シルヴァラント編(TOS)
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かつて世界の中心には巨大な樹があったそれは全ての生命の源。第一の元素であるマナを無限に生み出すという大樹。それは“樹”の生み出す“気”であった……
「……!それって!?」
「ど、どうしたんだ?マナ?いきなり」
「……似ているだけなの?……でも……」
マナの女神は光。光そのものである。女神のイメージだけで、この宇宙全てが生み出された。マナの樹は女神そのものマナの樹は無限の力の源。―……ファ・ディールとこの世界が……どこかで繋がった気がした。
《Tales of Mana》
荒れ狂う炎。砂塵の奥、古の都にて街を見下ろし、闇を照らす。
清き水の流れ。孤島の大地に揺られ、溢れ、巨大な柱となりて空に降り注ぐ。
気高き風、古の都、世界の……巨大な石の中心に祀られ
邪を封じ聖となす。煌めく……神の峰を見上げ世界の柱を讃え……古き神々の塔の上から……二つの偉大なる……
「……あとは壊れてしまってます。読めません」
「……って事は、封印の場所が具体的にどこだとか、あといくつかとかも分からないの?コレット?」
「……うん。この後の天使言語は擦れちゃってて、これ以上は」
水の封印(だったんだって)を解放したあたし達は、かなり回り道をしてきたけれど、やっとハコネシア峠までやって来た。でっ、さっそく、ロイド曰く“強欲ジジイ”にスピリチュア像を渡して、目的である再生の書を見せてもらえたのまでは良かったんだけど。
「肝心なところで切れちゃってたら意味ないよね?」
そう。すでに解放済みの火と水の封印に関しては全文読めるのに、その他の封印については所々擦れてしまっていて完全には読めないのだ。つかえねえー……思わずそんなことを考えてしまったのはご愛敬。
でも、これだけの情報でも分かる人には分かるようで、リフィルとコレットの話だとアスカードという街とマナの守護塔が怪しいのでは?……という事のようだ。
「ふーん。まあ、いいや。とにかく封印の場所は分かったんだし、さっそく行こうぜ。ありがとうな、じーさん」
「うむ。また見たければいつでも来るがよい」
正直、また来たら対価を取るんじゃないのか?そう思ったのはきっとあたしだけじゃないはずだ、うん。
「お前達、ここの関所を通るための通行証は……あるな。よし、通れ」
「あれ、ここ関所だったんだ、知らなかったー。でも、通行証なんて一体どこで貰ったの?」
再生の書を見終え、一先ずの目的地が決定したあたし達一行は強欲ジジイの家を後にした。でっ、しばらく先へと進むと目の前に簡素な木の門が現れ、更にさらに門の前には鎧を着た二人の男が立ち塞がっている。
この峠を越えればすぐにアスカードに着くらしいのだけれど……まあ、たしかに関所と言われればどう見ても関所だよね、この門は。でも、通行証なんて一体どこで貰ったんだろう?貰えた可能性があるとすればパルマコスタにいた時だと思うけど、ゴタゴタしていてそんな暇なかったはずだし―……
そんなあたしの疑問にロイドはとても歯切れの悪い声で、でも答えてくれた。……ショコラのものだと。
「……そっか。ゴメン、変な事聞いた」
「お前が謝る事じゃねーって。マナ。あれは俺に責任がある。それにお前も言ったろ?“忘れるな”“逃げるな”って」
ちょっと無理をしたような笑顔でロイドは話す。あたしは、ロイドと知り合ってからまだ日が浅いけど、でも、こーゆうところって―……
「本当、誰かにそっくりだね」
「えっ、マナ、どゆこと?」
コレットが首を傾げてあたしを見る。……気付いてるわけないっか。案外自分の事って分からないものだしね。
「んー……ただの独り言。いこっか、二人とも。みんな待ってるしね」
上を見上げれば、眩しいくらいに明るい太陽があたし達にサンサンと降り注いでいて、青キャンバスに絵の具を溶いたような白い雲が凄い速さで流れていった。この先の大陸に何があるのだろう。そんな気持ちで、ゆっくりと門の外へと踏み出した。
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「うっぷ……風強ーッ!さすが風の街だね……お腹すいた」
「それまったく関係なくない?マナ?」
「だってさー、ジーニアスー……さっきっからずっとー……」
「……素晴らしいフォルムだ!この遺跡の曲線は風の精霊が空を飛ぶ動きを表すとされている。更にこの石はマナを多分に含んでいると言われていて夜になると―……」
「ねっ?現実逃避の一つや二つしたくなるでしょ」
「……また悪い癖が……」
あたし達は今、アスカードの街の石舞台遺跡の前にいる。ハコネシア峠の目と鼻の先の距離に風と遺跡の街・アスカードはあった。なんでもこの街は5000年以上前に栄華をほこった古代王朝の遺跡がバンバン見つかる土地柄のようで、早い話―……
「フハハハッ!この手触り!この滑らかさ!……たまらない!」
リフィル大フィーバー。頭のネジなんてどこかに落としー……いや、自分で引っ込抜いたのかも。とにかく大興奮。リフィルまっしぐら。
さっきまではロイドに、この遺跡の歴史的背景ナンタラカンタラ~……と絡んでいたのだけれど。
「上手く逃げたよねロイド」
「そう言われれば……姉さんから逃げてどこまで行ったんだろ」
「!……今なんと言った!?」
突然聞こえてきた大声にあたしとジーニアスは、顔を見合わせて反射的に声のする方に顔を向けた。人とは怖いもので、奇声と高笑いならとうの昔に慣れたのだけれどこの大声は尋常じゃない。……ちなみに、声の主は。
「先生。こいつら、この石舞台を破壊するんだってよ」
「!貴様ァアアア!!それでも人間か!?」
とおっ!!……という効果音を思わず付けたくなるような勢いでリフィルが石舞台から跳躍!!その勢いを崩さず、腰を捻り、回転を付けるように……!!
「ないすきーっくー」
蹴りをニ発。あー……誰だか知らないけれど二人ほど吹っ飛んだよ。名前も何も知らないけれど、とりあえず合掌をしておくことにした。……ってか、ロイド君、その人達誰よ?
リフィルに吹っ飛ばされた二人は若い青年で、一人は気の弱そうな青髪の男、もう一人は……こりゃまた我の強そうな赤髪の男だった。
「くっそ!俺は“ハーフエルフ”だ!!」
赤髪の男は、しばらく下から見上げるようにリフィルを睨んでいたけれど、不意に立ち上がり目は鋭いままでそう怒鳴っている。
“ハーフエルフ”?
聞き慣れない単語にあたしは思わず首を傾げた。こいつの名前……ってわけじゃないだろうし……ということは何か所属を表す言葉なのだろうか?そんな事を考えていると、ふっと目線を移した先にいたジーニアスが少し……ほんの少しだけど体を強ばらせているように……見えた。さて、一方の姉君の方ですが。
「それがどうした?お前達にはこの遺跡の重要性がまるで分かって……」
ん?何だか……今パチッって音がしたような????
「ねえ……なんか変な音がしない?……こうさあ」
「チクタクチクタク聞こえるねー時計みたいなー」
ちょっと待て。何だか嫌な汗が出てきちゃったよ。まっ……まっさかねー……
「……先生……」
「何だ、ロイド?質問なら後でと……」
ああ…ロイドが真っ青な顔しているけど、きっと気のせい。たぶん、鉄分が不足してるんだ。そうに違いな―……
「女ァ!!お前のせいで爆弾のスイッチが入ってしまったのだ!!」
「人のせいにするな!!」
赤髪男の言葉にリフィルが吠える!!
「そんな事より、解除スイッチはねえのか!!」
「そんなもんあるか!!」
「えばるな!!」
顔を青くして慌てるロイドに解除方法なんかないと告げる男。そして、素敵なツッコミを入れるリフィル。……何だ、この混沌とした状況は。そう言いたくなるくらいカオスです。……あの赤髪の男もいい加減、口答えしたら蹴られるって学習……じゃなくて!?
「ヤバくない!?」
「ちょ……姉さん!!」
「……おい!」
「わあーおもしろそー!」
一人おかしな反応の人もいらっしゃいますが、外野組の反応は似たようなもので―……って、逃げなきゃヤバいだろ!!
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「へえ……お前、器用だな。制御不能の“ブレイカー”を止めるとは」
「制御できないもんを作るなっつーの……」
「……遺跡に傷は付いていないようだな」
ロイドが手際よく爆弾を解体してくれたおかげで最悪の自体は避けられた。こういう時に実感するけど本当にロイドって器用よね。赤髪の男はロイドの器用さに感心しているみたいだけれど、あたしも密かに感心をしている人間の一人であったりする。やっぱり、ダイクさんに鍛えられただけあってロイドも器用なんだー……
「こらっ!そこの者!石舞台は立ち入り禁止じゃ!」
後ろから聞こえてきた声に振りかえると、そこには初老の男の人と他に数人の人が立っていた。……しかも、なんか怒ってない?……この人達?
「いけません、町長です!」
「やっべえ、逃げるぞ!ライナー!」
そう言うが早いや、謎の二人組はあたし達の前から逃走。……って、爆弾置きっぱなしかよ!!いくら、解除されているっていっても、こんな妙ちきりんなものと一緒にいたら確実に疑われる!ってか、あたしなら疑う。
「ロイド、逃げよう!!早く!!」
「ああ、捕まったら面倒そうだし早く逃げよう!みんなも急げ!!」
「しかし、まだ舞台の構造を……ああ……もっと調べたかったのに……」
そんな場合じゃないよ……姉さん……走りながらポツリと呟く苦労性の弟君に、あたしは同情の念を抱かずにはいられなかった。
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「うっはー……ここまで来れば大丈夫でしょ……」
石舞台から続く長い石段を全速力で突っ走って来たおかげで、どうやら振り切る事には成功したみたい。その証拠にさっきの場所にいた人達は、あたし達を追っ掛けてきていない。……若干、周りが変なものを見る目で見ている気がするけど。立ち入り禁止の場所から全速力で走ってきた人間を普通に見ろって方が無理な相談だろうな~。
「さっきの二人は一体何者なんだ?」
「そだねー、ロイド。遺跡を壊してどうするつもりだったんだろうね」
「そう、遺跡よ!彼らに遺跡を壊すなんて愚かな真似は止めさせなくては!行くわよ、マナ!!」
「ぇええ!?ちょっ……走ってきたばかりじゃ……」
「それとこれとは話が別です!」
ああ……いつになったら休めるんだろう……半ば引きずられるような形でリフィルに引っ張られながら、あたしはがっくりと肩を落とした。
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「ここが彼らの家ね……行くわよ。人の歴史的遺産を守らねば……」
あの後みんなで聞き込みをして、その結果色々分かったことがある。あの二人の名前はライナーとハーレイというらしい。青髪の男はライナーといって、この街の考古学者なのだそうだ。ライナーにはアイーシャという妹がいて、アイーシャは次の“精霊の踊り手”とやらに選ばれているみたい。赤髪の男の方はハーレイといって、ライナーとアイーシャ兄妹と仲が良く、よく一緒にいる……っと。でもって―……
「“ハーフエルフ”かあ……一体、何なんだろう」
ハーレイはハーフエルフという、あたしにとっては初めて聞く種族で、そして何故か……この街の人に嫌われていた。
”ハーフエルフ”
ハーレイがハーフエルフなら、あたしの身近にいるあの二人もそうなんだろう。だって、マナがみんなと少し違うし。それは知ってた。でも二人ともエルフだって言っていたから―……ファ・ディールにはハーフエルフも……エルフだっていない。だから、二人ともエルフなんだなって信じてた。……ってことは……もしかしてディザイアンも―……?
「……お前が最後だ。……入らないのか、マナ?」
「……んあ、タイツ?って、もうみんな中に入っ―……」
「ふざけるな!このままだとお前が生け贄になるんだぞ!!」
タイツと二人そんなやり取りをしている時だった。家の外まで大きな声が漏れてきたのは。その声を聞いたあたしとタイツは慌てて扉をくぐった。ただ事ではないということは声を聴いただけで分かった。
家の外まで聞こえてきた声の主はやっぱりハーレイだった。でも、生け贄って―……?
「風の精霊をお祀りする儀式です。アイーシャはそれに選ばれたんです。
元々は、ただ石舞台で踊るだけの儀式だったのですが……」
「……この馬鹿が石舞台を調べようと、勝手に封印を解いたんだ。おかげで風の精霊が甦って生け贄を要求してきたのさ」
申し訳がなさそうにボソボソと事の次第を説明をするライナーに続いて、毒づくようにハーレイが言葉を続ける。……なるほど。ちょっと分かってきたよ。アイーシャに踊らせないために、石舞台を爆破しようとしていたのか。
ちなみに、風の封印という言葉に反応したリフィルは、やれパラクラフピラーだの神話だのと生き生きとライナーと語り合っている。
「姉さん……旅の目的、忘れてない?」
言うまでもないだろ、それ。
「しっかし、“精霊の踊り手”かあー……踊りだったらマナが上手なんだけどなー」
そうそう、君も大変よね、ジーニアス。だいたい、踊りっていうのは―……
「へっ……?」
ロイドの言葉に思わず変な声を出してしまった。えっ、何、みんな見てるの?
「あの時のお前、綺麗だったもんなーなあ、クラトス?」
「……そう言えばそうだったな」
「ええ!?マナって踊れるの!?ロイド達、いつ見たのさー」
「すごーい、すごいよー!私もマナの踊り見たいなー」
ちょっと待て。な、なんか変!!ってか、普通におかしいだろう!気が付けば、ロイドとジーニアス・コレットの三人組をあたしを囲んでキラキラとした顔でこっち見てるし!ってか、タイツ!お前も納得すんな!!
「そうなのか!?マナ!?」
「うっわ!!ちょっ、リフィル、たんま!ストップ!!」
急にリフィルが近づいて、あたしの両手を握ってブンブン上下に振り回すもんだから、ただでさえ超展開で置いてきぼりの頭がシェイクされてもっとこんがらがる!
「“精霊の踊り手”はここいいるマナが引き受けます。その代わり、石舞台で何かが出土した場合、調査の際は私も立ち合わせていただきます。よろしい?」
あーあー……なるほどねー……そっかー……あたしがアイーシャの代わりに生けにー……
「ぇえええ!?じょ、じょーだんでしょ!?」
「あら、大丈夫よ。私達も一緒に行きますから。」
「人権は!?拒否権ないの!?」
「ない。そもそもマナはこの世界の人間ではないのだから―……この世界の人権も何もないのではなくて?」
「へーりーくーつーだー!!」
……って、ツッコんでる場合じゃない!なんだよ、この展開!!あ、頭が重くて両手で抱えたくなる。いや、実際に抱えてますけど。ってか、なんでこの世界の人は、マーテルさんを筆頭に他人の拒否権剥奪するんだ!?
「そんな……私の身代わりなんて―……」
今まで、あたし達のやり取りを茫然と見ていたアイーシャが口を開けた。その顔は本当に申し訳がなさそうな顔で……はあ……仕方がないか。
「……わかった。“精霊の踊り手”はあたしがやる。……でも、あたしここでの踊り方なんて知らないよ?」
戦闘技術がなさそうなアイーシャに比べたらあたしの方がもしもの時は安全だろうし……いざとなったら、全力で槍をぶっ刺してやる。
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「でも、本当にいいのか、お前?」
ロイドが少し心配そうな顔をしてあたしに声をかけてくる。おお、心配してくれるの!?
「まっ、お前の踊りが見られるんなら別にいいか!」
……喜ぶところ?泣くところ?
「再生の書によれば、ここが次の封印のはずよ。風の精霊に会えばわかるわ。それに精霊の求めている生け贄はマナの神子かもしれないじゃない?」
最もらしい事を言っているけれど、本音は自分が調査したいだけじゃなかろーか。……自然と疑問が湧き出てくるよ、リフィル?……でも、踊りか~。まあ、踊り自体は好きだし―……せっかくだから、思いっきり踊ってやろうかな?
「なあ、この本って何だ?“天使物語”って書いてあるけど…」
あたしが半ば自棄になりながら、一人そんなことを思っていれば、一体どこから引っ張りだしてきたのか、一冊の古びた本を持ち、目をキラキラさせているロイドの姿があった。
顔はキラキラとしたままで、ロイドはその本をテーブルの上に広げる。……って、いいのか、勝手に持ち出して?
ロイドが持ってきたその本は日に焼けて焦げた白地にくすんだ金の細かい刺繍が施されていて古いものだけれど、元はとても綺麗なものだったのだろうという事が簡単に分かった。
「ああ、その本でよければどうぞ自由にお読みください。といっても、世界中の誰でもが知っている英雄潭ですけれど……」
「さんきゅーライナー!何なに?『かつて世界の中心には大樹があった……』」
昼間なのにも関わらずどこか薄暗い室内を、不釣り合いなロイドの元気な声が包んでいった。