ちょ、おまっどこ行ってたんだよ!
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『偉そうに正義かざし』
タタタタタタタッ
みつさだは走っていた。先程ばーさんからまんじゅうと団子を貰い、久々の食べ物にありつけたため元気になった
からではない。
タタタタタッ
(しまった…!ヤバいヤバい…!!)
彼女の顔は焦っていた。不可抗力とはいえ"刀"を振り回してしまったからだ。道端で何人かの人が目撃していた。
目撃したと言っても男達を倒したときに何が起こったかは誰も
廃刀令のご時世に刀をぶら下げているとバレればおまわりさんが来て騒ぎになる。根掘り葉掘り自分を調べてくるかもしれない。
さらにこの町で騒ぎを起こすと
(とりあえず遠くまで離れないと…!!)
走る彼女は角を右へ曲がった。
ドンッ
「あっすみませ…」
急に曲がってしまった為人にぶつかってしまった。黒い胸板に両手と顔を押し付けてしまったみつさだは謝ろうと慌てて顔を上げると、
「おぉこっちこそ悪かった、大丈夫か?」
タバコをふかした黒髪の男が見下ろしながらみつさだへ言った。
「……………」
だらだらだらだら…
彼女はその服装に見覚えがありすぎた。焦ったみつさだは顔に冷や汗をだらだらと流し、その場で体を固まらせる。
この黒い制服は江戸の警察である真選組のものだ。
(おまわりさんから逃げてたはずなのにおまわりさんに自分から会いに行っちゃったよ!!!!!)
グッ…
マズイと思った彼女は目の前の胸板を押して身体を退けようとした。
「…」
首だけを動かし斜め下を見ると自分の腰に男の手が添えられている。ぶつかった衝撃でつい支えてしまったのだろう。
だがおかしい、1ミリも動ける気配がしない。添えられているというより掴まれている気がする。
「そんなに焦ってどうしたんだ、お嬢さん」
グイ…
「…ヒエ」
男がそう言うとみつさだの腰にまわしていた手に力が入る。変態なのか?顔はイケメンなのに残念すぎると彼女は思った。そして離す気がない手の強さでつい情けない声が出る。
「えっと…おまわりさんがいたいけな市民にセクハラですか?」
「悪ィな良い女とぶつかったもんで、ついな」
「いや、そんな御託はいいから離して欲しいんだけど」
黒髪の真選組の男の胸に抱かれながらみつさだは見上げて抗議するが男の腕の力は抜けない。彼は右手をポケットへ入れ、左手の片手でしかみつさだを掴んでいないのに抜け出せる気配がない。
(さすが
しかも何故こんな状況になってるのかみつさだは困っていると男が口を開いた。
「離すわけねェだろ」
そしてグイッとさらにみつさだを引き寄せ、耳元で言った。
「良い女が腰に"こんなもの"ぶら下げてどこ行くんだよ」
「!!?」
男は腰に回した手でカチャ…とマントの外から刀を指でつつく。みつさだは目を見開き声に出さないよう驚いた。
バ…
バレてるぅぅぅううう!!!!!!
だらだらだら…
驚いたみつさだはさらに汗を大量に流す。
なんでだ!?
ぶつかった瞬間にバレたのか!?
だから離さなかったのかこいつ!!
いやいやいくらコイツが手練れだとしてもそんな一瞬で判断できるわけがない。
!
まさか…
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー少し前
一台のパトカーが道に停まった。
真選組のパトカーである。
「たしかここいらで目撃情報があったんですよね"土方さん"」
「あぁ、怪しい奴は片っ端から職質すんぞ
降りろ"総悟"」
そう言いパトカーから降りてきたのは黒髪の男真選組副長『土方十四郎』と栗色髪の甘いフェイス真選組1番隊隊長『沖田総悟』
彼らはある情報を元にここへ車を走らせてきた。
「怪しい奴ねェ、こんな昼間っから歩いてるもんなんですかね」
「お前が夕方のドラマの再放送観たいって言うから今来てんだろーが」
「そうですね、俺は16時に間に合うように帰るんで土方さんはそのまま探しといてください」
「なんで俺だけ働くんだよ!!」
パトカーに背中をもたれながら町を歩く人たちを観察する。ここは中心街から少し外れているため地面はコンクリートになっていない住宅街だ。茶屋があったり八百屋があったりはするが個人経営の小規模な店だけ住宅の間に点々とあるだけだ。
だがこの大江戸の中心にある『ターミナル』からはそう遠くない位置なので少し行けば大通りに行ける。少し立地条件がいい場所だった。
「フゥー…たしかに寝床にするには良い感じの場所か」
煙草を吹かしながら土方はそう呟いた。
「というか俺達こんな堂々としてていいんですかィ?」
ポケットに手を入れながら立っている沖田は疑問に思い、土方に投げかける。
「まァ
「あ〜じゃあ俺ら見て動く奴はあきらかに怪しい奴ってことですか」
「そういう事になる」
「俺も早く帰りたいし土方さんも最近書類仕事で鬱憤溜まってるから人を斬りたくてしゃーないですもんね」
「ん?いや?違うけど…」
「そういう事なら片っ端から叩っ斬っていきやしょうね土方さん」
「だから違ェっての、人の話聞いてた?」
沖田が暴走する前に仕事をさせねばと土方は思う。どこから回ろうかと身体を預けていたパトカーから離れようとすると、真選組の兵士がこちらに走ってきた。
タタタタタタッ!
「副長!沖田さん!怪しい奴らを見つけました!!」
「さっそくか、行くぞ総悟」
「へいへーい」
そのまま兵士が案内する方へ沖田と土方は走って行った。
「いやァこれ、16時間に合いそうですぜ」
「そりゃ良かったな」
追っていたのは攘夷浪士だった。この辺りを拠点にしていると情報を掴んで早めにやってきて良かった。荒いやり方にはなってしまったが、真選組を恐れ、物を運んで拠点移動をしようとコソコソ動いていたところを現行犯で捕まえられる事ができたのだ。
「あとは頼んだぞ」
「はい!承知しました!」
「総悟、お前は顔拭け」
「へーい」
土方は残りの処理を部下に任せ、先ほど停めてきたパトカーに乗って屯所へ帰ろうと歩き出す。沖田もドラマに間に合わせたいので着いてくるが顔に返り血を浴びているため注意する。市民に見られたらドSがいるとバレてしまうからだ。
スッ…
「…?」
誰かとすれ違ったが、本能で違和感を感じ立ち止まって振り返る沖田。
「あ?どうした総悟」
「土方さん」
その様子に気づいた土方も足を止め彼が見ている人へ目線を向けた。
「あいつ…」
「あれか?」
ふらふらと歩くマント…ではなく低身長でマントが歩いてるように見えている笠を被った人を沖田が示す。
「あのチビ笠がどうし…」
…?
ちょっと待てよ…あいつ
いつすれ違ったんだ?
土方は沖田の前を歩いていたが笠を被ったチビとすれ違った記憶がない。
「総悟」
「土方さんもそう思いやす?」
「あぁ」
理由はチビ笠が気配を消しているからだ。何故だ?理由がどうあれ怪しい。そう思った2人はフラフラ歩いているチビ笠を追おうと動こうとした。
ザザッ!
「真選組の土方と沖田だな!!!!」
数人の攘夷浪士が2人を囲み始めた。眉間に皺を寄せる土方。
「ああ"?」
「
「行くぞお前ら!!」
「行けぇーーー!!!!」
「さっさと終わらせるぞ」
「一瞬でさ、こんな奴ら」
キン……
攘夷浪士らの奇襲を片付けた2人は刀を仕舞い、中央に立っていた。
「土方さん、思ってたより時間かけすぎでさァ」
「お前がどさくさに紛れて俺の首を斬ろうとしなければもっと早く終わったんだよ!」
「…チッ」
「チッて何!!!??」
土方は倒れた攘夷浪士らの後処理を指示するために携帯電話を上着の内ポケットから出す。ついでにタバコに火をつけようとタバコも出す。
「俺だ、さっきの攘夷浪士の生き残りがいた…あぁ、場所は…」
土方が電話をしている間に沖田は倒れた攘夷浪士を踏みながらキョロキョロと周りを見渡していた。
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
「!」
ダッ
何か叫び声が聞こえ、沖田は反応する。声のした方へ彼は走り出した。
「おい総悟!」
後ろで土方の声がするが、構わず走る。その姿を見た土方は電話をすぐ切り沖田を追いかけた。
角を曲がった沖田は道路にしゃがんで地面を見ているあのチビ笠を見つけた。
遠くて何を言っているのか分からなかったが悲しそうな声で地面にむかって話しかけている。
「なっ!」
するとその背後を3人の男が刀を持って斬りかかろうとする。
沖田は抜刀しようと構えるが、
チャキ
シュッ
チャキン…
チビ笠が3人の間を瞬時に通り抜けたあと、バタバタバタッと男たちは倒れ動かなくなる。血は出てない…峰打ちだろう。
チビ笠は何事もなかったかのように道路へ回れ右してしゃがみ込み再び地面に話しかけていた。
「…すっげぇ早業だ」
「刀持ってたなあいつ」
「あ、土方さん」
何が起きたのか周りの誰も分からなかっただろう。だが真選組の土方と沖田違う。2人には
「しかも"女"でさァあいつ」
「ほぉ…それはそれは良い女なんだろうな」
先ほどすれ違ったあとから彼等は彼女が只者ではない事が分かっていたがここまでだとは思っていなかった。
手合わせがしたい、攘夷浪士であれば戦ってみることができると彼等は自然と口角があがった。
「攘夷浪士じゃないにしろ刀持ってるのが問題ですぜ」
「そうだな、話聞きにいくか…
ってあれぇぇえええええ!!!????」
きっと助けたのであろうおばあさんと彼女は会話をしていたため、終わったタイミングで声をかけようと思っていた土方は大声で驚く。
彼女が2人とは真逆にダッシュをして行ってしまったからだ。
「アイツ…!」
「チッ、追うぞ総悟!!」
そう言って2人はチビ笠を追って行った。