ちょ、おまっどこ行ってたんだよ!
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『でかいツラして街を歩く』
「見つけたか?」
「いや…いないですぜ」
あのあと屯所から乗ってきたパトカーを拾ってチビ笠を追ったが姿が見えない。すぐ追ったのにいないって言うのは意味が分からない。
道が違うのだろうが、路地裏に入ったり古民家の中に逃げていたりするかもしれない。
「元々気配を消しているような奴だから目を凝らさないと見つかりそうになさそうですぜ」
沖田がそう言うと土方も先程すれ違ったときの気配の無さを思い出した。
「俺たちに気づいて逃げたと思うか?」
「まァそれが妥当でさ」
だとしたら今日追ってた攘夷浪士の残党か、あるいは別の攘夷浪士の可能性が高い。
「それか、元々何かに追われているか」
「…なるほどな」
考えても見つからないイラつきに土方は一服したくなった。
「いったん停めるか」
シュボッ
道の脇にパトカーを停め、降りた土方はパトカーから少し離れた位置でタバコに火をつけた。
「フゥー…」
「俺たちに気づいて逃げたならやっぱ攘夷浪士なんじゃねェですかね」
そう言う沖田はもうすぐ16時だというのにその事に触れずに助手席から街行く人を目を光らせ探し続けている。
(普段からこんくらい真面目に仕事してくれると助かるんだがな…)
彼は真面目に仕事に取り組んでいる訳ではなくあのチビ笠が個人的に興味があるのだろう。あんだけ文句を言っていたドラマの再放送も関係なくなってしまっている。
そう思いながら土方はニコチンを摂取する。
「全部とっ捕まえて本人に聞き出しゃいい、簡単な話だ」
「お〜それは確かに」
ここは少し人通りが良い。
紛れようとするならこういう場所に来るかもしれないし車の中からまた探すかと、パトカーへ戻ろうとしたその瞬間ーー、
ドンッ
「おっとっと」
「あっすみませ…」
「おぉこっちこそ悪かった、大丈夫か?」
「………」
「………」
あ、見つけた。
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そして今に至る。
彼女がぶつかった衝撃で腰を抱いたままになっている土方は相変わらず離すつもりはなさそうだ。
「あの抜刀は見事だったな、俺等じゃなきゃ見えなかった」
(やっぱり見られてたんかい!!!!!!!!)
チョコの恨みだとは言えお天道様が出ている時間に道中で抜刀するもんじゃないとみつさだは今の状況を恨む。
「ま、立ち話もなんだ屯所に一緒に来てもらおうか」
「え"っ!!!」
「…なんだその"えっ"は」
「いやそのぉ………」
不味い、同行なんてしたら身元がバレてしまうかもしれない。探し物のためにも今は大事は起こしたくないんだ。
だがこの状況ーー。
みつさだは俯き、覚悟を決めた。
「…シ……ルネ」
「あ?」
「ワタシ、観光客アルネ」
「……………は?」
目を逸らしながらみつさだは呟く。
彼女が考えたのは『観光客』作戦だ。
「いやいやいや!!絶対嘘だろ!!!」
「嘘ジャアリマセーンフランスパン」
「顔が嘘ついてる顔過ぎるだろ!おい目ぇ合わせろ!!」
みつさだは口を尖らせ土方から目を逸らしてカタコトで話している。それに対し土方はキレていた。
「コノ、
「何だその語尾は!それで誤魔化せると思ってるの!?」
観光客だから刀は買った模擬刀であり、自分のではない作戦だ。我ながらよく思いついた策だーー
な訳ない。めっちゃくちゃ疑われている。
「というかお前、さっき"いたいけな市民"って自分で言ってなかったか?」
「………日本語ヨク分カリマセンインドカレ-」
「ほんとにそれで良く騙せると思ってるな!感心するよ!!というか国ブレブレなんだよ統一しろ!」
土方がキレながらみつさだへツッコむが宇宙は行ったことあるが海外へ行ったことない彼女は本気でやっているのだからしょうがない。信じてくれという一心で適当にやり続けるが、ある疑問がよぎる。
「というか…
なんで私こんな疑われているんですかね」
そうなのだ、抜刀してしまった場所からかなり走ってきた上に気配まで消していたのにここまで追われるとは思わなかった。
彼女の質問を聞いて土方がニヤリと笑う。
「何しらばっくれてんだ、このテロリストめ」
「テロ…!?んなわけないでしょうが!こんな可愛いのに!」
「今日この周辺で攘夷浪士"桂小太郎"の傘下を捕まえたところだ」
「へ?(こた?)」
「分かってんだよ、てめぇもその1人だろ攘夷浪士め」
「…………」
ヅラァァァァァアアアア!!!!!!!!!
だらだらだら…
(何してくれてんだあいつ!!?お前のヤンチャでこっち牢行きになっちゃうけど!?)
大量を冷や汗が流れる顔を笠で隠すみつさだに続けて土方は言った。
「今日しょっぴいた奴等は大量の爆薬を持っていた、これでドカンとやるつもりだったんだろ」
(あいつ馬鹿なの!??今どきモテねぇっての爆弾魔なんて!!!!!)
ウィーーン
「さらに見てくだせぇ」ペラッ
「えっ子供?」
「あんたにだけは言われなくないでさ、まぁ見てくだせぇ」
「?」ジー…
少し離れた位置にあるパトカーの助手席の窓が開き、栗毛の男…沖田が顔を出して1枚の紙を見せる。その紙を見てみると何やら書いてあった。
『バーカバーカ
今回の爆薬が回収されようと
それはほんの一部だ!
お得意の鼻でも使って
せいぜい探し回るんだな幕府の犬どもめ
バーカバーカ!
俺はバカじゃない桂だ!』
馬鹿はお前だよぉぉぉおおおおおお!!!!!!
だらだらだら…
(追われてるのにわざわざ手紙残す攘夷志士がどこにいるんだよ!!!)
「そしてあんたは俺達を見て走って逃げやしたね」
「"この辺歩いてる刀所持して真選組見たら逃げる奴"なんて桂の仲間だっててめぇで言ってるようなもんじゃねぇか」
ビンゴォォォオオオオオオ!!!!!!!
ぐわっ!
(条件全部揃った!!!ビンゴになっちゃったよ!!!!
さっきまでリーチくらいだったから逃げられるかな〜って思ってたけどこれは1列揃ってビンゴ確定だよ!!)
だから意地でも離してくれないのか。
このままだと連れてかれて身分がバレても困る。何ならヅラの知り合いだと気づかれた時には攘夷浪士として生涯を生きるしかなくなる。
どれも嫌だ…!
「フゥーー…」
「うわ、タバコ臭っ!おまわりさん受動喫煙って知ってます!?」
探し
「攘夷浪士は全員叩き斬ってるんだが、あんたにはとりあえず話が聞けりゃいいんだ」
「叩き斬ってるのかよぉ…怖いよママァ…」
「だから大人しく署までご同行願うよ、拒めば…まぁ分かるな?」
私はチラッと目だけ車に乗った男を見る。子供のような顔をしているが彼も真選組の制服を着ているからこの目の前の黒髪男と同じく隊員なのだろう。目が合った彼は瞳孔を開き見下ろしてニヤリと笑った。
「ヒエッ」
急なドS顔にビビり咄嗟に隣の黒髪男の顔を見上げるとこちらを見下ろしている男の目が光り、煙草を咥えた口角が上がっていた。
「………」
「ビエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!!!!!!!!!!」
メロスは激怒した、所では無い。
みつさだは大泣きした。何故なら黒笑いコンビに挟まれていて怖いからだ。怖すぎる。
「いやうるさっ!!!なんだ突然!?」
「泣きたくもなるだろ!!!怖すぎるて!!本当にこれが市民守るおまわりさんかよ!税金泥棒め!!」
一方、土方と沖田は追っていたチビ笠を捕まえることができ、何だかんだ理由をつけて屯所で刀でも交えたいと企んでいた。その楽しみを隠すことができず笑みを浮かべていたのだ。
「はいはいお嬢さん、とりあえず車に乗ってくれや」
「う"…離してよ」
「車に乗ったらな」
(もうダメか…事情聴取で年齢でも偽るか…うう…)
ガチャコン
「!」
「なっ…!てめっ何やってんだ!!?」
重機の音がして俯いていた顔を上げるとバズーカを抱えた沖田が銃口をこちらへ向けていた。
彼はニヤリと笑うと
「グッバイ土方」
引き金を引いた。
バヒューン!!
「総悟てめぇ!!!!!!」
「ええっ!?」
ドゴォン!!!!!!!
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「けほけほっ…チッ!」
いつも命を狙われている土方からしたら沖田がバズーカを出すことは珍しくないが今発砲するとは思わなかった。
煙の中から出てきた土方は舌打ちをしながら沖田を見つける。やはりチビ笠はいない。
「おい総悟!追うぞ!」
「…土方さんはその刀じゃ無理じゃねえですかい」
「ああ"?刀?…なっ!」
煙の中で無意識に拾った自分の刀を土方は鞘から抜くと刃が半分程しかなかった。それに驚き周りを見渡すと残りの刃が落ちている。
「俺だけで追って来やす」
そう言う沖田の顔は完全にイってしまっている。彼は獲物でも見つけたような目つきで地面に散らばった"粉々に斬られたバズーカ"を見ていた。
(なるほど…)
沖田のその姿を見た土方は逆に冷静になり胸ポケットに手を伸ばす。
「やめとけ総悟」シュボッ
「嫌でさ…」
「今回は俺たちの負けだ、
「!………」
その言葉で正気を取り戻した沖田はいつもの顔に戻っていった。煙草を咥えながらパトカーにもたれる。
「一体何があった?」
「あの一瞬に全て持ってかれましたね」
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ーーーーーーーー
ーーーー
バヒューン!!
バズーカから弾が撃たれた時、土方に抱かれていた腕が少し緩んだ。
(今だ!!)
それをみつさだは見逃さなかった。
スッ!
一気にしゃがみ込み腕から抜け出し、左右へ逃げるわけでもなく彼女は正面の沖田の元へ駆け出した。
(怖いけど…これしかない!)
弾を避けながら走る、パトカーまで距離は短いがこの一瞬のチャンスのためにみつさだは走る。
「クソ!」カチャ
自分の腕から抜け出し走って行った事に気づいた土方は咄嗟に刀を抜き、
シュ!
(こいつで止まるだろ!)
みつさだへ向かって投げた。
ドゴォン!!!!!!!
そして土方へ飛んだバズーカの弾が爆破した。
煙の中、
みつさだの背後に平行に回転しながら刀が迫っていた。もうすぐ彼女の腰へあたると思ったその時、
ガキンッ!!
みつさだは気づいていた。
何が飛んできているかまでは分からなかったが反射で咄嗟に刀を抜き逆手に持ち、前を向いたまま背後に迫っていた刀を上から叩く。叩かれた刀の刃は折れた。
ぼわっ!
「!!」
爆発した煙の中からみつさだが飛び出してきて沖田は驚いた。
ガチャコン!
彼は咄嗟にバズーカを構え直し、照準をみつさだへ向け引き金を引こうと指をかける。
刹那ーー赤い眼が光った。
シュッ
ガシャン!
バラバラ…
バラ…
「!?」
自分が持っていたバズーカが粉々になった。目を見開く沖田。
そのまま沖田を飛び越える彼女を見上げると笠にずっと隠れていた赤い瞳と目が合う。
爆風の中でもはっきりとみつさだの顔と紺色の髪の毛を見た。大人びた、でも可愛さも残っている顔だ。
シュタッ…
そのままパトカーも飛び越え、彼女は走り去ってしまったーー。
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「せっかくの良い女を土方さんが手を離しちゃうのがいけねぇんでさ、あんなに情熱的に抱き合ってたのに」
「元はと言えばお前がバズーカぶち放したのがいけねぇんだろうが!」
「だって平和のために攘夷浪士は全員叩き斬らないと」
「だからって俺ごと撃つ必要ねぇだろ!」
「必要な犠牲でさ」
「オイ!!!」
土方は思った、この餓鬼はきっとはしゃいでしまったのだと。屯所に連れていく前にチビ笠にちょっかいをかけてみたかったのだろう。
「フゥーー…そんで、楽しかったかよ」
「それは土方さんも一緒でしょ」
「お前と一緒にすんな」
煙が風で流れている。その風に土方は煙草の煙も乗せて吐く。のんびりしている土方を見て沖田が声をかけた。
「帰りやすか?」
「いや、無理だな」
「え?」
沖田の言葉にほら見ろと言わんばかりに顎をくいっと動かす。その方向を見るために沖田は助手席から身体を乗り出した。
「パンクしてやがる」
「あーあ」
パトカーの左側の前輪がパンクしていた。自分を追って来ないように沖田のバズーカを斬る前にやられていたのだろう。
「…ほんとに一瞬で何もかも持っていきやがって」
清々しいくらい全て持ってかれて呆れと感心、そして久々に面白いものが見れて楽しかった複雑な感情で土方はため息をつきながら自然と口角が上がっていた。
小さい身体だったなと彼女を抱いていた手を見ながら土方は思い出す。
あの爆発は一瞬の出来事で、咄嗟に彼女に刀を投げたのもさらに一瞬の出来事で。それらを全て掻い潜っていった。どんな戦場を経験したらそんな事になるんだ。
「山崎呼ぶか」
「へーい」
(今回は負けた。今回だけな、)
公務執行妨害やバズーカの器物破損やらでしょっぴけるなと次見つけたときの事を土方は考えていた。