シルヴァラント編(TOS)
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「……寒ッ!!じゃあ、帰る前に一つ聞いていい?」
「うん、何かな?」
「天使になって世界を救うんだっけ?」
「……うん。それがマナの神子だから。」
「……本当に?」
「えっ……」
「それがコレットの心?あたしは神子に聞いてるんじゃない。“コレット”に聞いてるの」
それは本当に、あなたの心が望んだものですか?
《Tales of Mana》
「あーーっ!やっと外かー!蒸し蒸しするわ、痛いおっさんが出て来るわで散々だったねー」
「だーかーらー!マナ、天使様に失礼だよ!」
「天使ー?だから、痛いおっさんの間違えでしょ?」
痛いおっさん(別名レミエル)が消えた後、あのくっそ暑い遺跡にいてもしょうがないってわけで、さっさと外に出てきたあたし達。ようやくサウナ地獄ともさよなら!……って思うと心も開放的になるってもんだよね!んでもって、ついポロっと本音が出ちゃったわけだけど……アレが天使とかさー……
「普通に痛くない?アレ」
「アレって……お前なー……」
「何言ってんの?ロイド。アレの格好は相当痛いよ。……まあ、それよりもレベルが高いのがいるけどねー」
……と言いつつ、どこぞのタイツ男に目を向ける。第一、なんであんなに蒸し暑い所にいたのに汗かいてないんだ?タイツを極めるとこうなるのか?
「……一応聞くが、何故こっちを見る」
「……言ってもいいなら言うけど?」
いつものようにタイツの方向から不穏な気配がしてきたけど、これまたいつものようにスルーすることにしてみた。あたしのスルースキルも見事なものである。
「コレット!?大丈夫か!」
「!コレット!?」
後ろから聞こえてきたドサッ…という鈍い音と少し遅れて聞こえてきたロイドの叫び声に驚いて、あたしはふり返った。ふり返れば、コレットはロイドに支えられながら地面にへたっと座り込んでいて……あたしも慌ててコレットに駆け寄って顔色を見たんだけど……
「ちっとも平気そうじゃないよ!顔色が真っ青だもん。どうしよう……ボクが調子にのって羽根を出し入れさせたから……」
ジーニアスの言う通り、コレットの顔は異常なくらい白くって、唇も紫色に変色していて……誰から見ても「大丈夫だ」なんて言える状態でないのは明らかだった。
タイツは「これが、天使の言っていた試練」であり、だから無理に動かさないで安静にしていたほうがいいという事を言ったけど
「……何、そのふざけた試練」
あたしは納得できない。そんなふざけた試練があるの?
「大丈夫よ、マナ。少し休めば平気だから。迷惑かけてごめんね、みんな」
コレットが本当にすまなそうな顔をしてあたし達を順番に見回した。……やっぱり、この顔色の悪さは尋常じゃない。
「ばーかー、いちいち謝るな。仕方ないだろう。急に天使ってやつになっちまったんだから」
「うん、ごめんね」
あー!!もう、謝る必要ないでしょ!あたしは自分の頭ガシガシ掻いた。
「はあ……もう。どーしてそんな顔してんの。悪い事、してないでしょ?ほら、掴まって」
「マナ、ごめんねー……」
「あ・り・が・と・う」
そう言ってウインクをしながら手を差し出す。コレットはちょっとびっくりしたみたいで一瞬ポッカーンと口を開けたけど、あたしの言葉の意味を理解したのかすぐに緩く瞳に弧を描いた。
「ありがとう。マナ!」
……少しは元気になってくれたのかな?
「よし、日が暮れる前に野営の準備だ!」
……ってなわけで、今日は野宿をすることになったのでした。
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「はあー……おいしかったーー!」
「……どこにそんなに入るのさ……マナ……」
「チッチッ…ジーニアス君、それは乙女のひ・み・つ!」
「……はあ……」
あたしの答えを聞いたジーニアスは盛大なため息を吐く。あんまり細かい事を気にすると将来ハゲるぞ、少年。たかだか人よりも5人分くらい多く食べたくらいで何動じてるんだか。そもそも
「食べる時に食べないなんてもったいないっしょ?損するみたいじゃん」
「……マナの場合、もとを取りすぎ」
ジーニアスの小言を軽く流してチラッと横を見ると……ロイドがコレットにプレゼントを渡しているみたいだった。へぇ―……見た目によらずやるじゃん、ロイー……
「壊れちゃってるね」
「それがオチ!?」
「うわっ!マナ!びっくりさせるなよー……でも、いつ壊れたんだろう。ごめん、作り直すよ」
「うん、ごめんね。何度も手間を掛けさせちゃって……」
うなだれるロイドを慰めるようにコレットは声をかけていた。しっかし
「よかったねー、壊したのがロイドで。これをやったのがタイツだったら、今頃血の雨が降ってたよ」
「えへへ、マナ~?そんな事ないよー」
「うん。とりあえず、手に持ったチャクラムしまう所から始めてみようか?」
そうさ、この子はおまんじゅう。手に持った鈍い光を放つ鋭利な刃物がチャームポイントなんだぜ。
「……それよりお前、全然食ってねーな。まだ具合が悪いのか?」
ロイドの言葉を聞いてコレットのお皿を見てみると、一口二口食べた形跡はあるけれど、ほとんど量は減っていなかった。コレットは食欲がないと言っているけれど……何だろう……食欲がないというよりは……
「げほっげほっ……」
「ロイド、無理させてはダメよ」
「姉さんの言う通りだよ。コレットはロイドよりも全然繊細なんだからね。ん、マナどうしたの?急に難しい顔をして?」
「んあ?ジーニアス、何か言った?」
やばっ……考え事に夢中で話聞いてなかったよ。
「……私、ちょっと散歩してくるね」
コレットはほとんど量が減っていないお皿を置くと、立ち上がってどこかへ歩いていってしまった。
++++++++++++++++++++
「……あたし、ちょっとコレットの所へ行ってくる」
「……神子は一人になりたいのではないのか?」
あー!!いちいちいちいちこのタイツは!!まあ、正論なんだけど。……でも……
「コレットが一人になりたいって言ってからもう半刻だよ?いくら何でも遅いって思わない?それに夜の砂漠をタイツでウロウロする人が迎えに行くよりもマナちゃんが迎えに行くほうが健康的でしょ?」
精神衛生的な意味で。
「それにちょこっと話したい事、あるんだよね。女の子同士で!ってわけで、いってきまーす?」
「おい!マナ!?……行っちまった……」
「仕方がないよ、ロイド。マナは一回言ったら聞かないから」
「……」
++++++++++++++++++++
「ゲホッ……ゲホッ……私、どうしちゃったの……?」
「コーレーッート!」
「マナ!?どうしたの!?」
あたしの声に気が付いたのだろう。ビクッ!と体を一度跳ねさせて、コレットはこっちにふりかえった。
「んー……お迎えついでにちょこっとばかり話がしたいなーって思って。……隣、いい?」
そう言ってコレットの隣に並ぶ。街から離れているせいもあって夜の砂漠の空は
「なんか……吸い込まれて消えちゃいそうだよね」
少しの間、沈黙が流れた。ほんの少しだけ。
「ねえ、コレット。コレットの体のマナの流れ……急に変わったよね」
あたしの言葉にコレットは相当驚いたみたいで……弾かれたように顔を上げた。大きく青い目を見開きながら。
「マナ……もしかして私の体の中のマナが見えるの!?」
「うーん……見ているっていうよりも流れを感じてる?って言うのかな…
水の流れを感じる時のような……そーいや、普通は見えないんだっけ?マナって」
「うん。先生やジーニアスみたいなエルフだったら分かるみたいなんだけど……」
「やっぱりそうかー。こっちでもそうなんだね。元いた世界でもマナが見えるって人はいなかったけど、さ」
どうやら、こっちでも人間でマナを感じるというのは特殊らしい。……まあ、マナを感じられなきゃ“アーティファクト”使えないんだけどね。だからあたしはマナの流れを見ることができる。”アーティファクト使い”だからだ。
「ねえ?マナ。あのね……私の体のマナが変わっちゃったってこと……ロイドには……」
「コレットが言うなというなら言わないよ。それに、あたしは流れを感じるだけ。変わることでコレットの体に何が起こっているかまではわからないし」
……それがコレットにとって良くない事ってのはわかるけど、ね。その言葉は飲み込んだ。
「……ありがとう」
砂漠の夜風は少し寒くって……
「寒ッ!!じゃあ、帰る前に一つ聞いていい?」
「うん、何かな?」
ゆっくり目を閉じて、みんなに聞いた世界再生について思い出す。
「天使になって世界を救うんだっけ?」
「……うん。それがマナの神子だから」
あたしはコレットの方を向きゆるゆると首を振った。
「……本当に?」
「えっ……」
「それがコレットの心?あたしは神子に聞いてるわけじゃない。“コレット”に聞いてるの」
「それは……」
あたしの言葉を聞いたコレットは考え込むようにうつむいてしまった。すごく、すごく……悲痛な顔をして。
「……帰ろっか。明日も歩かなきゃ、ね」
「……うん。でも、私はもうちょっとここにいるね。ごめんね、マナ」
うつむいているコレットがどんな顔をしているか、あたしには分からない。けど……
「うん。みんなと一緒に待ってる」
ポンと彼女の頭を軽く触れて、あたしはみんなが待っているキャンプ地へと戻っていった。砂塵が一陣、あたし達を慰めるように流れていった。
++++++++++++++++++++
「う―ん……今日も絶好の灼熱日和。んでっ、次どこへ行くんだっけ?」
砂漠生活何日目?もういい加減慣れるってもんだよね。
「もう、朝から気が滅入る事を言わないでちょうだい。そうね……レミエルの言葉に従うなら……ふ……船に乗るしかナイノデスカ?」
あれ、後半で急にどもり出したよ、リフィル?あれー……気のせいなわけないよね?
「あのさ、リフィルって船ー……」
「ですから、次の目的地はパルマコスタね。決して、水が怖いわけではないのよ。水が」
「あたしまだ、何も言ってないんだけど」
「……パルマコスタに行くのなら、オサ山道を越えねばなるまい。それほど険しい山道ではないが」
「じゃ、そのオサとかいうところへ行くわけか。ノイシュとそのおまけのラビも帰ってきたわけだし、いこっか」
「ああ、そうだな………って、マナ何してるんだ?」
生意気にも威嚇をしているラビを無造作に掴んでいるあたしを見て、思わず声を上げるロイド君。
「んー……ラビが寂しそうな(=生意気な)顔してるもんだからさぁ。はーい、コレット~~」
「ピギィイイイ!!(このクソアマァアア!!)」
「わあ、マナありがと~!!」
「いえいえ」
朝っぱらからあたしに喧嘩を売るなんて上等。耳をつんざくような奇声を発しようが、ジタバタしようが……
「おはよう、ラビちゃん。おはようって言ってんだろ。うん、ふかふかだねー」
まんじゅう神子に勝てるわけがない。
「……俺、女子組に勝てる気がしない」
「……ボクも」
「はあ……」
何やら男共が凹んでいる気がするけどいつものように気にしないことにした。さあ、目指すはオサ山道!
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「山道って言っても、案外道が整ってるもんだねー」
「ええ。ここはイセリアやトリエットと他の地域を結ぶ道ですもの。それに、もともとは鉱石を発掘していたところだから」
砂漠を横断し、やって来ましたオサ山道。ここに来る少し前に砂漠は終わり、山道周辺は緑の木々が生い茂っている。
「交通の要衝ってやつだね。なるほどねー……まあ、暑い砂漠ともさよならしたわけだし、ようやくゆっくー……」
「待て!!」
山道を上ろうとして足を進めようとしていたあたし達の耳に、不意に聞こえてきた叫び声。それは叫びというよりも怒声と呼んだほうが正確かもしれない。その声を不審に思ってキョロキョロ辺りを見回せば……
「……誰さん?」
そこにいたのは妙ちきりん(ただし、タイツではない)な服を着た黒髪の女の人だった。
「この中に……マナの神子はいるか?」
「あっ、それ私です」
女の人の問い掛けにコレットが極めて能天気に答えると……
「覚悟……!!」
「なっ!!」
その女は武器を片手にコレットに向かって突進をしてくるじゃないですか!!まずい……!あたし達が慌てて武器を取り出そうとした、その時だった。カシャン……という不穏な、何かのスイッチを押した時のような音がしたのは。
「あっ……」
えっ……あれ……これって……すごく嫌な予か……すごーく下がスースー……やっぱりさっきのカッシャン……って音……明らかに何かのスイッチのお―…
「なあーんで、あたしがァアアアアア!?落ちるかなぁあああああああ!?」
なんと、コレットが躓いた拍子に押したスイッチのせいで開いた穴に落ちてしまったのだ!……って、解説なんてしてる場合じゃなくて……!
「いったぁー……」
「ど、どうしよう!やっちゃった!」
いったー……腰、腰モロに打った!!涙目になりながら上を見ると……
「……仮にこの穴が10メートルだとして、重力加速度を9.8として計算しても死ぬような高さじゃないよ。それに落ちたのはマナだし」
「……マナだしな」
おい
「聞こえてるわよーーー!!!ジーニアス!ロイド!!他人事だと思って何好き勝手に言ってるわけーー!!」
腰を擦りながら上に向かって叫んでみた。あいつら他人事だと思いやがってー……
「ほらね、大丈夫でしょ?」
「そろそろ行くぞ」
なっ!?何言いだすんだ、あのタイツ男!!
「コラーーッ!!クラトス!!お前、こんなにか弱くて、はかなげな少女を見捨てる気かッ!!ロリコンの風上にも置けない奴め!」
「そんなものの風上に置くな!!第一、お前はもう少女って年でもなかろう!!それにここからでは引き上げられん!そこは元々、管理用の通路だ。出口はある。そこから出ろ!!」
あっ、ロリコンは否定しないんだ。……って、冗談はここまでにして。
「わかったー、後から合流ねー!首洗って待ってろよーー!」
「マナ、それ違くない?」
ジーニアスのツッコミを軽く流して出口を探すこととした。はて……?先に誰かいるような……?
「くう……ツイてないね……。穴に落ちて落ちた先にこんな化け物がいるなんて……」
そこには、さっきコレットを襲おうとした妙ちきりんな服の人がいた。どうやら、黒い骸骨みたいな魔物と戦ってるみたいだけど……形勢は、と。……こりゃまた……
「あーっ……見てらんない。ほらほら、怪我してるでしょ?下がって」
「あ……あんたは神子達の……!」
「あなたのおかげであたしも落ちたの。どいて、あれ倒すから」
怪我をしている彼女を下がらせ背負っていた槍を手に持った。視線は目の前の魔物から逸らさずに。
「何言ってんだい!あんた一人でー……」
「まあ、見てなって」
あたしは前に進み出た。
「我……強キ者ノヲ求ム……オ前ハ……我ノ渇キヲ……潤セルカ……」
「ごちゃごちゃうるさいな。さっさと来なさい」
あたしの言葉が終わると同時に、黒骸骨は剣を振り上げた。ガリガリとうるさい音を立て周りの岩を削りつつ、あたしがいる場所へと振り下ろされる。
「残念。は・ず・れ」
あたしは黒骸骨の足元に滑り込み、背後に回った。大降りの攻撃を外した黒骸骨は隙だらけで
「シマッ……!」
「光弾槍(こうだんそう)!!」
槍に光の精霊ウィスプの力を乗せて、思い切り突きを放つ。刹那、まばゆい光が闇を穿った。
「我……次ナル所デ……待ツ……愉しみにしているぞ、小娘……」
あたしの突きで眉間を貫かれた黒骸骨はまた来るぞ的な捨て台詞を吐くと、さらさらと黒い粒子の細かい砂になって消えてしまった。
「なんか、めんどーなのに目を付けられたかな?ああ、もう大丈夫だよ」
「あ……あんた一体」
女性は狐に摘まれたような顔をしてこっちを見ていた。そんな顔しなくてもいいじゃんねー。
「あたしは、マナ。んー……やっぱり怪我してるね。ちょっと待って」
あたしは、自分の腰に付けていた木の笛を取り出す。フフ……ただの笛じゃないんだよなー……そうして静かに音色を奏でた。洞窟の壁に笛独特の乾いたような懐かしいような……そんな音が反響する。
「一体、何を……?ッ……!!」
薄暗い洞窟の中に眩しい光が生まれる。
「……ウィスプ。傷を癒して。……ホーリーライト」
ウィスプ。あたしの世界の光の精霊。傷を癒す力を持った唯一の精霊。ウィスプの暖かな光があたし達を包み込む。その光は徐々に弱くなり、もとの薄暗い洞窟に戻った時には
「嘘だろ……怪我が……ない。あんた法術師なのかい?」
「はい、おしまい。きちんと癒えてるから大丈夫だと思うけど今日はあまり無理をしない方がいいと思うな~」
笑いながらそう告げて笛をしまった。この笛には8精霊の力が宿っている。あたしは笛を通じて精霊の力を行使することができるのだ。しっかし……よかった……世界が変わっても精霊は呼べるみたいだ。
「……」
なんか、すんげー見られてない?
「あまりじろじろ見るのは失礼だと思うな。……あなた、名前は?」
「な……あ、あたしは“しいな”だよ…!って、あんた神子の仲間だろ!どうしてあたしを助けたのさ!!」
どうしてって言われてもねーあたしはほっぺたを指で軽く掻きながら「気分?」と答える。
「はあ?」
わけが分からないと言いたげな顔をするしいな。だって、本当のことだしねー……
「助けたい気分だったって事。それより出口、探すんでしょ?あたしもいい加減出たいんだよねー……ってわけで、いこーか!」
あたしはしいなの手を取って歩き出した。
「なあ!?」
「どうせ目的地同じだし、ね?それに言うでしょ?旅は道連れ世は情け、ってね」
++++++++++++++++++++
「……あんた、変わってるね」
「そう?普通のつもりだけどな」
しばらく無言で歩いていたあたし達だけど、しいながいきなり変なことを聞いてきた。
「あたしは、あんたの仲間を襲ったんだよ。もしかしたら、あんたを襲うかもしれない。なのに」
「あーっ……正直なことを言うと、しいながあたしを襲ってきても怖くないんだよねー。あたしの方が強いし」
ずるっという効果音が聞こえてきそうな勢いでしいながよろける。うん、いいリアクションだね!
「あはは…ん?しいな、光見えてきたよ」
そう言って前を指差す。出口が近いのか柔らかな日の光が差し込んできている。あたし達は自然と歩くペースを速めた。
「ただいまー!」
「マナ!無事だったのか!……って、お前は!」
あたしの後ろにいるしいなを見るや否や、ロイドは剣の柄に手をかけた。他のみんなも緊張をしているのが分かる。
「ッ!今日のところは恩に免じて見逃してやる!だが、次は容赦をしない!……覚悟をしておくんだね!」
「ちょっ!?しいな……!」
しいながそう口走るや否や、彼女は懐から丸い玉状のものを取り出し地面に強く叩きつけた。と同時にあたし達の周りは煙で包まれて―……煙が晴れた時、そこには既に彼女の姿はなかった。あぁー……ケムイ……あたしはパタパタと手で仰いで煙を飛ばす。もっと違う退場の仕方なかったの?しいな?
「恩って……マナ一体何をしたんだ?」
ロイドが首を傾げながらあたしを見る。
「それは、まあ人徳の差ってやつ?」
「はあ?」
なんだ、そのありえないものを見る目は。
「まあ、いいじゃん。合流もできたしーさっさとここを出ちゃおうよ」
「そうだな。コレット……ついでにマナも無事だったんだしな」
「そうそう。じゃあ、しゅっぱーつ!!」
―……また、会えるかな……―
ちょっと不謹慎だけど、そんなことを思ってた。さあ、また歩かなきゃね。