シルヴァラント編(TOS)
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「俺……また、間違ったのかな……」
「いいんじゃない?別に?」
「よくないだろ!だって、俺のせいで……俺のせいでイセリアは……!」
「じゃ、逆に質問。あの人を助けなかったとして……そうしていたら、ロイドは満足?笑顔でいられる?」
「そ……それは……」
「どっちにしろ後悔する結果だったんなら、自分の心に従った方がいいと思うけど?」
「俺の……心……?」
「少なくても……あたしは、ね。そう思うよ』
後悔なんてそれこそ数えきれないほどしてきた。本当にたくさん。でも、嘘は吐けないから。それが、誰かを傷つけてしまうと分かっていても。心に嘘は、吐けなかった。
《Tales of Mana》
「さーてと……いい加減、ロイド達と合流しないとな~……お金ないし、お腹減ったし」
総督府での用事を済ませたあたしは、ロイド達を探してパルマコスタ内をグルグルとさ迷っている。と、いうのも……
「えっー!?コレット……じゃなくて神子様達ここにはいないのー!?」
「は……はあ……つい先程、この教会へとお立ち寄りになられたのですが、供の方を連れ立って、もう出発なされました」
「うわ~……えっ~……絶対ここにいると思ったのに……まったく…なんたる失態!」
……なーんて、ふざけて現実逃避している場合じゃないよね~……これ、結構やばくない? よくよく考えなくても、ここはあたしがいた世界とは違うわけで、当然地理なんてさっぱリーなわけだ。
まあ、ロイドあたりは当てにならないだろうから置いといて―……正直、リフィルや認めたくないけど、あの恥ずかしい格好の紫タイツがいない事には街の外に出ても迷うだけ。それ以前に街中でもすでに迷っていたりする。
「まいったな~…」
「あ……あの、あなたさっきの旅の人達と一緒にいた人よね?」
後ろから聞こえてきた声にくるりと振り返ると、髪を一つに束ねた気の強そうな女の子がそこに立っていた。んー……あれーこの子どこかで―……
「あ、道具屋でメンチ切ってた子か!」
そうそう、ワインを買うために寄った店の売り子さんだ。と、一人納得をしてポンと手を叩く。
「め、メンチ……」
何やら口角がピクピク引きつってるように見れるけれど、あながち間違ってはいないのでよしとしよう。……あたし的には。
「んで、あたしに用事?あっ、あなたの店の前でゴミを漁っていたのはあたしじゃないからね!」
「あ、あなたそんな事してたの?」
「いや、それには海よりも深ーい理由……あっ……」
「……」
「……えへっ」
ああ……沈黙が重ひ…… ってか、これって自爆?あたしアホの子化してない!?
「……ロイドのせいだ」
絶対そうだ!ロイドは周りを平和惚けしたアホの子に変えてしまうんだ!そうしなきゃ、あたしがこんな残念な自爆をするもんですか!
「なんで一人で悶えてるのかは知らないけど……今、ロイドって言ったわよね?じゃあ、やっぱりあの人達と一緒だった人ね。あの人達から伝言をあずかってるんだけど……」
「伝言?」
「そう、伝言。『私達、ハコネシア峠に行くからそこで合流しようねー
あっ、ワインならもう弁償が済んだからもう通れるはずだよーくれぐれも拾い食いしないようにねー』ですって。じゃ、確かに伝えたわよ」
……おい、今、何か聞きづてならない事言ってなかった?最後らへん。大体、ゴミは漁ったけど拾い食いはしてないよ、コレット!そこまで落ちちゃてないから!……って、それよりも大事なことが!
「ちょ、ちょっと待って!!」
「伝言は伝えたわよ?私、お店の方を手伝わなきゃいけないから忙しー……」
「ハコネシア峠ってどこ?」
++++++++++++++++++++
「いやー…悪いねーおっちゃん。乗せてもらっちゃって」
「なーにいいってことよ。途中にある救いの小屋までなら俺も用があったしな。今更、人が一人乗ってもたいして変わんねーさ」
「アハハハ、でも、ありがとーね」
あの後、女の子―……ショコラと子からハコネシア峠までの地図をもらったあたしは、早速コレット達に追い付くためにハコネシア峠を目指すことにした。で、街を出る際に運良く荷馬車に乗せてもらって現在に至る、と。荷馬車から見る風景はひどく牧歌的で……こんな風景を見ていると元の世界にあったドミナの街を思い出してしまう。あー……しっかし、いい天気だな~……こうポカポカしてると―……
「ふわぁ~……」
「ハハ、嬢ちゃん眠いのかい?救いの小屋まではまだあるから一眠りしていいぞ。着いたら起こしてやるから」
「んじゃ、お言葉に甘えて……おやすみなさ~い……」
パサッと布団の代わりにした飼い葉からお日様の匂いがして……その匂いに誘われるようにあたしの意識はすぐに沈んでいった。
++++++++++++++++++++
「嬢ちゃん、着いたぜ」
「んあっ?もう……?」
あんまりにも寝心地が良かったもんだから思った以上に爆睡をしていたみたいだ。まだ眠りが恋しくて自然に降りてくる瞼を無理矢理こすって起き上がる。
「ああ、救いの小屋だ。悪いな、乗せられるのはここまでだ。道、わかるのかい?」
「うん、街で地図をもらったから」
ありがとうとお礼を言っておっちゃんと別れる。さーて……地図でも開きますか。
「ハコネシア峠、ハコネシア峠、っと……って、あたしこの世界の文字読めないんだった。……絵からするとここかな……」
ハコネシア峠らしきものは地図を見る限りここから北の方角にあるらしい。うーん……パルマコスタらしきものからずいぶん来たけど、ここからでも結構歩くな~……
「仕方ないか、うん」
と、地図をくるっと丸めて立ち上がる。愚痴を言ったってハコネシア峠が近づいてくるわけじゃないしね。地図からして明るいうちに合流するなら少し急いだ方がいいだー……
「おーい!マナーー!!」
「ろ、ロイド!?って、みんなも!?」
あっ、そんな必要ありませんでした。
「へえ~……パルマコスタにディザイアンがねぇ~……でっ、みんな戻ってきたんだ」
「ああ、マナと合流できて良かったよ。下手したら行き違いに……って、お前何他人事みたいに言ってんだよ!街が大変なことになってるかもしれないんだぞ!」
「あっー……ごめん、ロイド。ほら、あたしってまだ、ディザイアンがどんな事をしてるか自分では見たことないからさー」
「何、言ってるの!?マナだってディザイアンは見た事あるでしょ?」
ロイドの隣にいるジーニアスがひどく呆れた感じでこっちを見る。それ程までにこの世界の人にとってはディザイアンは恐怖の対象なのだろうか?でもさー……
「この街で見たディザイアンってどうも小物って感じだったしさー……それに……」
「えっ、ちょっとマナ?何?」
あたしは耳打ちをしようと屈んでジーニアスに近づいた。わけがわからないという目でジーニアスがこっちを見ている気がするけど、これには深ーい理由があるんだなー……
「(だって、前にディザイアンのアジトに行った時にコレットとリフィルが血祭りにあげてたじゃん?あれの印象がさー……強烈っていうか……)」
「あっ……あれか……」
あの惨劇……いやそんなんじゃ生ぬるいもんじゃない。あれは阿鼻叫喚だった。その証拠に、それを思い出したジーニアスも真っ青になってガタガタと震えている。あれは酷かった。マジで。冷や汗ダラッダラ出てきたもん。
「二人とも、内緒話はダメだよー私達急がなきゃいけないんだし~」
一瞬ぎくぅと心臓がバカみたいに跳ねたけど、どうやら話の内容までは聞かれていなかったようで、あたしはホッと胸を……
「それにマナー、あれは血祭りじゃなくて質問してただけだよー」
えがおがとてもこわかったです。
一時的にコレット様から何やら出てた気もしなくはないのですが、その後はとくに何もなく戻って参りました、パルマコスタ。さっき出たばっかりなのに、街の様子はがらっと変わっていて、あれほど賑わっていた港市場や商店街からは活気が消えていた。ううん、これは静かすぎる……
「ここまで静かとは……やはり妙だな」
どうやらタイツも同意見みたいで―……こいつと同じってのはちょっと癪に触る気もしなくはないけれど、この状況を不振に感じないってのが無理な話か。
「とりあえず、広場まで行きましょう。あそこまで行けば教会も総督府もあるのだから何か情報が掴めるはずよ」
「そうだな………よし、いくぞ、みんな!!」
ロイドの号令と共にあたし達は広場へ向かって一斉に走りだした。
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「どけっ!マグニス様がお出ましだ!」
広場に着くなり下卑た声が耳に響く。黒山の人だかりを押し退けて声のするほうに目を向けると―……
「絞首台……!」
ギリっと無意識のうちに奥歯が音をたてた。トリエットで触れたロープ……あれがあんなのを見せたのはこれのせいか。あそこでもここと同じように……
マグニスと呼ばれた男が前に出る。あいつがボス、か。品のないドレッドヘアーと服装。手配書あたりにいそーな悪人面。見た目はどこの街にも一匹はいそうなチンピラだけど……
「マグニス様だ、豚が!」
とか言って人の首を絞めてるんだから、チンピラよりも数千倍たちが悪い。
「この女は偉大なマグニス様に逆らい、我々への資材の提供を断った!
よって、規定殺害数は超えるもののこの女の処刑が執り行われることとなった!」
マグニスの部下らしき男が大げさな身振りをしながら罪状を読み上げる。……ううん、罪状なんかじゃない。これはただの憂さ晴らしの言い掛かりだ。
「くそっ!この街の兵士達はどうしたんだ!」
ロイドもこの光景を見て平然としていられないのか声を荒げている。街の人の話だと、兵士は演習で出払ってしまっているらしい……
「隙を狙ったんだな。酷いや!」
「母さん!!」
不意に広場に悲鳴にも似た甲高い声が響き、一人の少女が絞首台の前へと躍り出てきた。……あれは!!
「ショコラ!?」
こんな事をしてドア総督が許すはずがない!と叫ぶショコラにマグニスは笑って返す。無駄な望みは捨てろ、と。そして―……
「止めてぇええ!!」
ショコラの悲鳴が辺りにこだました。
「止めろっ!」
「さっきから、黙って聞いてれば…うっさいっつーの!」
「ロイド、マナ!?」
体が自然と動きあたしは豚の顔面を蹴っ飛ばす。あたしの蹴りとほぼ同時にロイドの剣から出たかまいたちがマグニスの足を襲った。
「ダメよ!ここをイセリアの二の舞にしたいの!?」
リフィルが慌てて止めに入るけど…
「何言ってんだ!ここはディザイアンと不可侵契約を結んでいるわけじゃないだろ!目の前の人間も救えなくて世界再生なんてやれるかよ!」
「世界がどうこうには興味ないけど……こーゆうのってすごーく胸くそ悪いっていうか……大っ嫌いなんだよねー、あたし」
「あ、あなた達!」
リフィルが顔面蒼白でロイドとあたしを見ているけど、今更後に引けないし……何より引く気なんかさらっさらなかった。
「お前は手配ナンバー0078のロイド・アーヴィングだな!」
「何!そうか、お前が……!」
部下の言葉に反応して蹴りを受けて吹っ飛んだはずのマグニスが起き上がる。……そのままおとなしく寝てればいいのに。
「ここで、お前のエクスフィアを奪えば五聖刃の長になれる!お前ら、あの小僧を狙え!」
「ロイド!!」
その刹那、敵が放った火球がロイドに向かって真っすぐと飛んでいった!まずい!ここからじゃ助けにいけない!!
「まだまだ修業が足りないね」
「ジーニアス、グッジョブ!」
「まあね」
ロイドを焼き尽くそうと襲い掛かっていった火球はジーニアスによって相殺をされて、空へと霧散していった。
「くっそ、このヘタレどもが!もういい!まずは、この女から始末を付けてやる!」
「危ない!」
コレットのチャクラムが空を風をそしてロープを切り、命を刈られるのを待つだけだったショコラの母を解放する。そして……
「神子の意思を尊重しよう」
いつのまにそこにいたのかタイツがマグニスを斬り付けそこに立っていた。恐ろしいほど冷たい目をしている気がするのはあたしの気のせいではないのだろう。
「みんな、分かっているの!?ディザイアンに逆らうとこの街をイセリアのように襲わせるのかもしれないのよ!?」
「そうさ、分かってる!二度と同じ間違いは繰り返さない!牧場ごと叩き潰してやるさ!」
「無茶だわ……そんな……」
リフィルの声が震えている。そりゃあ、客観的に見たらあたし達の行動は後ろを顧みない身勝手な行動なのかもしれない……けど……
「人がさ……助けられそうな人がいるのに助けない……それも間違ってない?……あたしはそんなの…絶対、嫌だ」
ひどく傲慢な言い分かもしれない。でもこれがあたしの声……心の声。
「マナの言う通りだ!どの道、俺もコレットも狙われてるんだ。
それに俺達には神子がついてる。世界を再生する救世主がさ!!」
「……うん。私、戦うよ。みんなのために」
コレット様!マナの神子様!!と、広場に集まった群衆から次々と歓声が上がり辺りを包む。
「もお、本当にバカな子達……心配だから私も手伝うことにするわ」
「さっすが、リフィルーわかってるー」
「バカなことを言わないで!」
そう言いながらリフィルはそっぽを向いたけれど、頬っぺたが少し赤いところを見ると…素直じゃないなと思うと同時に、リフィルも本当は助けたかったのだろうと嬉しくなって、自然と笑みがこぼれてきた。
「くっそ、どいつもこいつも俺様をバカにしやがって……」
「あっ?まだいたの?とっくに豚舎へ帰ったと思ったよ」
「女ァ!テメー、誰に口を……って、お前のマナ……まあ、いい。お前達、この連中の始末は任せたぞ!」
何やら気になることをほざいたかと思えば次の瞬間にはマグニスは光に包まれて消えてしまっていた。
「あっー……豚ってワープできたんだー……飛ぶ豚の話は聞いたことはあるけど……進化ってすばらしいねー……」
「もう、バカなこと言ってないでちょうだい!」
「はいはい。じゃあ、いっちょやりますか!」
と、ため息を一つはいて、襲ってきたディザイアンにすっと槍を向けた。……悪いけど、あたし今さいっっっっこうに機嫌悪いから!手加減なんかできないからね!!
++++++++++++++++++++
ディザイアン達を退けてあたし達の他誰もいなくなった広場にロイドの震える声が響く。かすかなその音は夕間暮れの風に紛れ散っていった。
「俺……また間違ったのかな……」
まるで、自責するかのような、自問するかのような彼の問いにあたしは声を返す。
「いいんじゃない?別に?」
ロイドとは対照的なひどく能天気なあたしの声が、後を追うように彼の声と重なった。