けるから」
「……は?お前は何を……」
「じゃ、よろしくねー!」
あたしはそう言うや否や足元の砂を軽く蹴り駆け出した。
「もうちょっとこっちに近づいてくれると助かるな~~」
と魔物を挑発すれば、その言葉に反応したからか……はたまた隙があると判断したのかどうかは知らないけれど、魔物は一斉にあたしに飛び掛かってきた。あたしと魔物との距離が一気に縮まり、槍の射程に魔物が入る。
「マナ!?危ない!」
コレットの悲鳴によく似た声があたりにこだまする。……でも、あたしはこれを狙ってた!!
「遅いっ!!!!」
シュン!!と空を切り鉄の槍が一閃する。あたしは横払いで態勢を崩した二匹の魔物に対しそのま連続で突きを突き出した。槍を引き抜くと魔物の体液が一斉に吹き出して、乾いた砂に複雑な模様を描いていく。もっともこの暑さで血もすぐに蒸発して消えたけど。
「……すごい……」
槍に付いている飛沫を乱暴に払って向こう側を見ると、ちょうどあっちも片付いた様子だった。
「すごい!すごいよ!マナ!!」
コレットが目を輝かせながらあたしを見る。
「そ、そっかな~?」
あっれー……なんか、リフィルとタイツがポカーンとしてる気がする。
「おーい……」
とりあえず二人の目の前で手をパタパタと振ってみた。
「お前は」
「あ……あなたいったい何者なの?」
唖然とした表情でこちらを見る二人の様子にあたしも何と言ったらいいか言葉を考える。考えたところで正直に言う以外にないわけだけれども。
「ああ、あたし一時期、騎士のバイトしてましたから。その時、色々訓練したんだよ」
「「「バイトぉ!?」」」
おぉ、ナイスはーもにー!三人とも!
「そう、バイト。姫がさーもう可愛くてさー」
……言えるわけないじゃん。まさか、『女神の喧嘩買ってた』なんてさ。まあ、騎士の話も嘘じゃないけどね……あたしは、ダメな騎士だったけど。あの時のことを思い出して、あたしは思わず目を伏せた。
あーっ!ダメダメ!暗いのはあたしに似合わないっての!
「さあ、トリエットだっけ?に行くんでしょう?」
「ええ…そうだけど……」
「はいはいー!しゅっぱーつ!!」
服についた砂を軽く払って、あたしは歩き出す。目指すトリエットは、すぐそこー…
「ふーん…でもさ、それって……」
「……どうした?」
「……この世界ってさ、なんか少し……おかしくないかな」
こう思うのは、あたしがこの世界の外側から来たものだからだろうか。
《Tales of Mana》
「マナー!!朝だよー!!起きて!!」
「んあ……?朝ぁ?」
おはようございます。マナです。うーんと……たしか昨日は……。寝起きでよく回らない頭が徐々に動き出した。
ロイドとダイクさんと別れて、リフィルとジーニアスを送って、タイツに生暖かな視線を送って……
「もう!!今日は朝早いって昨日言ったのにーー!!」
そう言うと、コレットがあたしが使っていた枕のすぐ横を叩いた。あっれぇー?なんで、柔らかい素材のはずなのにこんなに鈍い音がするのかなぁー?ちなみに、枕だか掛け布団かは知らないが…叩かれた衝撃で白い羽根がふわふわと舞って、とっても幻想的な光景があたしの目の前に広がっている。現在進行形で。
「うふふふ……マナ~ちゃっちゃと準備をしてねー」
「は……はい」
うん。今、確信した。コレット“も”黒属性だ。どこぞの誰ー……
「……マナ?どーしたの?」
「ううん!!なんでもない!!なんでもないから!」
そう言ってあたしは自分の首をありえない早さで横に振った。一瞬感じた寒気は気のせいだ。気のせいでしかないんだ!!……そう自己暗示をすることにしました。
「あら?マナ。ようやく起きて?」
「おはようリフィルー」
コレットと一緒に外に出ると、リフィルと紫タイツが準備万全な様子で待機をしていた。後ろにいるジーニアスは見送りかな?ちなみにご飯はしっかりいただきました!ただ飯食わねば女が廃る!ってか、紫タイツは今日もタイツ着てんのかよ。一張羅なのソレ?なんか、眉間が痛くなる。
「……何か言いたそうだな」
タイツがこっちを睨み付ける。
「自分の胸に手を当てて、何か感じることない?」
「あいにく、そのようなものはない」
手遅れだ。こいつ。
「きっと、頭のなかにプリンが詰まってるんだよ~マナ~」
……コレットちゃん?あのね……すんげーいい笑顔だけど黒さ隠くしきれてないよ?
「……コレット……いや、“神子様”。そろそろ時間が……」
「……はい」
コレットのお父さん、フランクさんの言葉が妙に他人行儀なものに変わったことに気が付き、はて?とあたしは一人首を傾げた。……なんで、娘の名前をわざわざ言い直したのだろう?それに昨日の二人はごく普通に話していたはずだ。こんな他人行儀なものではなく。
「……どうしたの?マナ?」
「ん、ジーニアス?うーん、ちょっと考え事。あっ、ロイドは?今日は一緒じゃないの?」
そういえばこの場所にロイドがいない。ロイドなら真っ先にぶっ飛んでくるだろうに……どうしたんだろ?コレットに聞こうにも、コレットの周りは旅の見送りの人で黒山の人だかりができていて近付けそうにないし……
「おっかしいなー……ロイド、どうしたんだろ?」
ジーニアスもおかしいって感じるってことはやっぱりおかしいんだ。とは言え、あたしに何かができるわけもなく―……
「マナ!みんな、ごめんねー。じゃあ、出発しよー!」
黒山の人だかりを縫うように進んできたコレットは、あたしたちの前までくると笑顔であたしの名を呼んだ。なんだろ……コレットこの笑顔って無理してる人がよくする笑顔に見える。
「あのさ、コレット。ロイー……」
「……行きましょうか。ジーニアス、私がいないからって羽目を外さないでちょうだいね」
「うん。姉さん」
あたしの言葉は、リフィルに遮られる。なんというタイミング……でも、なんで二人とも一瞬だけ暗い顔をしたのだろうか?
「さあ、マナ!いこう!」
「うわぁ!?」
コレットがあたしの手を引っ張り、歩きだす。何かが突っ掛かる気がするけど、きっと考えたって仕方がない。……というより考える為の材料がなさすぎるのだ。おいおい考えていくとして今は彼女達について行くのが最善だろう。
++++++++++++++++++++
「あのさ、……みんな……ハグッ…モグ」
村を出発してから数時間。あたし達は救いの小屋とかいう場所で休憩をとっていた。時刻も時刻だしここで昼食をとることになった、というわけである。みんなの話だと魔物(モンスターのことかな)が出るらしいのだけれど、幸運なことに出発してから今まで魔物らしい魔物には出会っていない。
「何かしら……マナ?」
「うーんと……パク……あたしってさ……モグッ……違う……ハグッ……」
「……食べるかしゃべるか、どちらかにしたらどうだ?」
紫タイツが呆れた目でこっちを見る。 うるさいぞ、タイツ。乙女の至福の時を邪魔すんな。……とも思ったけど、言わないでおくことに決めた。今はこいつと会話するよりサンドイッチと対話をしたい。あたしってば、やっさしい~~~!!ものを食べてる時は喋るな、って、相手の言ってることが正論だったからっていうわけじゃないからね。
「ふー……ごちそーさま!うーんとさ……あたしってこの世界のこと何も知らないでしょ?ディザイアン?とかエクスフィア?とか……この世界じゃ常識の範疇らしい知らないの、これから先まずいかな~、って思って。それに―……」
でも、そんなことよりも一番不思議なことは
「そもそも、どうしてコレットが旅しなきゃいけないの?普通の女の子じゃない」
そう。それが一番疑問で不思議だった。普通の女の子がどうしてモンスターが出るにもかかわらず旅をする必要があるのか、あたしには分からなかったのだ。コレットがあたしのようにモンスターを倒して素材を剥ぐことを生業にしているようには思えなかった。
「それはね、私が“マナの神子”だから」
「まなのみこ?」
何?それ?ってか、自分で言うのも何だけど、この世界に来てから「何、それ?」を言いすぎだと思う。
「そうね、あなたも旅をする以上、知らなくてはならないことね。いいわ、私が説明するわ」
……と言うやいなや、リフィルはあたしに丁寧な説明をはじめた。彼女の説明はとても分かりやすいものだった。彼女の話をまとめるとこうだ。
マナの神子は世界のあちこちにある封印ってやつを解いて、救いの塔と呼ばれる聖地を目指す。そして最後に神子は聖地で天使になって世界を再生する使命がある、と。で、その際に人間達を苦しめるディザイアンと魔物も封じられるとか……なんとか……
「……というのが、大まかな説明かしら」
「ふーん…でもさ、それって」
「……どうした?」
モヤモヤする。何が原因でこう思うのか、あたしにはわからない。けど、この世界って……
「…この世界ってさ、なんかこう、少しおかしくないかな」
これだけは、はっきりと感じたんだ。“おかしい”って。……こんな風に思うのは…あたしが第三者…部外者だからだろうか。この世界の外側から来たものだからこそ、一人に全てを押し付けるようなこの話をおかしく感じたのかもしれない。
その後、どことなーく気まずい雰囲気になっちゃって“しまった!”と思ったのはここだけの話。
沈黙を破ったのはリフィルだった。
「さて、そろそろ行きましょう。今日中にトリエットに向かわなくては」
「……そうだな。ずいぶん話し込んでしまった」
小屋の窓の外を一瞥するとリフィルとタイツが腰を上げた。
「トリエットぉ?」
「今日の目的地よ。今日はそこまで行くことになるわ。さあ、コレット」
「うん!マナ、行こう!」
++++++++++++++++++++
あーーーづーーーいーーー……はい。わたくし、マナ。ただ今絶賛バテ中です。トリエットって、砂漠かい!!さっきまであんなに森があったのに……嘘でしょー……
「……何をしている。置いていくぞ」
「うーーるーーーざーーいーー…」
あたしは、自分にできるかぎりのジト目でタイツを見た。ってか、なんでこいつ、こんなに暑い中タイツなんだ……んっ?
「ねえ?タイツ」
「だから、誰がタイツだ!」
あたしは意を決して言葉を紡ぐ。
「……むれない?それ」
「……」
シカトかよ。
と、思った時だった。近くの砂丘の影から黒い影が飛び出してきたのは。それは明らかに人の形をしていなかった。
「二人とも、漫才はそこまでにしてちょうだい。魔物よ」
「いや……リフィー……」
「誰が漫才だ!」
なぜお前がキレる、タイツよ。……疑問に思ったけど、暑いし何よりタイツに付き合うほど暇じゃないのよね。うん、暑いし。そう心の中で呟きあたしは槍を構えた。
「敵は三体ね。コレットは後ろに下がりなさい!マナはいけるわね?」
「はい!」
さて……どうしよう……三体はかったるいなー暑いし早くすませてしまいたい。
「……ねえ、クラトス?クラトスはあの一匹を相手にしてくれる?こっちはあと二体引き付けるから」
「……は?お前は何を……」
「じゃ、よろしくねー!」
あたしはそう言うや否や足元の砂を軽く蹴り駆け出した。
「もうちょっとこっちに近づいてくれると助かるな~~」
と魔物を挑発すれば、その言葉に反応したからか……はたまた隙があると判断したのかどうかは知らないけれど、魔物は一斉にあたしに飛び掛かってきた。あたしと魔物との距離が一気に縮まり、槍の射程に魔物が入る。
「マナ!?危ない!」
コレットの悲鳴によく似た声があたりにこだまする。……でも、あたしはこれを狙ってた!!
「遅いっ!!!!」
シュン!!と空を切り鉄の槍が一閃する。あたしは横払いで態勢を崩した二匹の魔物に対しそのま連続で突きを突き出した。槍を引き抜くと魔物の体液が一斉に吹き出して、乾いた砂に複雑な模様を描いていく。もっともこの暑さで血もすぐに蒸発して消えたけど。
「……すごい……」
槍に付いている飛沫を乱暴に払って向こう側を見ると、ちょうどあっちも片付いた様子だった。
「すごい!すごいよ!マナ!!」
コレットが目を輝かせながらあたしを見る。
「そ、そっかな~?」
あっれー……なんか、リフィルとタイツがポカーンとしてる気がする。
「おーい……」
とりあえず二人の目の前で手をパタパタと振ってみた。
「お前は」
「あ……あなたいったい何者なの?」
唖然とした表情でこちらを見る二人の様子にあたしも何と言ったらいいか言葉を考える。考えたところで正直に言う以外にないわけだけれども。
「ああ、あたし一時期、騎士のバイトしてましたから。その時、色々訓練したんだよ」
「「「バイトぉ!?」」」
おぉ、ナイスはーもにー!三人とも!
「そう、バイト。姫がさーもう可愛くてさー」
……言えるわけないじゃん。まさか、『女神の喧嘩買ってた』なんてさ。まあ、騎士の話も嘘じゃないけどね……あたしは、ダメな騎士だったけど。あの時のことを思い出して、あたしは思わず目を伏せた。
あーっ!ダメダメ!暗いのはあたしに似合わないっての!
「さあ、トリエットだっけ?に行くんでしょう?」
「ええ…そうだけど……」
「はいはいー!しゅっぱーつ!!」
服についた砂を軽く払って、あたしは歩き出す。目指すトリエットは、すぐそこー…