番外編
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がやがや…
賑わっている港町へ着いたふたり。
これはまだゾロとチロリが旅を始めて少ししか経ってない頃のお話。
「よし、この町で食糧買ってこうぜ」
「あァ腹減ったしな」
「よかった収入があって」
この町に来たのも偶然だが収入を得たのも偶然だった。どうやってお金を稼ごうか悩んでいたふたりの前にとある海賊が喧嘩を売ってきたため返り討ちにしたところ、そいつは賞金首だったのだ。チロリはその海賊の手配書をたまたま目にしていて気づいたのだ。
そのまま海軍基地へ海賊を届けて収入を得たふたりは買い物をしようと港町へ繰り出していた。
「なァゾロ」
歩きながらチロリが声をかける。
「何だ?」
「何か欲しい物ある?」
「あ?」
いつの間にか11月に入っていた。
11月11日はそう、ゾロの誕生日である。
近づいてきたゾロの誕生日プレゼントも一緒に買うためにチロリは賑わっているこの町を選んだのだった。
「あー欲しいもんか
……あ、あるな」
「お!それを買いに行こう!!」
「欲しいもんは…」
ゾロヘ質問をすると少し考えて思いついてくれる。その答えに期待をして隣にいる彼を見つめた。
ゾロは腰に差している刀を抜いた。
カチャ
「"折れない刀"だな」
「……ですよねェ」
抜いた刀は短く、途中で折れてなくなっている。賞金首を倒したときに折れてしまったのだ。何故折れた刀をそのまま差しているのかと言うとおさまりが悪いからだそうだ。身体の一部と化しているためそう思うのは理解できる。
なんとなく答えが分かっていたが期待してたのがあほみたいで溜め息がでてしまった。
「刀は自分で選んだほうが良いしな…」
「?…あーなるほど、てめェで選んだもんに支払うだけってのが嫌なのか」
「だってお金はふたりのお金だからただの買い物じゃんそれ」
「ふーん」
各々じゃなくふたりで一緒に得た収入なのにゾロが選んだ刀を支払うというのはいつもと変わらない気がする。私が選びたいという願望もあって刀はプレゼントとして却下である。
「うーーんそうすると…やっぱり
「まァ無難に
「分かった、じゃあ買ってこようかな」
「おれは刀を見に行ってくる」
こうしてお互いの買い物をするためにふたりは別行動になった。
「あ、あったここか」
一軒のお店を見つけてチロリは呟いた。彼女が見つけたのは『酒屋』。先程アレやソレとゾロと話していたのは酒のことだった。
「毎年酒だな…まァ私も刀以外知らないしゾロは酒好きだからいっか!」
ゾロも酒と剣豪と刀以外分からない奴なので毎年酒になってしまうが仕方ないと店内は入った。
高級そうな酒の棚を見る。実はチロリは良い酒を見つけるのには自信があるのだ。彼女は酒豪ではないがピンときたやつを選ぶと大体ゾロの口に合う良い酒だという地味な特技として持っていた。
「うーーーーーーーん…あ、これ」
人差し指で棚を左から右へ差しながら酒を見ているとテキーラが目に入る。
「うん、これにしよう」
勘が良い酒だと言っている。チロリはその酒を持って店主がいるカウンターへと持っていく。
ゴト
「オッサンこれ会計で」
「はい、ありがとね」
「包んで欲しいんだけど…」
「お〜じゃあやるから待っとくれ」
そういうと店主は酒瓶を紙とリボンで包み始める。1個じゃ少なかったかなと思ったが、船に持ってくならあとはその辺の安い酒にしよう。
「ありがとうオッサン」
「まいどあり〜」
完成してラッピングされたテキーラを手にし、私は店主へ礼を言うと酒店を出た。
「刀買いに行くってどこ行ったんだゾロは」
ところで彼は武器屋にちゃんと辿り着いているだろうか。…私も辿り着けるか分からないが。まァあとはゾロを探しがてら食糧を買って行こう。
そう思い市場はあっちだったかなと考えながら歩いているとキラッと何かが視界の端にに映った。
ススススス…
「???」
不思議に思い、通り過ぎた道を後ろ歩きで戻る。
「何だこれは?ピアスって書いてある」
ガラスの向こうにゴールドの細長いデザインのピアスがあった。3つセットだから片耳用だろうか。でも、そんな事より感じたことがある。
「ゴールドかっけェ…ゾロに似合いそう」
金色って王様とか世界一って感じがしてカッコいいし何より彼の緑髪に合うと感じた。
カランコロン…
そのまま一目惚れでお店に入り中にいたお姉さんへ声をかける。
「あの、すみません。ディスプレイされてるゴールドのピアスが欲しくて…」
「あちらのですね!在庫見てきますので少々お待ちください」
そう言うとお姉さんは店の奥へと入って行った。
その間ソワソワしながら店内を散策する。こんな洒落たお店初めて来た。ウッド調の暗くかっこいい雰囲気のアクセサリーショップだ。ドクロなどヤンチャなデザインやシンプルなデザインもあって楽しく店内を見回る。
(いいなアクセサリー、私も何か買おうかな)
「お待たせいたしました〜。在庫ありましたので展示品じゃなくてこちらでいかがですか?」
「じゃあそれで、あとラッピングも頼みたくて」
「プレゼントですね!お包みしますね!」
「お願いします」
酒もだがどうせすぐ使う事は分かっていても飾った物を渡したくなってしまうな、プレゼントと言うものは。
「ところでお客さま」
「ん?」
カウンター越しにラッピングの紙を広げながらお姉さんが声をかけてきた。
「このプレゼントする方はピアスホールはございますか?」
「……あ、ない」
そういえばノリで買っちゃったがホールをあけないとピアス使えないじゃん。私がそう答えると笑顔でお姉さんが言う。
「でしたら、私の姉がピアスホールあけられますよ!隣の店でやっているので姉に伝えておきますね」
「それはありがたい。相方を拾って隣の店に行きます」
「お待ちしております」
正直なところ今の提案がなかったら私が針でゾロの耳に穴をあけるところだった。痛いのは大丈夫だろうが処置を間違って耳朶が取れたりを考えると怖いのでここはプロに任せようと決める。
カランコロン…
「ありがとうございました〜お待ちしておりま〜す」
ラッピングされたプレゼントが入った紙袋を受け取ってアクセサリーショップをでたチロリ。
(一目惚れで買っちゃったけどピアス嫌だったらどうしよう)
ふとそんな考えがよぎるが「まァゾロが嫌だったら自分がつけよう」と思いすぐに不安はなくなった。
「よし、ゾロを探すか」
彼女は町を見回し左へ進もうと決め、歩き出そうとした。
すると正面からチンピラが5人こちらへ歩いてくる。道の中央を堂々とガラ悪く歩いており、町の人たちは関わりたくないため退いて道を開けている。
だが、チロリはそいつらに気づいてなかった。きょろきょろと港町の路面店を眺めながら歩く彼女は前方の様子など目に入らず歩き続ける。
(ふぇー魚専門のレストランとかあるのか、あとでゾロと来ようかな)
ドンッ
「ああ"?」
「おっと、あァすまない」
スタスタスタ…
ザワッ…!
「おいテメェ!!人にぶつかっておいてそれだけか!?」
ぶつかったことに謝りそのまま何食わぬ顔で歩き始めたチロリに道を退いていた町の人たちもざわつく。それに怒ったチンピラが彼女の肩を掴み無理矢理振り返させる。
「おい聞いてんの、か…」
「だからすまないって言ってるだろう」
「…」
「…?」
イチャモンをつけようとしたチンピラが彼女の顔を見て固まる。チロリはどうしたのかと首を傾げた。するとニヤリと男は笑い言い出す。
「オンナ、俺たちと遊ぼうぜ」
「あ?いや遊ばねェよ」
突然のナンパに当然断るチロリ。その会話を聞いて他のチンピラがやってくる。
「お前どうしたんだよ…あァこれは上玉だ」
「ほんとだ!どこ連れてくよギャハハ」
「だから遊ばねェって」
「しかも酒持ってやがる」
「なァ姉ちゃん俺たちと呑むために持ってるんだろこれ」
「…人の話聞いてる?」
断り続けるチロリの話を聞かずに勝手に話を進めるチンピラたち。しかもゾロに買った酒にまで手を出そうとしている。
「俺たちは姉ちゃんみたいな"小さい身長"のオンナが大好きなんだ」
「しかも顔も良いしな姉ちゃん」
「だから悪いようにはしねェぜギャハハ」
「ほら行こうぜ」
「酒も寄越せよ」
「わ、ちょ、離せ、触んな!」
150cm満たないチロリは自身の身長のことをコンプレックスと感じているのにそこに触れてきた言葉にイラッとし、さらに無理矢理連れて行こうとチンピラたちは彼女の腕を掴み出した。酒も奪おうと紙袋を引っ張る。
(いやもうこれ、ぶん殴っていいかな)
町のど真ん中で騒いでいいのか分からず我慢していたチロリだったが、ついに手を出そうと思ったそのときーー
「悪ィな、それおれのなんだわ」
「「「!?」」」
「あ、ゾロ見つけた」
ゾロが駆けつけてくれた。道に迷っていて偶然だと思うがナイスタイミングだった。屈強なゾロを見て固まるチンピラたち。
「な、何だお前!こいつの男だってのかよ!!」
「ええっ!?」
チンピラの言葉に1番に驚くチロリ。少し頬の赤らめゾロの返答を待つ。すると、彼はこちらへ指を差した。
「おれのなんだよ、その酒」
「なんだ、酒かよ…………ん?」
独占欲を出したのは酒のことだと分かりチロリは少しガッカリする。酒が無かったら助けてくれてなかったのかなと思った。でも少しして何故自分がガッカリしたのか分からず彼女は首を傾げていた。
「テメェ舐めてんのか!?」
「あ、やめたほうが…」
そう言ったチロリの言葉を無視したチンピラが1人ゾロへ殴りかかりに行くが、
シュ
ボコッ!
殴ってきたチンピラを避け、アゴに1発入れる。
…バタッ
チンピラは気絶をして倒れてしまった。
「ありがとうゾロ」
「何あんなのに捕まってんだよ」
「今からぶん殴ろうかなおもてたんです〜」
あのあと、ビビったチンピラたちは倒れたチンピラを回収して逃げていった。酒も無事だし私も無事だ。酒のためだったかもしれないが一応礼を言うとゾロに馬鹿にされた。
「あ、そうだゾロ探してたんだよ」
「おれをか?」
「行きたいところがあってさ、うーんとどっちだっけ…」
「こっちじゃねェか?」
「来た道だからこっちじゃないか?」
「はァやっと着いた」
「ったくどんだけ遠いところなんだよ」
「私たちが迷わなければすぐだったよ…」
「う"」
あれからピアスを買った店に着くまで1時間ほどかかった。チンピラに絡まれたところは店から5メートルほどの位置だったがふたりの迷子能力のほうが強かった。
「?ここって…」
「はいゾロ!これプレゼント」
「酒じゃねェのかプレゼントは」
「お酒もだしこれもだ、開けてくれ」
私が小さな箱を渡すとゾロが開ける。いらなかったら今言ってくれるだろうと彼の反応を待つ。
「ピアスか」
「うん、ゾロに似合うと思って」
「いいな、着けるか」
「!」
良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「やった!!ここで買ったんだけど、隣の店でピアスホール開けてくれるらしいから行こう!」
喜ぶ私は早速着けるところが見たいのでゾロを連れて隣の店に入った。
「すみませーん、隣で買ったピアス着けたくて」
「あら!お待ちしてました!」
「あらいらっしゃい、早速やるからここに座っておくれ」
店に入るとアクセサリーショップのお姉さんともう1人の女性がいる。きっと話していた姉だろう。姉妹で迎えてくれて歯医者にあるような椅子に座るように言われる。
ゾロを椅子に座らせて姉に買ったピアスを渡す。
「3連ピアスだね、どっちにする?」
「左耳に頼む」
そう言うと施術を始めた。
その間店内を見回すと髑髏やドラゴン、炎などのイラストがたくさん飾ってある。壁を見るとタトゥー一覧と書いてある。
「タトゥーショップなのか?ここ」
「そうなんです、姉は彫り師でついでにこうやって私のお店で買ってくれた人の施術もやってくれているんです」
「出来たぞ、着けてみるか」
「早いな」
「もう出来たのか、ゾロ見せて!おお!やっぱり似合う!!」
流石プロである、もう終わったようだ。キラキラ光るゴールドのピアスが緑髪に合っていてとても似合っている。私はプロに頼んで良かったと心から思った。
「あ、そうか…いくらだ?」
「あ!お代は結構ですよ、おふたりで買ってくださったのでサービスしちゃいます!ふふ!」
「????」
施術代を払おうと妹へ聞くとよく分からないことを言われ私は首を傾げた。するとシュッと何かが飛んでくる。それをキャッチして見ると、
「箱?」
「開けてみろ」
包装を開けるとシルバーのピアスが入っていた。ゾロと色違いであろう形が似ている。ただ3連ではなく1つだった。
「これ…」
「なんか目に入ってチロリに似合うと思って買ったんだよ。んでおれもお前を探してたってわけだ」
どうやら、ふたりとも同じことをしていたようだ。
「ははっ!嬉しい!!」
「…そうか」
「さてお嬢さんもこっちに座っておくれ、どっちの耳にする?」
「右耳で頼む!」
こうしてゾロは左耳、チロリは右耳にピアスをつけることにした。
「知ってますか?」
施術で喜んで耳を差し出している彼女を見ながらゾロは自然と口角があがっていた。そんな彼に妹が話しかける。
「ピアスをつけるとき左耳は男性らしさと"護るもの"って意味が込められていて
右耳は女性らしさと"護られるもの"って意味がある縁起物なんです、ふふっ」
「ふーん…」
護られるもの、ね…
チロリが聞いたら「私が護るんだ!」と左耳にするって言いかねないから黙っておこうとゾロは心の中で誓った。
なぜかというとゾロもチロリと同じように、いやもしかしたらそれ以上に彼女を護りたいと思っている。
「ふっ…大人しく護られておけ」
ピアスを着けて喜ぶ彼女を見つめながらゾロは小さく呟いた。
「ありがとうございました〜」
「また来てくださいね〜」
姉妹に手を振りながらふたりは前を後にした。
陽が傾き始め辺りは少しオレンジ色になっていた。
「ゾロの誕生日なのに貰っちゃったよ」
「嫌だったか?」
「ううん!すごく嬉しい!」
夕陽でキラキラ…と光るゴールドとシルバー。同じように目を輝かせた彼女がゾロヘ顔を向ける。
「右耳に着けたの似合うか!?」
「似合うんじゃねェか?」
「ゾロのゴールドも似合ってるぞ!
右耳と左耳でお揃い良いなァ嬉しい」
ーーーーーーーー
「右耳は女性らしさと"護られるもの"って意味が」
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「そうだな、よく分かってんじゃねェか」
「?」
チロリは込められた意味など知らないし、ゾロは神を信じてない。
だが、護り護られる存在って言うのは気に入った彼はそのまま左耳にピアスをつけ続けようとこの日決めた。
「ゾロ」
「ん?」
「ハッピーバースデー、今年もよろしくな」
「あァ」
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あとがき
ゾロとチロリがお揃いのピアスつけてるって話でした。
本編だと触れてなさすぎるのでもうちょっと触れていこうかなおもてます。
ここまで読んでくれてありがとうございます(OvO)
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