シルヴァラント編(TOS)
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「待って!レミエル様!!レミエル様は本当に私のお父さー……」
「うにぁあァアアア!!!?」
「(ねえ…ロイド…何か声しない?なんだろう…)」
「(…ああ。何だ、この声?と言うより…上の方…さっきよりも光ってないか?)」
「…まずは、火の封印だ。よいな我が最愛の娘コレッ…ぐぶふぇ!!?」
いってえ!!!腰盛大に打った!!!誰よ!!ここに立ってたの!!
「「「…!?女の子!?」」」
あぁ……バド、コロナ……ししょーは知らない世界で頑張ってるよ……
【第2話】
「う……ん……」
「気が付いて?」
「う―ん―……おやすみ―……」
「起きなさい!!」
「うきゃぁ!?」
「やっと起きたのね」
見知らぬ天井が視界に映った。そしてそれを見計らうように見知らぬ綺麗な女性があたしに声を掛けた。えっと……?おはよう……?じゃなくて!!ここどこだ!!寝呆けて正常に働いていない頭をフル回転させ、辺りきょろきょろ見渡せばそこには……見たこともない家具。見たこともない調度品。そして、先ほども言った通り見たこともない人。どう見てもここは知らない場所です。本当にありがとうございました。あー…頭痛くなってきたよー……
「何をキョロキョロしているの?……まあ、そんなことを言うのも野暮かしら?」
女性がため息交じりにそう言葉を溢した時だった。けたたましい足音が聞こえてきたのは。何?この足音……?急に聞こえてきた物音に思考が止まりかける。でも、今は状況確認が先だ。ここで止まってはいけない。
「……あの、ここは?あなたは?」
バンッ!!!と大きな音を立てて木の扉が開いた。
「俺の家だぜ!!なあ、ジーニアス!!」
「ロイド、そんなこと言っても分かるわけないじゃん。ねえ、コレット?」
「ねえ、お名前は?お名前何て言うの?」
「あなた達!静かになさい!!」
扉から勢い良く飛び出てきた赤・青・白のにぎやか三人組にあたしは目を奪われ、パチリと目を瞬かせた。三人はそれぞれ十代中頃からはじめぐらいの年頃だろうか?……しっかし、無駄に会話のテンポがいい。ちなみにドアは赤色の男の子が勢いよく開けたせいで蝶番が取れかけたのかキィキイと悲鳴を上げている。どれだけ勢いがあるんだろう?……ってか、お姉様(一番最初に目に飛び込んできた美人)……あなたの声が一番大きいよ。
「あなたはね、天から落っこちてきたんだよーもう、びっくりしゃったー!」
「そうそう。いきなり眩しく光ったと思ったらドッカーーンってレミエルにぶつかっちゃってさ。ボクもびっくりしちゃったよ」
「なあ、空から降ってきたってことは、お前もクルシスの天使か!?」
「はあ?天使?んなわけないじゃん。ってか、そもそもクルシスなんて知らないし……ってか何それ?人の名前かなにか?』
謎の三人組はあまりに突拍子もないことを次々と活き活きと話し出す。突拍子がなさすぎて、応対に思わずいつもの口調が出ちゃったよ。しっかし、天使、天使ぃ?このあたしが?何だそりゃ。どういう流れでそうなるわけ?うっわー……何この寒気……あたしの経験が告げている。この流れ絶対厄介ごとに巻き込まれる、と。
「そのことで……あなたに聞きたいことがあるわ。ジーニアス、クラトスも呼んできて。あの人もあなた達と一緒に現場にいたのだから、私達と一緒に話を聞いたほうがいいわ」
「はい、姉さん」
ため息を再び一つ吐くと美人の女性は三人の中で一番小さな男の子に誰か呼んでくるように言った。髪色が同じだからもしかしてと思ったけど、女性と一番小さな男の子は姉弟のようだった。しかし、クラトス……?誰?それ……新生物?さっきのクルシスやレミエルってのすら分かってないのにまだ増えるわけ?
「クラトスさんはね、とーーーっても強くって、とーーーってもかっこいいんだよーー」
「……確かに腕はたつけどよ……」
ベッドに手をついて生き生きと語る白い法衣をきた女の子とは対照的に一番最初にこの部屋に飛び込んできた赤い服を着た男の子は言葉を濁す。どうした、どうしてそんなに不貞腐れてるの?さっきまでの勢いはどうした?でも…かっこいいかー……ちょっと楽しみ、かも?
「姉さん。連れてきたよ。」
「目が覚めたようだな。」
あたしがまだ見ぬかっこいいに思いを馳せていたその時だった。先ほど出て行った小さな男の子が帰って来たのは。そしてその子と共に入ってきた人はとってもかっこいい全身紫タイツだった。
……。……。………タイツ……?………目線を下にやったあたしがバカでした。
「きゃああああああああ!!!猥褻物陳列罪!!教育的指導!!!!」
「ぐうっ……!」
あたしは、手元にあった枕をおもいっきり振りかぶって投げた。そう、おもいっきり。枕は狙い通りに紫タイツの顔面にクリーンヒットし、ばふんと……音を立てて床に落ちていった。顔を狙っただけまだ温情である。下を狙わなかっただけ感謝してほしいくらいだ。ってか、タイツ……タイツ……紫タイツ……歩くタイツ……脳のキャパシティがオーバーするわ。
「何だ!?ど、どうしたんだ?」
「だいじょぶ、だいじょぶ。あんなの履いてる人が悪いんだよー。もう、ピーーッってかんじだねー」
ぇええ…白い服着た女の子?服は白なのに言動が黒い!!おまんじゅうなのこの子!?……ってか、最近どこかで似たようなの見た気が……こう、バット構えて活き活きしてた自称女神とよく似ているような……
「……こほん。ねえ、あなたさっき『クルシスなんて知らない』って言ってたわよね」
逸れに逸れまくった話を戻すお姉様。うん、そうですね。すっごく混沌としてるから無理矢理戻すでもしないと話が進まないよね。そう納得しながら頷いた。
「はあ……はい。確かに言いましたけど……」
「…おかしいわね。この世界にいる者なら、絶対知ってる単語よ。それを知らないなんて……」
「なあ、リフィル先生。クルシスって何だ?」
あたしは無言で赤い男の子を指差した。
「これは例外」
「さいで」
「本題に入るわ。……それにあなたのマナ…おかしいのよ。人間でもエルフでも……まして、ハーフエルフのものでもない。もっと純度が高いし、密度も高い……。単刀直入に聞きましょう。あなた……何者なの?」
エルフ?ハーフエルフ?何それ?バドやコロナ達のような種族や部族をそういうのだろうか?……すっごく嫌な予感に背中を汗が伝っていく。
「えっと……あの…。ドミナの街とか魔法都市ジオとかロアの街とかってここから近いですか?それとも帝都が近いとか……」
「何それ?そんな町、ボク聞いたことないよ。…!?って何で頭抱えて悶えてるの!?」
ぎゃぁああああ!!やっぱり、やっぱり違う世界だ!!嫌な予感ほど当たるのなんでなの!?ドミナなんて片田舎ならともかく、帝都を知らないなんてありえないし!!!世界都市だよ!?あそこ!?
「ちょ、ちょっと動揺しているだけだから気にしないで……」
「声…うわずってるぞ……大丈夫か?」
「……どこから来た。質問に答えろ」
ああ……赤い服の少年…声がうわずってるのは自分でも分かっているよ。そして心配してくれてありがとう。そして紫タイツ。お前はもっと言葉を選べ。しっかし……はぁ……正直に経緯を話したら痛い子決定だな……こりゃ……。でもどうにもこうにも仕方がないか……この雰囲気、言うしかなさそうだし……
「…信じる、信じないはそちらの勝手です。第一、あたし自身もよくわかってませんし……あたしがいた町はこの世界にない……と思います。あたしはがいた世界は、ファ・ディールっていいます。聞いたこと、ありませんよね?」
場の空気が一瞬にして水を打ったように静まった。それはそうである。自分で言っておいてあれだが突拍子がなさすぎる。嘘は一切吐いていないがあたしの話を信じるのは無理な話だろう。
「俺は信じるよ!!なあコレット!」
「はい!?」
「うん!ロイドの言う通りだよ~あなた嘘ついてよるうには見えないしね~ジーニアスもそう思うよね~?」
「二人とも簡単に信じすぎなような……姉さんはどう思うの?」
……はい?ニコニコしながらなんって言ったこの子達。
「そうね…そうじゃなきゃ、この子のマナについて説明できないし……
にわかに信じがたいことだけど……クラトス。あなたはどう思って?」
「私も同じ意見だ。傭兵業で各地を回ったがこのような服を着ている民族を少なくとも私は見たことがない」
……信じちゃってるよ。この人たち。いや……本当だけどさ……
「質問を変えましょう。あなたは、どうしてこの世界に来たのかしら?なぜ?どうやって?」
どうしてって……そりゃあ…なんか気付いたら不思議空間にいて?美人がバットを構えていて?確かあの人の名前は―……
「……えーっと……マーテ……!!?なんかきおった!!?」
痛い!!頭、頭いたッ!!なんだこれ!!名前言うなってか、あの黒マーテ……いだたたたたた!!嘘です!言いません!!言いませんから!!
「……姉さん。大丈夫この人?」
言わないでくれ……ジーニアスと呼ばれた少年。あたしだって悲しいんだ……
「……誰かは知りませんが……でも誰かに呼ばれたんです。でっ……気が付いたら(文字通り)飛ばされてて……」
飛ぶっていうか打たれたけどね!!
「……帰る方法は……わかるのかしら?」
「それは……わかりません」
そうだ……本当にあたしは知らないんだ。来ちゃったけど帰り方一切知らないんだ……知らない世界に独りぼっち、か……。今更ながらに現実を突き付けられて……あたしは無意識のうちに毛布の端をぎゅっと強く握っていた……
「ねえ……先生。この子、旅に連れていっちゃダメかな?」
「!コレット!?それは!?」
「だって、世界中回れば何か手がかりがあるかもしれないよ?ねえ、クラトスさん?」
「……足手まといになるようなら、ご遠慮願いたいがな」
「うっせーぞ。黙れタイツ」
怖ッ!?なんか聞いちゃいけない言葉を聞いた気がするような……笑顔で一瞬毒を吐く少女にひくり……と口の端が引き攣った。でも、旅…旅か……
「腕はそれなりにあると思います。だから、連れていってください!!」
胸に片手を強く当てながら乗り出すように身を出し言葉を紡いだ。ここでこうしてるより、ずっといいだろうし、何たってウジウジは性に合わない!それに自分から動かないときっとダメだと思うから。行動しないと見えるものも見えてこない。
「じゃあ、決定だねー。決めたったら決めたんだから!私達、明日から旅に出るんだー」
「……はっ?明日!?早ッ!?」
いや、早くない!?いくら何でも早くない!?善は急げとは言えども早すぎる。
「今から打ち合せをしなくちゃいけないから、出発時間が決まったら知らせに来るね!」
「……仕方ないわね。……では、私達はいったんイセリア村に帰りましょう。あなたはゆっくり休むこと、よろしい?」
「は……はあ……」
「待てよ!コレット!俺も送っていくよ!行くぞ、ジーニアス!!」
「うん!」
一気に静かになる部屋。そっか……みんな帰るのか……この世界に来たばかりだからだろうか。静かになることを少し寂しく感じる自分がいた。
「あっ、そうだ!あなたのお名前聞いてなかったよねー」
みんなの視線があたしに集まる。そういえば、ぐだぐだと後回しにしちゃってまだ言ってなかったっけ。
「……マナ……あたしはマナだよ」
そう私の名前は“マナ”。あたしは、笑いながら…そう答えた。
「うにぁあァアアア!!!?」
「(ねえ…ロイド…何か声しない?なんだろう…)」
「(…ああ。何だ、この声?と言うより…上の方…さっきよりも光ってないか?)」
「…まずは、火の封印だ。よいな我が最愛の娘コレッ…ぐぶふぇ!!?」
いってえ!!!腰盛大に打った!!!誰よ!!ここに立ってたの!!
「「「…!?女の子!?」」」
あぁ……バド、コロナ……ししょーは知らない世界で頑張ってるよ……
【第2話】
「う……ん……」
「気が付いて?」
「う―ん―……おやすみ―……」
「起きなさい!!」
「うきゃぁ!?」
「やっと起きたのね」
見知らぬ天井が視界に映った。そしてそれを見計らうように見知らぬ綺麗な女性があたしに声を掛けた。えっと……?おはよう……?じゃなくて!!ここどこだ!!寝呆けて正常に働いていない頭をフル回転させ、辺りきょろきょろ見渡せばそこには……見たこともない家具。見たこともない調度品。そして、先ほども言った通り見たこともない人。どう見てもここは知らない場所です。本当にありがとうございました。あー…頭痛くなってきたよー……
「何をキョロキョロしているの?……まあ、そんなことを言うのも野暮かしら?」
女性がため息交じりにそう言葉を溢した時だった。けたたましい足音が聞こえてきたのは。何?この足音……?急に聞こえてきた物音に思考が止まりかける。でも、今は状況確認が先だ。ここで止まってはいけない。
「……あの、ここは?あなたは?」
バンッ!!!と大きな音を立てて木の扉が開いた。
「俺の家だぜ!!なあ、ジーニアス!!」
「ロイド、そんなこと言っても分かるわけないじゃん。ねえ、コレット?」
「ねえ、お名前は?お名前何て言うの?」
「あなた達!静かになさい!!」
扉から勢い良く飛び出てきた赤・青・白のにぎやか三人組にあたしは目を奪われ、パチリと目を瞬かせた。三人はそれぞれ十代中頃からはじめぐらいの年頃だろうか?……しっかし、無駄に会話のテンポがいい。ちなみにドアは赤色の男の子が勢いよく開けたせいで蝶番が取れかけたのかキィキイと悲鳴を上げている。どれだけ勢いがあるんだろう?……ってか、お姉様(一番最初に目に飛び込んできた美人)……あなたの声が一番大きいよ。
「あなたはね、天から落っこちてきたんだよーもう、びっくりしゃったー!」
「そうそう。いきなり眩しく光ったと思ったらドッカーーンってレミエルにぶつかっちゃってさ。ボクもびっくりしちゃったよ」
「なあ、空から降ってきたってことは、お前もクルシスの天使か!?」
「はあ?天使?んなわけないじゃん。ってか、そもそもクルシスなんて知らないし……ってか何それ?人の名前かなにか?』
謎の三人組はあまりに突拍子もないことを次々と活き活きと話し出す。突拍子がなさすぎて、応対に思わずいつもの口調が出ちゃったよ。しっかし、天使、天使ぃ?このあたしが?何だそりゃ。どういう流れでそうなるわけ?うっわー……何この寒気……あたしの経験が告げている。この流れ絶対厄介ごとに巻き込まれる、と。
「そのことで……あなたに聞きたいことがあるわ。ジーニアス、クラトスも呼んできて。あの人もあなた達と一緒に現場にいたのだから、私達と一緒に話を聞いたほうがいいわ」
「はい、姉さん」
ため息を再び一つ吐くと美人の女性は三人の中で一番小さな男の子に誰か呼んでくるように言った。髪色が同じだからもしかしてと思ったけど、女性と一番小さな男の子は姉弟のようだった。しかし、クラトス……?誰?それ……新生物?さっきのクルシスやレミエルってのすら分かってないのにまだ増えるわけ?
「クラトスさんはね、とーーーっても強くって、とーーーってもかっこいいんだよーー」
「……確かに腕はたつけどよ……」
ベッドに手をついて生き生きと語る白い法衣をきた女の子とは対照的に一番最初にこの部屋に飛び込んできた赤い服を着た男の子は言葉を濁す。どうした、どうしてそんなに不貞腐れてるの?さっきまでの勢いはどうした?でも…かっこいいかー……ちょっと楽しみ、かも?
「姉さん。連れてきたよ。」
「目が覚めたようだな。」
あたしがまだ見ぬかっこいいに思いを馳せていたその時だった。先ほど出て行った小さな男の子が帰って来たのは。そしてその子と共に入ってきた人はとってもかっこいい全身紫タイツだった。
……。……。………タイツ……?………目線を下にやったあたしがバカでした。
「きゃああああああああ!!!猥褻物陳列罪!!教育的指導!!!!」
「ぐうっ……!」
あたしは、手元にあった枕をおもいっきり振りかぶって投げた。そう、おもいっきり。枕は狙い通りに紫タイツの顔面にクリーンヒットし、ばふんと……音を立てて床に落ちていった。顔を狙っただけまだ温情である。下を狙わなかっただけ感謝してほしいくらいだ。ってか、タイツ……タイツ……紫タイツ……歩くタイツ……脳のキャパシティがオーバーするわ。
「何だ!?ど、どうしたんだ?」
「だいじょぶ、だいじょぶ。あんなの履いてる人が悪いんだよー。もう、ピーーッってかんじだねー」
ぇええ…白い服着た女の子?服は白なのに言動が黒い!!おまんじゅうなのこの子!?……ってか、最近どこかで似たようなの見た気が……こう、バット構えて活き活きしてた自称女神とよく似ているような……
「……こほん。ねえ、あなたさっき『クルシスなんて知らない』って言ってたわよね」
逸れに逸れまくった話を戻すお姉様。うん、そうですね。すっごく混沌としてるから無理矢理戻すでもしないと話が進まないよね。そう納得しながら頷いた。
「はあ……はい。確かに言いましたけど……」
「…おかしいわね。この世界にいる者なら、絶対知ってる単語よ。それを知らないなんて……」
「なあ、リフィル先生。クルシスって何だ?」
あたしは無言で赤い男の子を指差した。
「これは例外」
「さいで」
「本題に入るわ。……それにあなたのマナ…おかしいのよ。人間でもエルフでも……まして、ハーフエルフのものでもない。もっと純度が高いし、密度も高い……。単刀直入に聞きましょう。あなた……何者なの?」
エルフ?ハーフエルフ?何それ?バドやコロナ達のような種族や部族をそういうのだろうか?……すっごく嫌な予感に背中を汗が伝っていく。
「えっと……あの…。ドミナの街とか魔法都市ジオとかロアの街とかってここから近いですか?それとも帝都が近いとか……」
「何それ?そんな町、ボク聞いたことないよ。…!?って何で頭抱えて悶えてるの!?」
ぎゃぁああああ!!やっぱり、やっぱり違う世界だ!!嫌な予感ほど当たるのなんでなの!?ドミナなんて片田舎ならともかく、帝都を知らないなんてありえないし!!!世界都市だよ!?あそこ!?
「ちょ、ちょっと動揺しているだけだから気にしないで……」
「声…うわずってるぞ……大丈夫か?」
「……どこから来た。質問に答えろ」
ああ……赤い服の少年…声がうわずってるのは自分でも分かっているよ。そして心配してくれてありがとう。そして紫タイツ。お前はもっと言葉を選べ。しっかし……はぁ……正直に経緯を話したら痛い子決定だな……こりゃ……。でもどうにもこうにも仕方がないか……この雰囲気、言うしかなさそうだし……
「…信じる、信じないはそちらの勝手です。第一、あたし自身もよくわかってませんし……あたしがいた町はこの世界にない……と思います。あたしはがいた世界は、ファ・ディールっていいます。聞いたこと、ありませんよね?」
場の空気が一瞬にして水を打ったように静まった。それはそうである。自分で言っておいてあれだが突拍子がなさすぎる。嘘は一切吐いていないがあたしの話を信じるのは無理な話だろう。
「俺は信じるよ!!なあコレット!」
「はい!?」
「うん!ロイドの言う通りだよ~あなた嘘ついてよるうには見えないしね~ジーニアスもそう思うよね~?」
「二人とも簡単に信じすぎなような……姉さんはどう思うの?」
……はい?ニコニコしながらなんって言ったこの子達。
「そうね…そうじゃなきゃ、この子のマナについて説明できないし……
にわかに信じがたいことだけど……クラトス。あなたはどう思って?」
「私も同じ意見だ。傭兵業で各地を回ったがこのような服を着ている民族を少なくとも私は見たことがない」
……信じちゃってるよ。この人たち。いや……本当だけどさ……
「質問を変えましょう。あなたは、どうしてこの世界に来たのかしら?なぜ?どうやって?」
どうしてって……そりゃあ…なんか気付いたら不思議空間にいて?美人がバットを構えていて?確かあの人の名前は―……
「……えーっと……マーテ……!!?なんかきおった!!?」
痛い!!頭、頭いたッ!!なんだこれ!!名前言うなってか、あの黒マーテ……いだたたたたた!!嘘です!言いません!!言いませんから!!
「……姉さん。大丈夫この人?」
言わないでくれ……ジーニアスと呼ばれた少年。あたしだって悲しいんだ……
「……誰かは知りませんが……でも誰かに呼ばれたんです。でっ……気が付いたら(文字通り)飛ばされてて……」
飛ぶっていうか打たれたけどね!!
「……帰る方法は……わかるのかしら?」
「それは……わかりません」
そうだ……本当にあたしは知らないんだ。来ちゃったけど帰り方一切知らないんだ……知らない世界に独りぼっち、か……。今更ながらに現実を突き付けられて……あたしは無意識のうちに毛布の端をぎゅっと強く握っていた……
「ねえ……先生。この子、旅に連れていっちゃダメかな?」
「!コレット!?それは!?」
「だって、世界中回れば何か手がかりがあるかもしれないよ?ねえ、クラトスさん?」
「……足手まといになるようなら、ご遠慮願いたいがな」
「うっせーぞ。黙れタイツ」
怖ッ!?なんか聞いちゃいけない言葉を聞いた気がするような……笑顔で一瞬毒を吐く少女にひくり……と口の端が引き攣った。でも、旅…旅か……
「腕はそれなりにあると思います。だから、連れていってください!!」
胸に片手を強く当てながら乗り出すように身を出し言葉を紡いだ。ここでこうしてるより、ずっといいだろうし、何たってウジウジは性に合わない!それに自分から動かないときっとダメだと思うから。行動しないと見えるものも見えてこない。
「じゃあ、決定だねー。決めたったら決めたんだから!私達、明日から旅に出るんだー」
「……はっ?明日!?早ッ!?」
いや、早くない!?いくら何でも早くない!?善は急げとは言えども早すぎる。
「今から打ち合せをしなくちゃいけないから、出発時間が決まったら知らせに来るね!」
「……仕方ないわね。……では、私達はいったんイセリア村に帰りましょう。あなたはゆっくり休むこと、よろしい?」
「は……はあ……」
「待てよ!コレット!俺も送っていくよ!行くぞ、ジーニアス!!」
「うん!」
一気に静かになる部屋。そっか……みんな帰るのか……この世界に来たばかりだからだろうか。静かになることを少し寂しく感じる自分がいた。
「あっ、そうだ!あなたのお名前聞いてなかったよねー」
みんなの視線があたしに集まる。そういえば、ぐだぐだと後回しにしちゃってまだ言ってなかったっけ。
「……マナ……あたしはマナだよ」
そう私の名前は“マナ”。あたしは、笑いながら…そう答えた。